2026年3月24日から29日にかけて、チェコのプラハで開催されたISU世界フィギュアスケート選手権。女子シングルは、日本の坂本花織にとって現役最後の世界選手権となる大会だった。
坂本は3月25日のショートプログラム(SP)で79.31点を獲得し、首位でフリーへ進出。翌27日のフリースケーティング(FS)でも完成度の高い演技を披露し、158.97点をマークした。
2種目の合計は238.28点。2位の千葉百音(228.47点)に9.81点差をつけて優勝した。
ISUの公式結果では、坂本はショート、フリーの両方で1位。フリーと総合得点は自身のパーソナルベストを更新する結果となった。
2026年プラハ大会の女子シングル最終順位| 順位 | 選手 | 国 | 合計得点 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 坂本花織 | 日本 | 238.28点 |
| 2位 | 千葉百音 | 日本 | 228.47点 |
| 3位 | ニナ・ピンザローネ | ベルギー | 215.20点 |
日本勢がワンツーフィニッシュを達成したことも、この大会の大きな成果だった。
最後のフリーで披露したプログラムフリースケーティングでは、エディット・ピアフの楽曲を中心としたプログラムを披露した。
終盤に使用された楽曲は「Non, je ne regrette rien」。日本語では「私は何も後悔していない」という意味を持つ。
ISUの大会レポートによると、坂本は7本のトリプルジャンプを成功させ、難度の高いスピンもまとめた。演技終了後には1万4000人を超える観客がスタンディングオベーションを送り、坂本は感極まった様子を見せたという。
現役最後の大舞台で、長年積み重ねてきた技術と表現力を出し切った演技だった。
【歴代成績一覧】2022〜2024年の3連覇から2026年の優勝まで

坂本花織の世界選手権での歩みを理解するうえで重要なのが、2022年から2024年にかけての3連覇と、2025年の銀メダル、そして2026年の再優勝という流れだ。
一度頂点に立つだけでも難しい世界選手権で、3年間連続して優勝するには、技術力だけでなく、シーズンを通じた調整力や大会本番での安定感が求められる。
ISUの公式結果をもとに、主な成績を整理した。
坂本花織の世界選手権・年代別成績2022年大会はフランスのモンペリエで開催された。
坂本はショートプログラム、フリースケーティングともに1位となり、合計236.09点で初優勝。北京冬季オリンピックで女子シングル銅メダルを獲得した勢いを、世界選手権でも示した。
この優勝は、その後の世界選手権3連覇につながる重要な転換点だった。
2023年:連覇を達成し世界女王の地位を確立2023年の大会では、韓国のイ・ヘインら実力者との競争を制して優勝した。
合計224.61点で、前年に続く2連覇を達成。ショートプログラムでの安定感に加え、フリーでも大崩れしない演技が強みとなった。
2024年:日本女子初の世界選手権3連覇2024年はカナダのモントリオールで開催された。
坂本はショートプログラムで4位と出遅れたものの、フリーで149.67点を獲得して巻き返した。合計222.96点で逆転優勝し、3年連続の世界女王となった。
この3連覇は、日本女子フィギュアスケートの歴史に残る記録である。
2025年:アリサ・リュウに続く2位2025年大会では、アメリカのアリサ・リュウが222.97点で優勝。坂本は217.98点で2位となった。
この大会で注目されたのが、リュウの復帰と千葉百音の躍進だ。千葉も215.24点で3位に入り、日本勢2人が表彰台に上がった。
坂本にとっては4連覇こそ逃したものの、世界のトップレベルを維持したシーズンだった。
そして翌年、競技生活最後の世界選手権で再び頂点に立つことになる。
【4度目の優勝の意味】浅田真央を超えた日本女子最多記録
坂本花織の世界選手権4勝は、単なる優勝回数の更新ではない。日本女子フィギュアスケートの歴史において、明確な記録の転換点となった。
日本女子の歴代世界選手権優勝者これまで日本女子の世界選手権では、複数の選手が世界の頂点に立ってきた。
- 荒川静香:2004年優勝
- 安藤美姫:2007年、2011年優勝
- 浅田真央:2008年、2010年、2014年優勝
- 坂本花織:2022年、2023年、2024年、2026年優勝
坂本は2026年の優勝によって、浅田真央の3回を上回り、日本女子史上初の世界選手権4勝を達成した。
ここで注意したいのは、日本女子の歴代最多記録と、世界全体の歴代最多記録は別だという点だ。
世界選手権の女子シングルでは、ミシェル・クワンやソニア・ヘニーなど、複数回優勝した海外のレジェンドも存在する。坂本の4勝は、日本女子の歴史における最多記録として評価されるべきものだ。
