警察官にも肖像権はある。これは、最初に明確にしておきたい法律上のポイントだ。
警察官は国家公務員または地方公務員として職務を遂行しているが、公務員になったからといって、個人としての人格的利益を失うわけではない。
ただし、一般人の私生活を撮影する場合と、警察官が公道で職務質問や交通取締りをしている場面を撮影する場合では、法的な評価が異なる。
肖像権は憲法13条を根拠とする人格的利益日本国憲法第13条は、すべての国民が個人として尊重されることを定めている。
肖像権という言葉自体が憲法に明記されているわけではないが、最高裁判所は、この条文を根拠として、本人の承諾なく容貌や姿態をみだりに撮影されない自由を認めてきた。
この考え方は、警察官にも基本的に当てはまる。公務中であっても、本人の顔や姿をどのような方法で撮影・公開してもよいということにはならない。
公務中の警察官は撮影を受け入れる範囲が広い一方、警察官には一般の私人とは異なる立場がある。
警察官の職務には、犯罪の予防、交通取締り、職務質問、逮捕など、公共の安全や市民の権利に直接関わる活動が含まれる。
そのため、次のような撮影には公共性が認められやすい。
- 職務質問の開始から終了までの経緯を記録する。
- 交通違反の取締りについて警察官の説明を記録する。
- 不適切と思われる対応について証拠を残す。
- 警察活動の実態を報道・検証する。
- 公務の適正性について社会に問題提起する。
重要なのは、警察官の肖像権が消滅するのではなく、公務の公共性によって、撮影を受忍すべき範囲が広がる場合があるという点だ。
したがって、「警察官は公務員だから肖像権がない」という説明も、「警察官は肖像権があるから撮影を禁止できる」という説明も、どちらも正確ではない。
【判例で徹底検証】京都府学連事件と平成17年11月10日最高裁判決

警察官肖像権を理解するには、二つの最高裁判例を押さえておきたい。
一つは、警察官による撮影と個人の権利の関係を示した京都府学連事件。もう一つは、無断撮影の違法性を判断する具体的な基準を示した平成17年11月10日判決である。
① 京都府学連事件(最大判昭和44年12月24日)京都府学連事件は、1962年6月21日に行われた学生集団のデモ行進をめぐる刑事事件である。
京都府警の警察官は、集団行進の状況や道路交通に関する許可条件への違反状況を確認するため、参加者らを写真撮影した。
撮影された学生は、本人の同意や裁判官の令状がない撮影は憲法13条・35条に違反すると主張した。
これに対し、最高裁大法廷は昭和44年12月24日、次の考え方を示した。
- 何人も、承諾なしに容貌や姿態をみだりに撮影されない自由を有する。
- 警察官が正当な理由なく個人を撮影することは、憲法13条の趣旨に反する。
- ただし、犯罪捜査上の必要性などがある場合には、一定の条件のもとで撮影が認められる。
最高裁が示した無令状撮影の主な条件は、次の3点だ。
1. 現に犯罪が行われている、または犯罪が行われた直後と認められること。
2. 証拠を保全する必要性と緊急性があること。
3. 撮影方法が一般的に許容される限度を超えない相当なものであること。
本件では、違法な行進状況を記録する必要性や緊急性が認められ、撮影は適法な職務執行行為と判断された。
この判例で特に重要なのは、肖像に関する利益が警察権の行使に対しても保護されると明らかにされたことだ。
ただし、この事件は警察官が市民を撮影したケースであり、市民が警察官を撮影する行為の適法性を直接判断した判例ではない。両者を混同してはいけない。
② 最判平成17年11月10日(法廷内撮影事件)こちらは、無断撮影と肖像権侵害の判断基準を理解するうえで重要な判例である。
事件の舞台は、社会的関心を集めた和歌山毒物カレー事件の刑事手続だった。
写真週刊誌のカメラマンが、被疑者の法廷内での姿を裁判所の許可なく隠し撮りし、週刊誌に掲載した。
撮影された人物は手錠をされ、腰縄を付けられた状態だった。
最高裁第一小法廷は平成17年11月10日、無断撮影が不法行為上違法となるかについて、複数の事情を総合的に考慮する判断基準を示した。
具体的には、以下の要素である。
- 被撮影者の社会的地位
- 撮影された人の活動内容
- 撮影場所
- 撮影目的
- 撮影態様
- 撮影の必要性
これらを総合的に検討し、人格的利益の侵害が社会生活上の受忍限度を超えているかを判断する。
この判例では、法廷が傍聴人に公開された場所であっても、撮影が予想される状況ではなかったこと、隠し撮りだったこと、身体拘束された姿を撮影する必要性が乏しかったことなどが重視された。
つまり、公共の場所にいるからといって、無断撮影がすべて許されるわけではない。
