みかんの皮をむいたとき、房の表面にびっしりと付いている白い筋。見た目や口当たりが気になり、一本ずつ丁寧に取り除いてから食べる人も少なくありません。しかし、この白い筋は単なる皮の残りではなく、みかんの成長を支えてきた大切な組織です。実は、水分や養分を果実に届ける「維管束」と呼ばれる通路にあたります。
農林水産省の2026年度更新情報でも、みかんの白い筋は維管束であると説明されています。加えて、この部分には食物繊維やヘスペリジンなどの成分が含まれています。白い筋と白い皮のアルベド、房を包む薄皮は何が違うのか。食べても安全なのか、苦味の理由やきれいな取り方まで、植物の構造と栄養学の両面から詳しく解説します。
【正体を解明】みかんの白い筋は維管束!なぜ付いているのか

みかんの白い筋の正体は、植物の体内で水分や養分を運ぶ「維管束(いかんそく)」です。農林水産省の消費者向け情報でも、房の背中にある葉脈のような白い筋を維管束と説明しています。
植物の葉に葉脈があるように、みかんの果実にも水分や栄養分を届けるための通路が張り巡らされています。私たちが普段食べているみかんの房にも、この仕組みが備わっているのです。
白い筋は果実を育てるための栄養供給ルートみかんは木に実る果物です。根から吸収された水分や、葉でつくられた養分は、枝を通って果実へと運ばれます。その供給を担う組織の一つが維管束です。
みかんの内部では、房の中心にある果心から各房へと組織が広がり、房の表面にも網目状の維管束が形成されています。
農林水産省が2021年12月発行の「消費者の部屋通信」で紹介した相談事例によると、房の内部にある果肉の小さな粒は、外側の白い維管束とつながっています。この構造によって、水分や養分が果肉の隅々まで供給される仕組みです。
つまり、白い筋は果実が成長するために欠かせない植物の輸送システムです。食べるときに目にする細い繊維状の部分にも、植物としての合理的な役割があります。
なぜ白く、網目状に見えるのか維管束が白く見えるのは、果皮のような濃い色素を持つ部分とは異なり、内部の繊維質を中心とした組織だからです。
また、房を包むように枝分かれしているため、皮をむいたときには細い糸が張り巡らされたような形で現れます。
この網目状の構造は、果実の成長に必要な物質を効率よく運ぶためのものです。見た目が気になる白い筋も、植物の生育という視点で見ると、非常に機能的な組織だと分かります。
【違いを比較】白い筋・アルベド・薄皮は同じものではない
みかんの白い部分を調べると、「維管束」「アルベド」「じょうのう」という専門用語が登場します。これらは似た場所にあるため混同されがちですが、植物の構造としては別のものです。
特に注意したいのが、白い筋とアルベドの違いです。農林水産省の2017年の広報誌では、食べ方の紹介において白い筋を「アルベド」と表現しています。一方、同省の2021年の構造説明や2026年度更新のFAQでは、房の表面に広がる網目状の筋を維管束と説明しています。
こうした表現の違いが、検索する人の混乱につながっています。植物の各部分を整理すると、次のようになります。
| 名称 | 位置・見た目 | 主な役割・特徴 |
|---|---|---|
| 維管束 | 房の表面にある白い網目状の筋 | 水分や養分を運ぶ通路 |
| アルベド(中果皮) | オレンジ色の外皮の内側にある白いスポンジ状の部分 | 果皮を構成する組織の一部 |
| フラベド | みかんの外側にあるオレンジ色の皮 | 色素や香り成分を含む外果皮 |
| じょうのう | 一つ一つの房を包む薄い袋 | 果肉を包み、内部を保護する |
| 砂じょう | 房の中にある果汁たっぷりの小さな粒 | 果汁を蓄える果肉部分 |
