生活保護の不正受給を疑ったとき、「どこに通報すればよいのか」「匿名でも情報提供できるのか」「証拠がなくても行政は調査してくれるのか」と迷う人は少なくありません。2026年11月現在、厚生労働省が公表している全国の最新年度データでは、令和6年度の生活保護法第78条に基づく不正受給は2万5,907件、金額は約114億円に上ります。前年度の2万3,786件から増加しており、制度の適正な運用が改めて問われています。
通報先は原則として対象者が居住する地域を管轄する福祉事務所です。自治体によっては専用電話やウェブフォームを設けており、匿名での情報提供を認めているところもあります。収入の未申告、年金や資産の隠蔽、世帯構成の虚偽申告などの具体例から、通報後の調査、返還請求、刑事罰まで、2026年の最新公表資料と現行法令をもとに解説します。
【2026年最新】生活保護の不正受給は2万5,907件!厚生労働省の統計から実態を検証

生活保護の不正受給を考えるうえで、まず押さえたいのが厚生労働省の全国統計です。2026年1月に公表された令和7年度全国厚生労働関係部局長会議の詳細資料には、令和6年度の不正受給状況が掲載されています。
令和6年度の不正受給額は約114億円厚生労働省の資料によると、令和6年度の生活保護法第78条の適用状況は次のとおりです。
- 不正受給件数:25,907件
- 不正受給金額:11,400,337千円
- 1件当たりの平均金額:約44万円
- 告発等:162件
- 保護の停止等:5,448件
金額に換算すると、約114億円です。前年度の令和5年度は23,786件、約97億円だったため、件数は2,121件増加しました。増加率は約8.9%です。
ただし、この数字は不正受給として第78条の徴収対象になった件数であり、通報件数や不正を疑われた人の総数ではありません。1件を1人と単純に読み替えることもできません。
過去5年間の不正受給件数と金額| 年度 | 不正受給件数 | 不正受給額 | 1件当たり | 告発等 |
|---|---|---|---|---|
| 令和2年度 | 32,090件 | 約126.5億円 | 約39.4万円 | 144件 |
| 令和3年度 | 27,891件 | 約110.5億円 | 約39.6万円 | 125件 |
| 令和4年度 | 24,683件 | 約105.7億円 | 約42.8万円 | 136件 |
| 令和5年度 | 23,786件 | 約97.4億円 | 約40.9万円 | 132件 |
| 令和6年度 | 25,907件 | 約114.0億円 | 約44.0万円 | 162件 |
長期的には令和2年度から令和5年度まで減少傾向にありましたが、令和6年度は再び増加しています。金額も前年度から約16.6億円増えました。
不正受給の約半数は就労収入の未申告不正受給の内訳を見ると、最も多いのは就労収入の無申告です。
- 稼働収入の無申告:13,357件(51.6%)
- 稼働収入の過少申告:2,559件(9.9%)
- 各種年金等の無申告:3,199件(12.3%)
- 保険金等の無申告:540件(2.1%)
- 預貯金等の無申告:292件(1.1%)
- 交通事故に係る収入の無申告:236件(0.9%)
- その他:5,724件(22.1%)
稼働収入の無申告と過少申告を合計すると15,916件で、全体の約61.5%を占めます。働いて得た収入を申告しない、実際より少ない金額を申告するといった行為が、不正受給の大きな割合を占めているのです。
不正受給は通報だけで発覚するわけではない注目したいのが、不正受給が発見されたきっかけです。令和6年度の内訳は、照会・調査が22,962件(88.6%)、通報・投書が1,599件(6.2%)、その他が1,346件(5.2%)でした。
つまり、通報や投書も発見のきっかけになっていますが、実際には行政機関による照会や調査が大部分を占めています。通報がなければ不正が発見されないという仕組みではありません。
この統計から分かるのは、福祉事務所への情報提供は行政調査を補う役割を持つ一方、最終的な判断は公的な調査と事実確認によって行われるということです。
【通報先はここ】生活保護の不正受給を福祉事務所へ伝える方法
生活保護の不正受給を疑った場合、最初に連絡する窓口は、原則として対象者が居住する地域を管轄する福祉事務所です。
