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鞭打ちの刑は2026年も残るのか?実施国・法律・人権問題を徹底解説

桂木 洋 桂木 洋 • 更新: • 公開: • 読了約 25 分
目次

2026年現在、鞭打ちの刑は過去の歴史的な刑罰ではない。シンガポールやマレーシア、ブルネイでは国内法に基づく司法上の身体刑として残り、インドネシアのアチェ州やアフガニスタンでは、公開の場で執行される事例も確認されている。さらにイランでも、裁判所が鞭打ちを言い渡す制度が存続している。国によって対象犯罪、執行方法、適用される法律は大きく異なる。

一方、国連やアムネスティ・インターナショナルなどの人権団体は、身体への直接的な苦痛だけでなく、精神的な損傷、公開による屈辱、女性や子どもへの差別的な適用にも警鐘を鳴らしている。2026年にはマレーシアの連邦裁判所による重要判決や、アフガニスタンでの執行状況に関する国連の報告も公表された。制度が残る理由と実際の執行状況を分けて見ることが、問題の全体像を理解する鍵になる。

【基本知識】鞭打ちの刑とは?仕組みと目的をわかりやすく解説

鞭打ちの刑

鞭打ちの刑とは、犯罪などを理由に、鞭や棒、籐製の杖などで受刑者の身体を打つ身体刑の一種である。英語では「Flogging」「Whipping」「Caning」などと表現される。

ただし、これらの言葉は完全な同義語ではない。使用する道具や執行方法、法制度によって違いがある。

鞭打ち刑にはどのような種類がある?

大きく分けると、次のような制度が存在する。

- 司法上の鞭打ち刑: 裁判所が有罪判決の一部として科す刑罰。シンガポールやマレーシアなどが代表例。
- 宗教法に基づく身体刑: イスラム法の解釈や国内のシャリア法に基づき、特定の犯罪に適用する制度。ブルネイやアチェ州などが該当する。
- 公開鞭打ち刑: 一般市民の前で執行する方式。アチェ州やアフガニスタンで確認されている。
- 懲罰・規律としての身体刑: 刑事裁判とは別に、施設や教育機関などの規則に基づいて身体的な罰を科すもの。

この区別は重要だ。たとえば、シンガポールの司法上のCaningと、アフガニスタンのタリバン政権下で行われる公開のFloggingは、同じ身体刑に分類されても、法的な背景や適用対象が異なる。

何のために鞭打ち刑を科すのか

制度を維持する政府や司法当局が挙げる目的には、主に次のものがある。

1. 犯罪に対する処罰と責任の明確化
2. 犯罪の再発防止
3. 社会全体への犯罪抑止
4. 宗教的・道徳的規範の維持
5. 刑罰に対する社会的な制裁の実現

シンガポール政府は、2025年末に導入した詐欺関連犯罪への鞭打ち刑について、犯罪抑止を目的とする政策として説明している。

しかし、刑罰が厳しいことと、長期的に犯罪が減少することは同じではない。抑止効果を評価するには、犯罪発生率、再犯率、社会復帰、刑罰の比例性などを別々に検討する必要がある。

【2026年最新一覧】鞭打ち刑が残る国・地域はどこ?

鞭打ち刑の実施国一覧を考える際には、法律に規定がある国と、実際に刑罰を執行している国を分けなければならない。

また、世界共通の完全な実施国リストが存在するわけではない。司法上の鞭打ち、宗教法上の身体刑、公開処罰など、集計対象によって国や地域の数が変わるためだ。

2026年11月時点で、特に注目すべき国・地域を整理すると次のようになる。

国・地域 法制度・対象の概要 2026年時点の状況 シンガポール 刑事法に基づく司法上のむち打ち 現行制度として存続。2025~26年に法改正 マレーシア 刑法・薬物法などに基づく鞭打ち 現行制度として存続。2026年に連邦裁判所判決 ブルネイ 一般刑法とシャリア刑法 法律上存続し、実際の適用も報告 インドネシア・アチェ州 地域のイスラム刑法(Qanun Jinayat) 2026年も公開執行を確認 アフガニスタン タリバン当局によるイスラム法解釈に基づく身体刑 2026年も執行が継続 イラン イスラム刑法に基づく鞭打ち 2025年も多数の判決が記録されている サウジアラビア ハッド刑など限定的な宗教法上の規定 裁量刑としての鞭打ちは2020年に廃止 モルディブ イスラム法上のハッド刑 判決例はあるが、執行されない事例もある