③ 二つの判例と関連する法制度の関係それぞれの判例や法律が、どのような問題を扱っているのかを整理すると次のようになる。
この関係から分かるのは、警察官肖像権には単独の法律だけで答えが出るわけではないということだ。
憲法上の人格的利益、表現の自由、民法上の不法行為責任などを組み合わせて判断する必要がある。
【職務質問中の警察官の撮影は違法か】撮影場所と方法で判断が変わる
警察官の撮影をめぐって、特に関心が高いのが職務質問中の動画撮影だ。
警察官から突然声を掛けられ、質問の理由や対応に疑問を感じた場合、後から経緯を確認できるようにスマートフォンで記録したいと考えるのは自然なことだ。
法律上、職務質問中の警察官を撮影する行為そのものを一律に禁止する規定はない。
ただし、撮影する側にも一定の配慮が必要になる。
職務質問は警察官職務執行法2条に基づく警察官職務執行法2条は、異常な挙動や周囲の事情などから合理的に判断して、犯罪を犯した、または犯そうとしていると疑う相当な理由がある人などを停止させ、質問できると定めている。
一方、同条3項では、刑事訴訟法に基づく場合を除き、職務質問を受ける人を身柄拘束したり、本人の意思に反して警察署などに連行したり、回答を強制したりすることはできないとしている。
したがって、職務質問が行われていることと、撮影することが違法であることは別問題だ。
撮影場所による違い撮影場所は、肖像権侵害を判断するうえで重要な要素になる。
公道・駅前・公共の広場
公道などで警察官が通常の職務を行っている場面は、公共性が高い。
職務の内容を記録する目的で、一定の距離を保って撮影する場合は、撮影の必要性や表現の自由が考慮されやすい。
警察署・交番の内部
警察署や交番であっても、すべての場所が自由に撮影できるとは限らない。
施設管理権、警備上の必要性、他の相談者のプライバシー、捜査情報などが関係するためだ。
撮影場所への立入りが認められていることと、その場所で自由に撮影できることは同じではない。
住宅・事務所などの私的空間
警察官の職務中であっても、私的な空間での撮影には慎重さが求められる。
本人や家族の生活状況、住所、室内の様子などが映り込む場合は、肖像権だけでなくプライバシー権の問題も生じる。
撮影方法によっても評価が変わる同じ職務質問を記録する場合でも、撮影態様には大きな違いがある。
| 撮影方法 | 法的な評価で考慮される点 |
|---|---|
| 適切な距離から全体を撮影 | 記録目的・必要性・周囲への影響 |
| 警察官の顔を至近距離で撮影 | 撮影態様の相当性 |
| 警察官の動きを妨げながら撮影 | 職務への具体的な支障 |
| 私的な会話や個人情報まで録音 | プライバシーや情報の取扱い |
| 威圧的な態様で撮影を続ける | 撮影目的や方法の相当性 |
ここで大切なのは、顔をアップで撮影したら必ず違法、遠くから撮影したら必ず適法という単純な基準ではないことだ。
最高裁の判断基準に照らし、撮影目的や必要性、撮影態様などを総合的に評価する必要がある。
【警察官の動画撮影とSNS投稿】YouTubeやXへの公開は別問題
スマートフォンで撮影する行為と、撮影した映像をインターネットに公開する行為は、法律上分けて考えなければならない。
撮影が適法だったとしても、その動画を公開する行為まで自動的に適法になるわけではない。
撮影と公開では侵害される利益が異なる撮影した動画を端末内に保存するだけなら、映像を閲覧できる人は基本的に撮影者本人に限られる。
しかし、YouTubeやXなどに公開すると、警察官の顔や声、氏名、所属、勤務場所などが不特定多数に知られる可能性がある。
加えて、動画が拡散されれば、本人の意図しない形で長期間残り続けることもある。
そのため、公開の段階では、次の点が問題になる。
- 公開する目的は公益性のあるものか。
- 警察官の職務内容を伝えるために顔の公開が必要か。
- 動画の編集によって事実関係が歪められていないか。
- 警察官の私生活に関する情報が含まれていないか。
- 第三者や職務質問を受けている人が特定されないか。
- 公開によって不必要な嫌がらせや生活上の支障が発生しないか。
警察活動への批判や検証には社会的な意義がある。一方、個人への攻撃を目的とする公開は、表現の自由だけで正当化できるとは限らない。
2022年10月28日の東京地裁判決が示したSNS公開のリスク動画公開の問題を考えるうえで参考になるのが、東京地方裁判所の令和4年10月28日判決だ。
この事件では、警察官に逮捕される状況を撮影された人物の動画が、本人の承諾なくYouTubeに投稿された。
動画には、路上で警察官に制圧され、手錠を掛けられるなど、逮捕時の状況が映っていた。
