2020年9月16日から着用が始まった現行デザインは、従来の制服から印象を大きく変えたものです。
最も目を引くのは、コーポレートカラーのグリーンを前面に押し出したデザインです。イエローをアクセントに取り入れ、長年親しまれてきた縦ストライプも継承しています。
以前の制服に見られたクリーム色をなくし、より鮮やかで現代的な印象に仕上げられました。
現行制服の主なデザイン要素主な特徴は次のとおりです。
- グリーン: ヤマトグループのコーポレートカラーを前面に配置。
- イエロー: 街中での視認性を高めるアクセントカラー。
- 縦ストライプ: 従来の制服から受け継いだ安心感のある意匠。
- 矢絣文様: 日本の伝統的な模様を「Y」の形に組み合わせたデザイン。
- 機能的なシルエット: 配達や荷物の積み下ろしなど、身体を動かす業務を想定。
従来の制服が持っていた親しみやすさを残しながら、色彩や柄を現代的に再構成した点が大きな特徴です。
2026年時点で現行デザインと判断できる理由ヤマトホールディングスの創業100周年記念サイトでは、2020年型の制服を「現在の制服」として紹介しています。
また、ヤマト運輸の公式沿革にも、2020年9月の制服リニューアルが記録されています。
したがって、2026年11月時点で公式資料から確認できる最新の全面リニューアルは2020年型です。2026年に新しい全面刷新が実施されたという公式発表は、今回確認した資料には見当たりません。
なお、現行制服の紹介と、すべての職種・社員が同じ制服を着用していることは別の話です。職務によって服装の扱いは異なります。
【1924年から2020年まで】ヤマト運輸の歴代制服を年表で比較

ヤマト運輸の制服の変遷を振り返ると、単に流行に合わせて衣服を変更してきたわけではないことが分かります。
創業者の小倉康臣氏が重視したのは、従業員の服装が会社の信用を左右するという考え方でした。
この思想が、約100年にわたる制服づくりの根底にあります。
歴代制服の変遷一覧以下はヤマトグループ創業100周年記念サイトと記念誌に掲載された公式沿革を整理したものです。
出典:ヤマトグループ創業100周年記念サイト「制服の変遷」、創業100周年記念誌。
1924年:制服が会社の信用を表すという発想ヤマト運輸の前身である大和運輸では、1924年に制服制帽が採用されました。
当時のトラック運送業界では、運転手に制服を着用させること自体が珍しい取り組みでした。
創業者の小倉康臣氏は、運転手の応対や服装が会社の信用を左右すると考えていました。
つまり、制服は単なる作業着ではなく、顧客と接する従業員の身だしなみを整え、会社の品質を視覚的に伝える役割を担っていたのです。
1955年:運転手の制服を正式に制定1955年には、大和便などの運転手向け制服が制定されました。
1924年の制服制帽採用から、企業として制服を整備する段階へ進んだ節目です。
1969年:車両と制服のデザインを統一1969年は創業50周年にあたります。
この年のリニューアルでは、上着とズボンの色を車両のツートンカラーに対応させました。
加えて、袖にネコのマークがあしらわれるようになったのもこの時期です。
顧客が街中で従業員を見たとき、どこの会社のスタッフなのかを直感的に認識できるようにする工夫でした。
1977年:女性作業制服が登場1977年には、女性セールスドライバー向けの作業制服が登場しました。
ヤマトグループの公式沿革では、清潔感と動きやすさを両立した制服として紹介されています。
写真として掲載されているのは、2019年に撮影された冬服のレプリカです。
この出来事は、配送現場での女性の役割や働き方を考えるうえでも興味深い歴史です。
1990年:男女別デザインへ変更創業70周年にあたる1990年には、制服をリニューアル。
男女で異なるデザインを採用し、女性事務制服にはニットベストやジャケットを取り入れました。
職種や着用場面に応じて、制服のデザインを分けていた時代です。
2000年:男女の制服デザインを統一2000年のリニューアルでは、男女の制服デザインが統一されました。
これは顧客に提供するサービスの統一感だけでなく、従業員同士の連帯感を持たせる狙いもありました。
ヤマトグループの記念誌によると、1969年の車両カラーとの調和、2000年の男女共通デザインなど、制服は顧客からどのように見えるかを重視して変更されてきました。
