富士山の所在地を地理的に説明すると、山梨県と静岡県の境界にまたがる位置にある。
北側の斜面は主に山梨県側、南側の斜面は静岡県側に広がっている。富士山の裾野も両県にまたがり、それぞれの自治体が観光、道路整備、自然環境の保全などを担っている。
富士山はどこにある?所在地を整理富士山の位置関係は次のように整理できる。
- 山梨県側: 富士吉田市、富士河口湖町、鳴沢村など
- 静岡県側: 富士宮市、御殿場市、小山町、裾野市など
- 山頂: 山梨県と静岡県の行政上の境界が未確定
つまり、富士山の山体や裾野は両県にまたがっているが、山頂の行政上の所属は別問題だ。
静岡県の公式案内でも、富士山の登山ルートは4つあり、静岡県側に3つ、山梨県側に1つあると説明されている。
山頂は静岡県?山梨県?国土地理院の回答この疑問に対する最も明確な回答を示しているのが、国土地理院だ。
国土地理院の公式FAQでは、富士山頂の行政界について、次のように説明している。
富士山頂の行政界については未確定ですので,山頂がどこに属するのかは不明です。
これは、単に地図に県境の線が描かれていないという話ではない。
行政上、山頂が山梨県と静岡県のどちらに属するかが確定していないという意味である。
したがって、山頂の住所を聞かれた場合には、「静岡県」「山梨県」のいずれかを断定するのではなく、「県境未確定地」と説明するのが正確だ。
【歴史的背景】富士山の県境が未確定になっている理由とは?

なぜ、日本で最も有名な山の一つである富士山で、県境が決まっていないのだろうか。
その背景には、江戸時代から続く地域の歴史、明治時代の境界調査、そして両県の行政上の判断がある。
江戸時代から山頂付近の境界は曖昧だった富士山の県境問題は、明治時代に突然発生したものではない。
江戸時代の地誌『甲斐国志』には、八合目から頂上にかけて両国の境がないという趣旨の記述が残されている。
つまり、現在の山梨県にあたる甲斐国と、静岡県側にあたる駿河国の間では、山頂付近の境界が明確に定められていなかった歴史がある。
明治時代の境界調査でも決着しなかった明治時代には、行政区域を明確にするため、富士山の境界調査が行われた。
1897年には当時の宮内省御料局による調査が実施されたが、両県から異議が出て、境界の確定には至らなかった。
その後も双方で独自の測量などが行われたものの、最終的な合意は成立しなかった。
この経緯は、富士山に関する歴史資料を紹介する富士山NETでも取り上げられている。
1951年、両県は県境を争わない方向へ1951年(昭和26年)12月には、山梨県と静岡県の知事が山頂の境界問題について話し合った。
山梨県立図書館が公開するレファレンス記録によれば、このとき両県知事は、山頂の境界線をめぐる自治体間の争いを避けることで合意したとされる。
その結果、県境を積極的に確定する動きは進まなかった。
加えて、富士山が2013年に世界文化遺産へ登録された後も、両県は境界問題を前面に出すのではなく、富士山の保全と適正利用に協力する方向を重視してきた。
2014年には、当時の両県知事が県境問題を議論の対象にしない考えを示したと報じられている。
県境が決まっていない理由を整理| 時期・関係者 | 出来事 | 県境問題への影響 |
|---|---|---|
| 江戸時代 | 『甲斐国志』に山頂付近の境界がない旨の記述 | 古くから境界が曖昧だった |
| 1897年 | 宮内省御料局による境界調査 | 両県の異議により確定せず |
| 明治時代以降 | 両県による測量や境界に関する主張 | 合意に至らず |
| 1951年 | 両県知事が話し合い | 境界争いを避ける方向で合意 |
| 1974年 | 最高裁判決 | 八合目以上の土地所有権問題に決着 |
| 2004年 | 浅間大社への土地返還 | 土地所有権が具体化 |
| 2013年 | 世界文化遺産登録 | 両県の共同保全が重要に |
| 2014年 | 両県知事が境界問題への姿勢を表明 | 境界を定める議論は進まず |
| 2026年 | 国土地理院が山頂の行政界を未確定と説明 | 現在も山頂の所属は不明 |
ここで押さえたいのは、県境が決まっていないことと、土地の所有者が決まっていないことは同じではないという点だ。
富士山頂の土地所有権については司法判断が存在する一方、行政区域としての境界は現在も未確定である。
【土地所有の謎】富士山八合目以上は富士山本宮浅間大社の所有地?