この表で特に注意したいのは、サウジアラビアやモルディブの位置づけだ。刑罰の規定が法律に残っていることと、実際に継続的な執行が行われていることは別問題である。

以下、検索されることの多い5つの国・地域を詳しく見ていこう。

1.シンガポール:厳格な刑事司法制度に組み込まれた鞭打ち


刑事法に基づく司法上のCaning
男性の受刑者を対象とする制度で、一定の犯罪に適用される。

シンガポールでは、鞭打ち刑は刑事司法制度の一部として存続している。

対象犯罪には、強盗、性犯罪、重大な暴力犯罪、破壊行為、入国管理関連犯罪などがある。2025年12月30日からは詐欺や詐欺関連犯罪にも適用範囲が広がった。

シンガポール内務省の2025年12月19日付発表によると、詐欺グループの実行犯や構成員、勧誘者には最低6回、最高24回の鞭打ちが義務付けられ、詐欺を助ける資金洗浄やSIMカード提供などを行った者には最大12回の裁量的な鞭打ちが適用される。

一方、2026年8月17日には別の法改正が施行され、一部犯罪について鞭打ち刑を削除したり、義務刑から裁量刑に変更したりする見直しも行われた。

つまり、シンガポールは鞭打ち刑を一律に拡大しているのではなく、犯罪の種類に応じて対象を見直している。

シンガポール司法省の裁判制度に関する説明では、原則として次の制限が示されている。

- 対象は50歳未満の男性。
- 成人に対する一度の執行は最大24回。
- 女性は対象外。
- 50歳を超える男性も対象外。
- 医師による健康状態の確認が必要。

2026年1月14日の内務省の議会答弁では、2024年に重大な性犯罪・暴力犯罪で鞭打ちの対象となる犯罪により有罪となった人は279人だった。このうち、50歳未満の男性76人に対して少なくとも1回の鞭打ちが言い渡されたと説明されている。

なお、279人という数字は鞭打ちの実施人数ではなく、対象となる重大犯罪で有罪となった人数である。

2.マレーシア:刑法に残る制度と2026年の重要判決


刑法・薬物法などに基づく司法上の鞭打ち
義務的な鞭打ち刑の見直しも議論されている。

マレーシアでは、刑法や危険薬物法など複数の法律に鞭打ち刑が規定されている。

対象となる犯罪には、強盗、性犯罪、薬物取引、入国管理関連犯罪などが含まれる。

刑事訴訟法第288条では、成人の鞭打ち刑は最大24回、若年犯罪者については最大10回と定められている。執行には医療関係者の確認も必要となる。

特に注目されたのが、2026年4月22日の連邦裁判所の判決だ。

この裁判では、鞭打ち刑を受けた受刑者が死亡した事案を背景に、3人の受刑者が刑罰の違憲性を争った。

連邦裁判所は2対1の多数決で鞭打ち刑を合憲と判断し、申立てを退けた。

一方、反対意見を述べたリー・スウィーセン判事は、鞭打ち刑が人間の尊厳や身体の完全性を損なうとして、違憲とする立場を示した。

加えて、マレーシア人権委員会(SUHAKAM)は4月23日、反対意見の方が人権に整合的であるとして支持する声明を発表した。

政府側では、義務的な鞭打ち刑を廃止する必要性について検討が進められている。2026年の判決は制度を直ちに廃止する方向には進まなかったものの、刑罰の正当性をめぐる議論が続いていることを示している。

