2026年11月現在、神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」は、2016年7月26日に発生した相模原障害者施設殺傷事件からの再建を経て、新しい施設で運営を続けています。しかし、事件から10年が経過した現在も、施設の再生、利用者の地域生活への移行、職員による虐待防止など、解決すべき課題は残されています。
現在の津久井やまゆり園はどのような施設になっているのでしょうか。横浜市港南区にある芹が谷やまゆり園との関係、運営を担う社会福祉法人かながわ共同会、利用者の現在の生活、グループホームへの移行、そして2026年9月に公表された新たな虐待認定まで、事件後の10年間を時系列で整理します。
【2026年現在】津久井やまゆり園は再建され、運営を続けている

最初に、検索する人が最も気になっている現在の姿から確認します。
津久井やまゆり園は、神奈川県相模原市緑区千木良476にある県立障害者支援施設です。主として知的障害のある人を対象に、施設入所支援、生活介護、短期入所などのサービスを提供しています。
2016年の事件後、旧施設の居住棟などは取り壊され、再建工事が進められました。そして2021年8月、新しい津久井やまゆり園が運営を開始しています。
2026年11月現在の運営主体は、神奈川県から指定管理を受けている社会福祉法人かながわ共同会です。県立施設であることと、社会福祉法人が実際の管理運営を担っていることは区別して理解する必要があります。
現在の施設概要神奈川県が2026年4月に更新した県立障害者支援施設の一覧では、津久井やまゆり園の定員は66名とされています。
一方、運営法人が公表するサービス別の定員は次のとおりです。
- 施設入所支援:60名
- 生活介護:66名
- 短期入所:6名
これらはサービスごとの定員であり、実際の入所者数や利用者数を示すものではありません。
また、2026年10月の公式お知らせには、地域との運動会への参加、あおぞらアート、新江ノ島水族館への日帰り旅行、ハロウィーンイベント、スイーツバイキングなどの活動が掲載されています。
10月30日には、園内の湖cafeでファッションセンターしまむらの出張販売を開催したことも紹介されました。
こうした活動からは、施設が単に入所者の生活を維持する場所ではなく、余暇活動や地域交流、社会参加の機会を設けることにも取り組んでいる様子が分かります。
ただし、行事が実施されていることと、すべての利用者が希望する生活を実現できていることは別問題です。施設の活動実績だけで支援の質を評価することはできません。
【事件から再建まで】2016年から2026年までの重要な出来事
津久井やまゆり園の現在を理解するには、事件発生後の移転、再生基本構想、新施設の開設という流れを押さえる必要があります。
2016年7月26日に発生した相模原障害者施設殺傷事件2016年7月26日未明、神奈川県相模原市の津久井やまゆり園で、元職員の植松聖による襲撃事件が発生しました。
入所者19人が死亡し、26人が重軽傷を負いました。合計45人が殺傷された、戦後の日本社会に大きな衝撃を与えた事件です。
事件の背景には、障害のある人の生命や尊厳を否定する差別的な思想がありました。障害の有無によって人間の価値を決めることは許されないという、社会全体に突きつけられた重大な問題でもあります。
2017年の再生基本構想と仮移転事件後、利用者は元の施設での生活を続けることが困難となり、2017年4月5日と21日に横浜市港南区の芹が谷園舎へ移転しました。
同年10月14日、神奈川県は「津久井やまゆり園再生基本構想」を策定しました。
この構想は、施設の建物を元に戻すだけではなく、事件を教訓として障害福祉のあり方を見直すための計画です。利用者の意思を尊重する支援や、地域で生活する可能性を広げることが再生の重要なテーマになりました。
事件後の主な経緯と2026年の状況| 時期 | 出来事 | 内容・現在との関係 |
|---|---|---|
| 2016年7月26日 | 殺傷事件発生 | 19人が死亡、26人が重軽傷を負う。 |
| 2017年4月 | 芹が谷園舎へ仮移転 | 利用者が横浜市港南区へ移る。 |
| 2017年10月14日 | 再生基本構想策定 | 施設再建と障害福祉の見直しを進める。 |
| 2020年 | 再建工事と意思決定支援 | 新施設の整備や利用者の意思を尊重する支援を推進。 |
| 2021年8月 | 新津久井やまゆり園の運営開始 | 相模原市緑区千木良で新施設が稼働。 |
| 2023年4月 | 芹が谷やまゆり園の運営開始 | 独立した県立障害者支援施設として運営。 |
