「偽の警察官」は、殺人事件の犯人が警察官になりすまして目撃者の自宅を訪れ、事件について何か知っていないか探りを入れるという、日本で知られる都市伝説だ。警察官を名乗る人物が、実は自分の犯した事件の犯人だったという意外な結末が、多くの人に恐怖を与えてきた。
この話はテレビ番組でも取り上げられ、女優の室井滋にまつわる怖い話として広まった経緯がある。しかし、2026年2月に室井本人が公開したエッセイによって、実際の出どころと伝播の経緯が改めて明らかになった。本人の体験談ではなく、知人から聞いた話だったというのが要点だ。
【偽の警察官とは?】意味と都市伝説の怖いストーリーを解説

偽の警察官とは、一般的に、犯罪を犯した人物が本物の警察官を装い、事件の目撃者や関係者に接近するという都市伝説を指す。
単に警察官の制服を着た不審者が登場する話ではない。物語の核心は、事件を捜査する側だと思われていた人物が、実は捜査されるべき犯人だったという立場の逆転にある。
警察官は本来、住民を犯罪から守る存在だ。そのため、制服姿で訪問してきた人物に対して、一般の人は一定の信頼を寄せやすい。この信頼関係が物語の恐怖を成立させている。
都市伝説の基本的なあらすじ広く知られているバージョンでは、ある女性が仕事帰りに黒い服を着た不審な男を目撃するところから始まる。
翌日、女性はテレビのニュースで、自宅近くで殺人事件が発生したことを知る。事件の報道を見て不安を感じていたところ、自宅に制服姿の警察官が訪ねてくる。
警察官は近所で殺人事件が起きたことを説明し、何か心当たりがないかと女性に尋ねる。女性は特に何も知らないと答えるが、警察官は翌日以降も同じような時間に訪問する。
女性は、事件について何か思い出したら話そうと考える。しかし、ある日、テレビで事件の犯人が逮捕されたというニュースを見て驚愕する。
逮捕された人物は、何度も自宅に聞き込みに来ていた警察官その人だったのだ。
つまり、犯人は警察官になりすまし、自分の顔を覚えている人物がいないか確認していたという筋書きである。女性が目撃情報を話していれば、口封じのために危害を加えられていたかもしれないという余韻が、物語の恐怖をさらに強めている。
室井滋が紹介した元のエピソードとは異なる部分もあるここで押さえておきたいのが、インターネット上で広く流通しているあらすじと、室井滋が2026年に紹介した元のエピソードには違いがあることだ。
室井のエッセイに登場する女性K子さんは、深夜に黒い服の男が走り去る場面を目撃したのではない。マンションのエントランスで見知らぬ男性とすれ違っていた。
また、元の話では警察官の訪問は一度であり、毎日繰り返し訪ねてくる展開ではない。殺人事件が発生したマンションでの出来事を軸に、目撃した男性と訪問してきた警官の正体が結び付く構成になっている。
このように、伝わる過程で設定や細部が変化していることも、都市伝説としての特徴だ。
【元ネタの真相】室井滋の実体験ではなかった!2026年に本人が明かした出どころ
2003年のエッセイ「あなたが怖い」に掲載偽の警察官の元ネタをたどるうえで重要なのが、女優・室井滋のエッセイ集『あなたが怖い(すっぴん魂コン5)』だ。
室井は2003年に刊行された同書の「恒例、夏の終わりの怖いもの話」というエッセイで、警察官になりすました殺人犯のエピソードを紹介している。
ただし、これは室井本人が遭遇した事件ではない。撮影現場で怖い話をしていた際、友人のスタイリストが語った、その幼なじみK子さんの体験談だった。
室井の2026年2月2日公開のエッセイによると、スタイリストの幼なじみは当時、都心のマンションで一人暮らしをしていた。
ある日、仕事を早く終えて帰宅したK子さんは、マンションのエントランスで見知らぬ男性とすれ違う。その翌日、自分の住むマンションの別の部屋で若い女性が殺害されたことをニュースで知る。
事件から約3日後、K子さんの自宅に制服姿の警察官が訪問する。警察官は事件当日の帰宅時間などを尋ね、何か思い出したことがあれば連絡してほしいと告げて帰っていった。
K子さんは、そのときエントランスですれ違った男性のことを思い出しかけたものの、顔をはっきり覚えていなかったため、警察官には話さなかった。
さらに約3日後、ニュースで事件の犯人が逮捕されたと知る。画面に映っていたのは、先日自宅を訪れた制服姿の警察官だった。
そこでK子さんは、事件当日にすれ違った男性と警察官が同一人物だったのではないかと考える。犯人が自分に顔を見られた可能性を気にして、警察官になりすまして確認に来たのではないかという恐怖に襲われたという。
実話として語られたものが、なぜ室井滋の体験談になったのかこの話が広まった背景には、伝聞の途中で人物関係が省略されたことがある。
本来の関係は「室井滋が知人のスタイリストから聞いた、その幼なじみの話」だった。しかし、人から人へ伝わるうちに、長い説明が省略され、「室井滋が経験した怖い話」という形に変化していった。
室井本人も2026年のエッセイで、この変化について説明している。本人の説明によれば、話が強烈だったため、伝達の過程で主人公が室井自身に置き換わってしまったという。