基本的な通報先は自治体の生活保護担当部署具体的な窓口は自治体によって名称が異なります。
- 市役所・区役所の生活支援課
- 福祉事務所の生活保護担当
- 保護課・社会援護課
- 生活保護適正化担当部署
- 生活保護適正化情報ダイヤル
市や区では、それぞれの福祉事務所や担当部署が情報を受け付けます。福祉事務所を設置していない町村の地域では、都道府県の福祉事務所が担当する場合があります。
対象者がどの自治体から生活保護を受けているのか分からない場合は、居住地域の市区町村役場に連絡し、生活保護の適正化に関する情報提供をしたいと伝えると、担当窓口を確認できます。
厚生労働省に直接連絡して個別の受給者を調査してもらうのではなく、まずは地域の福祉事務所に情報を届けることが基本です。
通報方法は電話・メール・専用フォームなど自治体によって、利用できる情報提供の方法は異なります。代表的な方法は次のとおりです。
- 電話:担当部署や不正受給対策専用ダイヤルに状況を伝える。
- メール:日時、場所、収入や世帯構成に関する情報を文章で送る。
- ウェブフォーム:自治体が設置している専用受付フォームから情報を入力する。
- 郵送・FAX:書面にまとめて担当部署へ提出する。
- 窓口:市区町村役場や福祉事務所で直接情報を伝える。
例えば、千葉市は2026年7月16日更新の公式案内で、生活保護の不正受給に関するウェブ受付を実施しています。提供された情報は各区の社会援護課と共有され、必要に応じて調査が行われます。緊急の場合は各区の社会援護課への電話連絡も案内されています。
大阪市も、不正受給の可能性がある場合には、対象者が居住する区の保健福祉センターの生活保護業務担当へ情報提供するよう案内しています。
通報するときに伝えるべき5つの情報福祉事務所への情報提供では、感情的な評価よりも、確認できる事実を具体的に伝えることが大切です。
- 対象者の情報:氏名、住所、居住地域など、分かる範囲の情報。
- 疑われる内容:就労収入の未申告、年金の未申告、資産の隠蔽、世帯構成の虚偽など。
- 発生時期:いつ頃から、どのくらいの頻度で発生しているのか。
- 情報の根拠:自分が直接確認したことなのか、第三者から聞いた話なのか。
- 参考資料:適法に入手した資料や、確認できる勤務先・事業所などの情報。
例えば、「働いているようだ」という曖昧な情報だけでなく、「特定の勤務先で定期的に働いている様子を複数回確認した」といった形で、確認した事実と推測を分けて伝えると、担当者が状況を把握しやすくなります。
決定的な証拠を一般の人が集める必要はありません。調査に必要な資料を収集する権限は行政側にあります。無断で他人の郵便物を開封したり、住居に侵入したり、個人情報を不正に取得したりする行為は避けてください。
【匿名通報は可能?】生活保護の不正受給を匿名で相談するときの注意点
生活保護の不正受給を知っていても、「自分が通報したことを相手に知られたくない」「近所付き合いがあるので名前を出したくない」という人もいるでしょう。
実際、匿名での情報提供を受け付けている自治体は存在します。ただし、全国すべての自治体で同じ受付制度が用意されているわけではありません。
匿名での情報提供を明記している自治体もある具体例として、大阪府守口市は「生活保護適正化情報ダイヤル」を設け、電話、メール、郵送、FAX、窓口での情報提供を受け付けています。
守口市の公式案内では、情報提供者の個人情報を厳密に取り扱うことに加え、匿名での情報提供も受け付けると説明しています。情報提供者が特定されないよう配慮した調査を行うことも案内されています。
大阪府門真市の公式FAQでも、不正受給に関する情報提供者の個人情報を厳守し、匿名での情報提供も可能としています。
匿名通報のメリットと注意点匿名で通報する最大のメリットは、氏名や連絡先を明かさずに行政へ情報を届けられることです。
一方、匿名の場合には、担当者が追加情報を確認したいときに連絡を取れないという問題があります。情報が不十分であれば、調査の必要性を判断することも難しくなります。
匿名で情報提供する場合は、次の点を意識してください。
- 対象者を特定できる情報をできるだけ具体的に記載する。
- 発生した日時や期間を整理する。
- 直接見た事実と人から聞いた情報を区別する。
- 可能であれば、客観的に確認できる資料の種類を伝える。
- 自治体の受付フォームに匿名で入力できるか、事前に確認する。