| 2026年7月25日 | 事件から10年の追悼式 | 相模原市立あじさい会館で追悼式を実施。 |
| 2026年8月21日 | 職員による虐待事案 | 利用者への平手打ち行為が発生。 |
| 2026年9月10日 | 身体的虐待の認定 | 自治体が虐待と判断し、改善指導。 |
| 2026年11月 | 現在 | 施設運営と地域生活への移行支援が継続。 |
この10年間で、施設の再建という物理的な変化だけでなく、障害のある人の意思や権利をどのように守るかという制度面の変化も進んできました。
神奈川県は2023年4月1日に「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例」を施行しています。事件後の障害福祉改革を県全体に広げるための取り組みです。
【芹が谷やまゆり園との関係】現在は別々の施設として運営
「津久井やまゆり園」と「芹が谷やまゆり園」は名前が似ているため、同じ施設なのか、移転した施設なのかと疑問に思う人も少なくありません。
両施設には、事件後の利用者の移転と再建という歴史的なつながりがあります。しかし、2026年現在は、それぞれ別の場所にある県立障害者支援施設です。
芹が谷は事件後の仮移転先だった事件後、津久井やまゆり園の利用者は、横浜市港南区芹が谷に設けられた仮移転先で生活することになりました。
その後、相模原市の津久井やまゆり園の再建と、芹が谷地域での施設整備が進められました。利用者の生活の場は、それぞれの施設に分かれる形となりました。
2026年現在の2施設の違い現在の両施設は、所在地だけでなく、指定管理を担う法人も異なっています。
- 津久井やまゆり園:相模原市緑区千木良。社会福祉法人かながわ共同会が指定管理を担う。
- 芹が谷やまゆり園:横浜市港南区芹が谷。社会福祉法人同愛会と社会福祉法人白根学園が共同で指定管理を担う。
芹が谷やまゆり園は、2023年4月1日に現在の施設として運営を開始しました。施設入所支援の定員は60名、生活介護は66名、短期入所は6名です。
なお、芹が谷やまゆり園は事件後の仮移転先と歴史的な関係を持ちますが、現在は独立した施設として運営されています。津久井やまゆり園と同一の指定管理者が運営しているわけではありません。
この違いを理解しておくと、施設の運営状況や虐待問題に関するニュースを読む際にも、どちらの施設で発生した事案なのかを正しく区別できます。
【利用者の現在】意思決定支援とグループホーム、地域移行の実態
事件から10年が経過した現在、津久井やまゆり園の再生を考えるうえで最も重要なのが、利用者本人の生活です。
新しい施設が完成したことだけでは、利用者の人生が再生されたとはいえません。本人がどこで、誰と、どのような暮らしを望んでいるのかを尊重する必要があります。
意思決定支援とは何か意思決定支援とは、自分の意思を伝えたり、選択したりすることが難しい人に対し、本人の意思が日常生活や社会生活に反映されるように支援する仕組みです。
例えば、次のような日常の選択が対象になります。
- どのような食事をしたいか。
- どんな活動や趣味を楽しみたいか。
- 誰と過ごしたいか。
- どこで生活したいか。
- 地域での暮らしを希望するか、施設での生活を希望するか。
言葉で希望を伝えることが難しい場合でも、表情、行動、日々の反応、生活の変化などから本人の意思を理解しようとする姿勢が大切です。
神奈川県は津久井やまゆり園での取り組みを出発点として、2023年度から県内の障害者支援施設などにも意思決定支援を広げています。
グループホームへの移行も進められている津久井やまゆり園を運営するかながわ共同会は、施設以外で暮らす選択肢として「つくいホーム」というグループホームを運営しています。
公式施設情報では、次の5か所が紹介されています。
- 第1グループホーム「ほほえみ」:定員6名
- 第2グループホーム「えがお」:定員7名
- 第3グループホーム「ねごっち」:定員6名
- 第4グループホーム「ウイングハイツ」:定員6名
- 第5グループホーム「つくいこホーム」:定員7名
公表されている定員を合計すると32名です。
これらのグループホームでは、世話人や夜勤者を配置し、津久井やまゆり園がバックアップする体制を設けています。
利用者が地域で生活しながら、日中活動や買い物、外出などを楽しめるようにすることが目的です。
ただし、グループホームの定員32名は、現在の入居者数や、事件当時の利用者全員が地域移行したことを意味する数字ではありません。
実際に施設を離れて地域で暮らす被害者もいる2026年7月のTBS NEWS DIGとテレビ朝日の報道では、事件で重傷を負った尾野一矢さんの現在の生活が紹介されました。
