ハニートラップとは、恋愛感情や性的な関係を利用して相手の警戒心を解き、機密情報や金銭、組織内部の情報、あるいは相手の弱みを引き出す工作を指す言葉です。英語の「Honey Trap」に由来し、もともとは諜報活動やスパイ工作で使われてきた表現ですが、現在では恋愛関係を利用した詐欺や、秘密を握って金銭を要求する行為などを指して使われることもあります。
2024年3月27日の衆議院内閣委員会では、政府参考人がハニートラップについて、性的関係を利用して対象者から情報・利益・弱みを引き出すスパイ活動という認識を示しました。2026年現在は、SNSやマッチングアプリを通じた恋愛詐欺、生成AIによる人物のなりすましなども身近なリスクとなっており、従来の諜報活動と一般的な金銭目的の詐欺を区別して理解する必要があります。
【基本知識】ハニートラップとは?意味・語源・由来をわかりやすく解説

ハニートラップは、英語の「Honey Trap」を日本語にした表現です。
「Honey」は蜂蜜を意味するほか、愛しい人や恋人に対する親しみを込めた呼びかけにも使われます。一方、「Trap」は罠を意味します。
つまり、相手にとって魅力的な恋愛関係や親密な交流を入り口にして、最終的に何らかの利益を得ようとする仕掛けを表しています。
一般的には、次のような目的で利用されます。
- 恋愛感情を利用して機密情報を聞き出す
- 性的関係や親密な交流を通じて相手の弱みを握る
- 写真や動画などを利用して金銭を要求する
- 企業や政府機関の内部情報を入手する
- 対象者の信用を失墜させ、社会的・政治的な立場を弱める
- 相手を協力者として取り込み、継続的に情報を提供させる
重要なのは、ハニートラップが必ずしも金銭を要求する行為ではないという点です。
諜報活動の場合、工作を仕掛けた側が直接お金を受け取らなくても、機密情報の入手や組織への影響力の獲得が成功すれば目的を達成したことになります。
また、仕掛ける側が女性で、対象者が男性という組み合わせに限定されるわけでもありません。男性が女性を誘惑するケースや、同性間の親密な関係を利用するケースも概念上は含まれます。
ハニートラップの語源・由来ハニートラップという表現は、英語圏の諜報活動に関連する俗語として知られています。
米中央情報局(CIA)のスパイ用語集でも、「Honey Trap」は、情報収集を目的に男女を誘惑して相手を陥れる手法として説明されています。特に冷戦期のソ連などの諜報活動との関連が紹介されています。
ただし、この言葉が最初に使われた正確な年代や、最初に使用した人物については、確定的な説明ができる資料は限られています。
日本では、海外のスパイ活動を紹介する報道や映画、ドラマなどを通じて知られるようになり、現在は恋愛関係を利用した詐欺や脅迫を表現する際にも使われています。
ハニートラップは女性が男性を誘惑することだけではないハニートラップという言葉から、魅力的な女性が男性を誘惑する場面を想像する人は少なくありません。
しかし、これは典型的なイメージの一つにすぎません。
CIAが紹介する冷戦期の「ロミオ・スパイ」は、その代表例です。
東ドイツの情報機関は、西ドイツの政府機関などで働く女性職員に接近する男性工作員を利用しました。女性職員との恋愛関係を築き、仕事上の情報を得ようとしたのです。
この事例からも、ハニートラップの本質は性別や外見ではなく、親密な関係を情報収集や利益獲得の手段として利用することにあると分かります。
【仕組みと目的】ハニートラップはどのように成立する?典型的な手口を解説
ハニートラップが成立する背景には、人間関係における信頼や心理的な距離の変化があります。