なぜ坂本花織は長く世界トップで戦えたのか坂本の強みは、ジャンプの難度だけに依存しない総合力にある。
特に評価されてきたのが、次の3点だ。
1. スピード感のあるスケーティング
リンクを広く使う滑りとスピード感は、坂本の大きな武器だった。ジャンプに入るまでの流れが自然で、演技全体に勢いを生み出せる。
2. ジャンプの高さと力強さ
ISUも坂本の身体能力とパワー、優雅さを評価している。2026年のフリーで7本のトリプルジャンプを成功させたことは、その技術力を象徴する出来事だった。
3. 表現力とプログラムの完成度
高得点を狙うにはジャンプだけでなく、演技構成点やスピン、ステップなども重要になる。
坂本はスピード感のある滑りと音楽表現を組み合わせ、技術と芸術性を両立させてきた。
長期間にわたって世界のトップで戦えた背景には、こうした総合力があったと考えられる。
【238.28点を徹底分析】SP79.31点とFS158.97点の内訳
2026年の世界選手権で記録した238.28点は、坂本の競技人生を象徴する数字となった。
ただし、得点を正しく理解するためには、ショートプログラムとフリースケーティングの違いを押さえておく必要がある。
ショートプログラム79.31点は今季世界最高2026年3月25日のショートプログラムで坂本が獲得した得点は79.31点。
内訳は次の通りだ。
| 項目 | 得点 |
|---|---|
| 技術点(TES) | 41.42点 |
| 演技構成点(PCS) | 37.89点 |
| 減点 | 0点 |
| 合計 | 79.31点 |
ISUの公式記録では、当時の今季世界最高得点だった。ジャンプの技術的な評価だけでなく、演技全体の完成度も高く評価された。
フリースケーティング158.97点で自己ベスト更新翌27日のフリーでは158.97点を獲得。
この得点は坂本自身のフリースケーティングのパーソナルベストとなった。
ショートの79.31点と合わせると、合計238.28点。こちらも自身の総合パーソナルベストを更新している。
間違えやすいポイント:79.31点はショートの自己ベストではないここは検索時に混同されやすい部分だ。
坂本のショートプログラムの歴代パーソナルベストは、2022年世界選手権で記録した80.32点。
したがって、2026年の79.31点は自己ベストではなく、2025-2026シーズンのシーズンベストだった。
一方、フリー158.97点と総合238.28点は、2026年大会で更新した自己ベストである。ISUの選手プロフィールにもこの記録が掲載されている。
この違いを理解しておけば、坂本の2026年の得点をより正確に評価できる。
【現役引退の経緯】2025年6月の発表から最後の世界選手権まで
2026年の世界選手権が坂本にとって特別な大会だった理由は、現役最後の国際大会だったからだ。
引退は突然決まったものではない。本人の中では、北京オリンピック後から長期的な競技人生の区切りを考えていた。
2022年北京オリンピック後に固めた決意2022年の北京冬季オリンピックで、坂本は女子シングル銅メダル、団体銀メダルを獲得した。
その後、次のミラノ・コルティナ大会を目指して競技を続けることになる。
2026年5月の引退会見では、北京大会後に次の4年間を最後の挑戦にすると決めていたことを説明した。
この4年がラストだと覚悟していた。腹をくくった。
この発言からも、2026年の引退は長期的な目標設定に沿った決断だったことが分かる。
2025年6月20日に引退を正式表明2025年6月20日、坂本は神戸市内のリンク開業セレモニーで、翌年を競技生活の区切りとする考えを公表した。
2026年のミラノ・コルティナ冬季オリンピックを最後の大きな目標とし、26歳になる年で引退する意向を示した。
日本オリンピック委員会の報道によると、本人は2030年の冬季オリンピックを目指す年齢も考慮し、競技人生の区切りを決めていた。
2026年2月:ミラノ・コルティナ五輪で銀メダル引退前最後のオリンピックとなった2026年大会では、女子シングルと団体の両方で銀メダルを獲得した。
これにより坂本は、2018年平昌、2022年北京、2026年ミラノ・コルティナと、日本女子として初めて冬季オリンピック3大会に出場した選手となった。
五輪の個人・団体を合わせた獲得メダルは計4個に達した。
2026年3月:プラハ世界選手権で競技生活に幕五輪後も競技を続け、3月の世界選手権に出場。
結果は238.28点で優勝。日本女子最多となる4度目の世界選手権制覇を達成した。
ISUはこの大会を坂本の競技キャリアを締めくくる金メダルとして紹介している。国際大会デビューを果たしたチェコで、最後の国際大会を終えたという点にも特別な意味があった。
