トロットとは、韓国で発展した大衆音楽のジャンルで、日本では「韓国演歌」とも呼ばれています。哀愁を帯びたメロディー、独特のこぶしやビブラート、2拍子を中心とした親しみやすいリズムが特徴です。日本統治時代の朝鮮半島で、日本の流行歌や西洋音楽の影響を受けながら形成され、1930年代半ばには独自の音楽様式として定着しました。
ただし、トロットは日本の演歌をそのまま韓国語に置き換えた音楽ではありません。韓国固有の情緒や民衆の生活、戦争や分断の記憶を取り込みながら独自の発展を遂げてきました。2000年代にはネオ・トロットやセミトロットが登場し、2020年代にはオーディション番組を通じて若い世代にも広がっています。2026年現在の音楽シーンを理解するには、その歴史と日本の演歌との違いを押さえることが欠かせません。
【基本解説】トロットとは?韓国の演歌・歌謡曲と呼ばれる理由

トロット(韓国語:트로트、트롯)は、大韓民国を代表する大衆音楽のジャンルの一つです。日本では「韓国演歌」と紹介されることが多く、韓国では成人歌謡(성인가요)や伝統歌謡(전통가요)という名称でも知られています。
日本の演歌と共通する音楽的特徴がある一方、韓国語の歌詞に込められた情感や独特のリズム、歌唱表現などに違いがあります。
トロットの音楽的な特徴は哀愁と独特の歌唱法トロットを聴いて最初に気づくのは、どこか懐かしく、切なさを感じさせるメロディーです。
代表的な音楽的特徴は次のとおりです。
- 2拍子を中心としたリズム:一定の拍を刻む、親しみやすいリズムが特徴。
- 五音音階:伝統的な楽曲では、5つの音を中心にした短調のメロディーが多い。
- こぶしやビブラート:音程を細かく揺らしたり、滑らかに変化させたりする歌唱表現。
- 感情を前面に出す歌詞:恋愛、別れ、望郷、人生の苦労などを題材にする。
- 幅広いアレンジ:伝統的な伴奏から電子楽器、ダンスビート、ポップスまで取り入れる。
特に注目したいのが、韓国語で「꺾기(コッキ)」と呼ばれる独特の音程表現です。音をまっすぐ伸ばすだけでなく、途中で音程を曲げたり、細かく装飾したりすることで、歌詞の感情を強調します。
同じ失恋を歌う場合でも、単に悲しい気持ちを伝えるのではなく、未練や後悔、諦めきれない思いまで歌声に込めるのがトロットの魅力です。
成人歌謡(성인가요)・伝統歌謡(전통가요)との関係韓国でトロットを説明するときに登場するのが、「成人歌謡」と「伝統歌謡」という言葉です。
成人歌謡(성인가요)は、韓国の音楽業界でトロットなどを分類するときに使われてきた呼称です。中高年層のリスナーを主な対象とする音楽というイメージがあり、日本の演歌や懐メロに近い位置づけで紹介されることもあります。
一方、伝統歌謡(전통가요)は、韓国で長く親しまれてきた大衆歌謡としての価値を強調する名称です。
ただし、トロットは朝鮮半島の古来の民謡そのものではありません。近代に外来音楽や日本の流行歌の影響を受けて形成されたジャンルであり、韓国社会の中で独自の文化的意味を獲得してきた音楽です。
2026年10月には、歌手パク・サンチョルが「成人歌謡」という呼称によって若者の音楽とトロットが分けられてしまう問題を取り上げ、より広い意味での大衆歌謡として捉えてほしいという考えを示しました。ジャンルを年齢で区切るのではなく、音楽そのものを評価する動きが見られます。
ポンチャック(뽕짝)とは?トロットとの違いポンチャック(뽕짝)は、韓国のトロットを語る際によく登場する言葉です。
「ポンチャック」という呼び方は、トロット特有の伴奏リズムや音楽的な雰囲気を表す俗称として広まりました。軽快で反復的なリズムを特徴とし、かつてはトロットを低く評価するニュアンスを伴うこともありました。
特に1960年代末以降、トロットを軽薄な音楽として揶揄する文脈で使用されるようになった経緯があります。
そのため、ポンチャックとトロットを完全に同じ意味の言葉として扱うのは正確ではありません。現在はトロットというジャンル名が一般的で、ポンチャックは歴史的背景や特定の音楽的イメージを説明するときに使われます。
【歴史と語源】トロットはいつ誕生した?フォックストロットとの関係
トロットの成立を理解するには、日本統治時代の朝鮮半島における音楽文化と、西洋音楽の流入を切り離して考えることはできません。
韓国のトロットは1930年代に独自の様式を確立しましたが、その前段階では日本の流行歌や西洋音楽、朝鮮半島の音楽文化が複雑に交わっていました。