富士山の県境問題を理解するうえで、もう一つ重要な存在がある。
それが、静岡県富士宮市にあるだ。
八合目以上の土地はなぜ神社の所有なのか富士山本宮浅間大社は、古くから富士山信仰と深く結びついてきた神社である。
その歴史は江戸時代以前にさかのぼる。
静岡県の文化財関連資料によると、徳川家康の庇護のもと、1604年(慶長9年)に社殿の造営が始まり、1606年に完成した。
1609年には山頂部の散銭取得に関する優先権を得て、山頂の管理・支配に関わるようになった。
さらに1779年(安永8年)、江戸幕府の裁許によって八合目以上の支配権が認められたという歴史がある。
1974年の最高裁判決と2004年の土地返還明治時代になると、富士山八合目以上の土地は国有地とされた。
しかし、富士山本宮浅間大社は土地の所有権を主張し、国との間で争いが生じた。
この問題について、1974年(昭和49年)の最高裁判決が出され、浅間大社側の所有権が認められた。
その後、2004年(平成16年)に国から浅間大社へ土地が譲渡・返還された。
富士宮市の公式案内にも、この経緯が記録されている。
神社の所有地なら静岡県になるのでは?ここが多くの人が混同しやすい部分だ。
土地の所有権と行政上の県境は、法律上、別々の概念である。
例えば、山梨県内にある土地を個人や法人が所有していても、その土地が山梨県から外れるわけではない。
同じように、富士山八合目以上の土地を浅間大社が所有しているからといって、山頂が自動的に静岡県に属することにはならない。
また、八合目以上の土地についても、国有地を除いた範囲が浅間大社の所有地と説明されている。
このため、次の3点は分けて理解する必要がある。
- 土地の所有者:富士山本宮浅間大社(国有地を除く対象範囲)
- 山頂の行政上の所属:県境未確定
- 富士山の地理的位置:山梨県と静岡県にまたがる
この区別を理解すれば、「富士山は神社の土地だから何県でもない」という説明が正確ではないことも分かる。
【登山ルート比較】富士山の4つの登山口は何県にある?
富士山が静岡県と山梨県にまたがっていることを、実際に登山する立場から理解するなら、4つの登山ルートを確認するのが分かりやすい。
富士山には、吉田ルート、富士宮ルート、須走ルート、御殿場ルートの4つがある。
その内訳は、山梨県側が1つ、静岡県側が3つだ。
4つの登山ルートの県別一覧富士登山オフィシャルサイトが公表しているルート比較情報を整理すると、次のようになる。
| 登山ルート | 所在県 | 五合目標高 | 登りの距離 | 登りの目安 |
|---|---|---|---|---|
| 吉田ルート | 山梨県 | 約2,305m | 約6.8km | 約6時間 |
| 富士宮ルート | 静岡県 | 約2,400m | 約4.3km | 約5時間 |
| 須走ルート | 静岡県 | 約2,000m | 約6.9km | 約7時間 |
| 御殿場ルート | 静岡県 | 約1,440m | 約10.5km | 約9時間 |
出典:富士登山オフィシャルサイト「各登山口と登山ルートについて」。所要時間は目安で、天候や体力、混雑状況によって変わる。
① 吉田ルート:山梨県側の代表的な登山道
所在地:山梨県
- 登山口:富士スバルライン五合目
- 五合目標高:約2,305m
- 登り:約6時間
- 下り:約4時間
吉田ルートは、富士山の北側から山頂を目指す登山道だ。
山小屋や救護施設が比較的充実しており、初めて富士登山に挑戦する人にもよく知られている。
また、登山道と下山道が分かれていることも特徴だ。
富士山を代表する登山ルートとして利用者が多い一方、シーズン中の混雑には注意したい。
② 富士宮ルート:静岡県側で最も標高の高い登山口
所在地:静岡県
- 登山口:富士宮口五合目
- 五合目標高:約2,400m
- 登り:約5時間
- 下り:約3時間
