「太陽にほえろ!」の山村精一刑事、通称「山さん」を演じた俳優・露口茂(つゆぐち・しげる)。重厚な演技と落ち着いた語り口で昭和の刑事ドラマを代表する存在となり、海外ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」ではホームズの吹き替え、スタジオジブリの「耳をすませば」ではバロンの声も担当した。俳優としてだけでなく、声の表現者としても幅広い世代に記憶されている。
2025年9月2日、露口さんが同年4月28日に老衰のため93歳で亡くなっていたことが報じられた。訃報によって改めて注目されたのは、1972年から1986年まで14年近く演じ続けた山さんの存在と、晩年に表舞台から遠ざかっていた理由だった。2026年11月現在、公開されている報道や出演記録をもとに、生い立ち、俳優座養成所時代、代表作、声優活動、最期までの歩みを振り返る。
【露口茂とはどんな俳優?】読み方・プロフィールと俳優座養成所時代

露口茂は「つゆぐち・しげる」と読む。1932年4月8日生まれの俳優で、刑事ドラマ、映画、舞台、海外ドラマの吹き替え、アニメーション映画など、複数のジャンルで活躍した。
日刊スポーツなどの訃報報道によると、東京都で生まれた後、太平洋戦争の影響で両親の故郷である愛媛県松山市へ疎開し、そのまま松山で育った。県立松山東高校を卒業後、愛媛大学に進学したものの、2年で中退して俳優の道へ進んでいる。
1955年に俳優座養成所へ入所露口さんが本格的に演技の道へ進んだのは1955年。劇団俳優座演劇研究所付属俳優養成所に第7期生として入所した。
俳優座養成所は、戦後の日本演劇界を支えた俳優を数多く輩出した教育機関である。露口さんはそこで演技を学び、舞台を中心に経験を積みながら映像作品にも活動の幅を広げていった。
1959年には映画「逃亡者」で映画デビュー。1964年には今村昌平監督の映画「赤い殺意」に出演し、俳優として注目を集めた。
「赤い殺意」では、それまでの単純な善悪では整理できない人間の欲望や暴力を描く作品世界の中で存在感を発揮した。後年の山さんに通じる、人物の内側にある感情を表現する力は、こうした初期の映画経験によっても培われたと考えられる。
悪役から好青年まで演じた幅広い演技力露口さんは「山さん」の印象が強いものの、もともと刑事役だけを専門にしていた俳優ではない。
1960年代から1970年代にかけては、映画やテレビドラマでさまざまな人物を演じた。NHK連続テレビ小説「おはなはん」「繭子ひとり」、大河ドラマ「国盗り物語」「風と雲と虹と」などにも出演している。
また、時代劇「水戸黄門」第1部や「清水次郎長」などにも参加。1971年から1972年に放送された「清水次郎長」では黒駒勝蔵を演じ、主人公のライバルとして強い印象を残した。
こうした幅広い役柄を経験していたことが、山村精一という一人の刑事に複雑な人間性を持たせる演技につながっていた。
【太陽にほえろ!の山さん】山村精一の役柄と14年間の出演期間
露口茂の名前を聞いて、最初に「山さん」を思い浮かべる人は多い。山さんとは、日本テレビ系の刑事ドラマ「太陽にほえろ!」で露口さんが演じた山村精一刑事の愛称である。
1972年7月に放送が始まった同作は、警視庁七曲署の捜査第一係を舞台に、石原裕次郎演じる藤堂俊介、通称「ボス」と刑事たちの活躍を描いた作品だ。
露口さんは放送開始当初から山村精一役を担当。1986年4月まで、約14年間にわたってレギュラー出演を続けた。
「落としの山さん」と呼ばれた理由山村精一の最大の特徴は、力任せに犯人を追い詰めるのではなく、観察力と洞察力を生かして事件の真相を解き明かす刑事だったことだ。
特に取り調べでは、容疑者の言葉や表情、供述の矛盾を丁寧に読み取る。相手の心理を理解しながら、少しずつ逃げ道をなくしていく手法から「落としの山さん」という異名が付いた。
当時の刑事ドラマでは、銃撃戦や追跡、激しいアクションが視聴者を引き付ける大きな要素だった。一方、山さんの見せ場は必ずしも派手なアクションではない。
取り調べ室で犯人と向き合い、長い沈黙の後に核心を突く。わずかな表情の変化や言葉の選び方によって、事件の構図が変わっていく。こうした心理戦こそ、山さんの魅力だった。
若手刑事を支える七曲署の精神的支柱「太陽にほえろ!」では、萩原健一演じるマカロニ、松田優作演じるジーパン、勝野洋演じるテキサスなど、若手刑事たちが次々と登場した。
彼らの多くは情熱的で、時には無鉄砲な行動に出る。対して山さんは、経験に裏打ちされた冷静さを持ち、若い刑事たちを見守る立場にあった。
