熊愛護団体とは、クマを保護するだけでなく、森林の再生、生息環境の保全、人身被害の防止、行政への政策提言などを通じて、人間と野生動物の共存を目指す団体です。代表的な組織として、日本熊森協会、日本クマネットワーク、日本自然保護協会(NACS-J)などが挙げられます。ただし、それぞれ活動目的や専門分野は異なり、すべての団体が同じ考え方でクマの保護を進めているわけではありません。
2026年11月現在、クマによる人身被害や市街地への出没が社会問題となる一方、環境省は「クマ被害対策ロードマップ」を策定し、緊急銃猟制度の運用や個体数管理を進めています。こうした状況で注目されるのが、日本熊森協会の森林保全活動、駆除に対する主張、寄付・会員制度、そして実際の現場での取り組みです。保護団体の活動実態と行政の対策を照らし合わせながら、駆除と共存をめぐる議論の本質を整理します。
【基礎知識】熊愛護団体とは?活動目的と保護団体が存在する理由

「熊愛護団体」という言葉は、クマの保護や自然環境の維持を目的とする組織をまとめて表現する際に使われます。ただし、法律上定められた統一的な団体分類ではありません。
実際には、野生動物の研究を中心にするNGO、森林保全を進める一般財団法人、絶滅危惧個体群の保護に取り組む自然保護団体など、さまざまな組織が存在します。
熊愛護団体が取り組む主な5つの活動1. クマの保護・飼育
狩猟や有害鳥獣捕獲を目的とした罠に誤ってかかったクマについて、状況に応じた放獣や保護飼育を検討します。保護された個体の健康管理や飼育環境の維持も活動の一部です。
2. 森林保全と生息地の再生
クマが暮らせる森林を守るため、広葉樹林の再生、人工林の管理、植樹などを実施します。クマだけでなく、森林に生息する多様な動植物の生態系を守ることにもつながります。
3. 人身被害の予防
人里にクマを引き寄せる放置果樹や生ごみなどの管理、電気柵の設置、草刈り、緩衝帯の整備などを進めます。クマを保護する活動と、人間の生活圏を守る活動は、本来切り離せません。
4. 調査・研究と情報発信
センサーカメラや痕跡調査などを通じて、クマの生息状況や行動を把握します。研究成果を自治体や地域住民に共有することも重要です。
5. 行政への政策提言と環境教育
野生動物管理の制度改善、森林政策への提言、子ども向けの自然教育、地域住民への啓発活動などを行います。
つまり、熊愛護団体は単純にクマを殺さないよう求める組織ではありません。森林の状態を改善し、クマが人里に依存しない環境を整え、人間との接触を減らすことも活動の重要な目的です。
【団体一覧】日本熊森協会・日本クマネットワーク・NACS-Jの違い
日本国内でクマの保護や共存に関係する代表的な団体には、それぞれ異なる専門性があります。団体名だけで活動方針を判断するのではなく、何を対象に、どのような方法で保全を進めているのかを確認することが大切です。
| 団体名 | 主な活動分野 | 活動の特徴・関連性 |
|---|---|---|
| 一般財団法人 日本熊森協会 | 森林保全、クマの保護、人との棲み分け | 保護飼育、奥山再生、被害防除、政策提言 |
| 日本クマネットワーク(JBN) | 調査研究、教育啓発、情報共有 | 研究者や自然保護関係者、行政関係者などが連携 |
| 日本自然保護協会(NACS-J) | 自然環境・生物多様性の保全 | 四国のツキノワグマと森林生態系の保全を推進 |
| 四国自然史科学研究センター | 野生動物の調査・研究 | 四国のツキノワグマのモニタリングや生息状況の把握 |
日本熊森協会は、兵庫県西宮市に本部を置く一般財団法人です。2010年12月28日に一般財団法人として設立されました。代表理事は室谷悠子氏です。
活動の中心は、クマをはじめとする大型野生動物の生息環境を守り、森林再生と人間との棲み分けを進めることです。
全国各地に支部を設け、森林保全、野生動物の保護、環境教育、行政への政策提言などを行っています。公式サイトでは33支部、会員22,258人という活動規模を公表しています。
日本クマネットワーク:科学的知見と地域連携を重視日本クマネットワーク(JBN)は、人間とクマ類との共存を目指すNGOです。
クマに関する情報共有、研究プロジェクト、講演会、教育啓発、地域活動の支援などを展開しています。