報道時点で53歳の尾野さんは、重度の知的障害と自閉症があり、事件では首や腹部を刺され、一時は生死の境をさまよいました。
事件から4年後、尾野さんは施設を離れ、神奈川県座間市での一人暮らしを始めました。介護福祉士の大坪寧樹さんらの支援を受けながら、地域で生活を続けています。
報道では、買い物や入浴など、自分の希望に沿った生活を送る姿が伝えられました。また、本人は以前の施設生活に戻りたくないという意思も示しています。
この事例が示しているのは、障害の重さだけを理由に、施設以外での暮らしを最初から不可能と決めつけてはいけないということです。
一方、同じ報道では、障害のある人の地域移行が十分に進んでいないという課題も取り上げられています。神奈川県知事も、地域生活への移行について、まだ道半ばとの認識を示しました。
2026年度から始まった地域交流の取り組み2026年の神奈川県の新しい動きとして注目されるのが「ともいきフレンド事業」です。
県は田園調布学園大学の人間福祉学部社会福祉学科の研究グループに事業を委託し、津久井やまゆり園などの利用者と地域住民が、友人のような関係で交流する取り組みを進めています。
単に施設を訪問するだけではなく、継続的な交流を通じて、障害のある人の希望や意思を理解し、本人の意思決定を支えることが目的です。
施設の外に人間関係を広げることは、地域移行を考えるうえでも重要な意味を持っています。
【2026年9月の虐待認定】再建後も残る職員支援と人権擁護の問題
2026年現在の津久井やまゆり園を考えるうえで、避けて通れないのが職員による虐待問題です。
事件から10年という節目を迎えた年に、同じ施設で利用者への身体的虐待が認定されたことは、再生の理念と現場の実態を改めて問い直す出来事となりました。
2026年8月21日に発生した平手打ち行為神奈川県が2026年9月14日に公表した記者発表資料によると、8月21日午後、津久井やまゆり園の30代男性職員が、50代男性利用者の左頬を平手打ちする行為がありました。
発生時は、利用者にシャワー浴と通常の入浴支援を行った後、利用者が再び脱衣所に来て服を脱ごうとしたため、職員が行動を制止しようとしていた場面でした。
その様子を目撃した別の職員が園の幹部職員に報告し、施設側は当該職員への聞き取りを実施しました。
施設は事実を確認したうえで、同日、障害者虐待防止法に基づいて自治体へ通報しました。また、利用者本人と家族に謝罪し、当該職員には自宅待機を指示しました。
9月10日に自治体が身体的虐待と認定この事案について、利用者に給付費を支給している自治体は、平手打ち行為を身体的虐待と判断しました。
2026年9月10日に施設への改善指導が行われ、神奈川県は9月14日に事案を公表しています。
県と指定管理者は、ほかの利用者にも同様の行為がなかったかを調べるとともに、原因究明と再発防止に取り組むとしています。
この問題は、単に一職員の不適切な行為として処理して終わらせるべきものではありません。職員が利用者の行動をどのように理解し、支援方法を選択するのか、困難な場面で組織的な対応ができていたのかという検証が必要です。
事件後にも指摘されていた支援体制の問題実は、津久井やまゆり園では2020年にも、利用者支援のあり方をめぐる検証が行われています。
神奈川県の津久井やまゆり園利用者支援検証委員会が公表した中間報告書では、不適切な身体拘束、支援記録や判断過程の不備、組織的な検討体制の問題などが指摘されました。
また、県による施設の監督やモニタリング、法人のガバナンスについても改善すべき課題が示されました。
こうした過去の検証結果と2026年の虐待認定を合わせて考えると、施設の再建だけでは人権侵害を防ぎきれないことが分かります。
必要なのは、職員個人の意識改革だけではありません。虐待を早期に発見できる仕組み、第三者によるチェック、適切な人員配置、専門的な研修、職員同士が問題を共有できる職場環境など、組織全体の改善です。
事件から10年が経過した今も、利用者の安全と尊厳を守る仕組みが実際に機能しているかどうかが厳しく問われています。
【プロの結論】事件から10年、やまゆり園の再生をどう評価すべきか
2026年の津久井やまゆり園には、再建された建物、地域交流、グループホーム、意思決定支援など、事件後に進められてきた変化があります。
一方、地域移行の遅れや虐待認定という問題も明らかになりました。施設の再建が完了したことと、障害のある人が安心して自分らしく生活できる社会が実現したことは同じではありません。
再生を判断するための3つの基準1. 建物ではなく、本人の生活が改善しているか