CBCマガジンの追悼記事でも、山さんは七曲署のチームにおける「重石」のような存在として紹介されている。単なるベテラン刑事ではなく、若手とボスをつなぐ重要な役割を担っていた。
石原裕次郎演じるボスとの信頼関係も、作品の大きな魅力だった。日刊スポーツの訃報記事によれば、石原さんは露口さんを「太陽になくてはならない男」と評価していたという。
山さんの殉職回は1986年4月11日長年にわたって七曲署を支えた山村精一にも、最後の時が訪れる。
1986年4月11日放送の「さらば!山村刑事」で、山さんは殉職することになった。
物語では短銃密輸組織の捜査に関わり、凶弾に倒れる。番組の長い歴史の中でも大きな節目となったエピソードであり、山さんという人物の退場を印象づける結末だった。
ここで注意したいのは、「太陽にほえろ!」自体の放送終了日と、露口さんの降板時期は異なることだ。番組は1986年11月まで続いたが、露口さんは同年4月の山村刑事殉職回で出演を終えている。
【露口茂の経歴・出演作品】映画・ドラマ・転換点を年表で整理
露口茂のキャリアを振り返ると、映画での評価からテレビドラマの人気俳優へ、さらに海外ドラマやアニメーションの吹き替えへと活動領域を広げていったことが分かる。
代表的な経歴と作品を時系列で整理すると、次のようになる。
| 時期 | 出来事・出演作品 | 主な意味・役柄 |
|---|---|---|
| 1932年4月8日 | 東京都で誕生 | 戦時中に愛媛県松山市へ疎開し、同地で育つ |
| 1955年 | 俳優座養成所に入所 | 第7期生として本格的な俳優修業を始める |
| 1959年 | 映画「逃亡者」 | 映画デビュー |
| 1964年 | 映画「赤い殺意」 | 今村昌平監督作品で注目を集める |
| 1966年 | NHK連続テレビ小説「おはなはん」 | テレビドラマでの出演歴を広げる |
| 1971年 | NHK連続テレビ小説「繭子ひとり」 | テレビでの活動を継続 |
| 1972年7月 | 「太陽にほえろ!」 | 山村精一、通称「山さん」役で出演開始 |
| 1973年 | NHK大河ドラマ「国盗り物語」 | 時代劇にも出演 |
| 1976年 | NHK大河ドラマ「風と雲と虹と」 | 大河ドラマ出演 |
| 1981年 | TBS「父母の誤算」 | 連続ドラマ初主演 |
| 1986年4月11日 | 「さらば!山村刑事」 | 山村精一役が殉職し、長期出演を終える |
| 1980~1990年代 | 「シャーロック・ホームズの冒険」 | ジェレミー・ブレット演じるホームズの吹き替え |
| 1995年7月15日 | 映画「耳をすませば」 | バロン役の声を担当 |
| 2025年4月28日 | 93歳で死去 | 老衰のため東京都内の自宅で亡くなる |
| 2025年9月2日 | 訃報が公表される | 各報道機関が死去を報道 |
映画では、山田洋次監督の「霧の旗」や今村昌平監督の「ええじゃないか」などにも出演している。テレビでは「水戸黄門」「清水次郎長」「江戸の激斗」など、刑事ドラマ以外のジャンルでも活動した。
また、1981年の「父母の誤算」では連続ドラマ初主演を務めた。山さん役の印象が強い一方で、主演俳優としての実績も持っていたことは、露口茂のキャリアを理解するうえで見逃せない。
この年表から分かるのは、露口さんの俳優人生が「太陽にほえろ!」だけで完結していなかったことだ。映画、時代劇、現代劇、吹き替えと、長年にわたって異なる表現に挑戦していた。
【声優としての代表作】シャーロック・ホームズと耳をすませばのバロン
露口茂のもう一つの大きな功績が、声優・吹き替え俳優としての仕事である。
特に有名なのが、英国グラナダ・テレビ制作のドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」と、スタジオジブリのアニメーション映画「耳をすませば」だ。
シャーロック・ホームズ役はジェレミー・ブレットの吹き替え「シャーロック・ホームズの冒険」は、アーサー・コナン・ドイルの推理小説を原作とする英国のテレビドラマシリーズである。ホームズを演じたのは英国俳優ジェレミー・ブレットだった。
日本語吹き替えでは、露口さんがホームズ役を担当した。
NHKエンタープライズが販売する同シリーズのDVD商品情報にも、ジェレミー・ブレットの吹き替え担当として露口茂の名前が記載されている。