富士宮ルートは、4ルートの中でも登山口の標高が最も高い。
山頂までの距離が比較的短く、登山時間を抑えやすいのが魅力だ。
一方、登山道と下山道が同じため、混雑時には登山者同士のすれ違いが発生しやすい。
五合目の標高が高いからといって、高山病のリスクがなくなるわけではない。十分な高度順応を意識したい。
③ 須走ルート:樹林帯から山頂を目指す静岡県側のルート
所在地:静岡県
- 登山口:須走口五合目
- 五合目標高:約2,000m
- 登り:約7時間
- 下り:約4時間
須走ルートは、樹林帯を通過してから森林限界を越え、山頂を目指す登山道だ。
ほかのルートとは異なる自然環境を楽しめることが特徴である。
特に注意したいのが、八合目より上で山梨県側の吉田ルートと合流する点だ。
下山時には吉田ルートとの分岐を間違えないよう、案内標識を確認する必要がある。
この合流地点の存在も、富士山の県境や登山道の位置関係を分かりにくくしている理由の一つだ。
④ 御殿場ルート:距離が長い上級者向けの登山道
所在地:静岡県
- 登山口:御殿場口新五合目
- 五合目標高:約1,440m
- 登り:約9時間
- 下り:約4時間
御殿場ルートは、4つの登山道の中で登山口の標高が最も低く、山頂までの標高差と距離が大きい。
登山者が比較的少なく、静かな環境で登山したい人には魅力がある。
一方、山頂までの道のりが長く、体力と十分な登山経験が求められる。
初心者が安易に選ぶのではなく、自分の体力や登山経験、天候を踏まえて計画を立てるべきルートだ。
登山ルートの選び方で間違えないためのポイント4ルートは、単に県が異なるだけではなく、登山口の高さや距離、地形にも違いがある。
- 初めて富士山に登る人:吉田ルートなど、山小屋や救護体制を確認しやすいルートを検討する。
- 登山時間を比較的短くしたい人:富士宮ルートを候補にする。
- 樹林帯からの変化を楽しみたい人:須走ルートを検討する。
- 長距離登山の経験が豊富な人:御殿場ルートを候補にする。
ただし、どのルートでも高山病、低温、強風、急激な天候悪化の危険がある。所要時間だけで判断せず、下山まで含めた登山計画を立てることが大切だ。
【2026年最新】富士山の標高・世界文化遺産登録・登山規制
富士山は地理的な特徴だけでなく、日本の歴史や文化、自然環境を象徴する存在でもある。
2026年の最新情報を踏まえ、基本データと世界文化遺産としての位置づけを整理する。
富士山の標高は3,776m!日本一高い山3,776m
富士山の標高
最高地点:剣ヶ峰
日本の最高峰
富士山の標高は3,776mで、日本の最高峰である。
山頂には剣ヶ峰をはじめとする複数の峰があり、最高地点は剣ヶ峰に位置している。
なお、国土地理院は2024年に富士山の三角点の標高成果について新たな測量結果を公表したが、富士山の最高地点の標高は引き続き3,776mとしている。
そのため、2026年現在も一般に用いられる標高は3,776mだ。
2013年に世界文化遺産へ登録富士山は2013年にユネスコの世界文化遺産に登録された。
登録名称は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」。
この名称が示すように、登録の価値は山の高さや美しい景観だけにあるのではない。
富士山は古くから信仰の対象であり、山岳信仰や登拝の文化を育んできた。また、浮世絵をはじめとする日本の芸術にも大きな影響を与えている。
ユネスコ世界遺産委員会は、富士山を信仰と芸術の歴史に結びついた文化的景観として評価している。
つまり、富士山は単なる自然地形ではなく、日本の精神文化や芸術を象徴する文化遺産でもある。
2026年の富士登山規制はどうなっている?2026年は山梨県側と静岡県側の双方で、登山者の安全確保と環境保全を目的とした規制が実施された。
主な内容は次のとおり。