施設が新しくなったかどうかだけでなく、本人が食事、活動、外出、人間関係などについて、自分の希望を反映できているかが重要です。
2. 施設以外の生活を選べる環境があるか
グループホームや訪問支援など、地域生活を支える仕組みが十分に整っているかを確認する必要があります。施設から出ること自体を目標にするのではなく、本人が望む生活を実現できるかが判断基準です。
3. 虐待を防ぎ、問題を検証できる組織になっているか
虐待が起きた際に、速やかに通報され、第三者による検証や改善が行われるかどうかも重要です。問題を隠さず、再発防止に結びつける体制がなければ、利用者の安心は守れません。
ネット上で混同されやすい3つのポイントやまゆり園の現在を調べる際には、次の点を区別する必要があります。
- 津久井と芹が谷は同一施設ではない:現在は別々の県立施設であり、指定管理者も異なる。
- 再建完了と地域移行完了は違う:新施設の運営が始まっても、地域での暮らしを選べる環境が十分に整ったとは限らない。
- 事件後の再生と虐待防止は別の評価軸:新しい施設や支援制度があっても、日常的な人権擁護が徹底されなければ再生の理念は実現しない。
2026年7月に事件から10年を迎えたことは、単なる追悼の節目ではありません。これまでの改革が利用者一人ひとりの生活にどのような変化をもたらしたのかを検証する機会でもあります。
【やまゆり園の現在】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:津久井やまゆり園は2026年現在も存在していますか?
A1:はい。2016年の事件後に再建され、2021年8月から新施設の運営を開始しています。2026年11月現在も相模原市緑区千木良で運営されており、社会福祉法人かながわ共同会が指定管理者を務めています。
Q2:芹が谷やまゆり園は津久井やまゆり園と同じ施設ですか?
A2:いいえ。事件後に津久井やまゆり園の利用者が仮移転した場所に歴史的なつながりがありますが、現在は横浜市港南区にある別の県立障害者支援施設です。社会福祉法人同愛会と社会福祉法人白根学園が共同で運営しています。
Q3:やまゆり園の利用者は現在どこで生活していますか?
A3:津久井やまゆり園や芹が谷やまゆり園などの施設で生活する人がいる一方、グループホームや地域の住居に移行した人もいます。個々の利用者の生活場所や人数については、施設別の最新情報と本人の意思を区別して理解する必要があります。
Q4:津久井やまゆり園では2026年にも虐待があったのですか?
A4:はい。2026年8月21日に職員が利用者の左頬を平手打ちする事案が発生し、9月10日に自治体が身体的虐待と認定しました。神奈川県は9月14日に公表し、原因究明と再発防止に向けた取り組みを進めています。
Q5:事件から10年の追悼式はいつ開催されましたか?
A5:2026年7月25日に相模原市立あじさい会館で追悼式が開催されました。翌26日には事件現場の鎮魂のモニュメントで献花が行われ、県はデジタル献花の機会も設けました。
2026年11月現在、津久井やまゆり園は再建後の施設として運営され、芹が谷やまゆり園とともに、神奈川県の障害者支援を担っています。
事件後の10年間で、施設再建、意思決定支援、グループホームの整備、地域交流など、さまざまな取り組みが進められました。事件で負傷した尾野一矢さんのように、施設を離れて地域で生活する道を選んだ人もいます。
しかし、地域移行の遅れや2026年9月の虐待認定は、障害福祉の改革がまだ道半ばであることを示しています。
本当の意味での再生とは、建物を新しくすることだけではありません。障害のある人が一人の人間として尊重され、自分の希望を伝え、生活の場所や日々の過ごし方を選び、その意思が実際の支援に反映されることです。
2016年7月26日に失われた19人の命を忘れず、同じ悲劇を繰り返さないために何が必要なのか。事件から10年を迎えた今こそ、津久井やまゆり園の運営状況だけでなく、障害のある人が地域でともに生きられる社会を実現できているか、一人ひとりが考える必要があります。
主な情報根拠
- 神奈川県「津久井やまゆり園の再生に向けた取組み」「県立障害者支援施設の一覧」
- 神奈川県「津久井やまゆり園職員による利用者への虐待について」(2026年9月14日)
- 神奈川県「障がいのある方の意思決定支援情報ポータルサイト」(2026年10月更新)
- 社会福祉法人かながわ共同会「津久井やまゆり園」公式施設情報・お知らせ
- 芹が谷やまゆり園公式施設概要
- TBS NEWS DIG・テレビ朝日による2026年7月の事件から10年の報道