なお、匿名通報が可能であることと、調査結果を通報者に知らせてもらえることは別問題です。生活保護の受給状況や調査内容は個人情報に関係するため、匿名・実名を問わず、進捗や結果を教えてもらえない場合があります。
また、情報提供者の秘密を守る取り扱いが案内されていても、すべての自治体で受付方法や情報管理の詳細が同じとは限りません。通報前に地域の公式案内を確認することが大切です。
【不正受給の具体例】収入未申告・年金未申告・資産隠しの見分け方
生活保護の不正受給とは、事実と異なる申告や不正な手段によって、本来受け取ることができない保護費を受給する行為です。
重要なのは、生活保護を受けている人が働いている、車に乗っている、旅行をしているといった事情だけで、不正受給と判断することはできないという点です。
1.就労収入の未申告・過少申告代表的な不正受給の一つが、仕事で得た収入を福祉事務所に申告しないケースです。
具体的には、次のような行為が該当する可能性があります。
- アルバイトやパートで得た給与を申告しない。
- 日雇いや単発の仕事で得た収入を隠す。
- 自営業や個人事業で得た売上・収入を正しく申告しない。
- 実際の給与より少ない金額を収入申告書に記載する。
- 複数の勤務先から得た収入の一部を隠す。
生活保護は、就労している人が絶対に受けられない制度ではありません。世帯の収入が最低生活費に満たない場合には、働きながら生活保護を受けることもできます。
問題になるのは、働いていることそのものではなく、収入を正しく申告していないことです。
2.年金・仕送り・保険金などの未申告収入として申告が必要になるものは、給与だけではありません。
- 老齢年金や障害年金などの各種年金
- 親族や知人からの仕送り
- 生命保険の満期保険金や解約返戻金
- 各種手当や給付金
- 交通事故の損害賠償金や補償金
- その他の臨時収入
特に年金の未申告は、厚生労働省の令和6年度統計でも3,199件、全体の12.3%を占めています。
年金を受給していることを隠して生活保護費を受け取る行為は、実際の収入と保護費の算定に差が生じる原因になります。
ただし、収入の種類によって認定方法や控除の取り扱いは異なります。お金を受け取ったという事実だけで、直ちに不正受給と決まるわけではありません。
3.預貯金・不動産などの資産隠し生活保護制度では、利用できる資産を最低限度の生活の維持に活用することが原則です。
そのため、次のようなケースは不正受給の疑いにつながります。
- 銀行口座や預貯金の存在を意図的に隠している。
- 不動産や土地などの資産について虚偽の申告をしている。
- 本人が実質的に管理している資産を他人名義にして隠している。
- 保険金や資産売却代金を申告していない。
ただし、持ち家や自動車などを保有しているというだけで不正受給になるわけではありません。
厚生労働省は、生活保護制度に関する案内で、居住用の持ち家について保有が認められる場合があることや、通勤用の自動車などについて一定の例外があることを説明しています。
資産の種類、利用目的、地域事情、生活状況などを踏まえて判断されるため、外から見ただけで違法と決めつけることはできません。
4.実際の世帯構成や居住状況を偽っている生活保護は原則として世帯単位で実施されます。そのため、実際の生活実態と福祉事務所に届け出た世帯構成が異なる場合も問題になります。
例えば、次のようなケースです。
- 届け出ていない交際相手や親族と継続的に同居している。
- 同居人の収入を申告せず、世帯収入を実際より少なく見せている。
- 実際には別の場所で生活しているのに、居住実態について虚偽の説明をしている。
- 世帯員の増減や生活状況の変化を届け出ていない。
大阪府守口市の公式案内でも、未申告の同居人や、その同居人の就労収入をめぐる情報提供を受け、調査した事例が紹介されています。
不正受給と誤解されやすい行為にも注意一方、一般の人が不正受給と誤解しやすい行為もあります。
- 生活保護を受けながら働く:収入を正しく申告し、世帯の収入が最低生活費に満たなければ受給できる場合がある。
- 持ち家に住む:条件によって保有が認められる場合がある。
- 自動車を所有・使用する:原則として制限されるが、通勤や障害など個別事情による例外がある。
- パチンコなどの娯楽を楽しむ:娯楽への支出だけで直ちに不正受給になるわけではない。
