「体が温まる食べ物」と一口にいっても、実際には大きく3つのタイプに分けられる。
1つ目は、温かいスープや鍋料理のように、食品そのものの温度によって温かさを感じるもの。2つ目は、生姜や唐辛子のように、辛み成分が感覚神経などを刺激するもの。3つ目は、根菜や発酵食品のように、食物繊維やビタミン、ミネラルなどを補給し、日々の栄養バランスを支えるものだ。
ここで押さえたいのは、食後のポカポカ感と深部体温の上昇は別の現象だということ。
食事をすると、消化吸収や栄養素の代謝に伴って熱が生まれる。これは食事誘発性熱産生と呼ばれる。一方、辛いものを食べたときの発汗や熱感は、刺激成分に対する身体の反応でもある。
つまり、辛ければ辛いほど体が温まり、冷え性が改善するという単純な関係ではない。
体を温めたいときに選びたい代表的な食材日常の食卓に取り入れやすい食材は次のとおり。
- 生姜:ジンゲロールやショウガオールなどの辛み成分を含む。
- 唐辛子:カプサイシンによる辛みや熱感が特徴。
- ねぎ:香りが豊かで、汁物や鍋料理に使いやすい。
- にんにく:香り成分が料理の風味を引き立てる。
- ごぼう:食物繊維が豊富な根菜。
- にんじん:βカロテンを含む緑黄色野菜。
- 大根:水分を含み、煮物やスープに適している。
- かぶ:葉も根も料理に活用できる。
- 玉ねぎ:炒め物やスープなど幅広い料理に使える。
- 味噌・納豆:発酵食品として毎日の食事に取り入れやすい。
これらを単品で食べるより、たんぱく質や主食と組み合わせるほうが、栄養バランスの整った食事にしやすい。
【生姜・唐辛子の温め効果】辛み成分の働きと知っておきたい注意点

体を温める食材として、特に名前が挙がるのが生姜と唐辛子だ。
どちらも辛みを持つが、含まれる成分や身体への作用は異なる。
生姜のジンゲロールとショウガオール生姜には、ジンゲロールという辛み成分が含まれている。
農林水産省の解説では、ジンゲロールには血行に関係する作用や温かさを感じさせる働きがあると紹介されている。また、生姜を加熱・乾燥すると、成分の一部がショウガオールに変化する。
このため、生の生姜と加熱した生姜では、辛みの質や風味が異なる。
おすすめの取り入れ方は次の3つ。
生姜湯
温かい湯にすりおろした生姜を少量加える。好みに応じてレモンや少量のはちみつを加えてもよい。
生姜入り味噌汁
豆腐、わかめ、ねぎなどを入れた味噌汁に、生姜を少し加える。普段の食事を大きく変えずに取り入れられる。
生姜入り鍋
豚肉や鶏肉、白菜、きのこ、大根などを煮込み、仕上げに生姜を加える。野菜とたんぱく質を一緒に食べられる点も魅力だ。
ただし、生姜を食べれば深部体温が確実に上がるというわけではない。
20人の健康な女性を対象にした無作為化比較試験では、生姜抽出物の摂取によって食事誘発性熱産生や腋窩温度などが有意に増加したとは確認されなかった。食材としての生姜を楽しむことと、体温を持続的に上げる効果を期待することは分けて考えたい。
また、生姜は刺激のある食材でもある。胃腸の調子が悪いときや、食べると胃が痛くなる場合には量を控えよう。
唐辛子とカプサイシンはなぜ熱く感じる?唐辛子の辛みを生み出す代表的な成分がカプサイシンだ。
カプサイシンは、感覚神経にあるTRPV1という受容体を刺激する。TRPV1は熱などの刺激にも反応するため、唐辛子を食べると実際に高温のものを口にしたような灼熱感を覚える。
その結果、顔が赤くなったり、汗が出たりすることがある。
農林水産省によると、唐辛子のほか、キムチやカレー、ラー油などにもカプサイシンが含まれている。
ただし、発汗することと体の深部が温まり続けることは同じではない。
唐辛子は適量で料理の風味を引き立てる一方、過剰に摂取すると口や喉、胃腸などの粘膜を刺激する。胃食道逆流症などが気になる人や、辛いものを食べると胃痛が出る人は注意が必要だ。
生姜と唐辛子はどちらがおすすめ?生姜は汁物や飲み物に少量加えやすく、唐辛子は料理に辛みを加えたいときに便利だ。
冷え対策のために無理して激辛料理を食べる必要はない。普段の食事に使いやすく、食べた後に不快感がないほうを選びたい。
【根菜・発酵食品】体を温める野菜と栄養素を徹底比較
生姜や唐辛子のような刺激成分とは別に、根菜類や発酵食品も毎日の食事に取り入れたい食材だ。