初対面の相手に重要な情報を話す人は多くありません。しかし、親しくなった相手に対しては、仕事の悩みや人間関係、将来の計画などを自然に話してしまうことがあります。
工作を仕掛ける側は、こうした心理的な変化を利用します。
ハニートラップが成立する基本的な仕組み一般的な流れは、次のように整理できます。
第1段階:対象者との接点をつくる
仕事関係の交流会、SNS、マッチングアプリ、共通の趣味、知人の紹介など、自然な接点を通じて対象者と知り合います。
第2段階:親密な関係を築く
会話や食事、メッセージの交換などを通じて心理的な距離を縮めます。
相手の悩みや関心事を理解し、信頼できる存在だと思わせることが、この段階の特徴です。
第3段階:個人的な情報に接近する
仕事の内容、人間関係、所属組織、担当業務などについて話題にすることがあります。
本人が警戒していない場合、日常会話のつもりで機密性の高い情報を話してしまう可能性があります。
第4段階:情報や弱みを利用する
得られた情報を使って協力を求めたり、関係を継続するよう圧力をかけたりするケースがあります。
また、親密な関係を記録した写真やメッセージなどが、後から脅迫の材料として使われることもあります。
第5段階:目的を達成する
機密情報の取得、金銭の獲得、組織への影響力の確保、対象者の信用失墜など、当初の目的に応じた結果を狙います。
すべてのケースがこの順番で進むわけではありません。情報収集だけを目的とするものや、最初から金銭を要求するものなど、実態には違いがあります。
ハニートラップの主な目的ハニートラップの目的は、大きく4つに分けられます。
1. 機密情報の入手
諜報活動で代表的な目的です。
政府関係者、研究者、企業幹部、軍関係者など、重要な情報にアクセスできる人物が対象になる場合があります。
狙われる情報には、事業計画、研究開発の内容、組織内部の人事、取引先情報、未公開の政策情報などがあります。
2. 金銭の獲得
恋愛関係や性的関係を利用し、金銭を要求するケースです。
秘密を公開すると脅すほか、架空の交際費用や投資資金などを要求することもあります。
3. 弱みを握って相手を支配する
親密な関係を利用して、相手のプライベートな情報や秘密を把握し、継続的な協力を迫るケースです。
対象者が仕事や家庭への影響を恐れている場合、心理的な圧力が強まる可能性があります。
4. 社会的・政治的な信用を失墜させる
政治家や経営者、組織の重要人物などを対象に、スキャンダルを利用して立場を弱めようとするケースです。
情報そのものを入手することよりも、対象者の判断力や信用を損なうことが主な目的になる場合もあります。
ハニートラップの典型的な手口代表的なパターンは次のとおりです。
- 恋愛感情の利用: 短期間で親密になり、相手の信頼を獲得する。
- 情報収集型: 仕事や所属組織について、個人的な会話を通じて情報を得ようとする。
- 秘密の共有型: 二人だけの秘密を強調し、周囲への相談や報告を避けさせる。
- 性的関係の利用: 親密な関係を利用して弱みを握ろうとする。
- 写真・動画による脅迫型: プライベートな画像などを材料に、金銭や協力を要求する。
- 金銭要求型: 交際や将来の約束を口実に、継続的な送金を求める。
- 組織への接近型: 仕事上の人脈や立場を利用し、内部情報に接近する。
ただし、恋愛関係が短期間で進展したことや、相手が仕事について質問したことだけで、ハニートラップと断定することはできません。
複数の不自然な行動が重なっているか、相手の要求が本人の意思や安全を侵害していないかを確認する必要があります。
【徹底比較】ハニートラップと恋愛詐欺・美人局は何が違う?
