2016年にTBS系の金曜ドラマ枠で放送された『わたしを離さないで』は、綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみが演じる3人の男女の運命を描いたヒューマンドラマです。原作は、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの長編小説。世間から隔離された陽光学苑で育った子どもたちが、やがて自分たちに課された残酷な使命を知るという、衝撃的な設定が物語の軸になっています。
物語の鍵を握るのは、臓器提供のために生まれたクローンという存在、提供者を育てる陽光学苑の本当の目的、そして恋人同士に与えられると信じられていた「猶予」の真相です。2026年で放送から10年を迎えた今、全10話のあらすじ、主要キャスト、最終回の結末、原作小説との違いを整理し、作品が問いかける生と愛の意味を掘り下げます。
【作品概要】私を離さないでドラマは2016年のTBS金曜ドラマ

『わたしを離さないで』は、イギリスの作家カズオ・イシグロが2005年に発表した小説『Never Let Me Go』を、日本を舞台に置き換えて映像化した作品です。
TBSが制作した本作は、原作の持つ静かな不気味さと人間ドラマを受け継ぎながら、日本独自の登場人物や背景を取り入れています。世界初のテレビドラマ化としても注目された作品です。
放送時期・制作スタッフ・基本情報- 作品名:わたしを離さないで
- 放送局:TBS系列
- 放送枠:金曜ドラマ
- 放送期間:2016年1月15日~3月18日
- 放送回数:全10話
- 原作:カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
- 脚本:森下佳子
- プロデューサー:渡瀬暁彦、飯田和孝
- 演出:吉田健、山本剛義、平川雄一朗
- 音楽:やまだ豊
制作情報はTBSの公式番組ページと放送ライブラリーの記録で確認できます。
原作者カズオ・イシグロと2017年ノーベル文学賞原作者のカズオ・イシグロは1954年、長崎県生まれ。幼少期にイギリスへ移住した日系イギリス人作家です。
代表作には『日の名残り』『わたしたちが孤児だったころ』『忘れられた巨人』などがあります。2017年にはノーベル文学賞を受賞しました。
『わたしを離さないで』が描くのは、単純な近未来SFではありません。記憶、友情、愛情、社会的不平等、そして死を避けられない人間の存在そのものです。
興味深いのは、イシグロ自身がTBSの公式インタビューで、日本を舞台にしたドラマ化に期待を寄せていたことです。原作には日本的な感覚から影響を受けた部分があると説明し、10話構成のテレビドラマが原作の新たな側面を引き出すことに関心を示していました。
また、森下佳子の脚本についても、原作で十分に答えられていなかった問題を深く掘り下げていると評価しています。原作の単純な再現ではなく、テレビドラマという形式を生かした再構成だったことが分かります。
【キャスト・人物相関】綾瀬はるか・三浦春馬・水川あさみの3人が演じた運命
本作の中心となるのは、保科恭子、土井友彦、酒井美和の3人です。同じ陽光学苑で育ちながら、性格も愛情表現も異なる3人は、大人になってから複雑な関係を築いていきます。
主要キャストと役柄の関係一覧| 登場人物 | 出演者 | 役柄・物語上の関係 |
|---|---|---|
| 保科恭子 | 綾瀬はるか | 主人公。友彦を大切に思い、提供者としての人生を見つめ続ける女性。 |
| 土井友彦 | 三浦春馬 | 恭子の幼なじみ。サッカーが好きで、自由な未来を夢見る青年。 |
| 酒井美和 | 水川あさみ | 恭子の親友。勝ち気で複雑な感情を抱え、友彦との関係にも深く関わる。 |
| 大山珠世 | 馬場園梓 | 陽光学苑出身者。提供者となった友彦の介護人。 |
| 中村彩 | 水崎綾女 | 提供者と関わる人物。 |
| 加藤 | 柄本佑 | 物語に関わる提供者側の人物。 |
| 堀江龍子 | 伊藤歩 | 陽光学苑に赴任する教師。子どもたちの運命に疑問を抱く。 |
| 山崎次郎 | 甲本雅裕 | 陽光学苑に関わる人物。 |
| 神川恵美子 | 麻生祐未 | 陽光学苑の校長。学苑の秘密を知る重要人物。 |
| マダム | 真飛聖 | 子どもたちの作品を選ぶ謎めいた存在。 |
子ども時代の主要人物も、それぞれ別の俳優が演じています。