ホームズは、鋭い観察力と論理的な推理を武器に事件を解決する人物だ。感情を大きく表に出さず、必要な場面で鋭い言葉を放つ。その人物像に、露口さんの落ち着いた声質と緊張感のある語りがよく合っていた。
ここには、山さんとの興味深い共通点がある。
山村精一もシャーロック・ホームズも、相手の言葉や行動から真実を読み取る観察型の人物である。派手な動きよりも思考や会話によって物語を動かす役柄だった。
露口さんが両者を演じたことは、俳優としての表現力だけでなく、声だけで人物の知性や個性を伝える能力を示している。
耳をすませばのバロン役で若い世代にも知られるもう一つの代表的な声優出演作が、1995年7月15日に公開されたスタジオジブリの映画「耳をすませば」である。
露口さんが演じたのは、バロンという猫の男爵人形だ。
バロンは、主人公・月島雫が出会う不思議な存在であり、雫の想像力や物語への憧れを象徴する重要なキャラクターでもある。
露口さんの声は、バロンの持つ気品や落ち着き、どこか謎めいた雰囲気を表現している。短い登場時間の中でも、キャラクターに確かな存在感を与えた。
スタジオジブリの公式作品情報にも、声の出演者として露口茂の名前が掲載されている。
「太陽にほえろ!」をリアルタイムで見ていた世代にとって、露口さんは山さんの俳優だった。一方、「耳をすませば」を通じて知った世代にとっては、バロンの声の人という印象が強い。
同じ俳優でありながら、刑事ドラマとアニメーション映画という異なるジャンルで、世代を超えて記憶される役を残したことは、露口さんの大きな特徴である。
【2025年の訃報と晩年】死去した日は4月28日、死因は老衰
2025年9月2日、露口茂さんが亡くなっていたことが明らかになった。
共同通信の配信記事や日刊スポーツ、スポーツニッポンなどの報道によると、露口さんは2025年4月28日、老衰のため東京都内の自宅で死去。93歳だった。
葬儀は近親者で執り行われたと報じられている。
死亡日と訃報の公表日は異なるインターネットで露口茂の訃報を調べると、2025年9月2日や9月3日という日付が表示されることがある。
これは報道が公表された日付であり、実際に亡くなった日は4月28日である。
情報を整理すると、次のようになる。
- 生年月日:1932年4月8日
- 死亡日:2025年4月28日
- 享年:93歳
- 死因:老衰
- 亡くなった場所:東京都内の自宅
- 訃報公表:2025年9月2日
- 葬儀:近親者で執り行われた
死因については老衰と報道されている。特定の病気や事故が原因だったとする発表は、主要な訃報報道では確認されていない。
なぜ晩年は表舞台から遠ざかっていたのか露口さんは1990年代中盤以降、テレビや映画などへの出演が徐々に減り、長い期間にわたって公の場に姿を見せる機会が少なくなっていた。
この点について、2025年9月3日付のスポーツニッポンは、2009年の雑誌インタビューで露口さんが、依頼があれば仕事をしたいという趣旨の意向を示していたことを紹介している。
一方、同紙が紹介した知人の証言によると、仕事の依頼自体はあったものの、当時のドラマには自分に合う役がないとして断っていたようだ。
この報道から読み取れるのは、単純に仕事がなくなったという話ではなく、本人の役柄に対する考え方や仕事への向き合い方も関係していた可能性があるということだ。
露口さんは長年にわたって、山さんのような深みのある人物を演じてきた。自分が納得できる役を選びたいという俳優としての姿勢が、出演作の減少につながった可能性は考えられる。
ただし、仕事を受けなくなった理由について、本人が一つの明確な説明を公表したわけではない。知人の証言と本人の過去のインタビューを区別して理解する必要がある。
少なくとも、晩年に表舞台から遠ざかっていたことだけを理由に、俳優としての活動が評価されなくなったと考えるのは適切ではない。長年の出演実績と残された作品が、その存在感を示している。
2026年現在の最新情報2026年11月現在、露口茂さんは2025年4月28日に亡くなった俳優として記録されている。新たな出演活動や本人による発信が行われる状況ではない。
現在、露口さんを知るための中心的な資料は、「太陽にほえろ!」をはじめとする出演作品、吹き替え作品の記録、そして2025年9月に各報道機関が伝えた訃報や追悼記事である。
2026年時点で押さえておきたいのは、山さん役だけではなく、ホームズやバロンといった声の仕事も含めて、その俳優人生全体を振り返ることだ。
【プロの結論】露口茂が昭和・平成の映像文化に残したもの