ここには都市伝説が生まれる典型的な仕組みが表れている。話の内容そのものが変わらなくても、誰が経験したのかという情報が変わるだけで、実話らしさや信憑性が大きく変化するのだ。
【テレビ番組で話題に】ダウンタウンDXから2019年の真相告白まで
今田耕司が紹介したことで話が広まる室井滋の2026年のエッセイによると、テレビ業界でこの話が広く知られるきっかけになったのは、日本テレビ系列のバラエティ番組『ダウンタウンDX』だった。
番組の怖い話を扱うコーナーで、今田耕司が室井のエピソードとして紹介したことにより、話が芸能界の中で広まっていったという。
その後、松本人志や今田耕司を通じて話題が広がり、室井自身の身に起きた出来事として受け取られるようになった。
室井はフジテレビの『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングに出演した際にも、周囲から無事だったことを心配されたという。本人にとっては、なぜそこまで心配されているのか分からない状況だった。
つまり、『笑っていいとも!』で室井が自身の恐怖体験として語ったことが発端だったという説明とは異なり、2026年の本人の説明では、先に話がテレビ業界で広まり、その後に本人が周囲から心配されるようになったという流れだ。
2019年9月6日『ダウンタウンなう』で改めて真相を説明この都市伝説の出どころがテレビで改めて注目されたのが、2019年9月6日放送のフジテレビ『ダウンタウンなう』だ。
ゲスト出演した室井は、松本人志らとのトークの中で、例の警察官の話題に触れた。
そこで明かしたのが、あの出来事は自分の体験ではなく、知り合いのスタイリストの友人に関する話だったという事実である。
松本が各方面で話していたエピソードの真相が明らかになり、番組でも意外な展開として取り上げられた。
2026年の本人エッセイでさらに詳しい経緯が判明2026年2月2日、主婦の友社の公式メディア「TomoNote」に掲載された室井のエッセイ「ああ、私に絡みつく都市伝説」の巻では、これまでの経緯がさらに詳しく説明された。
単に「自分の話ではない」と訂正するだけでなく、元のエピソードを誰から聞いたのか、なぜ誤解が生まれたのか、どのようなテレビ番組を通じて広まったのかまで記されている。
2026年時点で、偽の警察官の由来を確認するうえで、最も重要な一次資料の一つとなっている。
なお、一部の百科事典系資料には『USO!?ジャパン』の「目撃者」や『やりすぎコージー』の「やりすぎ都市伝説」における「エレベーターの男」などの再現ドラマ化も記載されている。また、『新あなたの知らない世界』の「覗くな」も関連作品として紹介されている。
日本テレビ公式の商品情報と国立国会図書館の映像資料目録からは、2011年放送の『新あなたの知らない世界』と「覗くな」という収録作品の存在を確認できる。ただし、公式の商品説明だけでは、その作品が偽の警察官の都市伝説を直接再現したものかまでは確定できない。
【年代別に整理】偽の警察官に関係する人物・番組・資料の相関表
偽の警察官をめぐる情報は、元のエピソード、テレビでの紹介、本人による訂正、都市伝説としての派生作品が混在している。関係する人物と資料を時系列で整理すると、話がどのように変化したのかが分かりやすい。
| 時期 | 人物・媒体 | 内容・関係 | 確認できる事実 |
|---|---|---|---|
| 2003年 | 室井滋『あなたが怖い』 | スタイリストの幼なじみK子さんの話をエッセイ化 | 本人の2026年の説明で確認 |
| エッセイ刊行後 | 『ダウンタウンDX』・今田耕司 | 室井本人の体験談として紹介され、誤解が拡大 | 室井の2026年の回想で確認 |
| その後 | 『笑っていいとも!』 | 室井が出演した際、周囲から無事を心配された | 室井の2026年の回想で確認 |
| 2011年 | 『新あなたの知らない世界』 | オムニバスドラマ「覗くな」を収録 | 日本テレビ公式商品情報・国立国会図書館の目録で作品の存在を確認 |
| 2019年9月6日 | 『ダウンタウンなう』・室井滋 | 自分の体験談ではないと説明 | 番組紹介記事で確認 |
| 2026年2月2日 | 主婦の友社「TomoNote」・室井滋 | 元の話の出どころと拡散の経緯を詳しく説明 | 本人執筆のエッセイで確認 |
| 1978年8月 | 『現代の眼』 | 「制服警官の女子大生暴行殺人」という実事件を扱った記事が掲載 | 国立国会図書館の書誌情報で確認。都市伝説との直接の関係は未確認 |
この表から分かるのは、都市伝説の拡散と、元の話の成立は別の出来事だということだ。
室井のエッセイが元の話を世に伝え、テレビ番組がその内容を広く紹介し、人物関係の誤解がさらに話を印象的なものにした。2026年の本人による説明は、この一連の流れを理解するための重要な手掛かりとなっている。
【偽の警察官は実在する?】都市伝説の真偽と1978年の実事件を検証