- 高価な衣服や商品を持っている:購入時期や入手経緯、資金の出所などを確認しなければ判断できない。
門真市の公式FAQでも、生活保護を受けながら働くこと自体は不正受給ではなく、収入を正しく申告しないことが問題になると説明しています。また、生活に支障のない範囲での娯楽費についても、それだけで不正受給になるわけではないとしています。
つまり、見た目の生活水準だけで判断するのではなく、実際の収入、資産、世帯状況、申告内容の食い違いに注目する必要があります。
【通報後の流れ】福祉事務所の調査方法と証拠の確認手順
福祉事務所に不正受給の疑いを伝えた後、すぐに保護費が停止されたり、対象者が逮捕されたりするわけではありません。
通報後は、情報の内容や具体性を確認したうえで、調査の必要性が検討されます。調査によって事実関係を確認し、法令に基づいて対応が判断されます。
通報後の基本的な流れ一般的には、次のような段階で進みます。
- 情報提供の受付:福祉事務所や自治体が通報内容を受け付ける。
- 情報の整理:対象者の特定、管轄、情報の具体性などを確認する。
- 調査の必要性を検討:提供された情報を踏まえ、確認すべき事項を判断する。
- 事実関係の調査:本人への聞き取り、収入・資産調査、関係機関への照会などを行う。
- 不正の有無を判断:申告内容と実際の状況を照合する。
- 必要な行政処分:返還・徴収、保護の変更・停止・廃止などを検討する。
- 悪質な場合の対応:刑事告発や警察への相談などが検討される場合がある。
すべての通報が最後まで同じ手順で進むわけではありません。情報が不十分な場合や、不正受給の事実が確認できない場合には、行政上の対応が行われないこともあります。
福祉事務所が行う主な調査方法生活保護法第28条と第29条には、資産や収入などを確認するための調査に関する規定があります。
具体的には、次のような確認が行われます。
- 課税情報の照会:給与所得や事業所得など、税務関係の情報を確認する。
- 金融機関への照会:預貯金などの資産状況を確認する。
- 年金関係の照会:年金の受給状況や給付内容を確認する。
- 勤務先への照会:就労状況や給与などについて必要な情報を確認する。
- 家庭訪問:居住状況や世帯の実態などを確認する。
- 本人への聞き取り:収入、資産、生活状況について説明を求める。
厚生労働省の制度案内でも、保護の決定や実施にあたり、家庭訪問、預貯金・保険・不動産の資産調査、年金や就労収入の調査などを実施することが示されています。
また、生活保護法第29条に基づき、必要があると認められる場合には、官公署、日本年金機構、金融機関、雇用主などの関係先に必要な資料や報告を求めることができます。
なお、第28条に基づく立入調査は行政上の調査であり、法律上、犯罪捜査のために認められた権限ではありません。
証拠がない場合でも通報できる?通報する段階で、一般の人が不正受給の事実を完全に証明する必要はありません。
行政が調査を行うための手掛かりとして、具体的な情報を提供することが目的です。例えば、継続的な就労状況を直接確認した、同居人の存在を実際に把握している、特定の時期に収入を得ていたことを知っている、といった情報は確認の手掛かりになります。
一方、SNSの写真に高級品が写っていた、頻繁に外出している、旅行に行っているように見えた、といった事情だけでは、不正受給の証拠として十分とは限りません。
本人の収入源や購入時期、親族からの援助、過去の貯蓄など、外部から分からない事情が存在する可能性があるからです。
写真や資料を提供する場合も、適法に取得したものに限り、無断撮影や不正アクセス、個人情報の拡散などは行わないでください。
通報した後に結果を教えてもらえる?基本的に、通報者が対象者の調査状況や生活保護の受給の有無を詳しく知ることはできません。
千葉市は、提供された情報を調査に活用する一方、生活保護を受給しているかどうかなどの個人情報は回答できないと案内しています。
船橋市も2026年9月更新の公式回答で、通報対象者の受給の有無だけでなく、対応の進捗状況についても回答できないと説明しています。
情報提供後に連絡がないからといって、必ずしも放置されているとは限りません。個人情報保護の観点から、行政側が調査の結果を公表できない場合があるためです。
【返還・罰則を解説】生活保護法第78条と第85条で何が起きる?