3.ブルネイ:一般刑法とシャリア刑法の二重構造


一般刑法とイスラム刑法が併存
宗教法に基づく身体刑の規定も残っている。

ブルネイの特徴は、一般的な刑事法制度とイスラム法に基づく刑事法制度が併存していることだ。

2013年に制定されたSyariah Penal Code(シャリア刑法)には、鞭打ちを含む身体刑が規定されている。

対象となる行為には、婚外性交渉、姦通、特定の性的行為、宗教に関する犯罪などが含まれる。適用条文や刑罰は犯罪の種類、証拠、対象者の法的地位などによって異なる。

ブルネイ司法当局の説明では、一般刑事事件について治安判事裁判所が最大24回の鞭打ちを言い渡す権限を持つ。

また、シャリア裁判所の刑事訴訟法には、医師による健康状態の確認や執行担当者の性別など、執行手続きに関する規定が設けられている。

2026年2月に報じられた2025年のシャリア裁判所統計では、下級裁判所に登録された刑事事件は631件だった。

加えて、2020~2025年の5年間について、姦通未遂や婚外妊娠に関連する特定条項で鞭打ち刑が科された事例も報告されている。

したがって、ブルネイの制度は単に法律の条文に残っているだけの存在ではなく、実際の司法制度の中でも適用されている。

4.インドネシア・アチェ州:公開鞭打ち刑が続く地域


Qanun Jinayatに基づく地域刑法
インドネシア国内で独自のイスラム刑法を運用する地域。

インドネシア全土で鞭打ち刑が適用されているわけではない。

特別自治権を持つアチェ州では、地域条例であるQanun Jinayatに基づいて身体刑が実施されている。

2014年に成立したQanun第6号は、2015年10月23日に州全域で施行された。2025年11月21日にはQanun第12号による改正も公布され、2026年時点の法制度を構成している。

対象となる行為には、次のようなものがある。

- 婚外性交渉
- 姦通
- 未婚者同士の不適切な接触
- 同性間の性的行為
- 飲酒
- 賭博

2026年5月21日には、州都バンダアチェの公園で婚外性交渉を理由に男女4人がそれぞれ100回の鞭打ちを受けたと報じられた。

同じ日には、男女間の不適切な接触や飲酒などを理由に、別の5人も9~23回の鞭打ちを受けた。

アチェ州のイスラム裁判所も、2026年5月21日の執行について公式に発表している。

ここで重要なのは、アチェ州の制度がインドネシア中央政府の一般刑法とは異なる地域的な法制度に基づいていることだ。

地域自治と人権保障の関係が、国内外で議論される理由にもなっている。

5.アフガニスタン:タリバン政権下で増加する公開処罰


タリバン当局による司法上の身体刑
公開の鞭打ちが人権問題として国際的な批判を受けている。

アフガニスタンでは、2021年8月のタリバン復権後、イスラム法の独自解釈に基づく身体刑が再び広く実施されるようになった。

2022年11月14日には、タリバン最高指導者が裁判官に対し、シャリアに基づく刑罰を全面的に実施するよう指示した。

その後、公開の鞭打ちが各地で行われるようになり、窃盗、飲酒、薬物関連犯罪、賭博、婚外性交渉などが対象となっている。

2026年3月3日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の専門家は、アフガニスタンにおける身体刑の増加を強く非難した。

同発表で示された数字は深刻だ。

- 2025年: タリバン側の最高裁判所が少なくとも1,110人への公開鞭打ちを発表。
- 2024年: 少なくとも567人。
- 2026年1月: 男性147人、女性15人の計162人。

加えて、国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の2026年7~9月期の報告では、28人が司法上の身体刑を受けたとされている。