ハニートラップと混同されやすい言葉に、恋愛詐欺と美人局があります。
いずれも恋愛感情や性的な関係を利用する点では共通していますが、目的や金銭要求の方法には違いがあります。
3つの手口の違いを比較| 比較項目 | ハニートラップ | 恋愛詐欺 | 美人局 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 情報・利益・弱みの獲得 | 金銭の詐取 | 金銭の恐喝・詐取 |
| 主な手段 | 恋愛感情や性的関係の利用 | 恋愛感情や親近感の利用 | 男女関係や性的な状況の利用 |
| 主な対象 | 情報や影響力を持つ人物など | 恋愛感情を抱いた相手 | 金銭を要求できる相手 |
| 典型的な状況 | 親密な関係を利用した情報収集 | 交際や結婚を装った送金要求 | 第三者が現れて金銭を要求 |
| 金銭要求 | 必ずしも発生しない | 主要な目的の一つ | 典型的な目的 |
| 情報収集 | 重要な目的になり得る | 通常は金銭獲得が中心 | 弱みの把握が金銭要求に利用される |
恋愛詐欺は、相手に恋愛感情や親近感を抱かせ、その心理を利用して金銭をだまし取る犯罪です。
警察庁が説明するSNS型ロマンス詐欺では、SNSやマッチングアプリで知り合った人物と直接会わずに連絡を続け、信頼関係を築いた後、投資や結婚資金などの名目で金銭を要求する手口が確認されています。
一方、ハニートラップでは、金銭よりも機密情報や相手の弱みの獲得が中心になる場合があります。
つまり、恋愛詐欺は金銭をだまし取ること、ハニートラップは親密な関係を利用して何らかの情報や利益を得ることに重点があるという違いです。
もちろん、金銭目的のハニートラップと恋愛詐欺のように、両方の特徴を持つケースもあります。
ハニートラップと美人局の違い美人局(つつもたせ)は、女性が男性を誘い出し、事前に共謀していた第三者などが現れて、交際や性的関係を口実に金銭を要求する手口です。
例えば、女性と会った後に第三者が現れ、「交際相手がいるのに何をしている」「警察に通報する」などと圧力をかけ、示談金などの名目で金銭を要求するケースがあります。
ハニートラップとの大きな違いは、目的です。
美人局は金銭の恐喝や詐取が中心ですが、ハニートラップは機密情報の獲得や対象者への影響力の確保など、より幅広い目的で利用されます。
また、ハニートラップという言葉自体は犯罪の正式な罪名ではありません。具体的な行為に応じて、詐欺罪や恐喝罪、脅迫罪などの成立が問題になります。
【実態・事例】ハニートラップの歴史と諜報活動における有名なケース
ハニートラップは、現代のSNSやマッチングアプリによって生まれた手口ではありません。
恋愛関係や人間関係を情報収集に利用する考え方は、古くから諜報活動の一部として存在してきました。
第一次世界大戦とマタ・ハリハニートラップの歴史を語る際、しばしば名前が挙がる人物が、オランダ出身のダンサー、マタ・ハリです。
第一次世界大戦中、彼女はフランスの軍事法廷でドイツ側のスパイとして有罪判決を受け、1917年10月15日に処刑されました。
当時の裁判では、政治家や軍関係者との交際などが諜報活動との関連で取り上げられました。
ただし、マタ・ハリが実際にどれほど重要な軍事情報を入手し、敵国に提供したのかについては歴史的な議論が残っています。
フランス国防省の歴史資料でも、ドイツ側・フランス側のいずれに対しても、彼女が決定的な情報を提供したことを立証できなかった経緯が紹介されています。
そのため、マタ・ハリをハニートラップの成功例として単純に扱うのは適切ではありません。
むしろ、恋愛や性的なイメージが諜報活動の実態と結び付けられ、人物の評価や歴史的な印象を大きく左右した事例として見ることができます。
冷戦期のロミオ・スパイハニートラップの実例として、より分かりやすいのが冷戦期の東ドイツによる「ロミオ・スパイ」です。
CIAが2018年6月4日に公開した解説によると、東ドイツの国家保安省(シュタージ)は、西ドイツの政府機関や政治・軍事関係の組織に接近するため、男性工作員を利用していました。
対象になったのは、重要な情報にアクセスできる女性職員です。
男性工作員は恋愛関係を築き、信頼を獲得することで、女性職員が持つ情報に接近しようとしました。
この工作員たちは「ロミオ・スパイ」と呼ばれました。
この事例が示しているのは、ハニートラップが単なる男女間の恋愛トラブルではなく、組織的な情報収集活動として利用されることがあるという点です。
