2026年11月現在、東京メトロを利用する際に気になるのが、2023年3月18日に実施された運賃改定です。この変更では、国が創設した「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活用し、東京メトロ全路線で大人の普通運賃に原則10円が加算されました。ICカードときっぷでは改定後の金額が異なり、通勤定期券にも追加料金が設定された一方、通学定期券は加算対象外となっています。
2026年現在、東京メトロの普通運賃には、このバリアフリー料金がすでに組み込まれています。また、2026年3月14日にはJR東日本も運賃改定を実施しましたが、両社の変更は目的も仕組みも異なります。2023年の改定理由から、現在の運賃表、子ども料金、定期券の購入条件、JR東日本との違いまで、東京メトロと国土交通省の公式資料をもとに整理します。
【なぜ値上げした?】東京メトロが2023年3月18日に運賃を改定した理由

東京メトロの2023年3月18日の変更は、一般的な物価高騰への対応を目的とした全面的な運賃改定ではありません。中心にあるのは、駅のバリアフリー設備を整備し、誰もが安全で円滑に移動できる環境をつくるための費用確保です。
国土交通省が2021年12月に創設した制度が出発点背景にあるのは、国土交通省が2021年12月に創設した「鉄道駅バリアフリー料金制度」です。
この制度は、鉄道事業者がバリアフリー設備の整備費用を安定的に確保できるよう、利用者から一定の料金を収受する仕組みです。特定の設備を利用する人だけに負担を求めるのではなく、日常的に鉄道を利用する人々から広く費用を集める考え方が採用されています。
東京メトロは2022年4月25日、同制度を活用する方針を発表しました。公式ニュースリリースでは、ホームドアの全線整備やエレベーターなどの設備拡充を進めることを明らかにしています。
つまり、2023年の10円加算は、単純な収益改善を目的とする値上げとは異なり、駅施設の安全性と移動のしやすさを高めるための制度的な料金設定だったのです。
ホームドアやエレベーターの整備には継続的な費用が必要東京メトロが2022年4月に公表した資料には、当時のバリアフリー設備の整備状況が記録されています。
- ホームドア:180駅中150駅で整備完了。整備率83.3%。
- エレベーター1ルート:180駅中177駅で整備完了。整備率98.3%。
- ホームと車両の段差・隙間縮小設備:整備率43.8%。
- バリアフリートイレ:全駅で整備完了。
- 車両のフリースペース:1,547両で整備完了。整備率56.5%。
これらは2021年度末時点の数字です。特にホームと車両の段差・隙間を小さくする工事や、車両のフリースペースの整備など、駅だけでは完結しない取り組みも含まれています。
ホームドアは転落事故や列車との接触を防ぐための設備であり、エレベーターは車いす利用者、高齢者、ベビーカーを利用する人などの移動を支えます。こうした設備は設置して終わりではなく、点検や修繕、更新にも費用がかかります。
東京メトロは2025年度までのホームドア全線整備を目標に掲げていました。2026年現在も、同社の公式バリアフリー情報ページでは整備計画や実績の報告が公開されています。
10円の加算は何に使われるのか対象となるのはホームドアだけではありません。エレベーター、ホームと車両の段差・隙間の縮小、バリアフリートイレ、車両のフリースペースなど、移動の安全性と利便性に関係する設備が含まれます。
このため、10円という金額だけを見て設備投資の効果を判断することはできません。制度の本質は、駅と車両の両方を含むバリアフリー環境を継続的に整備するための財源を確保することにあります。
【運賃表】きっぷとICカードは何円違う?2023年改定後の料金を比較
2023年3月18日以降、東京メトロの大人普通運賃には、ICカード・きっぷのどちらにも原則10円のバリアフリー料金が加算されました。
2026年11月現在、東京メトロ公式サイトに掲載されている普通運賃は、当時の加算を反映した金額です。現在の運賃を確認する際は、改定前の基本運賃と加算後の合計額を混同しないことが大切です。