都市伝説の内容を裏付ける公的記録はあるのか偽の警察官という話が、語られているとおりの事件として実際に起きたのかについては、慎重に区別する必要がある。
室井の2026年のエッセイでは、K子さんの幼なじみに実際に起きた話として紹介されている。しかし、これは室井が知人のスタイリストから聞いた伝聞であり、本人が事件現場を確認したわけではない。
また、K子さんの身元や事件の発生場所、具体的な事件番号などを照合できる警察発表や裁判記録は、公開資料から確認できない。
したがって、エピソードが人から人へ伝えられた経緯は確認できるものの、殺人事件や偽警察官による訪問が実際に発生したことまで、公的資料によって証明されたわけではない。
1978年の制服警官女子大生殺人事件との関係この都市伝説を調べると、1978年に発生した制服警官女子大生殺人事件との関係を指摘する情報も見つかる。
この事件は、制服を着た本物の警察官が女子大生を殺害し、事件の第一発見者を装ったという実際の犯罪として知られている。
国立国会図書館には、山崎昌夫による「制服警官の女子大生暴行殺人」という記事が、1978年8月刊行の雑誌『現代の眼』19巻8号に掲載された記録が残っている。
ただし、ここで注意したいのは、実事件と都市伝説の筋書きは同じではないという点だ。
1978年の事件は本物の警察官による犯罪であり、偽の警察官の都市伝説は、殺人犯が警察官を装って目撃者を訪問する話である。
両者には警察官と犯罪者という立場の逆転に似た要素があるが、1978年の事件が都市伝説の直接の元ネタになったと証明する資料は確認されていない。
なぜこの都市伝説は怖い話として記憶に残るのか偽の警察官が怖い理由は、怪奇現象や超常現象ではなく、日常生活に存在する信頼関係が崩れる点にある。
警察官が自宅を訪問すること自体は、現実にも存在する。警視庁が案内する「巡回連絡」では、交番や駐在所の警察官が各家庭を訪問し、防犯情報を伝えたり、緊急時の連絡先を確認したりする。
つまり、制服姿の警察官が玄関先に立っているという状況自体は、必ずしも不自然ではない。
だからこそ、物語の中で警察官が犯人だったと判明した瞬間、読者が普段抱いている安心感が一気に崩れる。
また、物語では女性が何かを思い出したときには、すでに犯人が自分の身元を確認しに来ていたかもしれないという時間差も恐怖を生み出している。
これは、幽霊や呪いに頼らず、人間の心理と社会的な信頼を利用した人怖系の都市伝説として評価できる部分だ。
【2026年の現実】都市伝説とは別に深刻化するニセ警察詐欺
2026年8月末までの被害額は728.6億円偽の警察官という都市伝説を現実の社会問題と照らし合わせる際、特に注目したいのが警察官を名乗る特殊詐欺だ。
警察庁は、警察官や検察官を装い、捜査を名目として金銭や個人情報をだまし取る手口を「ニセ警察詐欺」として扱っている。
2026年10月2日に公表された警察庁の8月末時点の暫定統計によると、ニセ警察詐欺の認知件数は6,346件、被害額は728.6億円に達した。
前年同期と比較すると、認知件数は4.1%減少した一方、被害額は27.0%増加している。件数の減少だけでは、被害の深刻さが改善したとは判断できない状況だ。
この犯罪は都市伝説とは別の現実の詐欺であり、警察官への信頼を悪用するという点で共通している。
制服や警察手帳を見せるだけでは信用できない警察庁が2025年4月28日に公表した注意喚起では、犯人がビデオ通話を使い、制服姿や身分証らしきものを提示して、本物の警察官や検察官に見せかける手口が紹介されている。
「あなたの口座が犯罪に利用されている」「逮捕状が出ている」などと不安をあおり、現金や個人情報を要求するケースもある。
警視庁も2026年4月15日付の注意喚起で、警察の代表電話番号や警察署の番号に見えるよう着信表示を偽装する手口について警告している。
つまり、電話番号の表示、制服、警察手帳の画像だけで相手の身元を判断することは危険だ。
本物の警察官かどうかを確認する方法実際に警察官を名乗る人物が自宅を訪問した場合、次の点を意識したい。
- 玄関をすぐに開けず、まずインターホンやドア越しに用件を確認する。
- 所属する警察署、部署、氏名を尋ねる。
- 警察手帳の提示を求め、顔写真や氏名などを確認する。
- 不安があれば、相手から教えられた番号ではなく、自分で調べた警察署の代表番号に電話して確認する。
- 現金、キャッシュカード、暗証番号、口座情報を渡さない。
警察庁や各都道府県警察は、不審な電話やビデオ通話を受けた際には、一度通話を切り、最寄りの警察署に相談するよう呼びかけている。
緊急性のない警察への相談は警察相談専用電話「#9110」、差し迫った危険がある場合は110番を利用したい。
大切なのは、警察官を名乗る人物を無条件に信用することでも、すべての訪問を拒否することでもない。相手の身分を自分で確認し、正式な連絡先を通じて照合することだ。
【偽の警察官に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:偽の警察官とはどのような都市伝説ですか?