裁判所は、動画の内容が社会通念上の受忍限度を超えて本人を侮辱するものと判断し、肖像権や名誉権の侵害を認めた。慰謝料として認められた金額は30万円だった。
ここで注意したいのは、この事件で肖像権を侵害されたと判断されたのは警察官ではなく、逮捕された人物だということだ。
つまり、この判決は「警察官を撮影したら30万円の賠償になる」という意味ではない。
むしろ、警察官の活動を記録する動画であっても、同時に映っている市民の肖像権や名誉を侵害する可能性があることを示している。
SNSに投稿する際に注意したい編集・公開方法トラブルを避けるためには、撮影した動画をそのまま公開するのではなく、公開の必要性を改めて検討することが望ましい。
特に注意したいのは、次の4点だ。
1. 無関係な第三者にはモザイクを入れる
通行人、職務質問を受けている人、未成年者、近隣住民など、問題の検証に必要のない人物は、顔や個人情報を隠す方法が考えられる。
2. 警察官の個人情報を必要以上に公開しない
公務中の対応を検証することと、警察官の自宅や家族、私用の連絡先などを公開することは別である。
3. 動画を恣意的に編集しない
発言の一部だけを切り取ると、実際のやり取りと異なる印象を与える可能性がある。
元動画を保管し、編集した部分がある場合は、編集の有無や内容が分かるようにすることが望ましい。
4. タイトルやサムネイルで断定しない
「警察官が犯罪をした」「違法逮捕が確定」など、司法判断がない段階で犯罪行為を断定する表現は、名誉毀損の問題を招く可能性がある。
公益目的の批判であっても、事実関係と表現の相当性は重要だ。
【警察官を撮影すると逮捕される?】肖像権侵害と刑事責任の違い
警察官を撮影した人が逮捕されたという話を見聞きすると、撮影そのものが犯罪になるのではないかと不安になる人もいる。
しかし、ここでは民事上の肖像権侵害と、刑事事件としての犯罪成立を区別する必要がある。
撮影しただけで公務執行妨害罪になるわけではない刑法95条の公務執行妨害罪は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行または脅迫を加えた場合に成立し得る犯罪だ。
同条の法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となっている。
つまり、スマートフォンを使って警察官を撮影する行為と、警察官に暴行や脅迫を加える行為は同じではない。
例えば、適切な距離から職務質問の状況を撮影しているだけなら、その事実だけで公務執行妨害罪が成立するとはいえない。
一方、撮影中に警察官を押す、殴る、脅すなどの行為をすれば、撮影とは別に刑事責任が問題になる。
撮影する権利があると考えていても、暴力や脅迫まで正当化されるわけではない。
SNS投稿では名誉毀損罪・侮辱罪にも注意警察官に対する批判的な動画投稿で、別の法的問題となるのが名誉毀損や侮辱だ。
刑法230条は、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損する行為を処罰対象としている。
一方、231条は、具体的な事実を示さなくても、公然と人を侮辱する行為を対象としている。
ただし、名誉毀損については、公共の利害に関する事実であり、専ら公益を図る目的があり、真実であることが証明された場合などに、刑法230条の2による特例がある。
警察官の職務執行に関する問題提起には公益性が認められる可能性があるが、何を投稿しても免責されるという意味ではない。
特に、次のような行為は慎重に考える必要がある。
- 根拠のない犯罪行為を警察官に結び付ける。
- 個人を特定して執拗に攻撃する。
- 侮辱的な言葉を繰り返し投稿する。
- 動画を加工し、実際にはなかった発言をしたように見せる。
- 私生活上の情報を不必要に公開する。
| 行為 | 主な法的問題 |
|---|---|
| 公道で警察官を撮影 | 撮影目的・態様などによる個別判断 |
| 職務質問の会話を録音 | 録音目的や内容、公開方法など |
| 警察官を撮影してSNS投稿 | 肖像権・名誉権・プライバシー権 |
| 警察官を押す・殴る | 暴行、傷害、公務執行妨害など |
| 警察官を脅す | 脅迫、公務執行妨害など |
| 虚偽の犯罪事実を拡散 | 名誉毀損など |
大切なのは、逮捕の可能性を撮影の有無だけで判断しないことだ。
実際の逮捕には、犯罪の嫌疑や逮捕の必要性など、刑事訴訟法上の要件が関係する。撮影したという理由だけで、必ず逮捕されるわけではない。
【2026年最新情報】警察官のウェアラブルカメラ導入で何が変わる?