- 幼少期の恭子:鈴木梨央
- 幼少期の友彦:中川翼
- 幼少期の美和:瑞城さくら
恭子は、幼少期には優しく素直で、友彦を気にかける少女でした。しかし、自分たちの使命を知り、成長するにつれて感情を表に出さず、諦めを覚えていきます。
大人になった恭子は介護人として働きながら、かつての友人たちと再会します。自分自身の感情を押し殺しながらも、友彦や美和を大切に思い続ける人物です。
綾瀬はるかの演技で印象的なのは、表情や視線に表れる感情の変化です。声を荒らげる場面よりも、言葉を飲み込む場面にこそ、恭子が抱える悲しみがにじみます。
三浦春馬が演じた土井友彦友彦は、幼い頃からサッカーが好きで、外の世界に憧れている青年です。自分の将来について夢を持ち続ける一方、感情をうまく制御できず、周囲との関係に悩むこともあります。
恭子への愛情を抱きながら、美和との関係にも翻弄されます。提供という避けられない運命を前にしても、最後まで希望を探そうとする姿が物語の重要な軸です。
三浦春馬は、希望を持つ青年から、運命を受け入れられず苦悩する青年へと変化する友彦を丁寧に演じています。特に終盤では、身体的な衰えと精神的な葛藤が重なり、役柄の切実さが強く伝わります。
水川あさみが演じた酒井美和美和は、陽光学苑時代から周囲に強い影響力を持つ女性です。自分の感情に正直で、愛されたいという欲求も強く、恭子と友彦の関係に複雑な影を落とします。
一見すると恭子に対立する存在ですが、物語が進むと、美和自身も深い孤独や不安を抱えていたことが分かってきます。
終盤の美和は、過去のわだかまりと向き合い、恭子との関係を見つめ直します。単純な悪役ではなく、限られた人生の中で愛を求めた一人の人間として描かれている点が重要です。
【全10話あらすじ】陽光学苑からコテージ、そして希望編へ
ドラマは大きく3つの段階で進みます。子ども時代の陽光学苑編、第2の生活場所であるコテージ編、そして大人になった3人が運命と向き合う希望編です。
第1話から第10話まで、3人の関係と提供制度の真相が少しずつ明らかになります。
第1話~第3話:陽光学苑編第1話「ドラマ史上最も哀しい運命」
大人になった恭子が手術台の男性を見つめる場面から物語が始まります。20年前の陽光学苑に時間が戻り、恭子、友彦、美和の子ども時代が描かれます。新任教師の龍子は、学苑の教育に違和感を覚え始めます。やがて校長の神川恵美子が、子どもたちには生まれながらに使命があると告げます。
第2話「因縁の再会」
恭子たちは自分たちに課された特別な使命を知らされます。友彦は学苑の外の世界に思いを巡らせ、龍子は校長の教育方針に強く反発します。年に一度の展示会も開かれ、子どもたちの作品が重要な意味を持ち始めます。
第3話「3人の関係が動き出す」
陽光学苑を卒業する時期が近づき、恭子たちはコテージへの移動を考えます。友彦は恭子と一緒にいたいという気持ちを見せ、サッカー選手になる夢も語ります。しかし龍子から、彼らには普通の人間と同じ未来がないことを突きつけられます。
第4話~第6話:コテージ編第4話「孤独を知った恭子」
学苑を卒業した3人は、コテージと呼ばれる一軒家で共同生活を始めます。先輩の浩介やあぐりたちと交流する中で、陽光学苑では知らされなかった事実に直面します。恭子は共同生活になじめず、次第に孤立していきます。
第5話「美和のルーツと希望」
美和は自分のルーツとなった人物に会いたいと考え、恭子や友彦たちと行動します。一方、友彦は「のぞみが崎」という海岸に関心を持ちます。失ったものが流れ着くという場所に、3人は自分たちの過去を重ねていきます。
第6話「求めた愛と希望の行末」
恭子は友彦への気持ちを口にします。友彦は、陽光出身者が条件を満たせば3年間提供を延期できるという「猶予」の噂を知り、恭子との未来を願って絵を描くことを決意します。しかし、真実の運命にも大きな変化が訪れます。
第7話~第10話:希望編第7話「再会の夢と近づく終末」
時が流れ、大人になった恭子は美和の介護人として働いています。友彦から介護人のリクエストを受けながらも、恭子はすぐに応じられません。そんな中、美和に「3種同時提供」の通知が届きます。これは実質的に最後の提供を意味する重大な決定でした。
第8話「友との別れ」
美和の最後の願いによって、恭子、友彦、美和の3人は陽光学苑があった場所を訪れます。しかし、そこにはかつての学苑は残っていません。提供者を育てる別のホームが建ち、子どもたちが生活していました。恭子は幼少期の自分と瓜二つの少女を目撃します。帰り道、美和はこれまで抱えていた思いを打ち明けます。