2024年の国会答弁で示された日本政府の認識日本でも、ハニートラップは経済安全保障や機密情報の保護に関連する論点として国会で取り上げられています。
2024年3月27日の衆議院内閣委員会では、重要経済安保情報の保護に関する法案の審議に関連して、政府参考人が次のように説明しました。
一般的に、ハニートラップとは、性的関係を利用して対象者から情報、利益、弱みを引き出すスパイ活動のことを指すと考えられているところでございます。
政府は、現在または過去の性的な交友関係を契機として、外国の情報機関などから重要経済安保情報の漏えいを働きかけられた場合、適性評価において考慮され得るとの認識も示しています。
これは、恋愛関係そのものを問題視するという意味ではありません。
重要なのは、個人的な関係を利用して、機密情報を提供するよう働きかけられているかどうかです。
2026年のSNS型ロマンス詐欺にも注意2026年現在、ハニートラップと混同されやすい問題として、SNS型ロマンス詐欺があります。
警察庁の2026年1〜6月の掲載事例には、オンラインで知り合った相手から暗号資産投資を勧められた40代男性が約700万円の被害に遭ったケースや、インターネットショップの運営を勧められた50代男性が約3,300万円を失ったケースが掲載されています。
これらはハニートラップと認定された事例ではなく、警察庁が紹介するSNS型ロマンス詐欺の被害事例です。
ただし、恋愛感情や信頼関係を利用して相手の判断力を鈍らせ、金銭や情報を引き出そうとする点では、警戒すべき共通項があります。
警察庁は加えて、翻訳アプリや生成AIを使ったなりすましにも注意を促しています。写真やメッセージ、音声、ビデオ通話だけで相手の身元を完全に確認できるとは限りません。
【見分け方と予防策】ハニートラップを疑うべき危険なサインとは?
ハニートラップを見分けるうえで大切なのは、相手の容姿や職業、国籍などで判断しないことです。
特定の属性を持つ人が工作員であるという根拠はなく、外見や肩書だけで相手の意図を判断することはできません。
注目すべきなのは、関係が深まる過程で現れる不自然な要求や行動です。
ハニートラップを疑う5つのサイン1. 知り合って間もないのに極端に親密になろうとする
出会って間もない段階で恋愛感情を強く表現し、頻繁な連絡や二人きりの交流を求めてくる場合は、相手のペースに合わせすぎないことが大切です。
ただし、恋愛の進展が早いだけで工作と断定することはできません。
2. 仕事や所属組織について執拗に質問する
担当業務、社内の人間関係、未公開のプロジェクト、取引先、組織の意思決定など、通常の交際相手が知る必要のない情報を繰り返し尋ねてくる場合は注意が必要です。
特に、社外秘の情報を具体的に求められた場合は、回答を控えるべきです。
3. 二人だけの秘密を強調する
「誰にも話さないでほしい」「会社には絶対に知られたくない」など、第三者への相談を避けさせる言動が続く場合は警戒しましょう。
秘密を守ることと、外部からの圧力によって孤立させられることは別です。
4. 写真や動画、個人的な情報を過度に要求する
プライベートな画像や個人情報を繰り返し求められたり、断った際に不機嫌になったりする場合は、関係のあり方を見直す必要があります。
一度送信した画像や情報は、相手側で保存・複製される可能性があります。
5. 金銭や仕事上の協力を求めてくる
恋愛関係を理由に送金を求める、仕事上の資料を見せてほしいと頼む、会社のアカウントを使わせてほしいと要求するなどの行動は危険なサインです。
親密な関係であっても、金銭や業務情報を安易に渡してはいけません。
個人ができるハニートラップの予防策日常生活で実践できる予防策は、次のとおりです。
- 仕事上の機密情報や未公開情報を、私的な交流の場で話さない。
- SNSに勤務先、担当業務、出張予定などを詳しく公開しない。
- 個人的な写真や動画を送信する際は、後から悪用されるリスクを考える。
- 金銭や投資を要求された場合は、恋愛感情と切り離して判断する。
- 不自然な秘密の強要や圧力を受けた場合は、信頼できる第三者に相談する。
- 仕事用と個人用のアカウント・端末を適切に分ける。
- パスワードを使い回さず、多要素認証を利用する。
特に、企業や研究機関、行政機関などで機密情報を扱う人は、個人的な人間関係と業務上の情報管理を明確に分けることが重要です。
企業・組織が取り組むべき情報漏えい対策ハニートラップによる情報漏えいは、個人だけの問題ではありません。
重要情報にアクセスできる従業員が、個人的な関係を通じて情報提供を求められた場合、企業全体のリスクにつながる可能性があります。