アルベドとは、みかんのオレンジ色の外皮のすぐ内側に存在する白い中果皮のことです。スポンジのような質感があり、果実の外側を覆っています。
オレンジやグレープフルーツをむいたとき、皮の裏側に厚く残る白い部分をイメージすると分かりやすいでしょう。
一方、維管束は房の表面に沿って広がる網目状の通路です。両者は近接した組織ですが、同じものではありません。
薄皮の正式名称は「じょうのう」みかんの房を包んでいる薄い袋は「瓤嚢(じょうのう)」と呼ばれます。普段は薄皮と呼ばれる部分で、内部の砂じょうを包み込んでいます。
薄皮の表面には維管束が走っており、皮をむいたときに白い筋が目立つのはこのためです。
したがって、白い筋を取り除くことと、房を包む薄皮を取り除くことは別の作業です。筋だけを取っても薄皮は残りますし、薄皮をむけば筋の多くも一緒に取り除かれます。
【安全性を検証】みかんの白い筋は食べても大丈夫?苦い理由も解説
みかんの白い筋は、基本的にそのまま食べて問題ありません。通常の食用みかんに自然に付いている維管束であり、毒性のある異物ではないからです。
むしろ、白い筋には食物繊維やヘスペリジンなどの成分が含まれています。農林水産省も、白い筋を含む部分を栄養成分のある組織として紹介しています。
白い筋を食べることに問題はない白い筋を取り除かずに食べても、通常は健康上の問題はありません。みかんの房と一緒に食べられる自然な構成部分です。
ただし、これは新鮮で食用に適したみかんの場合です。カビが生えている、腐敗している、異臭がするなど、果実そのものに異常がある場合は食べないでください。
また、かんきつ類にアレルギーがある人は、白い筋だけを取り除いても安全になるわけではありません。
白い筋はなぜ苦いと感じるのか白い筋を食べると、果肉とは違った食感や、わずかな苦味・渋みを感じることがあります。これは果肉のように果汁や糖分を豊富に含む部分ではなく、繊維質を中心とした組織だからです。
柑橘類の苦味には、フラボノイド類やリモノイド類など複数の成分が関係します。ただし、すべての柑橘類に同じ苦味成分が同じ量だけ含まれているわけではありません。
農研機構の研究成果では、温州みかんの果汁にはナリルチンやヘスペリジンなどが含まれ、調査対象となったほかの柑橘類ではナリンギンやリモニン類が苦味に関係することが示されています。
そのため、白い筋が苦いからといって、必ずしもヘスペリジンだけが原因とは限りません。品種や果実の状態、食べたときの食感なども関係します。
普通の温州みかんで白い筋に多少の苦味を感じても、それだけで傷んでいると判断する必要はありません。
【栄養を詳しく解説】白い筋に含まれる食物繊維とヘスペリジン
白い筋を取り除かずに食べるメリットとして挙げられるのが、食物繊維とヘスペリジンを摂取できることです。
みかんというとビタミンCのイメージが強いものの、果肉だけでなく、薄皮や筋にも注目すべき成分があります。
食物繊維は薄皮を含めて食べることで摂取できるみかんの食物繊維は、果肉だけでなく房を包むじょうのうにも含まれています。白い筋も繊維質を含む組織です。
文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」によると、温州みかんの普通タイプのじょうのう・生には、可食部100g当たり食物繊維総量1.0gが含まれています。
この1.0gは、白い筋だけを取り出して測定した数値ではありません。房の薄皮と果肉を含む食品区分の成分値です。白い筋単独の含有量と混同しないことが大切です。
食物繊維は、腸内環境や便通を整える食生活を支える栄養成分です。日々の食事で野菜や果物などからバランスよく摂取することが基本になります。
ヘスペリジンとは?ビタミンPと呼ばれる成分白い筋に含まれる注目成分の一つが「ヘスペリジン」です。これは柑橘類に含まれるフラボノイドの一種で、ポリフェノールに分類されます。
