2026年1月2、3日に開催された第102回東京箱根間往復大学駅伝競走で、青山学院大学は総合10時間37分34秒を記録。往路5時間18分08秒、復路5時間19分26秒という成績で、往路・復路・総合のすべてにおいて大会新記録を樹立しました。
今回の優勝で青学は2024年、2025年に続く3連覇を達成。2015~2017年に続いて、大学として2度目の3連覇という歴史的な記録を打ち立てました。箱根駅伝の総合優勝は通算9回目です。
1区16位からの逆転劇を支えた選手起用2026年大会の特徴は、序盤から青学が独走したわけではなかったことです。原監督が大学の優勝報告会で説明したところによると、1区は16位でスタート。3区から4区へ襷が渡った時点でも、首位の中央大学とは3分以上の差がありました。
流れを変えたのが4区の平松享祐選手です。その快走によって反撃の足場ができ、5区では主将の黒田朝日選手が区間新記録を樹立。区間2位に約2分の差をつける圧倒的な走りで、往路優勝を引き寄せました。
原監督は優勝報告会で当時の心境を次のように振り返っています。
「しかし、私は諦めておりませんでした。」
また、5区に黒田選手を起用した理由について、レースが面白くなり、観戦するファンがワクワクする展開を期待したと説明しています。結果的に黒田選手は大会最優秀選手賞にあたる金栗四三杯も受賞しました。
復路でも青学は安定した襷リレーを展開。8区の塩出翔太選手も区間新記録を記録し、チームは10時間37分34秒でフィニッシュしました。
2026年大会の主な記録| 項目 | 記録・内容 |
|---|---|
| 大会 | 第102回箱根駅伝 |
| 開催日 | 2026年1月2日・3日 |
| 総合順位 | 優勝 |
| 総合タイム | 10時間37分34秒 |
| 往路タイム | 5時間18分08秒 |
| 復路タイム | 5時間19分26秒 |
| 1区 | 16位スタート |
| 4区 | 平松享祐選手が流れを変える |
| 5区 | 黒田朝日選手が区間新記録 |
| 8区 | 塩出翔太選手が区間新記録 |
| 総合優勝 | 3年連続、通算9回目 |
この大会は、単純にエースの能力だけで勝ったレースではありません。序盤の劣勢を想定しながら、各区間で選手の力を引き出し、勝負どころに強い選手を配置する原監督の判断力も際立ちました。
【原晋監督の経歴】中国電力時代から2004年の青学監督就任まで

原晋監督は1967年3月8日生まれ、広島県三原市出身です。2026年11月3日時点で59歳。高校・大学時代は長距離ランナーとして活躍し、卒業後は中国電力に入社しました。
世羅高校・中京大学で培った競技経験原監督は広島県立世羅高校で陸上競技に取り組み、3年時には全国高校駅伝に出場。4区で2位の成績を残しました。
その後、中京大学へ進学し、大学3年時の日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)5000メートルで3位に入賞しています。
大学卒業後の1989年には、中国電力陸上競技部の第1期生として入部。1993年には主将として全日本実業団駅伝への初出場を経験しました。
中国電力での引退と会社員生活が転機に原監督のキャリアで見逃せないのが、選手としての引退後に会社員として働いた経験です。
中国電力では故障にも悩まされ、1995年に現役競技生活を引退。その後は約10年間、会社員として勤務しました。営業職などを経験し、ビジネスの現場で組織運営や目標管理、人材配置の考え方を身につけていきます。
2026年夏に公開された日本銀行の植田和男総裁との対談でも、原監督は電力会社での会社員経験について語っています。仲間とベンチャー企業を立ち上げた経験もあり、組織を一つの目標に向かって動かすための考え方を学んだと説明しています。
この経験が、後の青学駅伝チームの組織づくりに生かされました。陸上競技の経験だけでなく、企業で身につけたマネジメントの視点をスポーツ指導に取り入れた点が、原監督の大きな特徴です。
2004年に青山学院大学の監督へ就任2004年、知人の紹介をきっかけに青山学院大学陸上競技部の長距離ブロック監督に就任しました。