| 項目 | 山梨県・吉田ルート | 静岡県側3ルート |
|---|---|---|
| 開山期間 | 7月1日~9月10日 | 須走7月1日~9月10日、富士宮・御殿場7月10日~9月10日 |
| 通行料 | 4,000円 | 4,000円 |
| 夜間規制 | 14時~翌3時 | 14時~翌3時は山小屋宿泊が必要 |
| 事前学習・手続き | 装備確認・事前予約など | 事前学習・事前登録など |
| 人数上限 | 1日4,000人 | 一律の人数上限なし |
出典:山梨県、静岡県の2026年度富士登山規制に関する公式発表。
特に注意したいのは、2026年11月3日時点では、すでに通常の登山シーズンが終了していることだ。
静岡県側の3ルートは9月10日に登山シーズンを終え、登山道は冬期閉鎖となった。山梨県側の吉田ルートも通常の開山期間を終了している。
富士山は冬季に強風や積雪、凍結などが発生し、夏山とはまったく異なる危険がある。閉山期間中の登山は控え、次の開山情報を確認する必要がある。
【よくある質問】富士山は何県にある?山頂や県境の疑問を解決
Q1:富士山は静岡県と山梨県のどちらにある?
A1:富士山は静岡県と山梨県の両方にまたがっている。北側が主に山梨県側、南側が主に静岡県側だ。山頂については行政上の県境が未確定で、どちらの県に属するかは決まっていない。
Q2:富士山の山頂は何県に属している?
A2:国土地理院によると、富士山頂の行政界は未確定であり、山頂がどちらの県に属するかは不明。静岡県と山梨県のどちらかに確定しているわけではない。
Q3:富士山八合目以上は何県にある?
A3:八合目以上の土地は、国有地を除き、富士山本宮浅間大社の所有地となっている。ただし、土地所有権と行政上の県境は別の問題であり、山頂の所属は未確定のままだ。
Q4:富士山の登山ルートは全部で何個?
A4:主な登山ルートは4つ。山梨県側に吉田ルート、静岡県側に富士宮ルート、須走ルート、御殿場ルートがある。
Q5:富士山の標高は何メートル?
A5:標高3,776m。山頂の剣ヶ峰が日本で最も高い地点である。2026年現在も標高3,776mとして扱われている。
Q6:富士山はいつ世界文化遺産に登録された?
A6:2013年にユネスコの世界文化遺産に登録された。登録名称は「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」で、山岳信仰や芸術との関わりが評価されている。
富士山は何県にあるのかという疑問に対する答えは、静岡県と山梨県の2県にまたがっているというものだ。
ただし、山頂付近には特別な事情がある。行政上の県境が確定しておらず、国土地理院も山頂がどちらの県に属するのかは不明としている。
今回押さえておきたい事実は次の5つだ。
1. 富士山の山体は静岡県と山梨県にまたがっている。
2. 山頂の行政上の県境は現在も未確定である。
3. 八合目以上の土地は、国有地を除き、富士山本宮浅間大社の所有地である。
4. 登山ルートは4つあり、山梨県側が1つ、静岡県側が3つ。
5. 標高は3,776mで、2013年に世界文化遺産に登録された。
富士山の県境問題は、単なる地図上の線引きではない。歴史的な土地の管理、山岳信仰、地域行政、世界文化遺産の保全など、複数の要素が重なっている。
2026年現在も、山梨県と静岡県はそれぞれの登山道や自然環境の管理を担いながら、富士山の保全に取り組んでいる。
「富士山は静岡県か山梨県か」という二択ではなく、「山体は両県にまたがり、山頂の県境は未確定」と理解することが、最も正確な答えである。
主な参考資料:国土地理院「国土の情報に関するQ&A」、静岡県「富士山総合案内」「しずおか文化財ナビ」、富士宮市「富士山本宮浅間大社」、富士登山オフィシャルサイト、山梨県「令和8年度の富士登山について」、ユネスコ世界遺産センター。