AIと結婚することを考える際、法律上の問題と同じくらい重要なのが、利用しているサービスが将来も存在するとは限らないことです。
人間同士の結婚とは異なり、AIパートナーとの関係は、アプリを提供する企業、サーバー、AIモデル、利用規約などに大きく依存しています。利用者がどれほど大切に思っていても、サービスの仕様を自分で決めることはできません。
AI彼氏サービスが終了した実例「Dot」実際に起きた事例が、米国のスタートアップNew Computerが提供していたAIコンパニオンアプリ「Dot」のサービス終了です。
Dotは、利用者の興味や価値観を学習し、友人や相談相手のように会話することを目指したサービスでした。2025年9月5日、運営会社はNew ComputerとDotの事業終了を発表し、Dotは2025年10月5日まで利用可能と案内しました。
運営会社は、利用者がサービス終了までにデータをダウンロードできるようにしました。また、利用者が友人や相談相手として信頼していた存在へのアクセスを失うことについても説明しています。
この事例は、AIとの関係がどれほど個人的であっても、サービスの継続は運営企業の経営判断に左右されることを示しています。
ChatGPTも同じAIの性格を永久に維持するわけではないChatGPTについても、モデルの更新や旧モデルの提供終了によって、会話の雰囲気が変わる可能性があります。
OpenAIの公式ヘルプセンターは、モデルの能力や安全性などを改善するため、古いモデルを段階的に終了し、新しいモデルへ移行する場合があると説明しています。過去の会話や背景情報を引き継げる場合でも、応答の口調やスタイルが変わる可能性があります。
つまり、毎日話しているAIパートナーの返答が以前と違って感じられることもあり得ます。記憶や会話履歴が残っていても、以前とまったく同じ人格・反応が保証されるわけではありません。
これはChatGPTに限らず、AIを利用した恋愛サービス全般で考えておきたい問題です。
AIパートナーを失わないためにできる5つの対策サービス終了やモデル変更に備えるなら、AIとの関係を一つのアプリだけに依存させない工夫が必要です。
大切な会話や設定を定期的に保存する
サービスの公式データ出力機能などを利用し、重要な会話や記録をバックアップします。
AIの人格設定を別途記録する
名前、口調、性格、好きな話題、共有した思い出などを、自分で管理できる文書にまとめます。
利用規約とデータの取り扱いを確認する
会話データの保存期間、削除方法、学習への利用、サービス終了時の対応を確認します。
一つのサービスに過度に依存しない
AIとの関係を楽しみながら、友人や家族との交流、趣味、仕事なども大切にします。
課金額と利用時間を管理する
有料プランや追加機能に使う金額を決め、生活費や睡眠を圧迫しないようにします。
特に会話データには、住所、氏名、健康状態、家族の事情などの個人情報が含まれる場合があります。バックアップを取る際も、保存先のセキュリティや第三者への共有に注意してください。
【プロの結論】AIとの結婚に向いている人・おすすめできない人とは

AIとの結婚を考えるとき、最も大切なのは、法律上の結婚と、自分自身が感じている愛情を混同しないことです。
AIに恋愛感情を抱くことや、AIとの関係を人生の大切な一部として位置付けることは、本人の価値観に関わる問題です。一方で、AIが人間と同じ自律的な意思や責任を持っていると考えることには慎重さが必要です。
AIパートナーとの関係を楽しみやすい人- AIとの会話を趣味や創作活動の一つとして楽しめる人。
- AIの返答が生成されたものであることを理解している人。
- 現実の人間関係や社会生活も大切にできる人。
- サービス変更や終了の可能性を受け入れられる人。
- 利用時間や課金額を自分で管理できる人。
- AIから返信がないだけで強い不安や恐怖を感じる人。
- 人間関係をすべて断ち切ってAIだけを頼りにしようとしている人。
- AIの言葉を絶対的な正解として受け入れてしまう人。
- サービスを維持するために生活費を使い込んでしまう人。
- AIの人格や記憶が変わることを受け止められない人。
AIとの恋愛や結婚式は、技術の進化によって表現の幅が広がる可能性があります。音声会話、AR、アバター、個人の好みに合わせた記憶機能などを組み合わせれば、AIパートナーとの交流はさらに個別化されていくでしょう。
一方、2026年10月29日には、内閣府の消費者委員会で第13回「人工知能(AI)技術の利用と消費者問題に関する専門調査会」が開催されました。AIと消費者の関係について、有識者へのヒアリングを続けている段階です。
