2026年現在、「敢闘賞(かんとうしょう)」は、競技で果敢に戦い、優れた健闘を見せた選手をたたえる賞として知られています。特に大相撲では、殊勲賞・技能賞と並ぶ「三賞」の一つであり、本場所で力強い相撲を見せた幕内力士に贈られます。ただし、単に勝ち星が多ければ受賞できるわけではありません。対象となる番付や勝ち越し条件、相撲内容、選考委員会の判断など、独自の仕組みがあります。
2026年9月の秋場所では、新関脇の藤ノ川と西前頭3枚目の美ノ海が敢闘賞を受賞しました。また、2027年初場所から三賞の賞金が従来の200万円から300万円に引き上げられることも発表されています。敢闘賞の本来の意味から、受賞条件、歴代受賞者、賞金の変更まで、2026年11月3日時点の情報をもとに整理します。
【敢闘賞とは?】読み方・意味と競技ごとに異なる評価の実態

敢闘賞は「かんとうしょう」と読みます。
「敢闘」とは、困難や強敵を相手にしても、ひるまず勇敢に戦うことです。「賞」は、その行動や功績を評価して与える表彰を意味します。
精選版日本国語大辞典では、敢闘賞を競技において最優秀ではない場合でも、果敢に戦った者に与えられる賞として説明しています。
つまり、敢闘賞の中心にあるのは、単純な優勝や順位だけではなく、競技に臨む姿勢や奮闘ぶりです。
例えば、次のような選手が評価の対象になることがあります。
- 強豪選手を相手に最後まで積極的に戦った選手
- 不利な状況から粘り強く試合を展開した選手
- 大会を通じて高い競技意欲を示した選手
- 予想を上回る成績を残し、競技を盛り上げた選手
ただし、敢闘賞は必ずしも敗者に贈られる賞ではありません。優勝者や上位入賞者が受賞する場合もあり、評価の仕組みは大会ごとに異なります。
大相撲以外の競技にもある敢闘賞敢闘賞という名称は、大相撲だけに限定されるものではありません。
各種スポーツ大会や競技イベントでも使用されることがあり、主催者や競技団体が独自の基準を設けています。
そのため、すべての競技に共通する全国統一の受賞条件が存在するわけではありません。
大相撲では三賞選考委員会の内規に基づいて選考されますが、ほかの競技では大会規定や主催者の表彰方針によって、評価するポイントが変わります。
重要なのは、敢闘賞を「優勝できなかった選手への慰め」とだけ理解しないことです。
競技における努力、積極性、成績、試合への貢献などを評価する独立した表彰として理解する必要があります。
【大相撲の三賞とは?】敢闘賞・殊勲賞・技能賞の違い
大相撲における三賞とは、本場所で優れた活躍を見せた関脇以下の幕内力士に贈られる3種類の賞の総称です。
具体的には、次の3つがあります。
- 殊勲賞(しゅくんしょう)
- 敢闘賞(かんとうしょう)
- 技能賞(ぎのうしょう)
三賞は1947年(昭和22年)11月場所から始まりました。戦後の相撲の復興と発展を目指して設けられた表彰制度です。
優勝とは別の角度から力士の活躍を評価する点が特徴で、1人の力士が複数の賞を受けることもあります。
三賞それぞれの評価基準3つの賞は、評価するポイントが異なります。
| 賞の名称 | 主な評価対象 | 評価される活躍の例 |
|---|---|---|
| 殊勲賞 | 功績・殊勲 | 横綱や大関を倒す、優勝争いに影響する白星を挙げる |
| 敢闘賞 | 闘志・成績 | 積極的な相撲で好成績を残し、本場所を盛り上げる |
| 技能賞 | 相撲の技術 | 優れた技や巧みな取り口を披露する |
この関係を理解すると、それぞれの賞の違いが明確になります。