当時の青学は箱根駅伝の常連校ではなく、最後の出場から長い年月が経過していました。監督就任後、原監督は練習環境や生活習慣、チーム運営の見直しに取り組みます。
改革の最初の成果は2009年。青山学院大学は33年ぶりに箱根駅伝への出場を果たしました。そして2015年には、青学史上初の箱根駅伝総合優勝を達成します。
2019年4月からは青山学院大学地球社会共生学部の教授も務めています。陸上競技の指導者であると同時に、教育・人材育成にも携わる立場となりました。
【原晋監督の歴代優勝成績】青学の箱根駅伝9回の優勝を振り返る
原晋監督の指導実績を数字で見ると、その継続性がよく分かります。2015年に初優勝を達成してから、2026年までに青山学院大学を9回の総合優勝へ導いています。
箱根駅伝の公式記録によると、青学の優勝年は2015年、2016年、2017年、2018年、2020年、2022年、2024年、2025年、2026年です。
青山学院大学の歴代総合優勝一覧| 開催年 | 大会回 | 総合タイム | 主な実績 |
|---|---|---|---|
| 2015年 | 第91回 | 10時間49分27秒 | 青学初優勝 |
| 2016年 | 第92回 | 10時間53分25秒 | 2連覇 |
| 2017年 | 第93回 | 11時間04分10秒 | 3連覇・大学駅伝3冠 |
| 2018年 | 第94回 | 10時間57分39秒 | 4連覇 |
| 2020年 | 第96回 | 10時間45分23秒 | 2年ぶりの優勝・大会新 |
| 2022年 | 第98回 | 10時間43分42秒 | 通算6回目の優勝 |
| 2024年 | 第100回 | 10時間41分25秒 | 通算7回目の優勝 |
| 2025年 | 第101回 | 10時間41分19秒 | 2連覇 |
| 2026年 | 第102回 | 10時間37分34秒 | 3連覇・大会新 |
最初の大きな転換点は2015年の第91回大会でした。2009年に33年ぶりの出場を果たしたチームが、わずか6年後に箱根駅伝の頂点に立ったのです。
その後も2016年、2017年と優勝を重ね、2018年には4連覇を達成。2017年には出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝の大学三大駅伝すべてを制する大学駅伝3冠も実現しました。
2019年は総合2位となり連覇が途切れましたが、2020年には大会新記録で再び優勝。2022年にも勝利し、青学は一時的な強豪ではなく、優勝争いの中心に位置するチームへと成長しました。
2024~2026年は2度目の3連覇2024年の第100回大会で総合優勝を果たすと、2025年、2026年も連続して頂点に立ちました。
特筆すべきは、2015~2017年に続く2度目の3連覇であることです。選手が卒業によって入れ替わる大学スポーツで、10年以上の期間を隔てて同じ監督のもとで再び3連覇を実現した点は、単年の戦力や特定のスター選手だけでは説明できません。
箱根駅伝公式の優勝回数ランキングでは、青山学院大学は通算9回で歴代6位。中央大学14回、早稲田大学13回、日本大学12回、順天堂大学11回、日本体育大学10回に続く位置につけています。
日本銀行の2026年夏号の対談では、原監督は箱根駅伝の最多勝利監督として紹介されています。大学の通算優勝回数と監督個人の指導実績を区別して見ることも、記録を正確に理解するポイントです。
【原晋監督の指導法】青学駅伝が強い理由は「技体心」と組織力
青学駅伝の強さを理解するうえで重要な資料が、2026年夏に日本銀行が公開した原晋監督と植田和男総裁の対談です。
この対談では、原監督自身がチーム運営やトレーニング、選手育成について具体的に説明しています。そこから読み取れる指導法は、大きく5つに整理できます。
1.「心技体」ではなく「技体心」を重視する原監督が掲げる考え方の一つが「技体心」です。
従来の精神論を先行させる指導ではなく、正しいトレーニング方法と技術を身につけ、それに基づいて身体を鍛え、結果として精神面も成長するという考え方です。
日本銀行との対談では、長距離走のトレーニングについても説明しています。例えば、インターバルトレーニングを単なるスピード練習として捉えるのではなく、有酸素能力や持久力の向上という目的から考える姿勢です。