トロットの語源はフォックストロットトロットという名称は、英語の「Foxtrot(フォックストロット)」に由来するとされています。
フォックストロットは、20世紀初頭のアメリカで広まった社交ダンスと、その伴奏音楽を指す言葉です。軽快なリズムを特徴とし、欧米から日本や朝鮮半島にも伝わりました。
ただし、フォックストロットと韓国のトロットは同じ音楽ではありません。
韓国民族文化大百科事典によると、両者には2拍子という共通点があるものの、音楽様式としては別のものです。フォックストロットの名称がトロットの語源になったからといって、現在のトロットが社交ダンス音楽そのものというわけではありません。
トロットのリズムはなぜ2拍子なのかトロットの代表的な特徴として挙げられるのが2拍子です。
日本の演歌にも似たリズムがありますが、トロットでは一定の拍を繰り返すことで、歌詞や歌声の感情表現を際立たせます。
初期の代表的な楽曲では、短調の五音音階と2拍子を組み合わせた構成が多く見られました。韓国国際交流財団の文化誌『Koreana』でも、トロットの典型的な特徴として、第4音と第7音を抜いた五音音階と2拍子が紹介されています。
ただし、すべてのトロットが2拍子というわけではありません。戦後にはさまざまなリズムが取り入れられ、ブルーストロットなど異なる拍子を持つ楽曲も発展しました。
1930年代、日本統治時代に形成された背景1920年代から1930年代にかけて、朝鮮半島ではレコード産業が発展し、さまざまな大衆歌謡が制作されるようになりました。
当時の朝鮮半島には、日本の流行歌を翻訳・翻案した楽曲が流通していました。その後、朝鮮半島の作詞家や作曲家によるオリジナル作品が増え、トロットの原型が形成されていきます。
当時の重要な楽曲には、次のような作品があります。
- 1928年:金曙汀が作曲した「三人の仲間」など、朝鮮半島で制作された創作歌謡が登場。
- 1932年:李愛利秀の「荒城の跡」が人気を集める。
- 1934年:高福寿の「他郷暮らし」が大ヒット。
- 1935年:李蘭影の「木浦の涙」が発表され、トロットの代表的な様式が確立。
特に1935年の「木浦の涙」は、トロットの歴史を語るうえで欠かせない作品です。
歌手の李蘭影(イ・ナニョン)が歌ったこの曲は、故郷や愛する人への思いを描きながら、当時の人々が抱えていた喪失感や民族的な悲しみを象徴する作品として受け止められました。
単なる恋愛歌にとどまらず、社会的な苦悩を重ね合わせて聴くことができた点が、長く愛される理由の一つです。
【年代別年表】トロットの歴史と代表的な転換点
トロットは1930年代に成立した後、韓国社会の政治的・文化的変化を反映しながら発展しました。日本統治時代の流行歌から戦後の国民的歌謡、さらに現代のポップスとの融合まで、その歩みは一様ではありません。
韓国民族文化大百科事典や韓国国際交流財団の文化資料、音楽研究などを踏まえた主要な転換点は次のとおりです。
| 年代 | 主な出来事・人物 | 音楽史上の意味 |
|---|---|---|
| 1920年代 | 日本の流行歌の翻訳・翻案曲が流通 | トロット成立の前段階 |
| 1928年 | 朝鮮半島の創作歌謡が登場 | 国内制作の楽曲が増加 |
| 1932年 | 李愛利秀「荒城の跡」 | 初期の代表的な流行歌として定着 |
| 1934年 | 高福寿「他郷暮らし」 | 望郷をテーマにしたヒット曲 |
| 1935年 | 李蘭影「木浦の涙」 | 初期トロットの代表作として様式が確立 |
| 1940年代 | 長調トロットが登場 | 短調中心の音楽から表現が多様化 |
| 1960年代 | 李美子「椿娘」 | トロットの人気が再燃。日本的という理由による放送禁止問題も発生 |
| 1970年代 | 羅勲児、南珍らが活躍 | トロットが大衆音楽の主要ジャンルとして発展 |
| 1980年代後半 | 伝統歌謡という呼称が広まる | 文化的価値の再評価 |
| 2003年 | チャン・ユンジョン「オモナ!」 | 若者にも親しみやすい新しいトロットがヒット |
| 2009年 | ホン・ジニョン「愛のバッテリー」 | ネオ・トロットやポップ路線の発展 |
| 2019~2020年 | 「ミストロット」「ミスタートロット」 | テレビオーディションを通じて国民的ブームが拡大 |
| 2023~2024年 | 「トロット・ガールズ・ジャパン」 | 日本でトロットを紹介する日韓共同プロジェクトが展開 |
| 2026年 | SNS・AIによる新しい表現やジャンルの再評価 | デジタル時代の大衆音楽として新たな展開 |