第9話「未来を取り戻す最後の希望」
恭子と友彦は、猶予を得るために神川恵美子の居場所を探します。友彦は自分の絵を持って、愛し合っていることを証明しようとします。しかし、恵美子から告げられたのは、2人が信じてきた猶予制度が存在しないという事実でした。陽光学苑の真の目的や恵美子自身の過去も明らかになります。
第10話・最終回「愛と希望の結末」
猶予が存在しないと知った友彦に、3度目の提供通知が届きます。絶望する友彦を恭子は支えようとしますが、彼は自暴自棄になり、介護人をやめてほしいと願い出ます。龍子との再会や、友彦の存在を通じて命の意味を考える出来事を経て、友彦は自分の運命と向き合います。やがて恭子は愛する人を見送り、一人で未来に向き合うことになります。
以上が全10話の流れです。物語の中心は、単なる恋愛関係ではありません。3人が自分の人生をどう受け止め、限られた時間の中で何を大切にするのかという問いが、各話を通じて積み重なっています。
【陽光学苑の秘密】臓器提供という使命とクローンの仕組み
本作を理解するうえで最も重要なのが、陽光学苑と提供者の関係です。
陽光学苑で暮らす子どもたちは、一般的な孤児や寄宿学校の生徒ではありません。彼らは臓器提供を目的に生み出されたクローンであり、将来の提供に備えて育てられています。
陽光学苑は普通の学校ではなかった陽光学苑では、子どもたちに一般的な学校と似た教育や生活が与えられています。友人関係を築き、作品を制作し、運動を楽しみ、将来について夢を見ることもあります。
しかし、その教育環境には大きな矛盾がありました。子どもたちは人間らしい感情や個性を育てられながら、社会の中で自分の人生を自由に選択する権利を持っていなかったのです。
校長の恵美子は、子どもたちに使命を伝える立場にありながら、制度の内側にある複雑な事情を抱えています。終盤では、恵美子自身もクローンとして生まれた存在であることが明らかになります。
陽光学苑には、クローンたちを単なる臓器の供給源として扱う社会に対し、教育を与え、介護人としての役割を担わせることで、少しでも人間らしい生を確保しようとする試みがありました。
つまり、陽光学苑の秘密は、子どもたちがクローンだったという事実だけではありません。彼らを守ろうとする人々の努力も、結局は提供制度そのものをなくせなかったという限界を抱えていたことです。
提供者と介護人の仕組み物語の世界では、提供者は臓器を提供するために生み出されたクローンです。彼らの人生は、提供を受ける一般の人々の命を救うために制度化されています。
提供者になる前には、介護人として働く期間があります。介護人は提供を終えた人々の回復を支え、生活の世話をする役割を担います。
この仕組みには、次のような流れがあります。
- 誕生・成長:クローンとして生まれ、陽光学苑などの施設で育つ。
- 学苑卒業:教育施設を離れ、コテージなどで次の生活を送る。
- 介護人としての期間:提供者を支援し、提供制度の一部を担う。
- 提供者への移行:自らの臓器を提供する段階に入る。
- 提供の継続と終了:複数回の提供を経て、最終的に命を終える。
本作では、提供の回数が進むにつれて身体が弱っていきます。第10話の公式あらすじでも、3度目の提供で終わる人が多く、仮に耐えられたとしても身体の自由が大きく制限されると説明されています。
なお、これはあくまでドラマ内の架空社会における制度です。現実の日本の臓器移植制度や医療行為を説明したものではありません。
「猶予」は本当に存在するのか?物語の後半で大きな意味を持つのが「猶予」です。
陽光学苑出身者の間には、愛し合っている男女がその証拠を示せば、提供を始めるまで3年間の自由な時間を得られるという噂が存在します。
友彦はこの話を信じ、恭子との時間を手に入れるため、苦手だった絵を描くことを決意します。2人にとって猶予は、単なる提供延期ではありません。初めて自分たちの人生を自分で選べる可能性だったのです。
しかし、恵美子に会った2人が知るのは、残酷な真実でした。
愛し合っていることを証明しても、提供を延期する猶予制度は存在しません。
絵を描くことも、愛情を示すことも、制度の決定を変える条件にはならなかったのです。