この問題では、女性や少女、性的少数者が、いわゆる道徳犯罪を理由に処罰される危険性も指摘されている。

国連専門家は、こうした刑罰が身体の完全性だけでなく、性別に基づく差別や社会的な支配の問題とも結びついていると警告している。

【歴史と成立経緯】なぜ鞭打ち刑は現在まで残っているのか

鞭打ち刑の歴史は非常に古い。

古代社会では、身体への苦痛を与えることが犯罪への制裁や規律維持の手段として利用されてきた。古代ローマや中世ヨーロッパでも、鞭打ちや身体刑は刑罰体系の一部だった。

ただし、現在の各国の制度がすべて同じ歴史から生まれたわけではない。

イギリス植民地時代から続く制度

シンガポールやマレーシアに残る鞭打ち刑には、イギリス植民地時代の法制度が深く関係している。

シンガポールでは、1826年11月27日の第二司法憲章(Second Charter of Justice)によって英国法を基礎とする法制度が導入された。

その後、1871年の海峡植民地刑法典(Straits Settlements Penal Code)などを通じて、鞭打ち刑が刑事法体系に組み込まれた。

マレーシアでも、植民地時代の法律が独立後の刑法体系に引き継がれている。

マレーシア政府の2026年の司法関連資料でも、鞭打ち刑が英国植民地時代に導入された経緯が説明されている。

イスラム法に基づく身体刑の歴史

ブルネイ、アチェ州、アフガニスタンなどでは、イスラム法の解釈に基づく刑罰体系が重要な役割を果たしている。

イスラム法の刑罰には、一般的に次のような分類がある。

- ハッド(Hudud): 宗教法上、特定の犯罪と刑罰が定められていると解釈される領域。
- キサース(Qisas): 報復や同害報復に関する刑罰。
- タアズィール(Ta'zir): 裁判官などの判断によって刑罰が定められる領域。

これらは同じものではない。すべてのイスラム法適用国が同一の刑罰を採用しているわけでもない。

また、イスラム教徒の間でも刑罰の解釈や適用範囲には見解の違いがある。

アチェ州では特別自治制度を背景に地域条例が成立し、ブルネイでは国家の法制度としてシャリア刑法が整備された。アフガニスタンではタリバンによる政権復帰後、宗教法の適用が拡大している。

同じ鞭打ち刑でも、成立の経緯や法的根拠を一括りにすることはできない。

【国際人権法と拷問問題】鞭打ち刑は人権侵害に当たるのか

鞭打ち刑をめぐる最大の論点は、国家が犯罪者を処罰する権限と、人間の尊厳や身体の自由を守る権利が衝突することにある。

特に重要なのが、国際人権法における拷問および残虐な刑罰の禁止だ。

国際人権規約第7条が定める原則

1966年に採択された国際人権規約の一つである「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」第7条は、拷問や残虐、非人道的または品位を傷つける取扱い・刑罰を禁止している。

加えて、国連自由権規約委員会の1992年の一般的意見第20号では、この禁止は身体的苦痛だけでなく精神的苦痛にも及び、犯罪に対する処罰として科される身体刑も対象になると説明されている。

この考え方では、刑罰が国内法に規定されているという理由だけで、人権上の問題が解消されるわけではない。

拷問と残虐な刑罰は同じなのか

ここには法律上の区別がある。

国連の拷問等禁止条約では、拷問と、それに至らない残虐・非人道的・品位を傷つける取扱いを区別している。

拷問に該当するかどうかは、苦痛の程度や目的、行為の状況などによって判断される。

一方、拷問の定義に該当しない場合でも、身体刑が残虐または非人道的な処罰に該当する可能性はある。

条約第16条も、公務員などによる拷問に該当しない残虐・非人道的・品位を傷つける取扱いや刑罰を防止する義務を定めている。

なお、国際条約の適用関係は国によって異なる。アフガニスタンとインドネシアは自由権規約および拷問等禁止条約の締約国だが、シンガポール、マレーシア、ブルネイは自由権規約の締約国ではない。ブルネイは拷問等禁止条約に署名しているものの、批准していない。