2026年現在の東京メトロ普通運賃一覧東京メトロの普通運賃は、乗車距離に応じて5つの区分に分かれています。
- 1~6km:ICカード178円、きっぷ180円。小児はIC89円、きっぷ90円。
- 7~11km:ICカード209円、きっぷ210円。小児はIC104円、きっぷ110円。
- 12~19km:ICカード252円、きっぷ260円。小児はIC126円、きっぷ130円。
- 20~27km:ICカード293円、きっぷ300円。小児はIC146円、きっぷ150円。
- 28~40km:ICカード324円、きっぷ330円。小児はIC162円、きっぷ170円。
大人の運賃だけを見ると、最も短い1区間ではICカードがきっぷより2円安く、最長の区分では6円安くなっています。12~19kmの区分では、その差は8円です。
改定前と比較すると、例えば1~6kmのIC運賃は168円から178円へ、きっぷ運賃は170円から180円へ変更されました。ほかの距離区分についても、大人の基本的な加算額は10円です。
ICカードときっぷで金額が違う理由ICカードときっぷの運賃が異なる理由は、運賃の計算単位にあります。
東京メトロは2014年4月1日から、ICカードの運賃を1円単位に設定しています。ICカードでは1円単位での精算が可能ですが、券売機で発売するきっぷは1円・5円硬貨の取り扱いが難しいため、従来どおり10円単位の金額を採用しています。
そのため、同じ乗車区間でもICカードときっぷでは料金が一致しない場合があります。これは2023年のバリアフリー料金制度が導入される前から存在する仕組みです。
2026年現在も、基本的にはICカードの方が安く利用できます。ただし、実際の乗車区間によって差額が変わるため、運賃検索で確認するのが確実です。
小児運賃は大人の半額が基本。端数処理に注意小児運賃については、大人の運賃にバリアフリー料金を加算した後、その金額を基準に半額を計算します。
ここで注意したいのが、きっぷとICカードでは表示される金額が異なることです。例えば7~11kmの区分では、大人のきっぷ運賃210円を半額にすると105円ですが、きっぷの10円単位の端数処理によって小児運賃は110円になります。一方、ICカードでは104円です。
東京メトロの旅客営業規程では、小児の運賃は大人運賃の半額を基本とし、きっぷの10円未満の端数は切り上げる取り扱いが定められています。
年齢区分は次のとおりです。
- 大人:12歳以上。
- 小児:6歳以上12歳未満。
- 幼児:1歳以上6歳未満。
- 乳児:1歳未満。
幼児・乳児は原則として運賃不要ですが、幼児だけで乗車する場合や、大人1人に対して幼児が3人以上同行する場合など、例外的に小児運賃が必要になるケースがあります。
一日乗車券にも10円が加算されるのかここも誤解されやすいポイントです。2023年の制度案内では、東京メトロ24時間券、東京メトロ・都営地下鉄共通一日乗車券、東京フリーきっぷなどは、鉄道駅バリアフリー料金の加算対象外とされていました。
したがって、「東京メトロの乗車券はすべて一律10円値上がりした」という理解は正確ではありません。普通乗車券と各種企画乗車券では、料金の取り扱いが異なります。
【通勤・通学定期券】370円の加算と通学定期が対象外になる条件
2023年の変更で、毎日東京メトロを利用する会社員や学生にとって特に重要だったのが、定期券の取り扱いです。
普通乗車券には1乗車あたり10円が加算されますが、通勤定期券は有効期間に応じた金額が設定されています。一方、通学定期券は大人・小児ともにバリアフリー料金の加算がありません。
通勤定期券は1か月370円の追加大人の通勤定期券に設定されたバリアフリー料金は、次のとおりです。
- 1か月:370円。
- 3か月:1,050円または1,060円。
- 6か月:1,990円または2,000円。
3か月・6か月の金額に幅があるのは、定期運賃の割引率などに応じて料金が設定されるためです。
例えば、東京メトロの2026年6月改正の旅客営業規程に掲載されている1km区分の大人通勤定期券は、1か月の基本運賃が6,260円です。これに370円を加えた6,630円が合計額になります。