この事実が物語の大きな転換点になります。希望を持つこと自体が間違いだったのではなく、希望を持っても制度を変えられない社会の残酷さが描かれています。
【最終回ネタバレ】私を離さないでの結末と友彦・恭子・美和の最後
ここからは最終回の重大なネタバレを含みます。物語の結末を知りたい読者に向けて、3人の運命と最後の演出を整理します。
美和は3種同時提供によって最後を迎える美和に届いた「3種同時提供」の通知は、彼女にとって最後の提供になることを意味していました。
恭子は介護人として、美和に次の提供について伝えなければなりません。長い間、複雑な感情を抱いてきた相手であっても、最後まで世話をしなければならない立場です。
美和は残された時間の中で、もう一度陽光学苑のあった場所を訪れたいと願います。恭子と友彦との再会を通して、自分が過去にしてきたことや、2人に対する気持ちを見つめ直します。
特に重要なのが、恭子との和解です。かつて友彦との関係をめぐって恭子を傷つけた美和は、自分の思いを伝え、過去のわだかまりを解いていきます。
美和の最後は、単なる悲劇としてだけではなく、長年すれ違ってきた2人が本当の意味で心を通わせる時間として描かれます。
友彦は3度目の提供を迎える友彦にとって最後の希望だった猶予は、恵美子によって否定されました。加えて、3度目の提供通知が届き、彼は精神的に追い詰められていきます。
恭子に弱った姿を見せたくないという思いから、介護人をやめてほしいと頼む友彦。食事や薬を拒むなど、自暴自棄になってしまいます。
そんな友彦に変化をもたらすのが、龍子との再会です。龍子は2人を外へ連れ出し、友彦は自分たちの提供によって命を救われた人の存在を知ります。
その出会いによって、友彦は自分の人生が誰かの命につながっていたことを実感します。もちろん、それによって制度の不公平さが消えるわけではありません。それでも、自分が生きてきた時間に意味を見いだすきっかけになりました。
友彦は最後の提供に向かいます。恭子もまた、愛する人を見送るという避けられない現実を受け止めなければなりません。
恭子の最後に登場するサッカーボールの意味友彦を見送った後、恭子は一人になります。
翌年には、かつて介護していた仲間たちもいなくなり、恭子のもとにはまだ提供通知が届いていません。彼女は、思い出の場所であるのぞみが崎へ向かいます。
海辺では恵美子と再会しますが、恵美子の誘いに対して、恭子はすぐには応じません。そして、友彦との思い出を胸に海へ向かう場面が描かれます。
そこで印象的に登場するのが、友彦との思い出を象徴するサッカーボールです。
このボールは、単なる小道具ではありません。サッカーを愛し、夢を持ち続けた友彦の記憶そのものです。恭子が失ったもの、そして今も心の中に残しているものを象徴しています。
最後の演出は、恭子のその後を単純に説明するものではなく、視聴者に余韻を残します。悲しみの中にも、友彦と過ごした時間が確かに存在したという事実が残されているのです。
最終回が伝えたかったことは何か最終回の要点は、主人公たちが制度を打ち破って自由になる物語ではないことです。
恭子と友彦は愛し合っていても、社会の仕組みを変えられません。美和もまた、過去を修復する時間を得ても、提供という運命から逃れることはできません。
それでも、彼らは誰かを愛し、友情を築き、記憶を残しました。
この作品における希望とは、必ずしも長く生きることや、運命を逆転させることではありません。限られた時間の中で、誰かと心を通わせた経験そのものにも価値があるという考え方です。
【原作小説との違い】ドラマ版で追加・変更された要点
ドラマ版を理解するうえで欠かせないのが、カズオ・イシグロの原作小説との比較です。
原作とドラマは基本的な設定やテーマを共有していますが、舞台、人物名、人物の背景、物語の展開、最終的な余韻には違いがあります。
舞台と登場人物の変更原作の舞台はイギリスです。主人公はキャシー・H、友人はトミーとルースで、彼らはヘールシャムという施設で育ちます。
一方、日本版ドラマでは舞台が日本に移され、人物の名前も変更されました。
- キャシー・H → 保科恭子
- トミー → 土井友彦
- ルース → 酒井美和
- ヘールシャム → 陽光学苑
日本の社会や風景に置き換えたことで、原作の世界観を保ちながら、日本の視聴者が登場人物の生活を身近に感じられる構成になっています。