敢闘賞と殊勲賞の違い殊勲賞は、どのような相手に勝ったのか、どれほど重要な白星を挙げたのかが評価の中心です。
例えば、平幕力士が横綱を倒す金星や、優勝争いを左右する勝利を挙げた場合、殊勲賞の候補になることがあります。
一方、敢闘賞は、場所を通じた奮闘ぶりと成績を総合的に評価する賞です。
強豪を倒したことも評価材料になりますが、それだけで受賞が決まるわけではありません。
簡単に整理すると、次のようになります。
- 殊勲賞:誰に勝ったのか、どんな功績を残したのか
- 敢闘賞:どれほど奮闘し、優れた成績を残したのか
技能賞は、相撲の技術そのものを評価する賞です。
多彩な決まり手、巧みな攻防、相手の動きに応じた対応力など、技術面で優れた力士が対象になります。
対して敢闘賞は、技術の巧みさだけではなく、積極的な取り口や成績、場所を通じた活躍を評価します。
例えば、優れた技術で相手を圧倒した力士は技能賞の候補になり、力強い相撲で白星を重ね、優勝争いを盛り上げた力士は敢闘賞の候補になりやすいという違いがあります。
なお、3つの賞に公式な上下関係はありません。どれが最も上という制度ではなく、それぞれ異なる観点から力士を評価しています。
【敢闘賞の受賞条件】幕内力士の勝ち越しと選考基準を解説
大相撲の敢闘賞には、対象となる番付と勝ち越しという共通の前提条件があります。
対象は関脇以下の幕内力士三賞の対象となるのは、原則として次の番付に位置する力士です。
- 関脇
- 小結
- 前頭(平幕)
横綱と大関は対象外です。また、十両以下の力士も三賞の対象にはなりません。
これは、三賞が幕内の関脇以下で活躍した力士を表彰する制度だからです。
そのため、横綱や大関が非常に優れた成績を残したとしても、三賞の受賞対象にはなりません。
幕内力士の勝ち越し条件は8勝以上三賞を受賞するための共通条件は、その場所で勝ち越していることです。
大相撲の本場所は原則として15日間行われ、幕内力士は1日1番、合計15番の取組を行います。
通常、15日間を休まず出場した場合の勝ち越し条件は次のとおりです。
| 成績 | 判定 | 意味 |
|---|---|---|
| 7勝8敗 | 負け越し | 負け数が勝ち数を上回る |
| 8勝7敗 | 勝ち越し | 勝ち数が負け数を上回る |
| 9勝6敗 | 勝ち越し | 安定した好成績 |
| 10勝5敗 | 勝ち越し | 二桁勝利 |
| 11勝4敗 | 勝ち越し | 優れた成績 |
| 12勝3敗 | 勝ち越し | 優勝争いに絡む好成績 |
※この一覧は勝ち越しの仕組みを理解するための成績例です。
7勝7敗で千秋楽を迎えた力士は、最後の取組に勝って8勝7敗にすれば勝ち越しとなります。
反対に、最後の取組に負けて7勝8敗になれば負け越しです。
8勝すれば必ず敢闘賞を受賞できる?答えは、受賞できるとは限りません。
8勝7敗は三賞の前提となる勝ち越し条件を満たしていますが、敢闘賞の受賞が保証されるわけではありません。
選考では、勝ち星だけでなく、相撲内容や対戦相手、番付に対する成績の優秀さなどが総合的に考慮されます。
実際には10勝以上の好成績を挙げた力士が候補になることが多く、新入幕で二桁勝利を挙げた力士や、平幕下位から優勝争いに加わった力士なども評価されやすい傾向があります。
ただし、10勝や11勝という固定された受賞ラインが設けられているわけではありません。
ここが、単純な勝ち星ランキングと敢闘賞の大きな違いです。
【三賞選考委員会の仕組み】誰がどのように敢闘賞を決める?