特徴的なのは、研究者だけでなく、自然保護活動家、行政関係者、学生など、さまざまな立場の人々が参加している点です。人身事故防止プロジェクトや四国のツキノワグマ保全プロジェクトにも取り組んでいます。
日本自然保護協会(NACS-J):絶滅危惧個体群の保全日本自然保護協会(NACS-J)は、1951年に創立した自然保護NGOです。
クマだけを対象とする団体ではありませんが、四国のツキノワグマ保全を重要なプロジェクトとして進めています。
四国自然史科学研究センターや日本クマネットワークと連携し、生息状況の調査、生息地の再生、地域住民との共存策づくりなどを行っています。
これらの団体は、必ずしも同じ方法を採用しているわけではありません。森林保全、科学的な調査、地域での被害防止という異なる役割が組み合わさることで、クマをめぐる問題に対応しています。
【活動の実態】日本熊森協会の主張・森林保全・ボランティア・寄付制度
熊愛護団体を調べる人が特に気になるのが、日本熊森協会は実際に何をしているのか、駆除に反対するだけなのか、寄付金はどのように使われているのかという点です。
同協会の公式資料や活動報告を確認すると、政策提言だけでなく、森林整備、保護飼育、地域の被害防止など、複数の実践活動を行っていることが分かります。
森林保全と奥山の再生日本熊森協会が重視するのは、クマが本来暮らす奥山の森林環境です。
公式サイトでは、放置されたスギやヒノキの人工林を間伐し、広葉樹林へと誘導する取り組みを紹介しています。広葉樹が育つ森林は、クマだけでなく、多様な野生動物の生息地になります。
また、森林をトラスト地として取得し、長期的な保全を目指す活動も行っています。
2025年の会計報告では、トラスト山林の保全面積が1,321ヘクタールに達したと公表されています。これは団体の活動規模を把握するうえで注目すべき数字です。
クマの保護飼育と地域の被害防止協会は、誤捕獲されたクマの保護飼育や、人と野生動物の棲み分けを支援しています。
加えて、クマの出没地域では、行政や地域住民と協力し、集落に残されたカキの実を収穫したり、クマが隠れやすい場所の草刈りをしたりする活動も実施しています。
これは、クマを保護することと人間の安全を守ることを同時に進める取り組みです。
熊保護団体のボランティアには何がある?日本熊森協会では、野外活動だけでなく、教育や事務作業など幅広いボランティアを募集しています。
- 被害防止対策:集落の放置果樹の収穫、草刈りなど。
- 森林再生:人工林の整備、広葉樹の植樹、シカよけネットの設置。
- 保護グマのお世話:飼育施設の清掃や餌やりなど。
- 環境教育:紙芝居や人形劇を通じた自然保護の啓発。
- 事務作業:会報誌や事業報告書の発送準備。
公式サイトでは、「とよ」「太郎」「くまこ」の3頭のツキノワグマの飼育に協力していることも紹介されています。
野外活動については、交通費や食費が自己負担となる場合があります。また、野外ボランティアでは500円のボランティア保険への加入が案内されています。活動内容や募集時期は事前に本部へ確認する必要があります。
日本熊森協会の寄付・会費はいくら?日本熊森協会は、個人会員、法人・団体会員、一般寄付など複数の支援方法を用意しています。
- 正会員:年会費6,000円以上10万円未満。
- 応援会員:年会費1,000円以上6,000円未満。
- 特別会員:年会費10万円以上。
- 家族会員:正会員・応援会員・特別会員と同居する家族は無料。
- 企業会員:年会費1口60,000円。
- 団体会員:年会費1口30,000円。
正会員は月1,000円から、特別会員は月10,000円からの月払いにも対応しています。応援会員は年1,000円から参加できるため、少額から継続的に支援することも可能です。
会員には年2回の会報誌と年1回の年間活動報告書が送付され、全国大会や野外活動などの情報も案内されます。
また、入会せずに不定期で寄付することもできます。クマ保護基金は、被害対策、人身事故に関する現場対応、保護グマの飼育費などに使われると説明されています。
注意点として、協会の公式寄付案内では寄付金は税額控除の対象にならないとされています。寄付を検討する場合は、この点も含めて確認しておきましょう。