露口茂の俳優人生を振り返ると、最も印象的なのは、役柄が変わっても一貫して人物の内面を表現していたことだ。
山村精一は、取り調べを通じて犯人の心理を読み解く刑事だった。シャーロック・ホームズは、観察と論理によって事件の謎を解く探偵だった。そしてバロンは、言葉少なでありながら、主人公の心に大きな影響を与える存在だった。
一見すると異なる三つの役柄だが、いずれも大きな声や派手な動きに頼らず、言葉や雰囲気で人物の魅力を伝える役である。
露口さんの演技には、必要以上に感情を説明しない余白があった。その余白が視聴者の想像力を刺激し、役柄を単なる物語上の登場人物ではなく、実在する人物のように感じさせた。
初めて作品を見るなら、どれを選ぶべきか露口茂の魅力を知りたい人には、目的に応じて次の作品から見ることをおすすめしたい。
- 俳優としての代表作を知りたい人:「太陽にほえろ!」。山さんの推理力、取り調べの演技、若手刑事との関係性を確認できる。
- 声の演技をじっくり味わいたい人:「シャーロック・ホームズの冒険」。ジェレミー・ブレットの演技と露口さんの日本語吹き替えを楽しめる。
- ジブリ作品から知りたい人:「耳をすませば」。バロンの気品ある声と作品の幻想的な世界観を味わえる。
- 映画俳優としての初期の仕事を知りたい人:「赤い殺意」。山さんとは異なる人物表現を確認できる。
山さんだけを知っていた人がホームズの声を聞くと、同じ俳優が演じていることに新鮮な驚きを覚えるかもしれない。反対に、バロンの声から露口茂を知った人が「太陽にほえろ!」を見ると、俳優としての表現の幅を実感できるはずだ。
2025年の訃報は一つの時代の終わりを感じさせた。しかし、作品は残る。14年間にわたって演じた山さんの姿も、ホームズの知的な語りも、バロンの穏やかな声も、映像作品を通じてこれからも受け継がれていく。
【露口茂と山さん】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:露口茂の読み方は何ですか?
A1:露口茂は「つゆぐち・しげる」と読みます。1932年4月8日生まれで、愛媛県松山市で育った俳優です。俳優座養成所で演技を学び、映画やテレビドラマ、吹き替えなど幅広い分野で活躍しました。
Q2:「太陽にほえろ!」の山さんはいつまで出演していましたか?
A2:1972年7月の放送開始から1986年4月まで出演しました。1986年4月11日放送の「さらば!山村刑事」で山村精一が殉職し、露口さんの長期出演は終了しました。番組自体は同年11月まで放送されています。
Q3:露口茂の死因は何ですか?
A3:報道によると老衰です。2025年4月28日に東京都内の自宅で93歳で亡くなりました。訃報は同年9月2日に公表され、葬儀は近親者で執り行われました。
Q4:露口茂はシャーロック・ホームズの声も担当していたのですか?
A4:はい。英国ドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」で、ジェレミー・ブレットが演じるホームズの日本語吹き替えを担当しました。NHKで放送されたシリーズの吹き替えとして知られています。
Q5:「耳をすませば」では何の役を演じましたか?
A5:猫の男爵人形であるバロンの声を担当しました。1995年公開のスタジオジブリ作品で、露口さんの落ち着いた声がキャラクターの気品や神秘的な雰囲気を表現しています。
露口茂は、1932年4月8日に生まれ、俳優座養成所で修業を積み、1959年の映画デビューから長年にわたって活躍した俳優だった。
代表作「太陽にほえろ!」では、1972年から1986年まで山村精一、通称「山さん」を演じ、冷静な洞察力と人情味を兼ね備えた刑事像を作り上げた。1986年4月11日の殉職回は、長年の出演に幕を下ろす重要なエピソードとなった。
加えて、「シャーロック・ホームズの冒険」のホームズ役、「耳をすませば」のバロン役など、声の演技でも確かな足跡を残している。
2025年4月28日、老衰のため93歳で亡くなった露口さん。2026年現在、新しい出演活動を知ることはできないが、残された作品を通じて、その演技に触れることはできる。
山さんの静かな眼差し、ホームズの知的な語り、バロンの気品ある声。それぞれの役柄に共通していたのは、過剰な演出に頼らず、人物そのものの存在感を伝える力だった。
「山さん」こと露口茂は、単に一つの人気刑事役を演じた俳優ではない。映画、テレビドラマ、吹き替え、アニメーションという異なる世界に、長く記憶される人物を残した名優である。