2026年5月13日:神戸で引退会見所属先のシスメックスは、2026年5月13日に神戸市内で坂本の引退会見を開催した。
坂本は21年4か月に及ぶスケート人生を振り返り、現役生活への感謝を表明。競技者としての活動を終え、新たに指導者として歩む決意を明らかにした。
【引退後の現在】坂本花織は指導者へ!神戸で後進育成を目指す
2026年11月現在、坂本花織は競技者としての現役生活を終え、フィギュアスケートの指導者を目指す新たな段階に入っている。
引退後もスケートとの関わりを続ける方針であり、競技者時代に培った経験を次世代に伝えていくことが大きな目標となっている。
恩師・中野園子コーチから受け継ぐ指導の姿勢坂本の競技人生を語るうえで欠かせないのが、中野園子コーチの存在だ。
坂本は幼少期から中野コーチに師事し、長年にわたって指導を受けてきた。
ISUの引退特集では、坂本が今後はコーチとして選手を支える側に回る考えを紹介している。
また、引退会見では、指導者として大切にしたいことについて、周囲への感謝を忘れず、相手の時間を尊重する姿勢を伝えたいと語っていた。
これは、長年にわたって指導者や関係者から支えられてきた坂本ならではの考え方といえる。
神戸を拠点に子どもたちの育成へ坂本が今後の活動場所として考えているのは、生まれ育った神戸だ。
所属先のシスメックスが公表した引退会見の内容では、子どもたちがスケートを好きになれるよう、コーチとして競技の楽しさを伝えていきたいという意向が示されている。
日本オリンピック委員会も、坂本が練習拠点としてきた神戸市内のクラブなどで後進の育成に取り組む方針を伝えている。
アイスショーなど競技以外の活動も継続現役引退は、スケートを完全に辞めることを意味しない。
ISUの引退特集では、坂本が今後もアイスショーに出演する意向を示している。
競技会で求められる得点や順位を追い続ける立場から、観客に演技を届ける立場へと活動の幅が変わっていく。
今後の坂本には、世界選手権4度の優勝者としての経験を伝える指導者と、観客にフィギュアスケートの魅力を届けるスケーターという、2つの側面が期待される。
【よくある質問】坂本花織の世界選手権に関するFAQ
Q1:坂本花織の世界選手権優勝回数は何回ですか?
A1:通算4回です。2022年、2023年、2024年、2026年に女子シングルで優勝しました。日本女子の歴代最多記録です。
Q2:坂本花織は2026年の世界選手権で何点を獲得しましたか?
A2:合計238.28点です。ショートプログラムが79.31点、フリースケーティングが158.97点でした。
Q3:2026年の世界選手権はどこで開催されましたか?
A3:チェコの首都プラハです。坂本にとって現役最後の国際大会となり、優勝で競技生活を締めくくりました。
Q4:坂本花織は2025年の世界選手権で優勝しましたか?
A4:2025年は2位でした。優勝はアメリカのアリサ・リュウで、坂本は217.98点を獲得しました。
Q5:坂本花織はなぜ現役を引退したのですか?
A5:2022年の北京オリンピック後から、次の4年間を最後の挑戦とする考えを持っていました。2025年6月に翌年の引退を表明し、2026年の五輪と世界選手権を最後に競技生活を終えました。
Q6:坂本花織は引退後、何をする予定ですか?
A6:指導者として後進の育成に取り組む方針です。神戸を拠点に子どもたちへスケートの魅力を伝えるほか、アイスショーへの出演も予定しています。
Q7:坂本花織のショートプログラム79.31点は自己ベストですか?
A7:いいえ。79.31点は2025-2026シーズンのベストスコアです。ショートプログラムの歴代自己ベストは、2022年世界選手権で記録した80.32点です。
坂本花織の世界選手権での歩みは、2022年の初優勝から始まった。
2023年、2024年と3連覇を達成し、2025年には2位。そして2026年のプラハ大会では238.28点という自己ベストを記録し、通算4度目の世界選手権優勝を果たした。
この4勝によって、坂本は浅田真央の3勝を超え、日本女子フィギュアスケート史上最多の世界選手権優勝回数を記録した。
加えて、2026年のプラハ大会は競技人生最後の国際大会でもあった。長年の目標としてきたオリンピックを終え、最後の世界選手権で再び世界の頂点に立ったことは、競技人生の締めくくりとして大きな意味を持つ。
引退後は神戸を拠点に指導者の道へ進む予定であり、今度は選手を育てる立場としてフィギュアスケートに携わっていく。
坂本花織の功績を正確に振り返る際には、世界選手権の優勝回数、各大会の順位、総合得点と種目別得点、そして競技引退後の活動を区別して見ることが大切だ。
4度の世界女王という記録だけでなく、次世代へ技術と経験を受け継いでいくことも、坂本花織の新しい挑戦となる。