トロットの歴史を理解するうえで避けて通れないのが、日本文化の影響をめぐる論争です。
1945年の日本統治終了後、韓国では日本文化に対する規制が続きました。その中で、日本の流行歌と音楽的な共通点を持つトロットも、「倭色」、つまり日本的な音楽だという批判を受けるようになります。
象徴的な事例が、歌手・李美子(イ・ミジャ)の「椿娘」です。
1964年に発表された同曲は大ヒットし、李美子は「エレジーの女王」と呼ばれる存在になりました。しかし、1965年には日本的な要素があるという理由で放送禁止となり、1987年まで解禁されませんでした。
この出来事は、音楽の起源と文化的な帰属が必ずしも一致しないことを示しています。
トロットは外来音楽の影響を受けて成立した一方、韓国語の歌詞や民族的な感情を取り込み、韓国の人々にとって欠かせない大衆音楽へと変化していきました。
戦後の発展と1970年代の人気歌手朝鮮戦争後、トロットは人々の生活に寄り添う音楽として広まりました。戦争や分断、故郷を離れる経験などが歌詞の題材となり、聴く人々の共感を集めたのです。
1960~1970年代には、李美子、羅勲児(ナ・フナ)、南珍(ナムジン)、裵湖(ペ・ホ)などが活躍しました。
特に羅勲児と南珍は、1970年代の韓国大衆音楽を代表する男性歌手として知られています。
この時代のトロットは、単なる懐メロではありません。社会の変化や人々の生活を映し出す、現役の大衆音楽として存在していました。
【徹底比較】トロットと日本の演歌の違いは?共通点も解説
トロットと日本の演歌は、非常によく似た音楽として紹介されます。実際、哀愁を帯びたメロディーやこぶし、ビブラート、失恋や望郷をテーマにした歌詞など、共通する部分は少なくありません。
しかし、両者の歴史や音楽的な発展を比較すると、明確な違いも見えてきます。
トロットと演歌の共通点最初に、両者に共通する特徴を整理してみましょう。
- 恋愛や別れ、故郷への思いなどを歌う。
- 短調を使った哀愁のあるメロディーが多い。
- こぶしやビブラートを使った歌唱表現がある。
- 人生の苦労や人間関係をテーマにした作品が多い。
- カラオケや歌謡ショーなど、歌い手と聴き手が近い文化を持つ。
どちらも歌詞の意味だけでなく、歌手がどのように声を使って感情を表現するかが大切な音楽です。
日本の演歌とは異なるトロット独自の魅力一方、トロットは韓国独自の情緒やリズムを取り入れながら発展してきました。
違いを比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 韓国のトロット | 日本の演歌 |
|---|---|---|
| 成立の背景 | 日本統治時代の流行歌、西洋音楽、韓国の音楽文化が融合 | 近代日本の流行歌や西洋音楽の影響を受けて発展 |
| 代表的なリズム | 2拍子を中心に多様なリズムを使用 | 2拍子系や3拍子系など幅広い |
| 音階 | 短調・長調の五音音階など | ヨナ抜き音階など日本的な音階表現 |
| 歌唱表現 | 音程を曲げるコッキ、こぶし、ビブラート | こぶし、ビブラート、節回し |
| 歌詞の題材 | 恋愛、望郷、別れ、人生、情や悲哀 | 恋愛、別れ、義理、人情、旅情、望郷 |
| 現代の発展 | K-POP、ダンス、EDM、R&Bなどとの融合 | ポップスやロックなどを取り入れた作品も存在 |
| 現在の位置づけ | 韓国の大衆歌謡の一ジャンル | 日本の大衆歌謡の一ジャンル |
この比較から分かるのは、両者が似ているからといって、同一の音楽ではないということです。
「日本の演歌を韓国がコピーした」という説明は正しい?この疑問には、歴史的な順序を踏まえて答える必要があります。
韓国のトロットが日本の流行歌から影響を受けたことは、韓国の音楽史研究でも説明されています。しかし、当時の日本では、現在のようなジャンルとしての演歌がまだ確立しておらず、流行歌と呼ばれていました。
日本で演歌というジャンルが現在のような位置づけを得たのは、主に1960~1970年代のことです。一方、韓国では1960年代半ば以降、トロットという名称が定着しました。
つまり、現在の日本の演歌と韓国のトロットは、近代の東アジアにおける流行歌の歴史を共有しながら、それぞれ別の文化として発展した音楽なのです。
2016年に発表された音楽研究論文「A study on the traditionalism of trot」でも、トロットが外来音楽から韓国の伝統的な大衆音楽として受け入れられていく過程が分析されています。