2026年の警察活動をめぐる大きな動きが、警察官によるウェアラブルカメラの活用だ。
これは警察官が市民を撮影するという問題だけでなく、警察官自身の職務執行を客観的に記録する仕組みとしても注目される。
2025年から6都府県で試行警察庁は2025年7月24日、警察活動におけるウェアラブルカメラの活用について、モデル事業の実施を発表した。
試行の対象は次の6都府県だった。
- 警視庁
- 大阪府警察
- 福岡県警察
- 愛知県警察
- 新潟県警察
- 高知県警察
地域警察活動では2025年9月から11月までの3か月間、交通取締り活動では2025年9月から2026年3月までの6か月間、試行が行われた。
2026年8月28日、警察庁が試行結果を公表警察庁は2026年8月28日、試行結果を公表した。
公表資料では、主に次のような活用事例が紹介されている。
① 任意同行の状況確認
薬物事件の被疑者が任意同行の任意性を否定したケースで、同行を求めた際の状況を記録した映像を事後的に確認した。
② 交通取締りの適正性確認
交通取締りの状況を記録した映像を警察幹部が定期的に視聴し、職務執行の適正性を確認した。
③ 職務質問の教養資料
職務質問をきっかけとして薬物事件の検挙に至った映像を、職務質問の手法を学ぶための資料として活用した。
④ 公務執行妨害事件の証拠保全
警察官に対する加害状況が記録された映像を、刑事事件の証拠として利用した。
警察庁は試行で有用性が認められたとして、今後、実装に向けた予算確保や運用ルールの整備を進める方針を示した。
警察官の撮影にもプライバシー保護のルールがあるウェアラブルカメラの運用要領案では、撮影についても一定の制限が設けられている。
例えば、地域警察のモデル事業では、次のようなルールが示されていた。
- 屋外や不特定多数が出入りする場所での職務執行を撮影する。
- 住宅や事務所など、不特定多数の出入りが想定されない場所では撮影を一時停止する。
- 交通取締り中に交通切符などの書類を作成する場合も撮影を停止する。
- 撮影によって職務遂行に支障が生じる場合は一時停止する。
- 被撮影者のプライバシーを不当に侵害しないよう配慮する。
- 撮影に疑問や拒否の意思が示された場合は、目的や必要性を説明するよう努める。
加えて、同モデル事業の映像ファイルについては、原則として作成日から90日間保存する仕組みが定められていた。
この90日間という期間は当該モデル事業の運用ルールであり、全国の警察活動に共通する一律の保存期間ではない。
また、2026年11月現在、全国の警察官にウェアラブルカメラが一律に配備済みという意味でもない。警察庁が示したのは、実装に向けた準備を進める方針である。
ウェアラブルカメラが示す今後の方向性この動きには、警察活動をめぐる重要な意味がある。
従来、職務質問や交通取締りの現場では、警察官と市民の説明が食い違うことがあった。
映像が残されれば、警察官の対応だけでなく、市民側の行動や現場の状況も客観的に検証できる。
つまり、カメラは警察官を監視するためだけの道具ではない。警察官を不当な主張から守る証拠にもなり得る。
一方、映像には市民の顔、会話、個人情報なども記録される。撮影の必要性とプライバシー保護をどう両立させるかは、今後の制度設計における重要な課題となる。
【プロの結論】警察官の撮影でトラブルを避ける5つの実務ポイント
ここまでの判例と法律、2026年の警察庁の動きを踏まえると、警察官の撮影では、撮影の必要性と公開の必要性を分けて考えることが最も重要だ。
実際に職務質問や交通取締りを撮影する場合は、次の5点を意識したい。
1. 公務の状況を記録する目的を明確にする
警察官の対応を後から確認するためなのか、報道や公益目的で公開するためなのかを区別する。
2. 適切な距離を保つ
撮影のために警察官の進路を妨げたり、身体に接触したりしない。安全な距離を確保する。
3. 元動画を保存する
トラブルが発生した場合に備え、撮影日時や前後の会話が分かる元データを保管する。編集した動画だけを証拠として残さないことが望ましい。
4. SNS公開時には第三者の権利を確認する