根菜類の魅力は、食物繊維やビタミン、ミネラルなどを補給できること。発酵食品は、微生物の働きによって作られた食品であり、腸内環境を意識した食生活にも役立てられる。
体を温める野菜として選びたい根菜類ごぼう
ごぼうの特徴は食物繊維の多さだ。
文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年によると、生のごぼうは可食部100g当たり食物繊維を5.7g含む。水溶性と不溶性の両方が含まれている。
きんぴらごぼう、豚汁、煮物などに使いやすく、噛み応えもある。
にんじん
にんじんにはβカロテンが含まれている。体内でビタミンAに変換される栄養成分で、皮膚や粘膜の健康維持に関係する。
スープやシチュー、鍋料理に加えると、ほかの野菜とも組み合わせやすい。
大根
大根は水分を多く含む野菜で、煮込むと柔らかくなり、汁物にも使いやすい。
豚汁やおでん、鶏肉との煮物などにおすすめだ。
かぶ
かぶは根の部分だけでなく、葉も食べられる。
葉にはβカロテンやカルシウムなどが含まれているため、捨てずに味噌汁や炒め物に活用するとよい。
玉ねぎ・ねぎ
玉ねぎやねぎは香味野菜として料理の風味を高める食材だ。炒めたり煮込んだりすると甘みが出るため、スープや鍋料理との相性もよい。
発酵食品と腸内環境の関係発酵食品には、味噌、納豆、ヨーグルト、キムチ、ぬか漬けなどがある。
これらは微生物の働きを利用して作られ、食品ごとに異なる風味や成分を持っている。
腸内環境を考えるうえで、発酵食品と一緒に意識したいのが食物繊維だ。
野菜、豆類、海藻、きのこ、穀物などに含まれる食物繊維は、腸内細菌の栄養源となる。
2025年に公表された発酵食品に関するシステマティックレビューとメタ解析では、健康な成人を対象とした25研究、計4,328人のデータが検討された。排便頻度や便の状態、消化器症状などに好ましい変化が示された一方、評価された研究のエビデンスの確実性にはばらつきがあった。
ここで注意したいのは、腸内環境を整えることと、直接体温を上げることは別の話だという点だ。
発酵食品は冷え性を治す食品ではない。日常の栄養バランスや腸の健康を考えるうえで活用したい食品と捉えるのが適切だ。
食材別の特徴と期待できる役割を一覧で比較| 食材・食品 | 主な成分・特徴 | 食事に取り入れるメリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 生姜 | ジンゲロール、ショウガオール | 風味や温かさを感じる食事に活用できる | 過剰摂取による胃への刺激 |
| 唐辛子 | カプサイシン | 辛みや発汗につながる刺激 | 胃腸や粘膜への刺激 |
| ごぼう | 食物繊維、カリウム | 食物繊維を補給できる | 食べ過ぎるとお腹が張る場合がある |
| にんじん | βカロテン | ビタミンAの供給源になる | 調理法や組み合わせも意識する |
| 大根・かぶ | 水分、ビタミン類など | 煮物や汁物に使いやすい | 根と葉で栄養成分が異なる |
| ねぎ・玉ねぎ | 香りや風味を生む成分 | 汁物や鍋料理の味を豊かにする | 特定の温熱効果を過度に期待しない |
| 味噌・納豆 | 発酵によって作られる食品 | 発酵食品を日常的に取り入れられる | 味噌や漬物は塩分に注意 |
| ヨーグルト | 乳酸菌などの微生物を利用した食品 | 食生活に発酵食品を加えられる | 商品によって菌や成分が異なる |
| 鍋・スープ | 水分、野菜、たんぱく質など | 温かさと栄養を同時に取り入れやすい | 塩分や脂質の量を調整する |
根菜類は煮物やスープに使うと食べやすくなる。
特に水に溶けやすい栄養成分は、ゆで汁や煮汁に移ることがある。そのため、汁ごと食べられる料理は、食材から溶け出した成分も一緒に摂取しやすい。
ただし、加熱によってすべての栄養素が増えるわけではない。栄養素によっては熱や水に弱いものもあるため、生食と加熱調理を組み合わせるとよい。
【鍋・スープ・飲み物】食べた直後から温かさを感じるおすすめ料理
体が冷えているときに取り入れやすいのが、温かい料理や飲み物だ。
生姜などの成分に注目するだけでなく、料理全体の温度、食材の組み合わせ、食べやすさを考えて選びたい。
体が温まる鍋料理3選1. 生姜たっぷりの鶏団子鍋