企業が取り組むべき対策としては、次のようなものがあります。
- 機密情報へのアクセス権限を必要最小限にする。
- 社外への情報持ち出しに関するルールを明確にする。
- 多要素認証や端末管理を徹底する。
- 不審な情報提供依頼を報告できる窓口を設ける。
- 従業員に対して経済安全保障や情報管理に関する研修を実施する。
- 不審な接触があった場合に、本人を責めずに相談できる体制を整える。
情報漏えい対策は、単に従業員の行動を監視することではありません。相談しやすい環境をつくり、個人が不審な働きかけを受けた際に組織として対応できる仕組みを整えることが重要です。
【被害に遭った場合】ハニートラップの対処法と金銭要求・脅迫への対応
ハニートラップの被害が疑われる場合、最も避けたいのは、恐怖や焦りから相手の要求に従い続けることです。
相手が情報を握っていると感じると、秘密を守るために金銭を支払ったり、さらに機密情報を渡したりしてしまうことがあります。
しかし、最初の要求に応じても、それで問題が解決する保証はありません。
1. 相手とのやり取りを記録する最初に、相手との連絡内容を保存してください。
具体的には、次のような情報が役立ちます。
- SNSやメッセージアプリの会話履歴
- 相手のアカウント名やプロフィール情報
- 金銭要求や脅迫のメッセージ
- 送金先の口座情報
- 電話やビデオ通話の履歴
- 送金した場合の振込明細
- 実際に会った日時や場所に関する記録
メッセージを削除したり、アカウントをすぐに消したりすると、後から状況を説明することが難しくなる場合があります。
証拠を安全な場所に保存し、必要に応じて専門家に確認してもらいましょう。
2. 金銭要求には安易に応じない「写真を公開する」「勤務先に知らせる」「家族に暴露する」などと言って金銭を要求された場合、相手の要求に応じる前に警察や弁護士へ相談してください。
一度支払っても、追加の金銭を要求される可能性があります。
また、相手が本当に写真や動画を持っているのか、実際に公開する意思があるのかを、被害者自身が交渉によって確認しようとすることも避けた方が安全です。
3. 警察や専門機関に相談する日本国内で被害に遭った場合は、状況に応じて以下の窓口を利用できます。
- 警察相談専用電話:#9110
脅迫、恐喝、不審な接触などについて相談できます。
- 警察:110
身体への危険が迫っている場合や、緊急対応が必要な場合に利用します。
- 消費者ホットライン:188
恋愛詐欺や不当な金銭要求など、消費生活上のトラブルについて相談できます。
- 弁護士
示談金の要求、名誉やプライバシーに関する問題、法的責任などについて相談できます。
特に、相手が写真や動画を材料に脅している場合は、一人で解決しようとせず、早い段階で警察や弁護士に相談が必要です。
4. 会社の情報が漏れた可能性がある場合仕事上の情報を相手に伝えてしまった場合は、隠そうとせず、所属組織の情報セキュリティ担当者や上司、コンプライアンス窓口に報告してください。
情報の種類や漏えい範囲に応じて、次のような対応が必要になります。
- アカウントのパスワード変更
- 多要素認証の設定
- 不審なログインやアクセス履歴の確認
- 共有ファイルやアクセス権限の見直し
- 情報漏えいの範囲と影響の調査
- 必要に応じた関係機関への報告
2026年10月9日に公表された情報処理推進機構(IPA)の注意喚起でも、国内組織における情報漏えい事案を踏まえ、多要素認証の強化、アクセス権限の見直し、保有データの管理などが推奨されています。
ただし、これは不正アクセスによる情報漏えい全般への対策であり、ハニートラップの発生を示すものではありません。
ハニートラップと脅迫の関係ハニートラップによって得られた情報や画像が、後から脅迫に利用されるケースがあります。
例えば、親密な関係を記録した画像や、秘密にしている交友関係などを材料に、金銭や情報の提供を迫る行為です。
このような行為は、具体的な状況によって刑法上の脅迫罪、恐喝罪、強要罪などに該当する可能性があります。
日本の刑法では、脅迫罪は第222条、強要罪は第223条、恐喝罪は第249条に規定されています。
特に、相手が「秘密を公開されたくなければ金を払え」と要求するようなケースでは、単なる恋愛トラブルとして処理せず、犯罪被害の可能性を考える必要があります。
重要なのは、過去に親密な関係を持ったことや、写真を送ったことだけで、相手の不当な要求に応じる義務が生じるわけではないということです。
【よくある質問】ハニートラップとは何かに関するFAQ
Q1:ハニートラップとは簡単にいうと何ですか?