ドラマ版は人物の背景と制度の問題を掘り下げている原作小説は、介護人として働くキャシーの回想を通じて物語が進みます。過去の記憶が少しずつ明らかになる構造で、読者は主人公と同じように世界の秘密を理解していきます。
ドラマ版は全10話という長さを生かし、人物同士の関係や陽光学苑の背景をより具体的に描きます。
特に日本版で注目したいのは、神川恵美子の人物像です。クローンの教育や介護人の役割、陽光学苑が目指したものなど、制度の内側にいる人物の葛藤が物語に組み込まれています。
また、友彦のサッカーへの思いや、恭子と美和の関係も、映像作品として感情の変化が分かりやすく表現されています。
原作とドラマの結末の違い原作では、トミーは4度目の提供を終えて命を落とし、キャシーはその後も自分の提供者としての人生に向き合います。物語は、失った友人たちやヘールシャムの記憶を胸に、キャシーが前へ進む余韻を残して終わります。
日本版ドラマでは、友彦の3度目の提供が最終局面となり、恭子がのぞみが崎の海辺でサッカーボールと向き合う場面が印象的に描かれます。
小説が主人公の記憶や内面を通して喪失を描くのに対し、ドラマは海やサッカーボールなどの映像表現を通じて、失われた時間と残された希望を表現しています。
原作とドラマ、どちらから楽しむべきか原作小説は、登場人物の記憶や心の動きをじっくり読みたい人に向いています。すべてを一度に説明しない構成のため、物語の秘密を自分で読み解く楽しさがあります。
一方、ドラマ版は俳優の演技によって感情の変化を視覚的に受け取れることが魅力です。恭子、友彦、美和の関係性や、陽光学苑の雰囲気を映像で理解したい人に適しています。
両方に触れることで、同じテーマを異なる表現方法で描いた作品として、より深い理解につながります。
【ドラマの評判・評価】視聴率だけでは分からない作品の魅力
『わたしを離さないで』は、設定そのものが非常に重く、一般的な恋愛ドラマや娯楽作品とは異なる性格を持っています。
臓器提供のために生まれた人間という設定は、視聴者に強い衝撃を与えます。一方、物語の中心にあるのはSF的な仕掛けではなく、登場人物の友情や恋愛、そして自分の人生をどう受け止めるかという問題です。
最終回の視聴率は6.7%2016年3月18日に放送された最終回の平均視聴率は、6.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)でした。
当時のスポーツニッポンなどの報道では、全話を通じて2桁の視聴率には届かなかったことも伝えられています。
ただし、リアルタイムの世帯視聴率だけで作品の価値を判断することはできません。重いテーマを扱う作品は、気軽に楽しめる娯楽ドラマとは異なる視聴体験を提供します。
評価したい3つのポイント1. 主要キャストの演技
綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみの3人が、それぞれ異なる性格と感情を持つ登場人物を演じています。特に、幼少期から大人になるまでの変化が物語の説得力を支えています。
2. 森下佳子の脚本による構成
森下佳子は、原作のテーマを残しながら、10話の連続ドラマとして人物の背景や人間関係を広げました。イシグロ自身が脚本を評価していたことも、作品の特徴を考えるうえで重要です。
3. 観終わった後に残る問い
提供者たちの人生を通して、本当の人間らしさとは何か、命の価値を誰が決めるのかという問題を考えさせられます。視聴後も登場人物の選択や結末について考える余地が残されています。
このドラマがおすすめの人・おすすめしにくい人おすすめできる人
- カズオ・イシグロの原作や文学作品に関心がある人
- 綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみの演技をじっくり見たい人
- 人間関係や心理描写を重視するヒューマンドラマが好きな人
- SF的な設定を通じて倫理や社会問題を考えたい人
- 結末に余韻が残る作品を好む人
おすすめしにくい人
- 明るく気軽に楽しめる恋愛ドラマを求めている人
- 主人公たちが困難を乗り越えて成功する物語を期待する人
- 臓器提供や死を扱う重い描写が苦手な人
- 明確な救済や分かりやすいハッピーエンドを求める人
本作の魅力は、視聴者を単純に満足させる結末ではなく、見終わった後にも登場人物の人生を考えさせる点にあります。
【よくある質問】私を離さないでドラマに関するFAQ
Q1:私を離さないでドラマは全部で何話ですか?