不正受給が確認された場合、行政上の返還・徴収だけでなく、悪質なケースでは刑事責任が問われる可能性もあります。
特に重要なのが、生活保護法第78条と第85条です。
第78条:不正受給した保護費の徴収と最大40%の加算生活保護法第78条は、不実の申請やその他の不正な手段によって保護を受けた場合に適用される規定です。
条文では、保護費を支出した都道府県または市町村の長が、不正に受け取った費用の全部または一部を徴収できると定めています。
加えて、徴収する金額に対して、最大40%に相当する金額を追加で徴収できる仕組みがあります。
例えば、不正に受給した保護費の徴収額が100万円と判断され、加算が上限の40%となった場合、追加徴収額は40万円です。合計140万円の徴収となる計算です。
ただし、40%は一律に必ず加算される金額ではありません。実際の徴収額や加算の判断は、個別の事案に応じて決まります。
第63条による返還と第78条による徴収は違う生活保護費の返還に関しては、第63条と第78条を混同しないことも重要です。
第63条は、急迫した事情などで資力があるにもかかわらず保護を受けた場合に、後からその資力が確認されたときなどに適用される費用返還の規定です。
一方、第78条は不実の申請など、不正な手段によって保護を受けた場合の徴収規定です。
両者の違いは次のとおりです。
- 第63条:資力があるにもかかわらず保護を受けた場合などの費用返還。
- 第78条:不正な手段によって保護を受けた場合の費用徴収。最大40%の加算が認められている。
どちらを適用するかは、本人の認識や申告状況、具体的な事情などを踏まえて行政が判断します。
第85条:3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金生活保護法第85条には、不実の申請その他不正な手段によって保護を受けた者に対する刑事罰が規定されています。
法定刑は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
2025年6月1日に施行された刑法改正に伴い、従来の懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されました。そのため、2026年現在の条文では「拘禁刑」という表記が使われています。
ただし、通報があっただけで第85条の刑罰が適用されるわけではありません。不正な手段によって保護を受けた事実などを確認し、刑事事件としての対応が必要かどうかが判断されます。
保護の停止・廃止や刑事告発につながる場合も不正受給が確認された場合には、過去の保護費の徴収に加え、生活保護の変更、停止、廃止などが検討されることがあります。
また、意図的な虚偽申告や多額の不正受給など、悪質性が高いと判断された事案では、警察への告発や刑事手続きに進む可能性があります。
厚生労働省の令和6年度統計では、告発等は162件でした。25,907件すべてが刑事告発されたわけではなく、行政上の徴収や保護の変更など、事案に応じた対応が行われています。
【プロの結論】生活保護の不正受給通報で大切なのは断定よりも事実の具体性
生活保護の不正受給をめぐる問題は、公費の適正な支出と、生活に困窮する人の最低限度の生活を守るという二つの視点から考える必要があります。
不正受給を見逃さないことは重要ですが、疑わしいという理由だけで受給者を犯罪者のように扱うことも適切ではありません。
通報する価値がある情報とは行政の調査に役立ちやすいのは、次のような情報です。
- 勤務先や就労期間など、収入の存在を具体的に確認できる情報。
- 継続的な同居や世帯構成の変化についての具体的な情報。
- 年金、保険金、仕送りなど、未申告の可能性がある収入についての情報。
- 資産の保有状況について、確認可能な根拠がある情報。
反対に、単なる生活態度への不満、金銭感覚への批判、近隣住民との人間関係のトラブルなどは、不正受給を裏付ける情報とは限りません。
通報をおすすめできる人・慎重になるべき人情報提供を検討する価値がある人
- 収入や世帯構成について、具体的な事実を把握している人。
- 未申告と思われる資産や年金の存在を客観的に確認できる人。
- 生活保護制度の適正な運用に関係する情報を持っている人。
まず情報を整理したほうがよい人
- 生活ぶりが派手という理由だけで不正を疑っている人。
- SNSの写真や第三者の噂だけを根拠にしている人。
- 受給者との個人的なトラブルを背景に通報を考えている人。
- 対象者の生活状況について、事実と推測を区別できていない人。
このような場合は、通報を急ぐよりも、まず何を直接確認したのか、何が推測なのかを整理が必要です。
不正受給の有無を判断するのは、通報者ではなく福祉事務所です。一般市民が独自に調査や制裁を行う必要はありません。
【生活保護不正受給通報】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:生活保護の不正受給は匿名で通報できますか?