【デザイン担当者】相澤陽介とホワイトマウンテニアリングが生んだ新制服
2020年の制服リニューアルで注目されたのが、ファッションデザイナーの相澤陽介氏です。
相澤氏はファッションブランド「ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)」を2006年にスタートさせたデザイナーです。
多摩美術大学の染織科を卒業し、アウトドアの機能性とファッション性を融合させたデザインで知られています。
ヤマトホールディングスの公式発表では、今回の制服デザインを担当した人物として紹介されています。
なぜファッションデザイナーに依頼したのか制服は、一般的なファッションアイテムとは異なります。
見た目の美しさだけでなく、長時間の着用、荷物の持ち運び、屋外での作業、運転時の安全性など、複数の条件を満たさなければなりません。
相澤氏のデザインでは、次の要素が組み合わされています。
- 日常の業務に適した機能性
- ヤマトグループの伝統を受け継ぐデザイン
- 親しみやすさと現代的な印象
- コーポレートカラーによる視認性
- 働く人が誇りを持てるスタイリッシュな外観
特に興味深いのが、日本の伝統模様を企業のアイデンティティーへ結び付けた点です。
矢絣文様と「Y」に込められた意味現行制服の象徴的なデザインが、矢絣文様(やがすりもんよう)です。
矢絣は、日本で古くから使われてきた矢羽根をモチーフにした伝統的な文様です。
相澤氏は、この矢絣文様とヤマトの頭文字である「Y」を組み合わせ、社員の精神的な支柱となっている「ヤマトは我なり」という考え方を表現しました。
加えて、デザインには次のような意図があります。
| デザイン要素 | 込められた意味 |
|---|---|
| 矢絣文様 | 日本の伝統とヤマトの誇り |
| Yの形 | ヤマトグループの象徴 |
| グリーン | コーポレートカラーと新しい時代 |
| イエロー | 視認性と街中での存在感 |
| 縦ストライプ | 従来の制服から受け継ぐ安心感 |
相澤氏は公式発表のコメントで、グリーンと縦ストライプによって過去と未来をつなぎ、イエローによって視認性を高める意図を説明しています。
旧制服と新制服の違い2000年型と2020年型を比較すると、印象の違いは明確です。
2000年型の特徴
- クリーム色を取り入れた配色
- 従来からの親しみやすい企業イメージ
- 男女共通のデザイン
- 2000年から約20年間使用
2020年型の特徴
- グリーンを前面に押し出した配色
- イエローをアクセントに採用
- 矢絣文様を組み込んだデザイン
- 伸縮性や安全性を高めた素材・仕様
20年ぶりの変更は、単なる色の変更ではありません。企業イメージ、働き方、環境対応を一体化させた刷新だったのです。
【制服変更の理由】なぜ2020年に20年ぶりのリニューアルを実施したのか
ヤマトホールディングスが2020年8月21日に公表したニュースリリースでは、新制服のコンセプトを「働きやすさ」と「環境への配慮」としています。
着用開始日は2020年9月16日です。
今回の変更には、主に4つの理由がありました。
1. 長時間の配送業務に対応するためセールスドライバーは、荷物の積み下ろしや配達、集荷、顧客対応など、さまざまな動作を繰り返します。
そのため、制服には見た目以上に高い運動性能が大切です。
2020年型では新しい素材設計を取り入れ、従来よりも伸縮性を高めながら、業務に必要な強度と耐久性を確保しました。
2. 夜間や屋外での安全性を高めるため配送業務では、暗い時間帯や交通量の多い道路周辺で作業する場面もあります。
そこで、高輝度反射材を制服のデザインに取り入れました。
さらに帽子や安全靴にも改良を加えています。
3. 環境負荷を抑えるため従来の制服には再生PET素材が使用されていましたが、新制服では植物由来PET素材を採用しました。
単に素材を変更するだけでなく、製造時の環境負荷や使用後のリサイクルまで考えた設計になっています。
4. 社員の誇りと企業イメージを向上させるためヤマトホールディングスは、制服の刷新によって機能性、安全性、快適性を高めるだけでなく、社員の誇りや仕事へのモチベーションを高めることも目的に掲げました。
