金星の成立には、番付と勝敗の両方に条件があります。最大の要点は、勝った側が前頭(平幕)であることです。
平幕とは、幕内力士のうち横綱・大関・関脇・小結を除いた力士を指します。つまり、前頭筆頭であっても前頭十六枚目であっても、条件を満たして横綱を破れば金星になります。
一方、横綱に勝った力士が大関や関脇、小結であれば、どれほど劇的な勝利でも金星にはなりません。
金星が認められる具体的な条件力士褒賞金に関する規定では、幕内力士のうち大関・三役を除いた力士が横綱から勝ち星を挙げた場合、特別に10円を加算する仕組みが定められています。不戦や反則による勝利は適用対象外です。裁判所の公開判決文にも、この規定の内容が掲載されています。
金星の成立条件を整理すると、次のようになります。
| 取組の状況 | 金星の扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 前頭が横綱に本割で勝利 | 金星成立 | 基本条件を満たす |
| 大関が横綱に勝利 | 対象外 | 大関は平幕ではない |
| 関脇が横綱に勝利 | 対象外 | 三役に該当する |
| 小結が横綱に勝利 | 対象外 | 三役に該当する |
| 前頭が大関に勝利 | 金星ではない | 横綱戦ではない |
| 前頭が横綱に不戦勝 | 対象外 | 実際の取組がない |
| 横綱の反則負けによる勝利 | 対象外 | 反則による勝利は適用除外 |
| 優勝決定戦で横綱に勝利 | 対象外 | 本割の金星とは別扱い |
見落とされやすいのが、不戦勝と反則勝ちの扱いです。
例えば、横綱が休場して対戦相手に不戦勝がついた場合、前頭力士の星取表には白星が記録されます。しかし、金星の加算条件には該当しません。
反則負けも同様です。
実例として知られるのが、2014年9月場所4日目の日馬富士と嘉風の取組です。横綱日馬富士が嘉風の髷をつかむ反則を犯して敗れましたが、嘉風には金星がつきませんでした。
この違いは、金星が単なる「横綱に勝ったという結果」ではなく、定められた条件を満たした勝利に対する特別な評価であることを示しています。
【褒賞金の仕組み】金星1個で4万円、年間24万円増える理由

金星の大きな魅力は、名誉だけではありません。獲得した力士には、力士褒賞金(りきしほうしょうきん)の増額という経済的なメリットがあります。
ただし、金星を取った瞬間に4万円の現金が手渡されるわけではありません。褒賞金の計算基礎となる「持ち給金」が増える仕組みです。
10円の加算が4万円になる計算力士褒賞金は、過去の成績に応じて積み上げられる持ち給金に、4000倍の支給倍率を掛けて算出されます。
金星を1個獲得すると、持ち給金に10円が加算されます。
計算式は次のとおりです。
金星1個による持ち給金の増額10円
支給倍率× 4,000倍
1場所あたりの褒賞金増額40,000円
年間6場所の場合の増額240,000円
日本相撲協会の力士褒賞金に関する規定と、相撲界の報酬制度を解説した集英社オンラインの記事でも、この計算方法が紹介されています。
つまり、金星を1個取れば、関取として出場する本場所ごとに4万円分の褒賞金が増えます。大相撲は年間6場所制なので、1年間では24万円の増額に相当します。
金星は引退まで給金に影響する?ここが金星制度の興味深い部分です。
通常の勝ち星による加算は勝ち越しを基準に積み上がりますが、金星は特別に10円という大きな加算が認められています。
しかも、一度獲得した金星による持ち給金の加算は、以後の本場所でも反映されます。
ただし、褒賞金が実際に支給されるのは十両以上の関取です。幕下以下に降格している期間は支給対象外となり、関取に復帰すると支給が再開される仕組みです。
また、次の3つは混同しないようにしたいところです。
- 月給: 力士の番付に応じて支給される基本給。
- 力士褒賞金: 勝ち越しや金星などの実績によって増える報酬。
- 懸賞金: 取組に懸けられた懸賞のうち、勝者に支給されるもの。
金星による4万円は、月給が4万円増えるという意味ではありません。場所ごとに支給される力士褒賞金の増額です。
この違いを理解すると、金星が力士の現役生活に長期的な影響を与える制度であることが分かります。
【銀星とは?】金星との違いと大関を倒したときの扱い