実際の定期券価格は乗車区間や経路によって異なります。通勤定期券を購入する場合は、出発駅と到着駅を指定して最新の運賃を確認してください。
通学定期券は大人も小児も加算なし通勤定期券と通学定期券の最も大きな違いは、バリアフリー料金の有無です。
東京メトロは制度導入時から、通学定期旅客運賃については料金を加算しない方針を示しています。この取り扱いは2026年現在の公式案内でも維持されています。
学生の通学に必要な費用を抑え、教育を受けるための移動に対する家計負担を増やさないという点で、利用者にとって大きな意味を持つ例外措置です。
通学定期券を購入できる人・対象外となるケースただし、学生であれば誰でも通学定期券を購入できるわけではありません。東京メトロの旅客営業規程では、通学定期券の発売対象や利用区間について条件を定めています。
主な条件は次のとおりです。
- 指定学校に在籍していること:東京メトロの規程で定める指定学校の学生・生徒・児童などが対象です。
- 通学目的であること:居住地の最寄り駅と在籍する学校の最寄り駅との間を、通学のために利用することが基本です。
- 証明書が必要であること:学校が発行した通学証明書、または所定の通学定期券購入兼用証明書による確認が必要です。
- 通学区間と経路が一致すること:証明書に記載された区間・経路に沿って利用する必要があります。
つまり、学生証を持っているだけでは通学定期券の購入条件を満たしません。指定学校に該当しない場合や、学校への通学とは無関係な区間を利用する場合も、通常の通学定期券の対象にはなりません。
例えば、学校の最寄り駅ではなくアルバイト先の最寄り駅まで利用したい場合、通学定期券の通学区間として自由に設定することはできません。
また、卒業や退学などによって使用資格を失った後は、通学定期券を使用できません。証明書の携帯や提示についても規程に定めがあります。
大切なのは、通学定期券の料金が加算されないことと、学生なら誰でも割引を受けられることは別の話だという点です。
【時系列で検証】東京メトロ運賃改定の経緯と制度の関係
今回の運賃変更は、2023年3月に突然決まったものではありません。国の制度創設、東京メトロの設備整備方針、料金設定の届出、収受開始という段階を踏んで実施されました。
制度と運賃の関係を時系列で整理すると、次のようになります。
| 時期・主体 | 出来事・制度 | 運賃・設備への影響 |
|---|---|---|
| 2021年12月 | 国土交通省が鉄道駅バリアフリー料金制度を創設 | 鉄道事業者が設備整備費用を確保する制度的な枠組みが誕生。 |
| 2022年4月25日 | 東京メトロが制度活用を発表 | ホームドア、エレベーター、段差解消設備などの整備を推進する方針を公表。 |
| 2022年12月22日 | 東京メトロが料金の収受開始日を発表 | 2023年3月18日発売分から料金を加算することを決定。 |
| 2023年3月18日 | 東京メトロ全路線で収受開始 | 大人普通運賃に原則10円、通勤定期券に所定額を加算。通学定期券は対象外。 |
| 2026年3月14日 | JR東日本が運賃改定 | 全エリアの運賃体系を改定。鉄道駅バリアフリー料金は廃止。 |
| 2026年11月 | 東京メトロの現行運賃を確認 | 普通運賃にはバリアフリー料金が含まれ、通勤・通学定期券も異なる取り扱いを継続。 |
この流れで注目したいのは、東京メトロが2022年4月に設備整備の方針を発表し、その約11か月後に実際の料金収受を開始した点です。
また、2026年にはJR東日本が別の運賃改定を実施したため、両社の変更を同じ「値上げ」として扱うと、制度の違いを見落とすことになります。
東京メトロの公式沿革にも、2023年3月18日の鉄道駅バリアフリー料金の収受開始が記録されています。相鉄新横浜線・東急新横浜線を介した直通運転の開始日と同日だったことも、当時の鉄道ネットワークの変化を示す出来事です。
【2026年最新】東京メトロの運賃とJR東日本の改定は何が違う?
