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封じ手とは?2026年版・誰がいつ書くのか、書き方と開封手順を徹底解説

黒木 穂乃花 黒木 穂乃花 • 更新: • 公開: • 読了約 19 分
目次

将棋中継でタイトル戦を見ていると、夕方になるころに「封じ手の時間になりました」という声がかかり、棋士が別室へ移動して封筒に何かを書き込む場面があります。これは将棋の長時間対局を翌日に持ち越す際に行われる「封じ手(ふうじて)」という特別な手続きです。次に指す一手をあらかじめ用紙に記録して封印することで、対局が中断している間も両者の条件を公平に保ちます。

封じ手を書くのは誰なのか、何時に行うのか、用紙にはどのように記入するのか、翌朝は誰が開封するのか。実際には、対局者だけでなく記録係や立会人、対局場のスタッフも関わっています。2026年のタイトル戦で見られた開封時の話題や、封じ手が生まれた歴史も交えながら、その仕組みを順番に解説します。

【基本知識】将棋の封じ手とは?採用される理由と本当の意味

封じ手とは

将棋の封じ手とは、2日間にわたって行われる長時間対局で、1日目の終了時に手番を持つ棋士が次の一手を専用の用紙に記入し、封筒に入れて厳封する仕組みです。

読み方は「ふうじて」。封じた手は、その場で盤上に指すわけではありません。翌日の対局再開時に開封し、記録しておいた一手を実際に指して対局を続けます。

代表的な採用例は、名人戦、竜王戦、王位戦、王将戦などの2日制タイトル戦です。棋士が一手一手に長い時間をかけるタイトル戦では、対局を一日で終えず、途中で中断して翌日に再開することがあります。

封じ手をする最大の理由は公平性の確保

封じ手が必要になる理由は、対局を中断している間に生まれる時間的な有利不利をなくすためです。

仮に封じ手がなかった場合、1日目の最後に手番を持っている棋士がそのまま対局を終えれば、翌朝まで次の一手を考え続けられます。一方、先に一手を指してから終了した場合、相手はその手を見た状態で翌日まで長時間考えることができます。

つまり、どちらの形で中断しても、一方の棋士だけが実質的に長い思考時間を得る可能性があります。

そこで、手番の棋士が次の一手を秘密にしたまま封印します。相手はその手を知らないため、翌朝まで特定の着手に対する応手を考え続けることができません。

この仕組みによって、休憩を挟んでも対局条件を公平に保てるのです。封じ手は単なる書類手続きではなく、長時間の勝負を成立させるための競技上の工夫です。

封じ手と通常の着手は何が違う?

通常の着手では、棋士が盤上の駒を動かして一手を確定させます。封じ手では、駒を動かす代わりに、その一手を用紙に記録して封印します。

大きな違いは、相手に次の一手を知られずに対局を中断できることです。封じ手を行った時点で、記載した手は確定しており、翌朝に別の手へ変更するための時間ではありません。

なお、「封じ手」という言葉は武術などで使用を禁じられた技を指す場合もありますが、将棋の文脈では翌日に指す一手を秘密にして保管する意味で使われます。

【誰がいつ書く?】封じ手をするタイミングと当日の流れ

封じ手を書くのは、1日目の終了時に次の手番を持っている棋士です。先手・後手のどちらが書くかは、対局の進行状況によって決まります。先手が必ず書く、あるいは後手が必ず書くという決まりではありません。

封じ手をするのは何時ごろ?

2日制タイトル戦では、1日目の夕方に封じ手の時間が設定されています。18時ごろを基準とする棋戦が多く、実際に王位戦の公式中継ブログでも、18時に手番の棋士が封じ手を行う運用が紹介されています。

ただし、すべての棋戦で時刻が完全に共通しているわけではありません。対局ごとの進行予定や実施規定によって設定されるため、具体的な時間は棋戦の公式情報を確認する必要があります。

決められた時刻になったら、すぐに書かなければならない?