敢闘賞を含む三賞の受賞者は、日本相撲協会の三賞選考委員会によって決定されます。
選考は基本的に本場所の千秋楽に行われ、幕内の最後の取組が始まる前に受賞候補や条件が整理されます。
選考委員会の構成三賞選考委員会の委員は、日本相撲協会の審判委員、維持員、相撲記者クラブ員などから理事長が委嘱します。
内規上、委員は45人以内で、任期は1年です。
また、委員会が成立するには委員の半数以上の出席が必要です。
日刊スポーツが2024年1月場所の選考委員会を取材した際には、合計27人が出席しました。
その内訳は、日本相撲協会関係者6人、溜会関係者3人、記者クラブ員18人でした。
この取材では、まず審判部が候補者を推薦し、その後に委員会で議論を進める流れも紹介されています。
選考から受賞決定までの流れ基本的な仕組みは次のとおりです。
1. 審判部が本場所の成績や相撲内容を踏まえて候補者を検討する。
2. 千秋楽に三賞選考委員会が開催される。
3. 各賞の候補者について委員が意見を交わす。
4. 協議・投票を経て受賞者を決定する。
5. 条件付きの場合は、千秋楽の取組結果によって正式な受賞が確定する。
選考では多数決が用いられ、受賞にふさわしい力士がいない場合には該当者なしとすることもできます。
つまり、勝ち越した力士が自動的に賞を獲得する制度ではありません。
条件付き受賞とは?大相撲の三賞では、千秋楽の取組結果によって受賞が決まる「条件付き受賞」という仕組みがあります。
選考委員会が千秋楽の取組前に開かれるため、その時点では最終成績が確定していない力士がいるからです。
例えば、7勝7敗の力士について、千秋楽に勝って勝ち越した場合に受賞するという条件が設定されることがあります。
また、勝ち越しが確定していても、特定の成績や優勝結果を条件とする場合があります。
2026年9月の秋場所では、殊勲賞候補の高安に対して、千秋楽の勝利と横綱・大の里の優勝という条件が付けられていました。
しかし、高安は千秋楽に敗れて負け越しとなり、殊勲賞は受賞しませんでした。
このように、選考委員会の発表時点で候補に挙がっていることと、最終的な受賞が確定していることは区別する必要があります。
【2026年最新】敢闘賞の歴代受賞者・賞金と秋場所の結果
2026年11月3日時点で、直近の終了した本場所は9月の秋場所です。
2026年秋場所では、敢闘賞に2人が選ばれました。
2026年秋場所の敢闘賞は藤ノ川と美ノ海2026年9月27日、東京・両国国技館で三賞選考委員会が開かれ、次の2人が敢闘賞を受賞しました。
藤ノ川(伊勢ノ海部屋)
新関脇として秋場所に臨んだ藤ノ川は、11勝4敗の好成績を残しました。
3大関全員に勝利し、終盤まで優勝争いに加わったことが評価されています。これで敢闘賞は2回目となりました。
美ノ海(木瀬部屋)
西前頭3枚目の美ノ海は、10勝5敗を記録しました。
2大関を破る活躍を見せ、こちらも2回目の敢闘賞受賞となりました。
一方、殊勲賞と技能賞は該当者なしでした。
条件付きで候補となっていた朝乃山と寿之富士は千秋楽に敗れ、敢闘賞を逃しています。
この結果は、受賞に必要なのが単なる注目度や途中経過ではなく、最終的な成績と選考条件の達成であることを示しています。
敢闘賞の歴代受賞者と記録敢闘賞は1947年11月場所に始まりました。
第1回の受賞者は、小結の輝昇です。
長い歴史の中で、特に多くの受賞歴を持つ力士として知られているのが、元関脇の貴闘力と元関脇の安芸乃島です。
主な歴代記録は次のとおりです。
| 項目 | 力士・記録 | 内容 |
|---|---|---|
| 初代受賞者 | 輝昇 | 1947年11月場所 |
| 最多受賞 | 貴闘力 | 10回 |
| 2位 | 安芸乃島 | 8回 |
| 2026年秋場所の受賞者 | 藤ノ川 | 2回目 |
| 2026年秋場所の受賞者 | 美ノ海 | 2回目 |
貴闘力の10回という記録は、敢闘賞の歴代最多受賞記録として知られています。
安芸乃島も8回受賞しており、長期間にわたって幕内で活躍した力士の代表例です。
また、2026年秋場所の藤ノ川と美ノ海のように、若手や中堅力士が新たな実績を積み重ねることも、この賞の見どころです。
敢闘賞の賞金はいくら?2027年から増額2026年11月3日時点では、敢闘賞の賞金は1回200万円です。
殊勲賞と技能賞も同額で、1つの賞を受賞するごとに200万円が支給される仕組みです。
ただし、2026年7月30日に日本相撲協会が理事会で発表した賞金改定により、2027年初場所から三賞の賞金が増額されることになりました。
| 適用時期 | 三賞の賞金 | 変更内容 |
|---|---|---|
| 2026年中 | 200万円 | 従来の金額 |