この歴史を理解すると、トロットを単純に「韓国版の演歌」とだけ説明することの限界が見えてきます。
【現代の進化】ネオ・トロットとは?セミトロットとの違い
トロットは昔ながらの歌唱法やメロディーを守り続けているだけの音楽ではありません。2000年代に入ると、若い世代にも親しみやすいポップスやダンスミュージックを取り入れた作品が増えました。
こうした現代的なトロットを説明する際に使われるのが「ネオ・トロット」と「セミトロット」という言葉です。
ネオ・トロットとは何かネオ・トロットとは、従来のトロットに現代的なポップスやダンスミュージックの要素を取り入れた新しいスタイルを指す呼称です。
伝統的なトロットでは、哀愁のある短調のメロディーや感情を強く表現する歌唱が重視されてきました。
一方、ネオ・トロットでは次のような特徴が見られます。
- アップテンポで軽快なリズム。
- 覚えやすく口ずさみやすいサビ。
- シンセサイザーや電子楽器を使用したアレンジ。
- ダンスやパフォーマンスを意識した演出。
- 若い世代にも受け入れられやすい歌詞やサウンド。
ただし、ネオ・トロットは厳密に定義された一つの音楽理論上のジャンルというより、従来型から現代的に変化したトロットを説明する言葉として使われています。
セミトロットとは?従来型との違いセミトロットは、トロットの伝統的な歌唱法を残しながら、ポップスに近い軽快なサウンドを取り入れたスタイルです。
「セミ」という言葉が示すように、伝統的なトロットと現代的なポップスの中間的な音楽として理解すると分かりやすいでしょう。
従来型のトロットが哀愁や人生の悲哀を強く表現するのに対して、セミトロットは明るさや親しみやすさを重視します。
2000年代以降、韓国ではこのスタイルが人気を集めました。
セミトロットを広めた代表的な歌手代表的な存在として挙げられるのが、チャン・ユンジョンとホン・ジニョンです。
チャン・ユンジョン(장윤정)は、2003年の楽曲「オモナ!(어머나!)」のヒットによって、現代的なトロットを広めた歌手として知られています。
従来のトロットらしい歌唱表現を残しつつ、覚えやすいサビと軽快なテンポを採用したことで、幅広い世代に受け入れられました。
続いて、ホン・ジニョン(홍진영)は2009年の「愛のバッテリー(사랑의 배터리)」などで人気を集めました。K-POPアイドルグループ出身という経歴もあり、ポップス的な表現をトロットに取り入れる存在として注目されました。
加えて、2005年のパク・サンチョル「無条件(무조건)」や2008年のパク・ヒョンビン「シャバンシャバン(샤방샤방)」も、軽快でカラオケ向きのトロットとして知られています。
伝統的なトロットと現代型の違い- 伝統型:短調、哀愁、望郷、別れ、こぶしを強調。
- ネオ・トロット:ポップスやダンスミュージックを取り入れた現代的なサウンド。
- セミトロット:伝統的な歌唱法を残しつつ、軽快で親しみやすい曲調を重視。
なお、トロットにはエレジートロットやブルーストロット、R&Bトロットなども存在します。すべてを伝統型と現代型の二つに分けられるわけではありません。
【2026年最新】韓国トロットの現在と再評価、日本での広がり
2026年現在、トロットは韓国の中高年層だけが楽しむ懐メロという位置づけから、テレビ、配信、SNSを通じて幅広い世代に届けられる音楽へと変化しています。
その転換を象徴するのが、テレビオーディション番組の成功と、日本でのトロット関連企画の展開です。
「ミストロット」「ミスタートロット」が起こしたブーム韓国のトロット人気を大きく押し上げたのが、TV CHOSUNのオーディション番組です。
2019年に放送された女性歌手発掘番組「ミストロット」は、最高視聴率18%台を記録しました。優勝したソン・ガインは一躍人気歌手となり、トロットの新しいスターとして注目を集めました。
続いて2020年には男性歌手を対象とした「明日はミスタートロット」が放送されます。
KBS WORLDの報道によると、同番組は2020年3月12日の最終回で第2部35.7%という視聴率を記録しました。総合編成チャンネルの番組として非常に高い数字であり、トロット人気の大きさを示す出来事でした。
番組からはイム・ヨンウン、イ・チャンウォン、ヨンタクらが人気を獲得し、トロット歌手の活動領域もテレビ、コンサート、音楽配信へと広がっていきました。