ここは初心者が誤解しやすいポイントです。封じ手の時刻になった瞬間、必ずしも直ちに用紙へ記入しなければならないわけではありません。

手番の棋士は、残っている持ち時間を使って考え続けることができます。封じ手をするタイミングは棋士の判断にも委ねられており、局面が難しければ、時間をかけて次の一手を決めることもあります。

元棋士の田丸昇氏がJBpressで紹介した解説によると、封じ手の時刻を迎えてから実際に封じるまで、持ち時間を使って考えることができ、30分以内に封じるケースが多いとされています。難しい局面では、さらに長く考える場合もあります。

封じ手が決まるまでの流れ
  1. 終了時刻が近づく:記録係が現在の局面を封じ手用紙に記録する準備を始める。
  2. 立会人が知らせる:封じ手の時刻になったことを手番の棋士に伝える。
  3. 棋士が別室へ移動する:相手に指し手を見られない環境で、次の一手を決める。
  4. 用紙に記入する:決定した指し手を専用の用紙に記録する。
  5. 封筒に入れて封印する:用紙を2通作成し、それぞれ別の封筒に入れる。
  6. 保管する:立会人と対局場側がそれぞれ封じ手を保管する。

このように、封じ手は棋士一人だけで完結するものではありません。対局を管理するスタッフと立会人が連携し、翌日の再開まで秘密が保たれるように進められます。

【関係者一覧】封じ手は誰が書く?記録係・立会人の役割を比較

封じ手の仕組みを理解するには、関係者の役割を整理すると分かりやすくなります。特に混同されやすいのが、封じ手を書く棋士と、用紙の準備や保管を担当する人たちです。

関係者 主な役割 公平性への関わり
手番の棋士 次の一手を決め、封じ手用紙に記入する 指し手を秘密にして確定させる
対局相手 封筒の封緘に署名するなど、所定の手続きを行う 封じ手の保管過程を相互に確認する
記録係 現在の盤面を図面に記録し、棋譜や時間を管理する 局面と記録内容の正確性を支える
立会人 封じ手の進行を確認し、封筒を受け取って保管する 対局規則の遵守とトラブル対応を担う
副立会人 封筒の準備や手続きなどを補助する 複数の関係者による確認を支える
対局場の関係者 もう1通の封じ手を保管する 立会人側とは別の場所で保管する
封じ手を書くのは棋士本人

実際に次の一手を決めて用紙に記入するのは、手番を持つ棋士本人です。記録係が指し手を考えて書くわけではありません。

記録係が担当するのは、封じ手を行う時点の盤面を正確に図面へ書き込む作業です。その図面を使い、棋士が自分の次の一手を示します。

立会人は単なる封筒の預かり役ではない

立会人は、対局が規則に沿って進んでいるかを確認する重要な存在です。

日本将棋連盟の対局規則では、公式棋戦に立会人を置くこと、立会人が規則の遵守を確認すること、対局上の裁定や処置を行う権限を持つことなどが定められています。

また、記録係についても、棋譜と時間を正確に記録し、両対局者に公平に情報を伝える役割が示されています。

封じ手においても、立会人は手続きの進行や封筒の受け渡しを管理し、翌日の対局再開を支える役割を担います。

【実践解説】封じ手の書き方と用紙・封筒の仕組み

封じ手用紙は、一般的なメモ用紙とは異なります。将棋盤の図面が印刷された専用の用紙を使用し、次に動かす駒と移動先を視覚的に分かる形で記録します。

封じ手用紙には何を書く?

封じ手の記入方法は、2025年3月に公開された王将戦の公式中継ブログでも具体的に紹介されています。

基本的には、動かす駒を丸で囲み、移動先を矢印で示します。持ち駒を打つ場合には、持ち駒の該当する駒を示して、打つ場所を矢印で表します。

また、駒を成ることができる局面では、成るか成らないかを用紙の欄外に記入します。原則として、通常の棋譜で使われる指し手の符号をそのまま書く方式ではありません。

こうすることで、翌朝に用紙を見た立会人や対局者が、どの駒をどこへ動かすのかを確認できます。

封じ手用紙はなぜ2通作る?

封じ手は原則として同じ内容のものを2通作成します。それぞれを別の封筒に入れて封印し、立会人側と対局場側に分けて保管します。

これは、一つの場所だけに保管するよりも、紛失や管理上のトラブルに備えやすくするためです。異なる管理主体がそれぞれ保管することで、封じ手の取り扱いを確認する仕組みが整います。

封筒には何が書かれている?