| 2027年初場所から | 300万円 | 100万円増額 |
今回の改定は1994年以来、33年ぶりの賞金改定にあたります。
幕内優勝賞金も従来の1,000万円から2,000万円へ倍増するなど、力士の待遇改善を目的とした変更です。
したがって、2026年の敢闘賞については200万円、2027年初場所以降については300万円と理解するのが正確です。
2026年11月場所の敢闘賞はいつ決まる?2026年11月場所(九州場所)は、11月8日から福岡国際センターで開催されます。
11月3日時点では場所の開幕前であり、11月場所の敢闘賞受賞者はまだ決まっていません。
今後は、序盤からの勝ち星だけでなく、上位力士との対戦成績、優勝争いへの関与、千秋楽までの相撲内容などが注目点になります。
【プロの結論】敢闘賞の本質は勝ち星と相撲内容の両方にある
敢闘賞を理解するうえで、最も大切なのは「勝ち越せば受賞できる」という単純な制度ではないことです。
大相撲の三賞には共通の対象条件がありますが、その条件を満たした力士の中から、実際の成績や競技内容を踏まえて受賞者が選ばれます。
特に敢闘賞では、次の3つの視点が重要です。
1. 番付に対してどれだけ優れた成績を残したか
前頭下位の力士が上位陣を相手に白星を重ね、優勝争いに食い込むような活躍は、敢闘賞の評価につながりやすい要素です。
2. 本場所を通じてどのような相撲を見せたか
一時的な好成績だけでなく、積極的な取り口や粘り強さなど、15日間を通じた競技内容も重要です。
3. 選考委員会の条件を満たしているか
勝ち越しは前提条件です。条件付き受賞の場合には、千秋楽の結果も含めて最終的な判断が行われます。
2026年秋場所の藤ノ川と美ノ海の受賞は、こうした評価の実例です。
藤ノ川は新関脇として11勝を挙げ、3大関全員を破りました。美ノ海も前頭3枚目で10勝を記録し、2大関を倒しています。
単に勝ち星の数だけを見るのではなく、どのような番付で、誰を相手に、どのような相撲を取ったのかを合わせて見ると、敢闘賞の意味がより深く理解できます。
また、2027年から賞金が300万円に引き上げられることも、三賞という表彰制度の存在感を高める動きです。
【敢闘賞の意味と受賞条件】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:敢闘賞とは簡単にいうと何ですか?
A1:競技で勇敢に戦い、優れた健闘を見せた選手に贈られる賞です。大相撲では三賞の一つで、関脇以下の幕内力士の中から、敢闘精神と成績が優れた力士が選ばれます。
Q2:大相撲の敢闘賞は何勝すれば受賞できますか?
A2:まず勝ち越しが必要です。15日間すべて出場した場合は8勝以上が条件になります。ただし、8勝すれば必ず受賞できるわけではなく、相撲内容や成績などを踏まえて選考委員会が決定します。
Q3:横綱や大関も敢闘賞を受賞できますか?
A3:大相撲の三賞では、横綱と大関は対象外です。原則として関脇、小結、前頭の幕内力士が対象となります。
Q4:敢闘賞と殊勲賞・技能賞の違いは何ですか?
A4:殊勲賞は横綱・大関を倒すなどの功績、敢闘賞は闘志と成績、技能賞は相撲の技術を評価します。3つの賞に上下関係はありません。
Q5:2026年の敢闘賞の賞金はいくらですか?
A5:2026年中は200万円です。日本相撲協会の発表により、2027年初場所からは300万円に増額されます。
敢闘賞とは、競技で果敢に戦い、優れた健闘を見せた選手をたたえる賞です。
大相撲では殊勲賞・技能賞と並ぶ三賞の一つで、原則として関脇以下の幕内力士が対象となります。受賞には勝ち越しが必要ですが、勝ち星だけでなく、相撲内容や本場所での活躍を踏まえて選考されます。
2026年秋場所では藤ノ川と美ノ海が受賞し、両者とも2回目の敢闘賞となりました。また、2027年初場所から賞金が200万円から300万円に増額されることも決まっています。
敢闘賞を観戦の楽しみにするなら、単に受賞者の名前を覚えるだけでなく、番付、勝ち越し、対戦相手、相撲内容、選考条件の5つを確認することがポイントです。
優勝力士だけでは見えてこない、力士一人ひとりの奮闘や成長を評価する。それこそが、長い歴史を持つ敢闘賞の大きな意義です。
主な取材・参照資料
- 精選版 日本国語大辞典(コトバンク)
- 日刊スポーツ「三賞はどう決めた?初場所の三賞選考委員会を詳報」(2024年)
- デイリースポーツ「藤ノ川、美ノ海が秋場所敢闘賞」(2026年9月27日)
- 共同通信「大の里が復活、6度目の優勝」(2026年9月27日)
- 日刊スポーツ「優勝賞金2倍!33年ぶり改定…三賞も100万円増」(2026年7月30日)