A1:全10話です。2016年1月15日から3月18日まで、TBS系列の金曜ドラマ枠で放送されました。
Q2:綾瀬はるか・三浦春馬・水川あさみは何役ですか?
A2:綾瀬はるかが保科恭子、三浦春馬が土井友彦、水川あさみが酒井美和を演じています。陽光学苑で育った3人の人生と友情、恋愛が物語の中心です。
Q3:陽光学苑の子どもたちは何者だったのですか?
A3:臓器提供を目的に生み出されたクローンです。子どもたちは教育を受けて成長しますが、将来は介護人や提供者として生きることを定められていました。
Q4:猶予制度は本当に存在したのですか?
A4:存在しません。愛し合っていることを証明すれば提供を3年間延期できるという噂は、恵美子によって否定されます。友彦が描いた絵も、提供を延期する条件にはなりませんでした。
Q5:私を離さないでドラマの最終回はハッピーエンドですか?
A5:一般的な意味でのハッピーエンドではありません。美和と友彦は提供という運命を迎え、恭子は一人になります。ただし、最後のサッカーボールの演出には、友彦との記憶や生きた時間の意味が込められています。
Q6:原作小説とドラマ版は同じ結末ですか?
A6:基本的なテーマは共通していますが、登場人物の背景や提供の展開、最後の演出には違いがあります。原作ではトミーの4度目の提供が描かれる一方、日本版では友彦の3度目の提供が最終局面となります。
『わたしを離さないで』は、2016年にTBSで放送された全10話のヒューマンドラマです。綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみが演じた恭子、友彦、美和の3人を中心に、陽光学苑の秘密、クローンとしての使命、提供者と介護人の仕組み、そして愛する人と過ごす時間の尊さを描いています。
最終回では、3人が願った未来は実現しません。猶予という希望も存在せず、友彦と美和は提供という運命を迎えます。しかし、恭子の記憶には、友彦との時間や美和との和解が残り続けます。
【プロの結論】この作品を理解するために押さえたい3つの視点第一に、提供制度は単なるSF設定ではありません。人間を能力や役割だけで評価し、その存在価値を他者が決めてしまう社会の不平等を象徴しています。
第二に、恭子・友彦・美和の関係は、善人と悪人の対立ではありません。限られた人生の中で愛されたい、認められたい、誰かと一緒にいたいと願う人間同士の葛藤です。美和との和解が重要なのも、そのためです。
第三に、作品の希望は運命を変えることだけに存在するわけではありません。友彦のサッカーボールが最後に象徴するように、誰かと過ごした記憶や、その人が確かに生きていたという事実も、人生に残る大切な価値です。
原作小説を読んでからドラマを見ると、物語の構造や表現の違いが分かります。反対に、ドラマから入れば、3人の感情や陽光学苑の秘密を映像で理解しやすくなります。
放送から10年が経過した2026年も、この作品が描いた「命の価値は誰が決めるのか」「限られた時間を誰と生きるのか」という問いは色あせていません。単なる悲しい恋愛ドラマとしてではなく、人間の尊厳と愛情を描いた作品として、改めて向き合う価値があります。
主な事実確認資料: TBS公式番組情報・キャスト・各話あらすじ、放送ライブラリー、早川書房の原作紹介、ノーベル賞公式資料、スポーツニッポンおよびMANTANWEBの放送当時の報道。