寄付金の使い道と団体の評判をどう見るべきか日本熊森協会の評判を判断する際には、賛成・反対の意見だけでなく、公開されている会計報告や実際の活動内容を確認が必要です。
協会が公表した2025年の会計報告では、経常収入合計は6,122万5,000円、経常費用合計は5,447万4,000円、当期経常増減額は675万1,000円でした。
収入のうち会費収入は約3,988万円で、全体の約65%を占めています。また、高額寄付約3,998万円を将来の大きなプロジェクトに備える積立金としたことも報告されています。
こうした会計情報や事業報告が公開されていることは、支援を検討する人にとって確認材料になります。ただし、収入や森林の保全面積だけで、すべての活動の効果を評価できるわけではありません。現地の成果、被害防止の実績、保護個体の管理状況なども合わせて見る必要があります。
協会に対する評価が分かれる背景には、駆除現場での対応があります。クマの命を守る立場からは、放獣や非致死的な対応を求める活動が評価される一方、住民の安全を最優先する立場からは、緊急時の捕獲判断に対して慎重すぎると受け止められる場合があります。
そのため、評判を一言で良い・悪いと決めるよりも、具体的な活動と政策提言を確認することが適切です。
【2026年最新】クマの出没・捕獲数と環境省の被害対策ロードマップ
熊愛護団体の主張を考えるうえで避けられないのが、クマによる人身被害の現状です。
2026年は、環境省が3月27日に「クマ被害対策ロードマップ」を決定し、自治体の緊急対応、生活圏への出没防止、個体数管理、人材育成、生息環境の保全などを体系的に進めています。
2025年度と2026年度の人身被害を比較環境省が2026年10月14日に公表した速報値によると、2025年度のクマによる人身被害は216件、被害者238人、死亡者13人でした。
2026年度は9月末までに64件、被害者68人、死亡者6人が確認されています。
2026年度はまだ年度途中ですが、すでに複数の死亡事故が発生しており、生活圏における安全対策が引き続き重要な課題となっています。
クマの出没件数と許可捕獲数環境省の2026年10月14日更新資料では、クマの出没情報と許可捕獲数について、8月末までの速報値が公表されています。
- 2025年度の出没情報:50,801件。
- 2026年度の出没情報:19,789件(4~8月)。
- 2025年度の許可捕獲数:14,741頭。
- 2026年度の許可捕獲数:4,243頭(4~8月)。
2026年度の許可捕獲数は、ツキノワグマ3,855頭、ヒグマ388頭の合計です。
ただし、これらは年度途中の速報値であり、2025年度の通年値と単純比較することはできません。また、出没情報は都道府県ごとに警察への通報や自治体の情報など、異なる方法で集計されています。北海道の出没件数はこの統計で公表されていません。
出没件数はクマの個体数そのものではなく、許可捕獲数もすべての捕獲方法を同一条件で集計した数字ではありません。数字の意味を区別して読むことが大切です。
環境省のクマ被害対策ロードマップとは?2026年3月27日に決定されたロードマップは、2030年度までを中心に関係省庁と自治体が連携して対策を進める計画です。
主な柱は次の7分野です。
- クマ出没時の緊急対応。
- 人の生活圏への出没防止。
- 個体数管理の強化。
- 捕獲者や専門人材の確保・育成。
- クマの生息環境の保全・整備。
- 国民への情報発信。
- 研究開発、国立公園の安全強化、財政措置。
特に注目されるのは、2030年度までに恒常的なクマ生息地域の自治体で、緊急対応体制の確保率100%、推定個体数・捕獲目標数の明確化率100%、ゾーニング管理計画の策定率100%を目指している点です。
また、2026年3月時点の自治体職員数は、クマの捕獲作業などに従事する人員が784人とされています。ロードマップでは、2030年度までに2,500人への拡充を目標にしています。
箱わなは現在の5,527基から10,000基、クマ撃退スプレーは7,093本から20,000本への整備が目標です。
つまり、国の方針は単に捕獲数を増やすことだけではありません。緊急時の人員・資機材の確保、生活圏への侵入防止、森林管理、科学的な個体数把握を組み合わせた対策です。
