武尊の現役最後の試合となったのが、2026年4月29日の「ONE SAMURAI 1」。メインイベントでロッタン・ジットムアンノンと対戦し、ONEフライ級キックボクシング暫定世界王座決定戦を制した。
この試合が特別だったのは、単なる世界タイトルマッチではなかったからだ。約1年前にKO負けを喫した相手との再戦であり、引退を公表した武尊にとって、現役生活のすべてを懸けた最後の勝負だった。
2025年3月の初戦は80秒でKO負け両者の初対戦は2025年3月。武尊はロッタンの強烈な攻撃を受け、1ラウンド1分20秒でKO負けを喫した。
ロッタンはタイ出身の世界的キックボクサーで、ムエタイでもONEフライ級世界王座を獲得した実力者だ。強烈なパンチと打たれ強さ、相手の攻撃を恐れず前進するスタイルで知られる。
武尊にとって、この敗北は大きな転換点となった。首のヘルニアという問題も抱えることになり、選手としての将来を考え直すきっかけになったのである。
2026年4月29日、5ラウンドで劇的な決着再戦では、武尊が序盤から積極的に攻撃を仕掛けた。ONE Championshipの公式試合レビューによると、1ラウンドからカーフキックやローキックでロッタンの足を攻め、距離を詰める展開をつくった。
2ラウンドには左フックで2度のダウンを奪取。ロッタンも3ラウンド以降に反撃し、4ラウンドには激しい打ち合いを展開した。
そして最終5ラウンド。武尊の右の攻撃がロッタンを後退させ、連続攻撃から再びダウンを奪う。最後は強烈な左フックでロッタンを沈め、5ラウンド2分22秒、KO決着となった。
これにより武尊はONEフライ級キックボクシング暫定世界王座を獲得。前回の敗北を乗り越え、最後の試合で世界タイトルを手にした。
獲得したのは暫定王座?正規王座との違いここで注意したいのが、獲得したタイトルの名称だ。武尊が手にしたのは、ONEフライ級キックボクシングの暫定世界王座である。
暫定王座は、正規王者とは別に設けられるタイトルであり、正規王座と同一のものではない。したがって「ONEフライ級キックボクシング正規世界王者になった」と表現するのは正確ではない。
ただし、引退試合で世界最高峰の団体のタイトルを獲得したという実績の価値が小さくなるわけではない。しかも相手は、前回自分をKOしたロッタンだった。競技者としての集大成を飾る勝利だったことは間違いない。
【K-1三階級制覇と那須川天心】武尊が残した格闘技史の功績

武尊の名前を語るうえで欠かせないのが、K-1史上初の三階級制覇と、那須川天心との「THE MATCH 2022」だ。
K-1史上初の三階級制覇を達成武尊は2015年4月にスーパー・バンタム級、2016年11月にフェザー級、2018年3月にスーパー・フェザー級の王座を獲得した。
異なる3つの階級で頂点に立つには、単に体重を増減させるだけでは足りない。階級ごとに異なる相手の体格、攻撃力、スピードに対応し、戦い方を調整する必要がある。
武尊は攻撃的なスタイルを維持しながら各階級で結果を残した。その功績によって、K-1史上初の三階級制覇という記録を打ち立てたのである。
那須川天心とのTHE MATCH 2022はなぜ伝説になったのか2022年6月19日、東京ドームで開催された「THE MATCH 2022」。最大の注目カードは、K-1の武尊とRISEの那須川天心による58kg契約の一戦だった。
両者は異なる団体で活躍していたため、長年対戦が実現しなかった。団体の垣根を越えた対決が実現したことで、日本のキックボクシング界を代表するビッグマッチとなった。
試合は那須川天心が1ラウンドに左カウンターでダウンを奪い、判定5対0で勝利。武尊は敗れたものの、長年実現を望まれていた対決に正面から挑んだ。
この敗戦を経て武尊は競技を続行し、2023年にはフランス・パリでISKA世界ライト級王座を獲得。2024年にはONEへ本格参戦した。
THE MATCH 2022での敗北は、武尊のキャリアを終わらせる出来事ではなかった。むしろ海外の舞台へ進み、最後にロッタンとの再戦を実現するまでの過程を考えると、重要な転換点だったと評価できる。
ONE参戦から引退までの挑戦2024年1月、武尊はONEフライ級キックボクシング世界王者スーパーレックに挑戦。判定で敗れたが、世界トップクラスの選手と5ラウンドを戦った。
同年9月にはタン・ジンをKOで破り、再起を果たす。2025年3月のロッタン戦では敗北したものの、同年11月にはデニス・ピューリックにTKO勝利。そして2026年4月、最後のロッタン戦で雪辱を果たした。
この経歴から見えるのは、勝利だけを積み重ねた無敗のスターではなく、敗北や負傷を経験しながらも挑戦を続けた選手としての姿だ。
【VASILEUS GYMの現在】武尊は引退後に何をしている?