制服は顧客から見える企業の顔であると同時に、毎日着用する社員自身の仕事への意識にも関わるものです。
「制服変更は犯罪防止のため」という噂は本当?2020年のリニューアル時には、制服が変わる理由について、第三者による制服の悪用や配達員へのなりすまし対策ではないかという疑問も取り上げられました。
しかし、2020年9月2日付のJ-CASTトレンドの記事では、ヤマトホールディングスの広報担当者が、制服変更は制服悪用による犯罪防止を目的としたものではないと回答しています。
また、同社は制服を定期的に変更しているわけではないとも説明しています。
したがって、2020年のリニューアルを犯罪対策と結び付けるのは正確ではありません。公表された主な理由は、働きやすさ、安全性、環境への配慮、デザイン性の向上です。
【機能性を徹底検証】植物由来PET素材・反射材・防寒性能の秘密
2020年型制服の大きな特徴は、デザインだけではありません。
ヤマトホールディングスの公式資料には、素材や安全性能に関する具体的な説明が掲載されています。
植物由来PET素材とは?新制服の生地には、さとうきび由来の植物由来PET素材が採用されました。
これは、砂糖を製造する過程で発生するさとうきびの廃糖蜜を原料の一部として利用したものです。
公式発表によると、植物由来の原料が占める割合は約30%です。
つまり、制服全体が植物だけで作られているわけではなく、従来の石油由来原料の一部を植物由来原料に置き換えた素材です。
この区別は、環境性能を正しく理解するうえで重要です。
CO2削減効果は約500トンヤマトホールディングスの発表では、初回製造分の制服約220万点について、一般的な化石燃料由来PET素材を使用した場合と比較し、約500トンのCO2削減効果が見込まれると説明されています。
約500t
初回製造分におけるCO2削減効果の推計
対象となる制服
約220万点
植物由来原料
約30%
森林換算
約110ha
ヤマトホールディングスの2020年発表。削減量は一般的な化石燃料由来PET素材との比較による推計値です。
この約500トンという数字は、東京ドーム約24個分に相当するブナの天然林が1年間に吸収・蓄積するCO2量に相当するとされています。
また、植物由来PET素材を使った商品として、タイプⅠ環境ラベルであるエコマークの認定も取得しています。
高輝度反射材による夜間の安全性反射材は、見た目のアクセントとしてだけでなく、安全性を高める役割を担っています。
公式発表で採用が明記されているのは、次の部分です。
- 防寒着
- ブルゾン
- ベルト
- 安全靴
夜間に車両のライトなどが当たった際、反射材が光を反射することで、周囲から従業員を認識しやすくします。
帽子のつばにも安全上の工夫帽子のつばは、一般的な帽子と比べて少し短めに設計されています。
これは、車両を運転する際に上部の視界を確保しやすくするためです。
制服のデザイン変更が、運転時の安全性にも結び付いている点は見逃せません。
安全靴のインソールも改良安全靴では、インソールを改良して衝撃吸収性を向上させています。
配達員は歩行や乗降を繰り返すため、足への負担を軽減する設計が重要になります。
撥水性と防寒性も向上防寒着やブルゾンについては、撥水性を高める改良が実施されました。
公式発表によると、JIS L 1092のスプレー試験で最高の5級評価を獲得しています。
加えて、防寒着は中綿の量を調整した3種類を用意し、地域ごとの気候に合わせて選べる仕様です。
前開きファスナー部分にかぶさる布を二重にすることで、防寒性も高めています。
使用済み制服もリサイクル環境配慮は、制服を製造する段階だけでは終わりません。
公式発表では、使用後の制服について、生地すべてをマテリアルリサイクルする取り組みが示されています。
ヤマトグループのサステナブルレターでも、回収した使用済み制服を反毛リサイクルし、自動車の吸音材として再利用する取り組みが紹介されています。
制服を作り、使用し、回収して別の製品へ生まれ変わらせる。この資源循環の仕組みも2020年型制服の特徴です。
【セールスドライバーだけ?】ヤマト運輸の制服を着用する職種と対象者
クロネコヤマトの制服というと、荷物を配達するセールスドライバーの姿を思い浮かべる人が多い可能性があります。