封筒には、対局者の名前や棋戦名、日付、対局場など、どの対局の封じ手なのかを識別するための情報が記載されます。

また、封筒の裏面には封緘の署名が加えられます。2025年の王将戦公式中継ブログで紹介された実物では、両対局者が封筒の裏面にそれぞれ2カ所ずつ署名する様子が確認できます。

封筒の準備は立会人や副立会人が担当する場合があり、棋士が記入する前から必要事項が整えられています。

このように、封じ手は用紙への記入だけでなく、封筒の準備、署名、封印、保管までを組み合わせた手続きです。

【翌朝の儀式】封じ手の開封方法と対局再開までの流れ

封じ手の開封は、2日目の対局開始前に行われます。前日に封じた一手が初めて明らかになる場面であり、将棋中継でも注目される時間です。

開封から対局再開までの5段階
  1. 前日の局面を再現する:両対局者が1日目の棋譜を確認し、盤上の駒を最後の局面まで並べ直す。
  2. 立会人が封筒を取り出す:保管していた封じ手を対局室に持ち込む。
  3. 封筒を開封する:立会人が封筒を開け、内部の用紙を取り出す。
  4. 記載された一手を確認する:立会人が封じ手の内容を読み上げ、必要に応じて用紙を対局者に示す。
  5. 封じた棋士が着手する:前日に記録した一手を盤上で実行し、2日目の対局が始まる。

ここで重要なのは、開封した手を改めて自由に選び直すわけではないということです。封じ手に記録された内容を実際の着手として再現し、そこから勝負が続きます。

封筒は誰が開ける?

基本的に開封を担当するのは立会人です。棋士本人が自分で封筒を開けるのではなく、第三者の立場にある立会人が手続きを進めます。

開封時にはハサミが使われることが多く、封筒から用紙を取り出して内容を確認します。封じ手が明らかになった瞬間には、対局者だけでなく、控室や中継を見守るファンも注目します。

開封の仕方にも決まりがある?

興味深いのは、封筒の開け方そのものに細かな統一ルールがあるわけではないことです。

2026年4月26日、第84期名人戦七番勝負第2局の2日目には、立会人を務めた行方尚史九段が、封筒にハサミを少し入れた後、手でちぎって開封する珍しい方法を披露しました。

この場面はABEMA TIMESでも取り上げられ、封筒の開封方法に明確な決まりがないことが紹介されています。

開封の仕方には立会人ごとの個性が表れることがありますが、重要なのは封筒を安全に開け、封じられた指し手を正確に確認することです。

【歴史と不正防止】封じ手はいつ始まった?公平性を守る仕組み

封じ手の考え方は、長時間の対局を中断する際の公平性を守るために発展してきました。将棋だけに限らず、チェスなどでも対局を中断するときに次の一手を封印する方式が用いられてきました。

将棋の封じ手は1927年に導入されたとされる

将棋の封じ手は、一般に1927年(昭和2年)に導入されたとされています。報知新聞の将棋担当者だった生駒粂蔵が、チェスの封じ手を参考に考案したという経緯が棋界の解説で紹介されています。

当時は新聞社が主催する大型棋戦が次々と始まり、将棋の対局や観戦記が新聞文化の中で大きな位置を占めていました。長時間の対局をどのように進行させ、翌日に持ち越すかという問題に対して、封じ手は合理的な解決策だったと考えられます。

日本将棋連盟の歴史資料でも、1927年は新聞各社が大型棋戦を相次いで始めた時代として紹介されています。将棋界の競技環境が整備されていく中で、対局の公平性を保つ手続きも定着していきました。

不正防止のために採用されている3つの仕組み

封じ手が単なる紙への記入で終わらないのは、秘密を守りながら正しい一手を翌日に再現する必要があるからです。

そのため、次のような仕組みが組み合わされています。

  • 別室での記入:対局相手に次の一手を見られないようにする。
  • 2通の作成と分散保管:立会人側と対局場側に分けて保管し、管理を一カ所に集中させない。
  • 署名と封印:封筒に両対局者などの署名を加え、保管中の取り扱いを確認できるようにする。

特に2通を別々の場所で管理する仕組みは重要です。一方の封筒に問題が生じても、もう一方を確認できる体制があるため、封じ手の信頼性を支えています。

封じ手の細かなルールはすべての棋戦で同じ?

基本的な目的や手順は共通していますが、時刻や具体的な運用は棋戦ごとに異なる場合があります。

日本将棋連盟の対局規則では、公式棋戦における立会人や記録係の役割が定められています。また、主催者が基本規則に反しない範囲で、より詳細な規定を導入できる仕組みになっています。

そのため、封じ手の時間や封筒の準備方法などを一律に考えるのではなく、各棋戦の実施要項や公式中継で確認することが大切です。

【プロの結論】封じ手のマナーと観戦時に知っておきたいポイント

封じ手は、将棋の技術だけでなく、対局者同士の信頼と競技運営の正確さによって成立する手続きです。形式を理解すると、対局中継で見られる棋士の動きや立会人の行動にも意味が見えてきます。