鶏ひき肉で作った団子に、生姜を混ぜ込む。白菜、長ねぎ、にんじん、きのこ、豆腐などを加えれば、野菜とたんぱく質を一緒に食べられる。
鶏団子は柔らかく、野菜も煮込むことで食べやすくなる。
2. 豚肉と根菜の味噌鍋
豚肉、ごぼう、大根、にんじん、ねぎを組み合わせる。
根菜の食物繊維を取り入れながら、肉類からたんぱく質も補給できる。味噌の量を調整し、だしを生かすと塩分を控えやすい。
3. キムチと豆腐の鍋
キムチの辛みと酸味を生かした鍋料理。
豆腐、豚肉、白菜、きのこなどを加えることで、食べ応えのある一品になる。カプサイシンによる刺激があるため、辛さは好みに合わせて調整したい。
体を温めるスープのおすすめ鍋を毎日作るのが難しい場合は、具だくさんのスープが便利だ。
特におすすめなのは次の4種類。
- 豚汁:豚肉、大根、ごぼう、にんじん、こんにゃくを組み合わせる。
- 生姜入り野菜スープ:玉ねぎ、キャベツ、にんじんに生姜を加える。
- 鶏肉ときのこのスープ:鶏肉、しめじ、えのき、ねぎを煮込む。
- かぼちゃのポタージュ:かぼちゃと牛乳などを使い、エネルギーや栄養を補う。
スープの利点は、複数の食材を一度に取り入れやすいことだ。
ただし、味噌や市販のスープの素を多く使うと塩分が増えやすい。だし、香味野菜、きのこのうま味を活用し、濃い味付けに頼らないようにしたい。
体が温まる飲み物5選生姜湯
温かい湯に生姜を加えたシンプルな飲み物。生姜の香りと辛みを楽しめる。
白湯
特別な材料が不要で、食事の前後や起床時にも取り入れやすい。熱すぎない温度で飲むことがポイントだ。
ホットミルク
牛乳からたんぱく質やカルシウムを補給できる。甘味料を加えすぎず、温かい飲み物として楽しみたい。
ほうじ茶
香ばしい風味が特徴で、温かくして飲むと食後にも合わせやすい。
温かい豆乳
大豆由来のたんぱく質を含み、朝食や間食にも活用できる。無調整豆乳を選べば、糖分を抑えやすい。
なお、飲み物を温かくすることで感じる温熱効果は、必ずしも深部体温の持続的な上昇を意味しない。
飲みやすい温度で水分補給をすることも大切だ。
【冷やす食べ物との比較】冷え対策に役立つ食べ方と注意点
「体を温める食べ物」と対になる言葉として、「体を冷やす食べ物」を目にすることがある。
きゅうり、トマト、レタス、スイカなどは、一般に水分が多い食品として知られている。一方、これらを食べると体温が継続的に下がるという単純な関係はない。
食品の温度や水分量と、栄養成分による働きを混同しないことが大切だ。
温かい食べ物と冷たい食べ物の違い温かいスープや飲み物を口にすると、口腔や消化管の温度受容器が刺激され、温かさを感じる。
反対に、冷たい飲み物や料理は、一時的に冷たさを感じさせる。
人を対象にした研究では、温かい飲み物と冷たい飲み物の摂取によって発汗などの体温調節反応が一時的に変化する一方、深部体温や皮膚温度には明確な違いが認められない条件も報告されている。
したがって、冷たい食べ物を完全に避ける必要はない。
夏場には水分の多い野菜や果物も食生活に必要な食品だ。季節や体調、食べやすさに合わせて選ぼう。
体を温める食べ方の5つのポイント1. 温かい汁物を食事に加える
朝食や夕食に味噌汁、野菜スープなどを一品加える。温かい料理を食べる習慣を作りやすい。
2. たんぱく質を不足させない
肉、魚、卵、大豆製品などを主菜として取り入れる。野菜だけに偏らず、主食・主菜・副菜をそろえることが基本だ。
3. 根菜類を定期的に食べる
ごぼう、にんじん、大根、かぶなどを煮物やスープに加える。食物繊維やビタミン、ミネラルを補給できる。
4. 香味野菜や辛み成分を上手に使う
生姜、ねぎ、にんにく、唐辛子などを少量加える。料理の風味が増し、塩分を控える工夫にもつながる。
5. 発酵食品と食物繊維を組み合わせる
納豆と野菜の味噌汁、ヨーグルトと果物、具だくさんの味噌汁など、発酵食品と食物繊維を含む食材を組み合わせる。
冷え対策のための1日の食事例| 食事 | おすすめメニュー | 栄養面のポイント |
|---|---|---|
| 朝食 | ご飯、卵、豆腐とねぎの味噌汁 | 炭水化物とたんぱく質を補う |
| 昼食 | 鶏肉と根菜のスープ、ご飯 | 野菜とたんぱく質を組み合わせる |
| 間食 | 温かい豆乳、ヨーグルト | 水分やたんぱく質を補う |