金星と一緒に検索されることが多いのが「銀星(ぎんぼし)」です。
銀星とは、一般に平幕力士が大関を倒したときの勝ち星を指す俗称です。金星と同じように、番付上位の力士を下位の力士が破ったことを評価する表現として使われます。
ただし、金星と銀星には決定的な違いがあります。
銀星は公式の褒賞金制度ではない銀星は日本相撲協会の正式な褒賞金制度ではありません。
『精選版 日本国語大辞典』でも、平幕力士が大関を倒したときの勝ち星を「金星にならって俗にいう」と説明しています。
つまり、銀星を何個獲得しても、金星のように持ち給金が10円増えることはありません。
| 比較項目 | 金星 | 銀星 |
|---|---|---|
| 対象となる相手 | 横綱 | 大関 |
| 勝利する力士 | 平幕 | 一般に平幕 |
| 呼び方 | 相撲用語として定着 | 俗称 |
| 公式の金星記録 | あり | なし |
| 持ち給金の増額 | 10円 | なし |
| 実際の支給額への換算 | 4万円/場所 | 増額なし |
銀星に金銭的な加算がないからといって、大関を倒すことに価値がないわけではありません。
大関は横綱に次ぐ最高位の力士であり、その相手から白星を挙げることは、実力を示す重要な結果です。
特に上位陣との対戦が続く場所では、大関戦での勝利が優勝争いや三賞の選考に影響することもあります。
金星と銀星の違いは、勝利の価値そのものを単純に比較するものではありません。あくまで、金星には特別な褒賞金制度があるという違いです。
【歴代最多記録】安芸乃島16個、北の湖53個の意味
金星の歴史を振り返ると、獲得する側と配給する側の両方に、突出した記録を持つ力士がいます。
獲得数の歴代最多は安芸乃島。反対に、横綱として最も多く金星を与えたのは北の湖です。
金星獲得数の歴代最多は安芸乃島16個
最高位:関脇
現在の高田川親方
安芸乃島は、歴代最多となる16個の金星を獲得した力士です。
その特徴は、特定の横綱だけを相手に金星を量産したわけではないことです。
千代の富士、北勝海、旭富士からそれぞれ4個を獲得。さらに大乃国、曙、武蔵丸からも金星を挙げています。
つまり、6人の横綱から合計16個の金星を獲得したことになります。
日本相撲協会も公式サイトの大相撲クイズで、安芸乃島の16個を歴代最多記録として紹介しています。
続く記録では、高見山と栃乃洋がそれぞれ12個、土佐ノ海が11個を獲得しています。
安芸乃島が残した16個という数字は、長期間にわたって横綱と対戦し、勝利を積み重ねた結果です。
横綱の金星配給数は北の湖が歴代最多53個
横綱在位:63場所
第55代横綱
金星配給とは、横綱が平幕力士に敗れ、相手に金星を与えた数を意味します。
その歴代最多記録を持つのが第55代横綱の北の湖です。
北の湖は横綱として63場所を務め、その間に53個の金星を配給しました。2位の日馬富士は40個で、北の湖との差は13個あります。
ただし、金星配給数だけで横綱の強さを判断することはできません。
北の湖は長期間にわたり横綱の地位を守り続けたため、それだけ多くの平幕力士と対戦する機会がありました。
一方、横綱在位が短ければ、金星を配給する機会自体が少なくなります。
横綱の実力を分析するなら、通算配給数だけでなく、横綱在位場所数や優勝回数、出場状況なども考慮する必要があります。
【2026年最新】現役力士の金星獲得数ランキング
2026年11月時点で、日本相撲協会の公式力士プロフィールから確認できる現役力士の金星獲得数にも注目してみましょう。
現在の上位には、長年にわたって幕内で活躍する力士の名前が並んでいます。
2026年11月場所前・現役力士の主な金星記録
1位
追手風ではなく片男波部屋
8個
2位
田子ノ浦部屋
7個
3位
追手風部屋
6個
出典:日本相撲協会公式力士プロフィール。2026年11月場所前の掲載値。
現役最多の玉鷲は8個
玉鷲は、長い幕内生活のなかで着実に金星を積み重ねてきた力士です。
2026年11月場所前の日本相撲協会公式プロフィールでは、金星獲得数は8個となっています。
過去には2023年に金星を4個獲得したこともあり、現役力士の金星記録を押し上げてきました。
高安も7個を獲得高安は、2026年9月場所で横綱大の里を破り、通算7個目の金星を獲得しました。