緊急銃猟制度とは?2026年の運用状況2025年9月1日に改正鳥獣保護管理法が施行され、新たに緊急銃猟制度の運用が始まりました。
この制度では、クマやイノシシが人の日常生活圏に出没した場合、安全確保などの条件を満たせば、市町村が委託したハンターなどによる銃猟が可能になります。
従来、市街地での銃猟には厳しい制約がありましたが、緊急銃猟制度によって自治体が状況に応じて対応できる仕組みが整えられました。
2026年4月には環境省がガイドラインを改訂し、実際の運用事例や安全対策に関する情報を追加しています。
環境省の2026年10月29日更新資料によれば、2026年度は10月27日までに緊急銃猟で発砲に至った事例が38件確認されています。
この数字は発砲に至った事例数であり、すべての事例で同じ結果になったことを意味するものではありません。
緊急銃猟は、クマの保護をめぐる議論でも重要な争点です。住民の生命を守るための迅速な対応と、捕獲対象ではないクマを可能な限り放獣するための専門体制を、どう両立させるかが問われています。
【駆除反対の理由】熊森協会の主張と人身被害をめぐる対立の本質
日本熊森協会が駆除をめぐって批判や議論の対象になる理由は、クマの捕殺だけに依存する対策では、長期的な被害防止につながらないと考えているためです。
一方で、クマによる人身事故が発生している地域では、住民の安全を確保するために迅速な捕獲が必要になる場合があります。この二つの立場は、単純に善悪で整理できる問題ではありません。
熊森協会が駆除に慎重な主な理由1. 森林や里山の環境問題を重視している
協会は、里山の管理放棄、放置果樹、緩衝帯の消失、森林の劣化などが人里への出没に関係していると主張しています。
人間の生活圏にクマを引き寄せる原因を残したまま捕獲だけを強化しても、同様の問題が繰り返される可能性があるという考え方です。
2. 捕獲対象ではないクマの誤捕獲を防ぎたい
シカやイノシシを捕獲するための罠にクマがかかる錯誤捕獲も問題になっています。
本来の捕獲対象ではないクマについては、現場の安全性や個体の状態を確認し、専門的な放獣体制を整えることが重要だという立場です。
3. 森林の再生による長期的な共存を目指している
クマが山で十分な餌を得られる環境を整え、人里への接近を減らすことを重視しています。
ただし、森林を再生すれば直ちに市街地への出没や人身事故がなくなるわけではありません。長期的な環境保全と、現在発生している危険への対応は分けて考える必要があります。
熊森協会はクマの駆除に全面反対しているのかこの点は誤解されやすい部分です。
2025年11月6日、同協会はクマの出没が相次ぐ状況を受けて記者会見を開き、環境大臣宛てに緊急要請を提出しました。捕殺一辺倒ではなく、被害防除や森林再生への予算配分を求めたものです。
当時の報道では、協会は捕殺そのものをすべて否定しているわけではなく、必要な場合もあるとの立場を示しています。
また、2026年10月には東京都八王子市で、シカ・イノシシ用のくくり罠にかかったツキノワグマが緊急銃猟によって駆除された事案がありました。
これを受け、日本熊森協会は10月8日に東京都へ要望書を提出し、錯誤捕獲されたクマを安全に放獣するための体制整備や、クマの生息地域における罠の規制を求めています。
会見で室谷悠子会長は、放獣に関して次のように説明しています。
「本来は放獣しなければいけないところ」
これは、2026年10月の八王子市の事案に関する同協会側の主張です。市は9月28日に市民の安全確保を理由として緊急銃猟を実施しました。
ここから分かるのは、協会の問題意識が単純な駆除反対ではなく、捕獲対象の判断、錯誤捕獲への対応、放獣を担える専門人材の確保にも向けられていることです。
クマとの共存策で現実的に必要なこと人間とクマが共存するためには、双方の生活圏を明確にし、危険な接触を減らす必要があります。
- 放置果樹の管理:集落に残されたカキやクリなどを適切に収穫する。
- 生ごみの管理:クマを誘引する食品や廃棄物を屋外に放置しない。
- 電気柵の整備:農地や集落への侵入を防止する。
- 緩衝帯の整備:人間の生活圏と森林の境界を管理する。