対局者に求められる封じ手のマナー

封じ手では、次の一手を相手に知られないことが大前提です。そのため、記入中は別室で作業し、用紙や封筒の受け渡しも所定の手順に沿って行います。

また、封じ手を提出した後は、記載した手が翌日の着手になります。封筒の管理や署名などを丁寧に行うことも、対局者としての大切な役割です。

封じ手は勝負の一部であると同時に、相手に対する信頼を前提とした手続きでもあります。

観戦するファンが注目したい3つのポイント
  • 封じ手をする棋士:現在の手番がどちらにあるかを確認すると、誰が封じるのかが分かる。
  • 封じ手をするタイミング:定刻になってもすぐに封じない場合は、残りの持ち時間を使って考えている可能性がある。
  • 翌朝の開封:前日の局面と封じ手を照らし合わせると、棋士がどのような構想を持っていたのかを楽しめる。
封じ手を見れば棋士の心理まで分かる?

封じ手は次の一手を明らかにするものですが、棋士の心理を完全に読み取れるものではありません。

例えば、封じ手に長い時間をかけたからといって、必ずしも悪い局面に悩んでいるとは限りません。複数の有力手があり、どれを選ぶか慎重に検討している場合もあります。

また、意外な一手が封じられていたとしても、それだけで相手を揺さぶるための心理戦だったと断定することはできません。

封じ手の本当の面白さは、前日の局面から翌朝の一手を予想し、実際に公開された手と比較できることにあります。将棋の知識が少ない人でも、翌朝の開封を一つの見どころとして楽しめます。

【封じ手とは】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:封じ手を書くのは先手と後手のどちらですか?

A1:その時点で次の手番を持っている棋士です。先手・後手で固定されているわけではなく、対局の進行によって決まります。

Q2:封じ手は必ず18時に行うのですか?

A2:18時前後に設定される棋戦は多いですが、すべての対局で同じ時刻ではありません。また、所定の時刻を過ぎても、手番の棋士が残りの持ち時間を使って考えることができます。

Q3:封じ手は誰が開封しますか?

A3:基本的に立会人が開封します。翌日の対局再開前に封筒を開け、記載された指し手を確認して読み上げます。

Q4:封じ手用紙はなぜ2通必要なのですか?

A4:立会人側と対局場側で別々に保管するためです。管理を分散させることで、紛失や保管上のトラブルに備えられます。

Q5:封じ手をした棋士は翌朝に別の手を指せますか?

A5:原則として、封じ手用紙に記録した一手を指します。封じ手は翌日に選び直すためのものではなく、前日に確定した指し手を再現する仕組みです。

Q6:封じ手の用紙には棋譜を書きますか?

A6:原則として、盤面図に動かす駒を丸で囲み、移動先を矢印で示します。持ち駒を打つ場合や成・不成についても、所定の方法で記録します。

Q7:封じ手はすべての将棋対局で行われますか?

A7:いいえ。主に2日制の長時間対局で採用される手続きです。1日で終わる通常の対局では、一般的に封じ手は必要ありません。

封じ手とは、2日制の将棋対局で翌日に指す一手を用紙に記録し、封筒に入れて厳封する手続きです。次の手番を持つ棋士本人が記入し、記録係が盤面を記録、立会人や対局場の関係者が保管を担当します。

封じ手が必要なのは、対局を中断した夜の間に、一方の棋士だけが有利に考え続ける状況を防ぐためです。2通の用紙を作成して別々に保管し、署名や開封の手順を設けることで、対局の公平性と信頼性を支えています。

また、封じ手は1927年に将棋界へ導入されたとされる歴史ある制度であり、現在も名人戦や竜王戦、王位戦、王将戦などの2日制タイトル戦で重要な役割を果たしています。

次に将棋のタイトル戦を観戦するときは、夕方の封じ手だけでなく、翌朝の開封にも注目してみてください。誰が封じたのか、どのような一手が選ばれたのかを知ることで、盤上の勝負をより深く楽しめるはずです。

主な事実確認資料

- 日本将棋連盟「対局規則」:立会人・記録係の役割と規則の運用。
- 王位戦公式中継ブログ:2020年の封じ手手続き、2024年の封筒準備。
- 王将戦公式中継ブログ:2025年3月の封じ手用紙・封筒の実例。
- JBpress:元棋士・田丸昇氏による封じ手の仕組みと1996年の名人戦の事例。
- ABEMA TIMES:2026年4月26日の第84期名人戦における開封の実例。

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