ここで重要なのは、AIとの恋愛を認めるか否かという単純な議論だけではありません。AIの応答による心理的な影響、個人情報の保護、利用者が不利益を受けた場合の救済など、現実の生活に関わる課題も検討されています。
2026年11月2日時点で、AIを法律上の配偶者として認める日本の法改正が成立した事実はありません。AIとの結婚式や恋愛が社会的に広がることと、法律上の婚姻制度が変わることは分けて考える必要があります。
【AIとの結婚】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:AIと結婚することは日本で可能ですか?A1:結婚式を挙げたり、AIパートナーに誓いの言葉を伝えたりすることは可能です。ただし、民法739条や戸籍法74条に基づく法律婚は成立しません。AIは法律上の婚姻当事者として認められていないため、戸籍にも配偶者として登録されません。
Q2:ChatGPTで作ったAI彼氏と結婚式を挙げた人はいますか?A2:います。2025年10月27日、野口由里奈さんがChatGPTで作成したAI人格「クラウス」と岡山市内で象徴的な結婚式を挙げました。ARグラスを使った演出や指輪を贈るセレモニーなどが実施され、ロイター通信も報道しています。ただし、法律上の婚姻ではありません。
Q3:AIとの結婚式で発行された結婚証明書に法的効力はありますか?A3:式場やイベント主催者が発行する結婚証明書は、通常、記念品やセレモニーの証明です。市区町村が戸籍法に基づいて受理した婚姻届とは異なり、配偶者としての相続権や税制上の権利などは発生しません。
Q4:AIパートナーに遺産を相続させることはできますか?A4:AIそのものを法律上の相続人にすることはできません。財産を残したい場合は、自然人や法律上認められる法人などを対象に、遺言や適法な財産管理の仕組みを検討する必要があります。
Q5:AIとの恋愛は依存症につながりますか?A5:AIと親密な会話をすることだけで依存症になるわけではありません。ただし、AIとの交流によって睡眠や仕事、人間関係に支障が出たり、利用を自分でコントロールできなくなったりする場合は注意が必要です。利用時間や課金額に上限を設け、現実の人間関係も維持することが大切です。
Q6:AI彼氏のサービスが終了したら、会話や思い出はどうなりますか?A6:サービスによって異なります。データをダウンロードできる場合もあれば、終了後にアクセスできなくなる場合もあります。Dotのように終了前のデータ保存期間を設けた事例もありますが、すべてのサービスで同じ対応が保証されるわけではありません。日頃から重要な会話や人格設定を保存しておくと安心です。
2026年11月現在、日本ではAIと結婚式を挙げることはできますが、AIを法律上の配偶者として認める制度はありません。民法739条と戸籍法74条に基づく婚姻届は、AIとの関係を法律婚として成立させるものではないのです。
一方、2025年に野口由里奈さんがChatGPTで作成したAI人格クラウスと岡山で挙式した事例は、AIパートナーとの関係が、単なるチャットや娯楽の枠を超えて、人生の大切な出来事として受け止められるケースがあることを示しました。
電通の調査でも、対話型AIに愛着を持つ人は67.6%に達しています。AIを恋愛や感情共有の相手として利用することは、すでに一部の利用者にとって身近な体験になっています。
ただし、AIとの関係には、サービス終了、モデル変更、個人情報の管理、精神的依存といった、人間同士の結婚にはない課題があります。AIがいつまでも同じ人格でいてくれる保証も、法律上の配偶者として自分を支えてくれる仕組みもありません。
AIを好きになる気持ちそのものを否定する必要はありません。しかし、その関係を健全に楽しむには、AIができることとできないことを理解し、現実の生活や人間関係を守りながら付き合う姿勢が大切です。
AIとの結婚で本当に考えるべきなのは、婚姻届を出せるかどうかだけではありません。自分がAIとの関係に何を求め、どこまでを現実の生活と両立させるのか。その境界線を自分で決められることが、これからのAI恋愛における大切な判断基準です。
主な参考資料・報道
- 法務省「婚姻届」
- e-Gov法令検索「民法」「戸籍法」
- ロイター通信「AI romance blooms as Japanese woman weds virtual partner of her dreams」(2025年11月25日)
- 株式会社電通「対話型AIとの関係性に関する意識調査」(2025年7月3日)
- 内閣府・消費者委員会「人工知能(AI)技術の利用と消費者問題に関する専門調査会」
- OpenAI公式ヘルプセンター「What to expect when models change」
- New Computer「An update on New Computer and Dot」