A1:自治体によって異なりますが、匿名での情報提供を受け付けているところはあります。例えば大阪府守口市や門真市は、公式案内で匿名での情報提供が可能としています。ただし、追加確認ができないため、情報はできるだけ具体的に伝えましょう。
Q2:生活保護を受けながら働いている人は不正受給になりますか?
A2:働いていること自体は不正受給ではありません。収入を正しく申告し、世帯の収入が最低生活費に満たない場合には、就労しながら生活保護を受けられます。問題になるのは、収入の未申告や過少申告などです。
Q3:不正受給の証拠がなくても通報できますか?
A3:決定的な証拠がなくても、自治体が情報提供を受け付けている場合はあります。具体的な日時、勤務先、生活状況など、確認できる事実を伝えることが大切です。最終的な調査の必要性や不正の有無は福祉事務所が判断します。
Q4:通報した後、調査結果を教えてもらえますか?
A4:原則として、対象者の受給状況や調査の進捗・結果について、通報者に回答できない場合があります。生活保護の受給状況は個人情報に該当するためです。
Q5:生活保護の不正受給が発覚したら、必ず逮捕されますか?
A5:必ず逮捕されるわけではありません。不正受給が認定された場合には第78条による徴収などの行政上の対応が行われ、悪質な事案では第85条による刑事責任が問われる可能性があります。
2026年現在、厚生労働省が公表している令和6年度の生活保護不正受給は2万5,907件、約114億円です。前年度から件数・金額ともに増加し、特に就労収入の未申告が全体の半数以上を占めています。
不正受給の疑いがある場合は、対象者が居住する地域の福祉事務所や自治体の生活保護担当部署に情報提供することが基本です。電話、メール、専用フォームなどの受付方法は自治体によって異なり、匿名通報に対応している地域もあります。
通報後は、課税情報、金融機関への照会、年金記録、勤務先への確認、家庭訪問などを通じて事実関係が調査されます。不正が認定されれば、第78条による費用徴収や、第85条による刑事罰の対象になる場合もあります。
一方で、働きながら生活保護を受けることや、一定の条件で持ち家・自動車を保有することは認められる場合があります。生活ぶりだけで不正受給と判断することはできません。
大切なのは、個人的な感情や噂ではなく、実際に確認した事実を行政に伝えることです。生活に困窮する人を守る制度の信頼性を維持するためにも、適切な情報提供と公正な行政調査の両方が求められています。
主な公的根拠資料
- 厚生労働省「令和7年度 全国厚生労働関係部局長会議資料」(令和6年度の不正受給統計・内訳・発見契機)。
- e-Gov法令検索「生活保護法」第28条・第29条・第63条・第78条・第85条。
- 守口市「生活保護適正化情報ダイヤル」、門真市「市民の人からのよくある質問」。
- 千葉市「生活保護の不正受給の通報」、厚生労働省「生活保護制度」。