- 出没情報の共有:自治体、警察、学校、地域住民が情報を共有する。
- 専門人材の育成:捕獲、追い払い、放獣などに対応できる人材を確保する。
- 危険個体への対応:人身被害が差し迫る場合は、行政が法令に基づいて迅速に対応する。
重要なのは、共存という言葉を「人間が危険を我慢すること」と混同しないことです。
人間の生活圏にクマを近づけない対策を徹底し、それでも重大な危険が発生した場合には適切な捕獲を行う。その一方で、野生個体群の保全が必要な地域では、生息環境を守ることも欠かせません。
【四国ツキノワグマ】NACS-Jが進める保全活動と絶滅危機の現状
クマの保護を考えるうえで、全国のクマを同じ基準で扱えないことを示す代表例が、四国のツキノワグマです。
東北や北海道などで人身被害への対応が求められる一方、四国では個体数が極めて少ないツキノワグマの地域個体群を絶滅から守ることが課題になっています。
四国のツキノワグマはなぜ貴重なのか四国のツキノワグマは、徳島県と高知県にまたがる剣山山系とその周辺に生息しています。
2017年時点の推定個体数は16~24頭とされ、環境省レッドリスト2020では「絶滅のおそれのある地域個体群」に位置づけられています。
かつては四国山地の広い範囲に生息していたと考えられていますが、森林の開発や伐採、狩猟などの影響を受け、生息域が縮小してきました。
2025年度の調査で最低25頭を識別2026年6月19日、林野庁四国森林管理局、環境省中国四国地方環境事務所、四国自然史科学研究センターは、「はしっこプロジェクト2025」の調査結果を公表しました。
調査では25か所59地点にセンサーカメラを設置し、16か所でツキノワグマを確認。個体識別によって最低25頭が確認されました。
加えて、環境省中国四国地方環境事務所による別調査で、これとは異なる2頭も確認されています。その結果、2025年度に確認された個体は合計27頭となりました。
また、当歳幼獣2頭を連れた親子が2組確認され、少ない個体数の中でも繁殖が行われていることが分かりました。
注意したいのは、確認された27頭が四国全体の確定した生息個体数を意味するわけではないことです。調査によって確認・識別された個体数であり、実際の個体群の規模をそのまま表す数字ではありません。
NACS-Jの保全活動と地域住民との連携日本自然保護協会(NACS-J)は、四国自然史科学研究センターや日本クマネットワークと協力して、ツキノワグマの保全を進めています。
活動には、生息状況のモニタリング、ブナやミズナラなどの自然林の再生、森林管理者との連携、地域住民との共存策づくりが含まれます。
2026年1月には、2025年のクマによる人身被害の増加を受けて、NACS-Jがクマに対する現状認識と野外活動時の安全対策を発表しました。
さらに2026年1月、徳島県那賀町で地域住民、行政、研究者など約90人が参加する保全計画づくりが行われ、同年5月にはその取り組みに関する行動計画案が公表されています。
四国の事例は、クマの保護が単なる個体の保護にとどまらず、地域社会との信頼関係や森林管理を含む長期的な課題であることを示しています。
【プロの結論】全国一律ではなく地域ごとの保全と管理が必要北海道、本州、四国では、クマの生息状況も人間との接触の頻度も異なります。
人里への出没が繰り返される地域では、住民の生命を守るための捕獲や侵入防止策が大切です。一方、絶滅のおそれがある四国の個体群では、生息地の維持や繁殖環境の確保が優先課題です。
同じ「クマ保護」という言葉でも、地域によって必要な対策は変わります。
熊愛護団体の活動を評価する際も、駆除に賛成か反対かだけではなく、次の3点を見ることが重要です。
- 人身被害の防止に実効性があるか:住民の安全を守る具体策を持っているか。
- 保全活動に科学的根拠があるか:個体数や生息地のデータに基づいているか。
- 地域社会と協力できているか:行政や住民、研究者と継続的な連携ができているか。
クマの命を守ることと、人間の命を守ることは対立する目的ではありません。ただし、両立には具体的な人員、予算、科学的な判断、地域ごとの管理計画が必要です。
【FAQ】熊愛護団体に関するよくある質問
Q1:日本で代表的な熊愛護団体はどこですか?