2026年11月時点で、東京メトロを利用する人が注意したいのは、2023年のバリアフリー料金が現在の運賃に組み込まれていることです。
2026年の運賃表でも、東京メトロの普通運賃はICカード178円~324円、きっぷ180円~330円です。改札を通る際に、表示運賃とは別にもう一度10円を支払う仕組みではありません。
東京メトロはバリアフリー設備整備を目的とした料金設定東京メトロの2023年改定は、普通運賃と通勤定期券に鉄道駅バリアフリー料金を組み込む形で実施されました。
料金の設定は、国の制度を活用した設備投資の財源確保が中心です。2026年現在も、同社はバリアフリー整備計画や実績を公式ページで公表しています。
そのため、東京メトロの運賃を確認する場合は、単純に「2023年に10円値上げした」という情報だけでなく、現在の運賃に加算分が含まれているかどうかを確認する必要があります。
JR東日本は2026年3月14日に全エリアの運賃を改定一方、JR東日本は2026年3月14日、購入分から運賃改定を実施しました。
同社が2025年8月に公表した運賃改定の認可資料などによると、今回の改定は普通運賃や定期運賃を含む広範囲な運賃体系の見直しです。
主な平均改定率は次のとおりです。
- 普通運賃:平均7.8%。
- 通勤定期運賃:平均12.0%。
- 通学定期運賃:平均4.9%。
ただし、通学定期運賃については一律に値上げされたわけではありません。幹線・地方交通線の通学定期運賃は据え置かれました。一方、従来の電車特定区間・山手線内の運賃区分は幹線に統合されるため、対象区間では変更が生じています。
また、JR東日本は2026年の運賃改定に伴い、鉄道駅バリアフリー料金を廃止しました。東京メトロの2023年の料金設定とは、変更の時期だけでなく制度上の扱いも異なります。
東京メトロとJR東日本の違いを正しく理解する両社の違いは、次の3点で整理できます。
1つ目は改定の目的です。東京メトロの2023年変更は、バリアフリー設備整備のための料金設定です。JR東日本の2026年変更は、物価上昇、人件費、設備投資、修繕費などを踏まえた全体的な運賃体系の改定です。
2つ目は改定の範囲です。東京メトロでは大人普通運賃への原則10円加算と通勤定期券への所定額加算が中心でした。JR東日本では普通運賃、通勤定期、通学定期などを含め、広い範囲で運賃体系を見直しています。
3つ目は制度料金の扱いです。東京メトロでは2026年現在も普通運賃や通勤定期券にバリアフリー料金が含まれています。一方、JR東日本は2026年3月の運賃改定で鉄道駅バリアフリー料金を廃止しました。
したがって、JR東日本の2026年運賃改定を理由に、東京メトロも同じ割合で値上げされたと考えるのは誤りです。運賃を比較するときは、事業者ごとの適用日と料金制度を分けて確認する必要があります。
【東京メトロ運賃改定2023】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:東京メトロは2023年3月18日に全区間で10円値上げしたのですか?
A1:大人の普通乗車券については、原則として1乗車あたり10円のバリアフリー料金が加算されました。ただし、小児運賃は加算後の大人運賃を基準に計算され、一日乗車券など一部の企画乗車券は加算対象外です。
Q2:通学定期券は2023年の改定後も値上がりしていないのですか?
A2:鉄道駅バリアフリー料金については、大人・小児とも通学定期券に加算されません。ただし、指定学校への通学、所定の区間・経路、通学証明書などの発売条件を満たす必要があります。
Q3:2026年現在、東京メトロの運賃はさらに10円値上がりしていますか?
A3:2026年11月現在の公式普通運賃表では、ICカード178円~324円、きっぷ180円~330円です。この表示金額にはバリアフリー料金が含まれているため、別途10円を追加する必要はありません。
東京メトロの2023年3月18日の運賃変更は、国土交通省が2021年12月に創設した鉄道駅バリアフリー料金制度を活用したものです。大人の普通運賃には原則10円、通勤定期券には大人1か月370円などの料金が設定されました。
一方、通学定期券は大人・小児とも加算対象外です。ただし、指定学校への通学や通学証明書などの条件があり、単に学生であるという理由だけで対象になるわけではありません。
2026年現在の普通運賃は、ICカードが178円・209円・252円・293円・324円、きっぷが180円・210円・260円・300円・330円です。小児料金は加算後の大人運賃を基準に計算されるため、乗車券の種類による金額の違いにも注意が必要です。
また、2026年3月14日のJR東日本の運賃改定は、東京メトロの2023年の変更とは別のものです。JR東日本は全体的な運賃体系を見直し、鉄道駅バリアフリー料金を廃止しました。
利用者が運賃を確認するときの判断基準は、次の3つです。
- 普段の乗車では、ICカードときっぷの金額を比較する。
- 通勤・通学では、定期券の種類と適用条件を確認する。
- 2026年の運賃を調べる際は、東京メトロとJR東日本の改定を混同しない。
運賃の10円は小さな金額に見えますが、その背景にはホームドアやエレベーターなど、日常の安全と移動の自由を支える設備投資があります。東京メトロを利用する際は、現在の運賃だけでなく、その料金がどのような制度に基づいて設定されているのかも理解しておくと、運賃改定のニュースをより正確に読み解けます。
参照した主な公式資料
- 東京メトロ「鉄道駅バリアフリー料金の収受開始日について」(2022年12月22日)
- 東京メトロ「鉄道駅バリアフリー料金制度を活用し円滑な移動の実現に取り組みます」(2022年4月25日)
- 東京メトロ「普通券・運賃案内」「旅客営業規程」(2026年版)
- JR東日本「運賃改定のお知らせ」(2026年3月14日実施)
公式資料による確認根拠