農林水産省の消費者相談資料では、ヘスペリジンは果肉よりも果皮や筋、房を包む袋に多く含まれると説明されています。
ヘスペリジンは、かつて「ビタミンP」と呼ばれていた成分でもあります。ただし、日本ビタミン学会によれば、ビタミンPは歴史的な呼称であり、現在の学術的なビタミンの定義には当てはまりません。
ヘスペリジンについて研究されている主なテーマには、次のようなものがあります。
- 血管機能との関係
- 抗酸化作用に関する研究
- 炎症反応との関係
- 柑橘類に含まれるフラボノイドとしての生理作用
ただし、こうした研究結果を、みかんの白い筋を食べれば特定の病気を予防・治療できるという意味に受け取ることはできません。通常の食品としての栄養価と、成分を濃縮したサプリメントや研究用の摂取条件は区別する必要があります。
白い筋を取ると栄養はどれくらい失われる?白い筋を取り除けば、筋に含まれている食物繊維やヘスペリジンなどの成分を摂取する機会は減ります。
ただし、取り除いた筋だけの栄養損失量を一律に示すことはできません。みかんの品種、大きさ、筋の付き方、取り除く範囲によって異なるためです。
栄養をできるだけ無駄なく摂取したいなら、白い筋を残し、房を包む薄皮も一緒に食べる方法が合理的です。
【実践編】みかんの白い筋をきれいに取る方法とおすすめのむき方
白い筋は食べても問題ありませんが、口当たりが気になる場合や、料理・デザートの見た目を整えたい場合には取り除いても構いません。
農林水産省の広報誌affでも、白い筋を取りやすくする方法として、ヘタ側から皮をむく方法が紹介されています。
方法1:ヘタ側から皮をむく白い筋をまとめて取りたい場合におすすめなのが、ヘタ側から皮をむく方法です。
- みかんのヘタが付いている部分を上にする。
- ヘタの周辺から親指を入れて外皮をむく。
- 皮を房から離すように、ゆっくり剥がしていく。
- 房に付着した白い筋が皮側に残っているか確認する。
ヘタ側からむくと、外皮と一緒に白い筋が剥がれやすくなります。一本ずつ指でつまんで取るよりも、手間を減らせる方法です。
ただし、筋がすべて取れるとは限りません。残った部分は必要に応じて取り除きましょう。
方法2:房ごとに指で取り除くすでに皮をむいてしまった場合は、房を一つずつ分けてから取り除く方法があります。
- みかんの房を一つずつ分ける。
- 白い筋の端を指先で軽くつまむ。
- 房の表面に沿って、優しく引っ張る。
- 残った細い筋を必要な範囲だけ取り除く。
強く引っ張ると薄皮まで破れて果汁が出ることがあります。無理にすべてを取り除こうとせず、気になる部分だけを取るのがポイントです。
方法3:薄皮ごと取り除いて果肉だけにするケーキやゼリー、フルーツサラダなどに使う場合は、白い筋だけでなく、房を包む薄皮も取り除くと仕上がりがきれいになります。
房の端から薄皮を開き、中の砂じょうを崩さないように取り出します。果汁が流れ出ないよう、力を入れすぎないことが大切です。
ただし、この方法では薄皮や筋に含まれる栄養成分の一部を食べずに済ませることになります。日常的に食べるなら、無理に果肉だけにする必要はありません。
栄養を優先するなら逆に筋を残す白い筋をきれいに取る方法と、栄養をできるだけ残す方法は、実は方向性が異なります。
農林水産省の2017年の食べ方紹介では、ヘタ側からむくと白い筋を取りやすいと説明する一方、筋には食物繊維やビタミンPなどの成分が含まれることも紹介しています。
口当たりを優先するならヘタ側からむき、栄養を優先するなら筋を残す。このように目的に応じて食べ方を変えるとよいでしょう。
【プロの結論】みかんの白い筋は取るべき?残すべき?