こうしたオーディション番組の特徴は、完成されたスターだけでなく、歌手の人生や努力、成長過程まで視聴者に届けることです。歌そのものへの評価に加えて、出演者の人間的な魅力が支持につながりました。
トロットガールズジャパンとは?日本で開催された韓国発のオーディション日本でトロットの認知度を高めた企画として知られるのが、日韓共同プロジェクト「トロット・ガールズ・ジャパン(TROT GIRLS JAPAN)」です。
韓国で人気を集めたトロットのオーディション形式を日本に導入し、新しい歌姫を発掘することを目的として2023年に始まりました。
WOWOWとABEMAで放送・配信され、幅広い年齢層や音楽経験を持つ女性が参加しました。
2024年2月23日に開催された決勝大会では、9人のファイナリストが競い合い、福田未来が優勝しました。
この企画の特徴は、韓国のトロットをそのまま再現するだけでなく、日本の昭和歌謡や懐メロとの接点を重視したことです。
日本の演歌や歌謡曲を聴いて育った人にとって、トロットは初めて聴く音楽でありながら、どこか懐かしさを感じるジャンルでもあります。その親しみやすさが、日本での受け入れにつながっています。
2026年はSNSとAIによる新しいトロット表現も登場2026年のトロットを語るうえで注目したいのが、デジタル技術との融合です。
2026年2月には、BBCが韓国トロットの復活とAI活用の動きを取り上げたとAFPBB Newsが報じました。
報道では、SNSを通じて若い歌手が注目を集めていることや、K-POPやヒップホップの楽曲をトロット風にアレンジする生成AIの活用などが紹介されています。
これは、伝統的なトロットの歌唱表現と現代のデジタル文化が交わり始めていることを示す動きです。
もちろん、AIによるアレンジがトロット全体を代表しているわけではありません。しかし、従来の音楽ファン以外にもジャンルを知ってもらう新しい入口になっています。
また、2026年10月の韓国メディアの報道では、成人歌謡という年齢を意識させる分類から、より広い大衆歌謡としてトロットを捉え直そうとする考えも紹介されました。
トロットは過去の音楽を保存するだけでなく、現在のポップカルチャーと結びつきながら、新しいリスナーを獲得しているのです。
【プロの結論】トロットの本当の魅力と聴くときの判断ポイント
トロットの魅力は、単に日本の演歌に似ていることではありません。近代の東アジアで生まれた音楽的な共通基盤を持ちながら、韓国の社会や歴史、人々の感情を取り込んで独自の文化へと発展した点にあります。
特に重要なのは、トロットが時代に合わせて変化してきたことです。
1930年代には日本の流行歌や西洋音楽の影響を受け、戦後には朝鮮戦争や分断の悲しみを表現する音楽となりました。1960~1970年代には国民的な人気を獲得し、2000年代にはポップスやダンスミュージックとの融合が進みました。
そして2020年代にはオーディション番組やSNSを通じて、若い世代にもその魅力が伝わっています。
トロットを聴くなら注目したい3つのポイント1. 歌詞に込められた韓国独自の情緒
恋愛や別れだけでなく、故郷への思い、家族への愛情、人生の苦労などを表現する作品が多くあります。歌詞の背景を知ると、メロディーの印象も変わります。
2. 歌手ごとに異なる歌唱表現
トロットでは、こぶしやビブラート、音程の変化が重要です。歌手によって声の響きや節回しが異なるため、同じ曲でもまったく違う印象になります。
3. 伝統型と現代型を聴き比べる
「木浦の涙」のような初期の代表曲と、チャン・ユンジョンの「オモナ!」やホン・ジニョンの「愛のバッテリー」を聴き比べると、トロットがどのように進化したのかが分かります。
トロットはどんな人におすすめ?- おすすめできる人:日本の演歌や昭和歌謡が好きな人、韓国の音楽文化を深く知りたい人、歌唱力や感情表現を楽しみたい人。
- 特に楽しめる人:K-POPだけでなく、韓国の歴史や大衆文化にも興味がある人。
- 最初は戸惑う可能性がある人:現代的なダンスミュージックだけを求めている人や、強いこぶしやビブラートを使う歌唱法が苦手な人。
ただし、現代のトロットにはポップスやEDMに近い楽曲もあるため、伝統的な歌唱法だけを基準にジャンル全体を判断する必要はありません。
トロットを理解する最もよい方法は、初期の名曲から現代のヒット曲まで、時代を追って実際に聴き比べることです。
【トロットとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:トロットとは簡単にいうと何ですか?