A1:代表例として、日本熊森協会、日本クマネットワーク、日本自然保護協会(NACS-J)があります。森林保全、調査研究、野生動物保護など、それぞれ専門分野が異なります。
Q2:日本熊森協会は駆除に全面反対しているのですか?
A2:捕殺一辺倒の対策には反対し、森林再生や被害防除、放獣体制の整備を求めています。一方、報道された会見では、必要な場合の捕獲まで全面否定しているわけではないと説明しています。
Q3:日本熊森協会への寄付はいくらからできますか?
A3:応援会員は年会費1,000円から加入できます。会員にならず、不定期に寄付することも可能です。なお、公式案内では寄付金は税額控除の対象外とされています。
Q4:熊保護団体のボランティアには誰でも参加できますか?
A4:活動によって条件は異なりますが、日本熊森協会では森林整備、集落の被害防止、保護グマのお世話、環境教育、事務作業などのボランティアを募集しています。現地活動の日時や参加条件は事前確認が必要です。
Q5:2026年のクマによる人身被害は何件ですか?
A5:環境省の2026年10月14日更新速報値では、2026年度9月末までに64件、被害者68人、死亡者6人です。年度途中の暫定値であり、今後変更される可能性があります。
Q6:四国のツキノワグマは増えているのですか?
A6:2025年度の調査では合計27頭が確認され、親子2組の繁殖も確認されました。ただし、確認個体数と実際の生息個体数は異なります。分布域は剣山山系周辺に限られており、継続的な調査と保全が必要です。
熊愛護団体は、クマを保護するだけの組織ではありません。森林の再生、野生動物の調査、人身被害の予防、環境教育、行政への政策提言など、活動は幅広い分野に及びます。
日本熊森協会は、森林保全とクマの保護を一体的に進め、会員・寄付制度やボランティアを通じて活動を展開しています。日本クマネットワークは調査研究や情報共有を重視し、NACS-Jは四国のツキノワグマなどの生息環境保全に取り組んでいます。
2026年は、環境省のクマ被害対策ロードマップや緊急銃猟制度によって、行政による管理体制も大きく変化しています。人身被害の防止が急務である一方、四国のように絶滅が懸念される個体群を守る取り組みも欠かせません。
保護団体を支援する場合は、理念だけでなく、活動報告、会計情報、具体的な保全実績、地域との連携状況を確認することが大切です。
クマを守ることと人間の安全を守ること。その両方を実現するためには、感情的な賛否を超え、科学的なデータと現場の実情に基づいた地域別の対策が必要です。熊愛護団体と行政、地域住民がそれぞれの役割を果たせるかどうかが、今後の共存の鍵を握っています。
主な情報源・参照資料
- 環境省「クマに関する各種情報・取組」「クマ被害対策ロードマップ」
- 環境省「緊急銃猟制度」「2026年度クマ出没・人身被害・捕獲速報」
- 日本熊森協会「活動内容」「会員制度」「2025年会計報告」
- 日本クマネットワーク「活動内容・組織概要」
- 日本自然保護協会「四国のツキノワグマ保全」
- 林野庁四国森林管理局「はしっこプロジェクト2025調査結果」
- 弁護士ドットコムニュース(2025年11月6日、2026年10月9日報道)
統計の基準日: 人身被害は2026年9月末、出没・許可捕獲数は同年8月末、緊急銃猟は10月27日までの公表資料を使用しています。