みかんの白い筋について、植物の構造、食品としての安全性、栄養成分、食べ方の4つの視点から整理すると、基本的には取り除かずに食べることをおすすめします。
その理由は、白い筋が果実の成長を支える維管束であり、食物繊維やヘスペリジンなどの成分を含む自然な食用部分だからです。
目的別に考えるおすすめの食べ方- 栄養を重視する人:白い筋を残し、房の薄皮ごと食べる。
- 口当たりを重視する人:ヘタ側から皮をむき、気になる筋を取り除く。
- 子どもや高齢者に食べさせる場合:食べやすさや飲み込みやすさに応じて筋や薄皮を調整する。
- 料理やデザートに使用する場合:必要に応じて薄皮まで取り除き、果肉だけを使う。
白い筋には栄養成分が含まれていますが、それだけで健康状態が改善するわけではありません。食物繊維やヘスペリジンを摂取できることはメリットですが、みかん全体の栄養バランスの中で考えることが大切です。
また、ヘスペリジンの研究で報告されている作用と、普通にみかんを食べたときに得られる効果は同じではありません。特定成分の効能を期待して大量に食べるよりも、適量を日常の食生活に取り入れることが現実的です。
白い筋を取るか残すかに、絶対的な正解はありません。食感を優先する人は取り除いてもよく、栄養をできるだけ残したい人はそのまま食べても問題ありません。
【よくある質問】みかんの白い筋に関するFAQ
Q1:みかんの白い筋は食べても本当に大丈夫ですか?
A1:はい。白い筋は水分や養分を運ぶ維管束という植物の組織で、通常の食用みかんに付いているものなら、そのまま食べても問題ありません。食物繊維やヘスペリジンも含まれています。
Q2:みかんの白い筋とアルベドは同じものですか?
A2:厳密には異なります。白い筋は房の表面に広がる維管束で、アルベドはオレンジ色の外皮の内側にある白い中果皮です。どちらも白い部分ですが、位置と組織の役割が違います。
Q3:みかんの白い筋には食物繊維がどれくらい含まれていますか?
A3:文部科学省の日本食品標準成分表によると、温州みかんの普通タイプのじょうのう・生には、可食部100g当たり食物繊維総量1.0gが含まれています。ただし、これは薄皮と果肉を含む食品区分の数値であり、白い筋だけの数値ではありません。
Q4:白い筋に含まれるヘスペリジンとは何ですか?
A4:ヘスペリジンは柑橘類に含まれるフラボノイドの一種です。以前はビタミンPと呼ばれていましたが、現在の学術的な分類では正式なビタミンには含まれません。果肉よりも果皮や筋、薄皮に多く含まれると農林水産省が説明しています。
Q5:みかんの白い筋を一気に取る方法はありますか?
A5:ヘタ側から皮をむく方法がおすすめです。外皮と一緒に白い筋が剥がれやすくなります。ただし、完全に取り切れるわけではないため、残った筋は必要に応じて指先で取り除いてください。
Q6:みかんの白い筋が苦いのはなぜですか?
A6:白い筋は果肉とは異なる繊維質の組織で、食感や風味の違いから苦味や渋みを感じることがあります。柑橘類の苦味には複数のフラボノイドやリモノイドが関係しますが、ヘスペリジンだけが原因とは限りません。
みかんの白い筋の正体は、果実に水分や養分を運ぶ維管束です。房の表面に網目状に広がり、内部の果肉を成長させる役割を担っています。
また、白い筋は外皮の内側にあるアルベドや、房を包むじょうのうとは異なる組織です。それぞれの違いを知ると、みかんの構造をより正確に理解できます。
白い筋には食物繊維やヘスペリジンが含まれており、通常は取り除かずに食べても問題ありません。口当たりが気になる場合は、ヘタ側から皮をむくことで筋を取りやすくなります。
2026年現在も、農林水産省の情報で確認できる基本的な答えは変わりません。白い筋は果実を育てるために必要な組織であり、食べられる部分です。
次にみかんを食べるときは、白い筋を一本ずつ取り除く前に、その小さな繊維が果実を育ててきた仕組みに思いを巡らせてみてください。食べ方は自由ですが、栄養を無駄なく取り入れたいなら、白い筋も薄皮も一緒に味わうのがおすすめです。
主な根拠資料
- 農林水産省「みかんの皮をむくと白い筋があるが、これは何ですか。」(2026年度更新)
- 農林水産省「消費者の部屋通信」令和3年12月号(維管束の構造・ヘスペリジン・食物繊維)
- 農林水産省「特集1 みかん(5)」 (皮のむき方・白い筋の栄養)
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」食品成分データベース
- 日本ビタミン学会「ビタミンQ&A」
- 農研機構「カンキツ類の苦味成分と加熱による臭いの変化」