練習をこなすこと自体を目的にせず、何のために取り組むのかを選手に理解させる。これが青学の指導の基本になっています。
2.選手が自由に意見を言える心理的安全性原監督は、チーム内の心理的安全性を大切にしています。
日本銀行との対談では、次のようなチームづくりの考え方を紹介しました。
「4年生威張るな、下級生萎縮するな。」
学年や立場に関係なく、意見を出し合える環境をつくることが目的です。監督の考えを一方的に押しつけるのではなく、学生自身が考え、改善案を出せる組織を目指しています。
箱根駅伝は10人の選手が襷をつなぐ競技ですが、チームには走者以外の部員もいます。原監督は、レースに出る選手だけでなく、チームに所属する一人ひとりの努力を評価する文化も重視しています。
3.「半歩先」の目標を設定するいきなり箱根駅伝優勝という大きな目標だけを掲げても、選手が現実的な行動に落とし込めなければ成果にはつながりません。
原監督が重視するのは、現在の能力から少し先にある、手が届きそうな目標です。
小さな目標を設定し、それを達成する経験を積み重ねることで、次の段階に進む自信と実力を育てます。
日本銀行との対談では、2015年の初優勝についても、偶然の勝利ではなく、規則正しい生活習慣や練習環境の改善を積み重ねた結果だと振り返っています。
4.経験や勘だけに頼らず科学的に検証する原監督は、最初の4連覇を達成する過程で、自分が実践してきた指導法に科学的な根拠があるのかを考えるようになったと説明しています。
その後、早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科で学び、過去15年間の指導を振り返って論文にまとめました。
そこで整理されたのが、心理的安全性やスポーツマネジメントの考え方です。経験則をそのまま継承するのではなく、成功した理由を検証して、再現できる方法としてチームに還元する姿勢が見られます。
トレーニングについても外部のフィジカルトレーナーの協力を得て、腕振りのための筋力トレーニングや動的ストレッチなどを取り入れています。学生に対しては、方法だけでなく目的を理解させ、自発的に取り組める状態をつくっています。
5.勝利を競技成績だけで定義しない原監督が考える学生スポーツの勝利には、競技成績以外の要素も含まれています。
日本銀行との対談で説明した3つの基準は、次のとおりです。
- 大学で必要な単位を取得し、卒業すること
- 就職を実現し、卒業後に定職に就くこと
- 5000メートルの自己ベストを更新すること
つまり、箱根駅伝で走ることだけが成功ではありません。競技を通じて成長し、大学生活を充実させ、社会に出て活躍できる人材を育てることまで視野に入れています。
この考え方は、学生が競技に取り組む意味を明確にするだけでなく、チームとしての魅力を高めることにもつながります。
【原晋監督の現在と評判】教授・指導者として広がる活動
2026年11月現在、原晋監督は青山学院大学陸上競技部長距離ブロックの監督を務めるとともに、地球社会共生学部の教授として教育活動にも携わっています。
2004年の監督就任から2026年で23年目。箱根駅伝の指導だけでなく、大学教育、スポーツマネジメント、講演活動など、活動領域は広がっています。
地球社会共生学部教授としての役割原監督は2019年4月に地球社会共生学部の教授に就任しました。
教授としての活動は、単に大学で肩書を持つということではありません。スポーツを通じた人材育成や組織運営の考え方を、教育の場にも広げています。
特に重視しているのが、コミュニケーション能力、計画力、他者と協力する力といった非認知能力です。日本銀行との対談では、こうした力を陸上競技やチーム活動を通じて身につけてほしいと学生に伝えていることを明かしています。
2026年現在の新たな目標は指導者育成と女子駅伝の強化2026年夏の日本銀行との対談で、原監督は今後取り組みたいこととして2つの方向性を挙げています。
一つ目は、スポーツ指導者の育成です。中学校の部活動の地域展開が進むなか、青学で培った指導ノウハウを全国に広げ、指導者の質を高めたいという考えを示しています。