A1:韓国の大衆音楽の一ジャンルです。日本の演歌に似た哀愁のあるメロディーやこぶし、ビブラートなどが特徴ですが、韓国独自の歴史や音楽文化を取り入れて発展してきました。
Q2:トロットは日本の演歌から生まれたのですか?
A2:日本の流行歌や演歌につながる音楽から影響を受けたことは確かです。ただし、西洋音楽や朝鮮半島の音楽文化も融合しており、現在のトロットは独自のジャンルとして発展しています。
Q3:トロットの語源はフォックストロットですか?
A3:はい。英語のFoxtrot(フォックストロット)に由来するとされています。ただし、名称が由来していることと、現在の音楽様式が同じであることは別です。2拍子という共通点以外、両者は異なる音楽です。
Q4:トロットのリズムは必ず2拍子ですか?
A4:いいえ。初期の伝統的なトロットでは2拍子が多く見られますが、現代ではさまざまなリズムが取り入れられています。ブルーストロットなど、異なる拍子を持つスタイルもあります。
Q5:ネオ・トロットとセミトロットは何が違いますか?
A5:ネオ・トロットは、伝統的なトロットを現代的に進化させた音楽全般を指す呼称です。セミトロットは、その中でもポップスのような軽快さと従来のトロットの歌唱表現を組み合わせたスタイルとして知られています。
Q6:ポンチャックはトロットと同じ意味ですか?
A6:完全に同じ意味ではありません。ポンチャックはトロットの音楽的な雰囲気やリズムを表す俗称で、歴史的には軽視するニュアンスを持つ場合もありました。
Q7:トロットガールズジャパンとは何ですか?
A7:2023年に始まった日韓共同の女性歌手発掘オーディションプロジェクトです。WOWOWとABEMAで放送・配信され、2024年2月の決勝大会では福田未来が優勝しました。
トロットとは、日本の演歌と共通する音楽的特徴を持ちながら、韓国の歴史や社会、文化的な情緒を反映して発展してきた大衆音楽です。
その原型は日本統治時代の1930年代に形成され、李蘭影の「木浦の涙」などの名曲によって広く定着しました。その後、戦争や分断、社会の変化を背景に、韓国の人々の生活に寄り添う音楽として発展してきました。
フォックストロットに由来する名称や2拍子、五音音階、独特の歌唱法はトロットを理解するうえで重要な要素です。一方、2000年代以降はネオ・トロットやセミトロットが広まり、ポップスやダンスミュージックとの融合も進んでいます。
2026年現在は、テレビオーディションやSNS、AIによる新しい表現などを通じて、トロットの魅力が改めて評価されています。
日本の演歌と似ている部分だけに注目するのではなく、韓国独自の歴史や歌詞の情緒、時代ごとの音楽的な変化まで理解することが、トロットを深く楽しむためのポイントです。
懐かしさと新しさを併せ持つトロットは、韓国の大衆文化を知るうえでも、日韓の音楽的なつながりを考えるうえでも興味深いジャンルといえるでしょう。
主な参考資料・報道
- 韓国民族文化大百科事典「トロット」:成立史、音楽的特徴、名称の由来。
- 韓国国際交流財団『Koreana』:李蘭影と「木浦の涙」、日本統治時代の音楽史。
- TOWER RECORDS「Mikiki」:ネオ・トロット、セミトロット、現代の代表的歌手。
- KBS WORLD:ミストロット、ミスタートロットの人気と視聴率。
- ABEMA公式メディア:トロット・ガールズ・ジャパンの決勝結果。
- AFPBB News(2026年2月):BBCによるトロットの復活とAI活用の報道。
- 朝鮮日報日本語版(2026年10月):成人歌謡という呼称をめぐる議論。