このため、個々の国の条約上の義務と、国際的に共有される人権基準を区別して考える必要がある。

人権団体が問題視する3つの理由

1.身体的・精神的な損傷

身体刑は一時的な痛みだけでなく、長期的な身体的・精神的影響を生じさせる可能性がある。

2026年のマレーシア連邦裁判所判決でも、受刑者が鞭打ち後に死亡した事案が争点になった。

2024年10月7日、ポコクセナ刑務所の受刑者が鞭打ちを受けた後に死亡した。死亡診断書には、臀部への鈍的外傷に伴う敗血症性の合併症が記載されていた。

多数意見は、鞭打ちと死亡との医学的な因果関係が立証されていないことなどを理由に刑罰の違憲性を認めなかった。一方、反対意見は身体的危険や人間の尊厳への影響を重視した。

2.公開処罰による社会的な屈辱

アチェ州やアフガニスタンでは、一般市民が見ている前で処罰が行われることがある。

人権団体が問題視するのは、身体的な苦痛だけではない。公開処罰によって受刑者の名誉やプライバシーが損なわれ、家族や地域社会からの差別につながる可能性もある。

3.女性や子どもへの差別的な適用

アフガニスタンでは、女性が婚外性交渉やいわゆる道徳犯罪を理由に処罰されるケースが報告されている。

国連専門家は2026年3月、女性や少女、性的少数者が特に深刻な危険にさらされていると指摘した。

刑罰の適用が性別や社会的立場によって偏る場合、身体刑の問題は単なる刑罰の厳しさを超え、制度的な差別の問題になる。

【廃止論と人権団体の見解】鞭打ち刑はなくなるのか

鞭打ち刑の廃止を求める立場と、制度を維持する立場には、それぞれ異なる考え方がある。

廃止を求める人権団体の主張

アムネスティ・インターナショナルやマレーシア人権委員会SUHAKAMなどは、鞭打ち刑を人間の尊厳に反する処罰として批判している。

特に、次の点を問題視している。

- 国家が意図的に身体的苦痛を与えること。
- 公開処罰が受刑者の尊厳を傷つけること。
- 性別や宗教、性的指向による差別が生じること。
- 医療上の安全対策だけでは身体刑そのものの問題は解決しないこと。
- 刑罰の重さと犯罪の重大性が釣り合わない場合があること。

アチェ州の制度について、アムネスティは2025年の同性間の関係を理由とする公開鞭打ちを強く非難した。

また、マレーシアのSUHAKAMは2026年4月、連邦裁判所の反対意見を支持し、司法上の鞭打ち刑は残虐、非人道的かつ品位を傷つける刑罰だとの立場を改めて示した。

維持を支持する側の考え方

一方、制度を維持する側は、主に次のような理由を挙げる。

- 犯罪に対する厳格な制裁が必要である。
- 社会全体に対する抑止効果が期待できる。
- 国内の法律や宗教的規範を尊重すべきである。
- 既存の刑罰体系との整合性を維持する必要がある。

シンガポール政府が詐欺関連犯罪に鞭打ち刑を導入したことは、重大化する犯罪への対策として身体刑を維持・拡大する政策の一例である。

マレーシアの2026年の連邦裁判所判決も、立法府が刑罰の社会的な妥当性を判断する余地を重視した。

ただし、制度を支持する立場があることと、その刑罰が国際人権基準に適合することは別の問題である。

廃止に向けた動きは進んでいるのか

2026年の動向を比較すると、世界的に一方向へ進んでいるわけではない。

シンガポールでは一部犯罪への鞭打ち刑の導入と、別の犯罪に対する適用縮小が同時に行われた。

マレーシアでは義務的な鞭打ち刑の見直しが検討されているものの、連邦裁判所は制度を合憲と判断した。

一方、アフガニスタンでは公開処罰が続き、イランでも2025年に多数の鞭打ち判決が記録された。

イランについては、人権団体HRANAの2025年年次報告が、96人に合計5,041回の鞭打ち刑が言い渡されたと記録している。また、少なくとも3人について計142回の刑が執行されたと報告している。これは同団体が確認した事例であり、国内全体の完全な統計ではない。