武尊の引退後を考えるうえで重要なのが、所属するteam VASILEUSと、VASILEUS GYMの存在だ。
武尊は公式プロフィールでVASILEUSビルのオーナーとして紹介されている。現役時代から築いてきた格闘技界とのつながりを、ジムや所属選手の活動を通じて継続している。
VASILEUS GYMはどんなジムなのかVASILEUS GYMは東京都世田谷区用賀にある格闘技ジム。国内外で活躍する選手たちが所属し、競技者のトレーニングや一般会員向けの指導などを行っている。
2026年4月1日には、ジム公式YouTubeチャンネルがスタートした。公式発表によると、主な発信内容は次のとおりだ。
- トップファイターのトレーニング風景
- 選手への指導や練習の様子
- 所属選手の日常と試合への挑戦
- 試合の舞台裏やスタッフの活動
- トップファイターによる特別セミナー
単なる練習場所ではなく、競技者の育成と格闘技文化の発信を両立する拠点として活動している。
引退後の仕事はタレント・実業家・格闘技支援者武尊の公式プロフィールでは、元キックボクサーのほか、アスリート、タレント、VASILEUSビルオーナーという肩書きも掲載されている。
メディア出演では、YouTube番組や格闘技関連のトーク企画などに参加。イベントではファンとの交流やプロジェクトの活動報告を行っている。
また、team VASILEUSの選手を支援する活動も目立つ。2026年8月には宇佐美秀メイソンをRIZINの大会に推薦するなど、自身の知名度を後輩選手の活躍につなげる動きも見られた。
今後は、競技経験を伝える指導・育成活動、イベント出演、ジム運営、社会貢献活動が活動の柱になっていくと考えられる。
引退後の評判をどう見るべきか武尊の評価は、現役時代のタイトル数だけでは測れない。
競技面ではK-1三階級制覇、ONE暫定世界王座獲得という実績がある。加えて、2025年のロッタン戦で敗れた後、引退試合でリベンジを果たしたストーリーも大きな注目を集めた。
引退後については、ONE殿堂入りという競技団体からの評価に加え、後進の支援や教育プロジェクトへの取り組みが新しい評価軸になっている。
一方、引退したからといって、現役時代の敗北がなかったことになるわけではない。那須川天心やスーパーレック、初戦のロッタンなど、強豪との対戦結果も含めてキャリア全体を見ることが大切だ。
勝敗だけでなく、対戦相手のレベル、階級を越えた実績、競技への貢献、引退後の活動まで含めて評価することで、武尊という選手の本当の存在感が見えてくる。
【格闘家・武尊の現在】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:武尊は2026年現在、引退していますか?
A1:はい。2026年4月29日の「ONE SAMURAI 1」でのロッタン戦を最後に現役を引退しました。10月17日には「ONE SAMURAI 4」で引退セレモニーとONE殿堂入りが実施されています。
Q2:武尊の通算戦績は何戦何勝ですか?
A2:公式プロフィールに掲載されている戦績は51戦46勝(28KO)5敗0分です。最後の試合ではロッタン・ジットムアンノンにKO勝利しました。
Q3:武尊の引退理由は何ですか?
A3:大きな理由は首のヘルニアです。2025年3月のロッタンとの初戦後に発症し、しびれや筋力低下などの症状があったことを2026年5月の引退会見で明かしています。
Q4:武尊はONEの正規世界王者になったのですか?
A4:2026年4月29日に獲得したのはONEフライ級キックボクシング暫定世界王座です。正規世界王座とは区別されるタイトルです。
Q5:武尊は現役復帰する可能性がありますか?
A5:2026年7月のONE関連イベントで、将来的なカムバックの可能性に言及しています。ただし、正式な復帰発表や具体的な試合予定は公表されていません。
Q6:武尊は現在どこに所属していますか?
A6:所属はteam VASILEUSです。引退後もVASILEUS GYMや所属選手との関わりを持ち、後進の育成や格闘技の普及に取り組んでいます。
武尊は2026年4月29日、ONE SAMURAI 1でロッタン・ジットムアンノンに勝利し、ONEフライ級キックボクシング暫定世界王座を獲得した。2025年の初戦でKO負けを喫した相手に最後の試合で勝利したことは、長い競技人生を締めくくる象徴的な出来事となった。
現役時代にはK-1史上初の三階級制覇を達成し、THE MATCH 2022で那須川天心と対戦。ONEへの挑戦を経て、通算51戦46勝5敗という記録を残した。
引退の背景には首のヘルニアという身体的な問題があったが、最後まで世界の頂点を目指す姿勢は変わらなかった。さらに10月にはONE殿堂入りを果たし、競技者としての功績も正式に称えられた。
【プロの結論】武尊の本当の価値は勝敗だけでは測れない武尊のキャリアから読み取れる価値は、主に3つある。
- 階級を越える適応力:K-1三階級制覇は、異なる体格や対戦環境に対応して結果を残した証明である。
- 敗北からの再挑戦:那須川天心戦やロッタン初戦の敗北を経験しながら、最後には世界タイトルを獲得した。
- 競技経験の次世代への還元:ジムやteam VASILEUS、DREAM UP! PROJECT.などを通じて、格闘技と社会への関わりを続けている。
今後注目したいのは、武尊がどのような形で格闘技界に貢献していくかという点だ。選手としてリングに立つことは終わっても、後輩の育成や競技の普及、子どもたちへの支援など、新しい役割は広がっている。
ロッタンとの最後の一戦で世界タイトルを手にし、ONE殿堂入りまで果たした武尊。2026年は、単なる引退の年ではなく、格闘家として築いた実績を次の世代へつなぐ新しいスタートの年として記憶されることになりそうだ。