A1:殺人犯が警察官になりすまして目撃者の自宅を訪れ、事件について何か知っていないか確認するという怖い話です。最後に犯人が逮捕された際、訪問していた警察官と同一人物だったと判明する展開が特徴です。
Q2:偽の警察官の元ネタは室井滋の実体験ですか?
A2:違います。室井滋が2026年2月に公開したエッセイによると、元の話は知人のスタイリストの幼なじみK子さんに関するエピソードです。室井本人が経験した出来事ではありません。
Q3:偽の警察官を紹介したテレビ番組は何ですか?
A3:室井滋の2026年の説明によると、『ダウンタウンDX』の怖い話のコーナーで今田耕司が紹介したことが、話が広まるきっかけの一つでした。2019年9月6日の『ダウンタウンなう』でも、本人が真相を説明しています。
Q4:偽の警察官は実際に起きた事件ですか?
A4:元の話は実体験として伝えられたエピソードですが、事件そのものを裏付ける警察発表や裁判記録は公開資料から確認できません。都市伝説の実話性は確定していません。
Q5:1978年の制服警官女子大生殺人事件が元ネタですか?
A5:直接の関係は確認されていません。警察官が犯罪に関わるという共通点はありますが、事件の内容と都市伝説の筋書きは異なります。
Q6:偽の警察官とニセ警察詐欺は同じものですか?
A6:異なります。偽の警察官は都市伝説の名称であり、ニセ警察詐欺は警察官などを装って金銭や個人情報をだまし取る現実の犯罪です。2026年には警察庁が独立した手口として被害状況を公表しています。
Q7:警察官が自宅を訪問してきた場合はどうすればよいですか?
A7:まず所属、氏名、用件を確認し、警察手帳の提示を求めましょう。不安が残る場合は、自分で調べた最寄りの警察署の代表番号に連絡して身元を確認してください。現金やキャッシュカードを渡す必要はありません。
偽の警察官は、殺人犯が制服姿の警察官になりすまし、事件の目撃者を訪問するという人怖系の都市伝説だ。警察官という本来は信頼される存在が、実は危険な人物だったという構図が、長く語り継がれてきた理由の一つになっている。
その元ネタをたどると、2003年の室井滋のエッセイ『あなたが怖い』に行き着く。話の主人公は室井本人ではなく、知人のスタイリストの幼なじみだった。ところが、テレビ番組で紹介される過程で人物関係が省略され、室井自身の体験談として広まってしまった。
2019年の『ダウンタウンなう』での訂正に加え、2026年2月の本人エッセイによって、元の話の内容と拡散の経緯はさらに詳しく整理された。
一方、2026年には警察官を装うニセ警察詐欺が実際に大きな被害を生んでいる。都市伝説として楽しむことと、現実の防犯知識として役立てることは分けて考えたい。
【プロの結論】 偽の警察官の本質的な怖さは、犯人が警察官に変装したことだけではない。人が制服や肩書に抱く信頼が、情報の伝達過程で誤解を生み、さらに現実の犯罪にも悪用され得るという点にある。物語の真相を知ることは、単なる怖い話の答え合わせにとどまらず、情報を見極める力と、自分の身を守るための判断力を考えるきっかけにもなる。
主な確認資料
- 室井滋本人による2026年2月のエッセイ。元ネタと伝播経緯の一次資料。
- 2019年9月6日『ダウンタウンなう』の放送内容。
- 日本テレビ公式商品情報・国立国会図書館の映像資料目録。
- 警察庁の2026年8月末ニセ警察詐欺統計。
- 警視庁の巡回連絡・警察官訪問に関する案内。
- 警視庁・警察庁のニセ警察官対策。
- 国立国会図書館の1978年制服警官事件関連記事の書誌情報。