A1:恋愛感情や性的関係を利用して、相手から機密情報や金銭、弱みなどを引き出す工作です。もともとは諜報活動に関連する言葉ですが、現在は恋愛関係を利用した詐欺や脅迫を指して使われることもあります。
Q2:ハニートラップは女性が男性に仕掛けるものですか?
A2:いいえ。女性から男性だけでなく、男性から女性、同性間の関係なども含まれます。冷戦期には、東ドイツの男性工作員が西ドイツの女性職員に接近した「ロミオ・スパイ」の事例も知られています。
Q3:ハニートラップと恋愛詐欺の違いは何ですか?
A3:恋愛詐欺は、恋愛感情や親近感を利用して金銭をだまし取ることが中心です。一方、ハニートラップは機密情報の取得や弱みの獲得、組織への影響力の確保など、より幅広い目的があります。
Q4:ハニートラップは犯罪になりますか?
A4:ハニートラップという言葉自体は刑法上の独立した罪名ではありません。ただし、金銭をだまし取れば詐欺罪、脅して金銭を要求すれば恐喝罪、危害を加えると告げて脅せば脅迫罪などが成立する可能性があります。具体的な行為に応じて判断されます。
Q5:ハニートラップを見分ける方法はありますか?
A5:外見や職業だけで判断することはできません。仕事上の機密情報を繰り返し尋ねる、秘密を強要する、個人的な写真を過度に要求する、金銭や業務上の協力を迫るといった不自然な行動に注意してください。
Q6:ハニートラップで写真を撮られた場合はどうすればよいですか?
A6:相手とのやり取りや脅迫内容を保存し、追加の写真や金銭を渡さず、警察や弁護士に相談してください。画像の公開をほのめかされても、一人で交渉して解決しようとしないことが大切です。
Q7:ハニートラップは現在も諜報活動で使われていますか?
A7:恋愛関係や性的関係を利用した情報収集は、諜報活動の手法として歴史的に知られています。2024年の国会審議でも、外国の情報機関による重要経済安保情報の漏えい働きかけとの関連で取り上げられています。ただし、個別の交際関係をハニートラップと断定できるわけではありません。
ハニートラップとは、恋愛感情や性的関係を利用して、対象者から情報・金銭・弱みなどを獲得する工作です。
その歴史は諜報活動と深く結び付いており、冷戦期のロミオ・スパイなど、実際の情報収集活動に利用された事例もあります。一方、2026年現在はSNS型ロマンス詐欺や画像を利用した脅迫など、似た心理的な仕組みを持つ犯罪にも注意が必要です。
最後に、覚えておきたい判断基準は3つあります。
- 恋愛感情と金銭・仕事上の情報提供を切り分けること。 親密な関係だからといって、送金や機密情報の提供に応じる必要はありません。
- 相手の属性ではなく、行動を確認すること。 性別、容姿、国籍などで疑うのではなく、不自然な要求や秘密の強要、脅迫の有無に注目してください。
- 被害を一人で抱え込まないこと。 証拠を保存し、警察、弁護士、所属組織の担当窓口などに早めに相談することが、被害の拡大を防ぐ第一歩です。
ハニートラップを正しく理解するためには、恋愛関係そのものを疑うのではなく、親密さを利用して相手の意思や情報管理の境界を侵害する行為を見極める必要があります。信頼関係を大切にしながらも、個人情報・金銭・機密情報については冷静な判断を保つことが、自分自身と所属する組織を守ることにつながります。