こうした状況から、鞭打ち刑の廃止は各国の刑法改正だけでなく、司法制度、宗教法の解釈、人権保障、国際社会との関係にも左右される課題となっている。

【プロの結論】鞭打ち刑を理解するために押さえたい5つの判断基準

鞭打ち刑をめぐる情報を正しく理解するには、単純に「実施している国」と「廃止した国」に分けるだけでは不十分だ。

特に重要なのは次の5点である。

① 法律上の存続と実際の執行を区別する

法律に規定があっても、実際に執行されているとは限らない。サウジアラビアのように、刑罰の一部を廃止しながら限定的な規定を残す国もある。

② 刑事法と宗教法を区別する

シンガポールやマレーシアの制度と、アチェ州やブルネイの宗教法に基づく制度は、適用根拠が異なる。

③ 対象犯罪と刑罰の比例性を確認する

重大な暴力犯罪と、合意に基づく私的な性的行為や飲酒などを同じ基準で評価することはできない。犯罪の性質と刑罰の重さを比較する必要がある。

④ 執行手続きだけでなく人権上の影響を見る

医師による確認や執行回数の制限は、身体的危険を抑えるための制度的措置である。しかし、それだけで身体刑が人権上正当化されるわけではない。

⑤ 国際人権団体と各国司法当局の見解を比較する

マレーシアの2026年判決のように、国内の司法判断と人権委員会の評価が大きく異なることもある。双方の根拠を確認することが大切だ。

【鞭打ちの刑に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:鞭打ちの刑を現在も実施している国はどこですか?

A1:2026年時点では、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、イラン、アフガニスタンなどで制度の存続や実際の執行が確認されています。また、インドネシアではアチェ州に限って地域のイスラム刑法に基づく公開鞭打ち刑が行われています。国によって適用対象や執行頻度は異なります。

Q2:シンガポールの鞭打ち刑は外国人にも適用されますか?

A2:シンガポールの刑法に違反して有罪となった場合、外国人も原則として国内法の適用対象です。鞭打ち刑については、年齢や性別などの法定条件も適用されます。外国人だからという理由だけで刑罰が免除される制度ではありません。

Q3:鞭打ち刑は国際法上、拷問に当たりますか?

A3:鞭打ち刑は、国連の人権基準上、残虐、非人道的または品位を傷つける刑罰に該当する可能性があります。苦痛の程度や目的などによっては拷問に該当する場合もあります。国連自由権規約委員会は、身体刑も拷問・非人道的処罰の禁止との関係で問題になると説明しています。

2026年現在、鞭打ちの刑は世界から姿を消していない。シンガポールやマレーシアでは刑事法に組み込まれ、ブルネイでは一般刑法とシャリア刑法の双方に関連規定が存在する。アチェ州では地域条例に基づく公開処罰が続き、アフガニスタンやイランでも身体刑の実態が国際的な問題になっている。

一方、国際社会では、身体刑が人間の尊厳や身体の完全性を損なうという認識が広がっている。2026年のマレーシア連邦裁判所判決や、アフガニスタンに関する国連の警告は、この問題が現在進行形であることを示す重要な出来事だ。

今後の焦点は、各国が犯罪抑止や社会秩序の維持を理由に身体刑を維持するのか、それとも人権保障を優先して代替刑へ移行するのかという点にある。

鞭打ち刑を理解するうえで最も大切なのは、単なる文化や宗教の違いとして片付けないことだ。国家の刑罰権、個人の尊厳、身体の自由、そして国際人権法の関係を総合的に考える必要がある。刑罰の厳しさだけでなく、その正当性と人間社会への影響を問い続けることが、今後の議論の出発点になる。 (出典: 鞭打ち の 刑(Yahoo!ニュース))

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桂木 洋

映画・ドラマの公開情報を担当。配給会社のプレスシートと公式サイト記載を基準に、あらすじと配役をまとめます。

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