警察官だけでなく、職務質問を受けた人、通行人、未成年者などのプライバシーにも配慮する。
5. 法的な争いが生じたら専門家に相談する
肖像権侵害や名誉毀損、撮影をめぐる警察とのトラブルが発生した場合は、動画を削除する前に弁護士へ相談することも検討したい。
撮影する人・公開する人の判断基準| 判断基準 | 比較的適切な対応 | 避けたい対応 |
|---|---|---|
| 撮影目的 | 公務の記録・検証 | 個人への嫌がらせ |
| 撮影場所 | 公道などで安全に撮影 | 立入制限場所への無断侵入 |
| 撮影方法 | 必要な範囲を記録 | 威圧・妨害を伴う撮影 |
| 動画編集 | 前後関係を維持 | 意図的な切り取り |
| SNS公開 | 公益性と必要性を検討 | 個人情報の無制限な拡散 |
警察官の職務を記録したい人にとって、撮影は重要な手段になり得る。一方、撮影した映像を公開する人には、撮影時とは別の責任が生じる。
撮影する自由と、他人の肖像を自由に公開できる権利は同じではない。
この区別を理解することが、警察官肖像権をめぐるトラブルを避ける基本となる。
【警察官肖像権】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:警察官には肖像権がないというのは本当ですか?
警察官にも肖像に関する人格的利益がある。公務中だからといって肖像権がなくなるわけではない。ただし、公務の公共性や撮影の必要性などから、一般人の私生活を撮影する場合よりも撮影が認められやすい場面がある。
Q2:職務質問中の警察官をスマートフォンで撮影しても違法ではありませんか?
撮影したという事実だけで直ちに違法になるわけではない。公道などで職務の状況を記録する場合は、表現の自由や公共性が考慮される。ただし、撮影態様や場所、目的によって判断は変わる。
Q3:警察官の顔が映った動画をYouTubeに投稿してもよいですか?
一律に禁止されてはいないが、撮影と公開は別々に判断される。公益性、撮影の必要性、編集方法、公開によるプライバシー侵害などを総合的に検討する必要がある。
Q4:警察官を撮影しただけで逮捕されることはありますか?
撮影だけを理由に直ちに逮捕されるわけではない。ただし、撮影に伴って暴行や脅迫などを行えば、公務執行妨害罪などが成立する可能性がある。撮影行為と、それ以外の行為を分けて考えることが重要だ。
Q5:警察官から撮影をやめるよう求められたら、必ず従わなければなりませんか?
撮影を求める側にも、撮影を一律に禁止できる側にも無制限の権限があるわけではない。施設管理上の制限や具体的な職務上の支障など、状況によって判断が変わる。現場で対立を激化させず、撮影制限の理由を確認し、必要なら後から弁護士に相談する方法もある。
Q6:警察官の動画を証拠として使うことはできますか?
撮影した映像は、職務質問や交通取締りなどの状況を確認する資料になり得る。ただし、証拠として採用されるか、その証明力がどの程度あるかは、撮影状況や映像の真正性、前後関係などによって判断される。
警察官にも肖像権はある。しかし、警察官が公務を遂行している姿を撮影することが、一律に禁止されているわけではない。
京都府学連事件では、憲法13条に基づく撮影されない自由が確認され、平成17年11月10日の最高裁判決では、撮影場所や目的、態様、必要性などを総合的に考慮する判断基準が示された。
この二つの判例から分かるのは、肖像権と表現の自由は、どちらか一方が常に優先するものではないということだ。
さらに2026年には、警察庁がウェアラブルカメラの試行結果を公表し、警察活動の客観的な記録と適正性の検証に向けた動きが進んでいる。
今後は、市民による警察官の撮影だけでなく、警察官による市民の撮影や映像の保存・管理についても、透明性とプライバシー保護の両立が求められる。
警察官を撮影すること自体を過度に恐れる必要はない。しかし、撮影できることと、何でも公開できることは違う。
撮影目的、場所、方法、公開範囲を冷静に判断すること。それが、2026年以降の警察官肖像権を考えるうえでの基本的な判断基準となる。