2026年9月16日の秋場所4日目、前頭2枚目の高安は横綱大の里を突き倒しで破っています。
当時36歳6カ月16日での金星獲得は、歴代9位の年長記録として報じられました。
日本相撲協会の公式プロフィールでも、2026年11月場所時点の金星は7個と記録されています。
このように、金星は若手力士だけが狙う記録ではありません。長く幕内に在位し、横綱との対戦機会を重ねることも、獲得数を伸ばす要素になります。
【金星の由来と歴史】なぜ横綱を倒すと金星と呼ばれるのか
「金星」という言葉は、相撲の勝敗を表す「白星」「黒星」と深く関係しています。
大相撲では昔から、星取表に勝ちを白い丸、負けを黒い丸で記録してきました。
日本相撲協会の公式解説でも、白丸と黒丸による記録が白星・黒星という言葉の由来として紹介されています。
その白星のなかでも、最高位の横綱を平幕力士が倒すという特別な勝利を「金星」と呼ぶようになりました。
金星という言葉はいつから使われている?金星という呼び名は大正時代から見られます。
そして、単なる名誉の呼び方にとどまらず、1930年(昭和5年)1月に金星を昇給の対象とする制度が設けられたとされています。
これによって、横綱を倒すという殊勲が、力士の経済的な待遇にも反映されるようになりました。
現在まで続く金星制度には、力士の実績を長期的に評価するという側面があります。
金星には相撲以外の意味もある?日常会話では、金星という言葉は「格上の相手に勝つこと」「大きな手柄を立てること」という意味でも使われます。
スポーツニュースなどで、ランキング上位の選手が格下の選手に敗れたときに「金星を許した」と表現するケースもあります。
ただし、もともとは相撲の用語です。
また、角界の隠語として、魅力的な女性を金星と呼ぶ用法も紹介されています。
同じ読み方でも、天体の金星(きんせい)とは別の言葉として理解しておくとよいでしょう。
【相撲の金星とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:金星を1個獲得すると、いくらもらえますか?
A1:力士褒賞金の持ち給金が10円加算されます。4000倍の支給倍率によって、1場所につき4万円の増額となります。年間6場所すべてに出場する関取であれば、年間24万円の増額に相当します。
Q2:大関が横綱に勝っても金星になりますか?
A2:なりません。金星の対象は平幕である前頭力士です。大関や関脇、小結が横綱を倒した場合は通常の白星として記録されます。
Q3:横綱に不戦勝や反則勝ちをした場合も金星ですか?
A3:どちらも金星にはなりません。不戦勝と反則による勝利は、力士褒賞金の金星加算の対象外です。
Q4:金星と銀星は何が違いますか?
A4:金星は平幕力士が横綱を破ったときの勝ち星で、褒賞金の増額があります。銀星は平幕力士が大関を倒した場合に使われる俗称で、公式の褒賞金制度はありません。
Q5:歴代で最も多く金星を獲得した力士は誰ですか?
A5:元関脇の安芸乃島です。日本相撲協会の公式クイズでも、歴代最多となる16個が紹介されています。
Q6:横綱で最も多く金星を配給したのは誰ですか?
A6:第55代横綱の北の湖です。歴代最多の53個を配給しています。
相撲の金星とは、前頭の力士が本場所の本割で横綱を破ったときに認められる特別な勝ち星です。大関・関脇・小結による横綱への勝利や、不戦勝、反則勝ちは金星の対象になりません。
金星1個につき持ち給金が10円加算され、4000倍の支給倍率によって1場所4万円、年間6場所なら24万円の増額につながります。単発の賞金ではなく、関取としての現役生活に長期的な影響を与える制度です。
歴代最多の安芸乃島16個、横綱として最多の北の湖53個という記録は、金星が力士の実績を語る重要な指標であることを示しています。2026年11月場所前の現役最多は玉鷲の8個で、高安の7個、大栄翔の6個が続きます。
金星を見るときに押さえておきたいのは、単に横綱を倒したという結果だけではありません。勝利した力士の番付、取組の成立条件、褒賞金への反映まで理解すると、一番の白星が持つ意味がより鮮明になります。
大相撲中継で前頭力士が横綱に挑む場面に出会ったら、勝敗だけでなく、その一番が金星になる条件を満たしているかにも注目してみてください。通常の白星とは異なる、金星ならではの重みが見えてきます。