| 夕食 | 生姜入り鍋、魚または豆腐、ご飯 | 野菜・主菜・主食をそろえる |
これは一例であり、年齢や活動量、体格、持病などによって必要な食事量は異なる。
2026年に意識したい塩分と栄養バランス温かい料理を増やすときに見落としやすいのが塩分だ。
味噌汁、鍋のスープ、漬物、キムチなどを毎食多く摂取すると、食塩の摂取量が増える可能性がある。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人の食塩相当量の目標量は男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満とされている。
加えて、厚生労働省が2025年12月に公表した令和6年国民健康・栄養調査では、食塩摂取量の平均値は9.6gだった。
温かい料理を積極的に取り入れる場合でも、塩分を増やしすぎない工夫が必要だ。
だしや香味野菜、きのこを活用し、スープをすべて飲み干さないなどの方法もある。
食事だけでは改善しない冷えにも注意手足の冷えが長期間続く場合、食事の内容だけが原因とは限らない。
例えば、甲状腺機能低下症では、寒がりのほか、疲れやすさ、体重増加、便秘などが症状として現れることがある。
日本甲状腺学会の診断ガイドラインでも、寒がりは甲状腺機能低下症の臨床所見の一つとして挙げられている。
食事を見直しても改善しない場合や、強い倦怠感、しびれ、痛みなどを伴う場合は、医療機関で相談することが大切だ。
【体が温まる食べ物】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:体が温まる食べ物で最もおすすめなのは何ですか?
A1:生姜入りの具だくさんスープや鍋料理がおすすめだ。温かさを感じやすいだけでなく、根菜、きのこ、肉、魚、豆腐などを組み合わせることで、複数の栄養素を一度に摂取できる。
Q2:生姜は生と加熱したもののどちらが体を温めますか?
A2:生姜は生の状態ではジンゲロールを含み、加熱や乾燥によってショウガオールなどの成分が生じる。風味や辛みの違いを楽しみながら使い分けるとよい。ただし、どちらも深部体温を持続的に上げる効果が確立しているわけではない。
Q3:体が冷えているときに冷たい飲み物を飲んではいけませんか?
A3:必ずしも避ける必要はない。冷たい飲み物を摂取すると一時的に冷たさを感じるが、それだけで体温が長時間低下するとは限らない。体調や季節に合わせて飲みやすい温度を選ぼう。
Q4:冷え性対策には唐辛子をたくさん食べたほうがよいですか?
A4:おすすめできない。カプサイシンによって熱感や発汗が生じることはあるが、過剰摂取は胃腸や粘膜への刺激につながる。少量を料理の風味付けに使う程度で十分だ。
Q5:発酵食品を毎日食べると冷え性は改善しますか?
A5:発酵食品は腸内環境を意識した食生活に役立てられるが、冷え性を直接改善する食品ではない。納豆、味噌、ヨーグルトなどを、野菜や豆類、穀物と組み合わせて取り入れよう。
体が温まる食べ物を選ぶときは、食べた直後の温かさと、食材が持つ栄養面の特徴を分けて考えることが大切だ。
生姜や唐辛子は辛み成分による刺激が特徴で、鍋やスープ、温かい飲み物は食後の温かさを感じやすい。一方、ごぼうやにんじんなどの根菜類は食物繊維やビタミン、ミネラルを補う食材であり、味噌や納豆などの発酵食品は腸内環境を意識した食生活に役立つ。
特に取り入れやすいのは、生姜入りの具だくさん味噌汁や、肉・魚・豆腐と根菜を組み合わせた鍋料理だ。
2026年の食生活では、特定の食材だけに頼らず、主食・主菜・副菜をそろえた食事を基本にしたい。塩分や辛みの摂りすぎにも気を配りながら、無理なく続けられる料理を選ぼう。
冷えが気になるときこそ、毎日の食事を見直すことから始めたい。温かく、おいしく、栄養バランスの取れた食卓が、健康的な生活習慣を支える土台になる。
主な根拠資料・参考情報
- 農林水産省「生姜は体を温める効果があるそうだが、どのような成分が働いているのですか」
- 農林水産省「カプサイシンに関する情報」
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査」
- 発酵食品の消化器系への影響に関する2025年システマティックレビュー・メタ解析