また、アマチュアスポーツがボランティアや公的支援だけに頼るのではなく、チーム自身が資金を生み出して運営できるスポーツマネジメントの仕組みづくりにも関心を寄せています。
二つ目は、青山学院大学の女子駅伝チームの強化です。女子選手の活躍を通じて、女性の社会進出をスポーツの側面から後押ししたいという目標を語っています。
原晋監督の評判は?実績と組織マネジメントの両面から評価原監督の評価を考える際、最も分かりやすい指標は箱根駅伝の成績です。2026年までに9度の総合優勝を達成し、4連覇と2度の3連覇を実現した実績は、大学駅伝の歴史に残るものです。
一方、原監督の特徴は競技成績だけではありません。会社員時代の経験をスポーツマネジメントに応用し、学生の自主性や心理的安全性を重視する指導は、スポーツ以外の組織運営にも応用できる考え方として紹介されています。
実際に2026年夏には、日本銀行の植田和男総裁との対談が広報誌に掲載されました。スポーツ指導者と金融政策の責任者という異なる立場の対談で、組織づくりや目標設定について議論が交わされています。
また、原監督の公式講演会サイトでは、人材育成や組織づくり、リーダーシップをテーマとした講演活動も紹介されています。
評判を判断するときは、テレビでの印象や話題性だけでなく、実際の競技成績、指導方針、卒業後の人材育成、組織運営という複数の視点から見ることが大切です。青学の強さを個人のカリスマ性だけで説明するのは、実際の取り組みを十分に捉えた評価とはいえません。
【青山学院大学の原監督】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:原晋監督は現在何歳ですか?
A1:1967年3月8日生まれで、2026年11月3日時点では59歳です。
Q2:原晋監督はいつ青山学院大学の監督に就任しましたか?
A2:2004年です。就任後、2009年に青学を33年ぶりの箱根駅伝出場へ導き、2015年に初の総合優勝を達成しました。
Q3:青山学院大学の箱根駅伝優勝回数は何回ですか?
A3:2026年の第102回大会終了時点で通算9回です。優勝年は2015年、2016年、2017年、2018年、2020年、2022年、2024年、2025年、2026年です。
Q4:2026年の箱根駅伝で青学は3連覇を達成しましたか?
A4:達成しました。2024年、2025年、2026年と3年連続で総合優勝しています。2015~2017年に続く、大学として2度目の3連覇です。
Q5:原晋監督は中国電力で何をしていましたか?
A5:1989年に中国電力陸上競技部へ入部し、選手として活動しました。1995年に競技生活を引退した後は会社員として勤務し、営業や組織運営の経験を積みました。
Q6:原晋監督は大学教授でもあるのですか?
A6:はい。2019年4月から青山学院大学地球社会共生学部の教授を務めています。陸上競技部の監督と大学教授を兼任しています。
Q7:青山学院大学の駅伝が強い理由は何ですか?
A7:科学的なトレーニング、心理的安全性を重視したチームづくり、半歩先の目標設定、選手の自主性を育てる指導、組織全体のマネジメントなどが挙げられます。
青山学院大学の原晋監督は、2004年の就任から22年以上にわたりチームを率い、2026年の箱根駅伝で通算9度目の総合優勝を達成しました。
その歩みは、中国電力での競技生活と会社員経験から始まり、青学の改革、初優勝、4連覇、そして2024~2026年の2度目の3連覇へと続いています。
原監督の指導法で注目すべきなのは、単純な精神論や個人の能力に依存しないことです。「技体心」を基本に、科学的なトレーニング、心理的安全性、学生の自主性、組織全体の成長を重ねてきました。
加えて、大学教授としての教育活動や指導者育成、女子駅伝の強化にも意欲を示しています。箱根駅伝で勝ち続けるだけでなく、スポーツを通じて社会に貢献することまで視野に入れている点が、原監督の現在を理解する要点です。
2026年の3連覇・9度目の優勝は、これまで積み重ねてきた指導と組織づくりの成果を示す節目となりました。次の箱根駅伝で青学がどのようなチームをつくり、原監督が掲げる新たな挑戦を実現していくのか、引き続き注目されます。