しかし、2020年の公式発表では、制服の着用対象としてセールスドライバーだけでなく、窓口受付スタッフも挙げられています。
セールスドライバーの制服セールスドライバーは、荷物の集荷・配達に加え、顧客との接点を持つ重要な職種です。
そのため、制服には次のような性能が大切です。
- 荷物の持ち運びに対応する伸縮性
- 長時間着用できる耐久性
- 屋外作業で役立つ撥水性
- 夜間の視認性を高める反射材
- 季節や地域に応じた防寒性
現行デザインは、こうした業務上の要求を踏まえて作られています。
窓口受付スタッフの制服窓口受付スタッフも、2020年9月から新制服の着用対象となりました。
顧客が営業所を訪れたとき、配達スタッフと受付スタッフの双方が統一感のあるデザインを着用することで、企業としての一体感を伝えられます。
すべての社員が制服を着ているわけではないここで押さえておきたいのが、ヤマトグループの全社員が制服を着用するわけではないという点です。
2020年10月1日には、ヤマトホールディングスがビジネスカジュアルを導入しました。
対象は制服着用の義務がない社員で、事務担当者などが含まれます。
清潔感があり、華美ではなく、業務に支障のない服装を基本とする制度です。
したがって、街中でヤマトグループの社員を見かけても、全員が同じユニフォームを着用しているとは限りません。
【プロの結論】クロネコヤマトの制服は100年の企業理念と現場の機能性を映す存在
ヤマト運輸の制服の歴史を追うと、1924年から続く一貫した考え方が見えてきます。
それは、従業員の身だしなみや振る舞いが、会社への信頼につながるという考え方です。
1924年には運転手の服装を会社の信用と結び付け、1969年には車両と制服の色を調和させ、2000年には男女のデザインを統一しました。
そして2020年には、相澤陽介氏によるデザインと植物由来PET素材を組み合わせ、企業イメージと環境性能、現場の安全性を一体化させています。
特に評価したいのは、制服を単なる広告媒体として扱っていない点です。
制服は顧客に安心感を与えるだけでなく、着用する従業員の動きやすさや安全性にも直結します。
そのため、制服の価値を判断する際には、次の3つの視点が欠かせません。
1. 企業イメージ: 一目でヤマト運輸のスタッフだと認識できるか。
2. 現場の実用性: 動きやすさ、耐久性、防寒性、安全性を備えているか。
3. 環境性能: 素材の調達から使用後のリサイクルまで配慮されているか。
この3つを同時に追求していることが、2020年型制服の大きな特徴です。
【クロネコヤマトの制服】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:クロネコヤマトの現在の制服は何年に変更されましたか?
2020年9月16日です。ヤマトホールディングスが2020年8月21日に発表し、約20年ぶりの全面リニューアルとして導入されました。
Q2:ヤマト運輸の制服をデザインした人物は誰ですか?
ファッションデザイナーの相澤陽介氏です。ブランド「ホワイトマウンテニアリング」を手掛ける人物で、日本伝統の矢絣文様と「Y」を組み合わせたデザインを採用しました。
Q3:ヤマト運輸の制服には植物由来の素材が使われていますか?
はい。2020年型制服には、さとうきびの廃糖蜜を原料の一部に使用した植物由来PET素材が採用されています。植物由来原料の割合は約30%です。
Q4:ヤマト運輸の制服に反射材が付いている理由は何ですか?
夜間の視認性を高め、安全性を向上させるためです。防寒着、ブルゾン、ベルト、安全靴に高輝度反射材が採用されています。
Q5:ヤマト運輸の制服は何年ごとに変更されますか?
一定の周期は公表されていません。歴史上は1969年、1990年、2000年、2020年などに節目の刷新が行われていますが、定期的な変更制度があるわけではありません。
クロネコヤマトの制服は、1924年の制服制帽採用から約100年にわたり、時代に合わせて進化してきました。
2026年11月時点で公式資料から確認できる最新の全面リニューアルは、2020年9月に導入された相澤陽介氏デザインの制服です。
今回の調査で押さえておきたい要点は次のとおりです。
- 1924年に制服制帽を採用したことが歴史の始まり。
- 1977年には女性作業制服が登場。
- 2000年の制服は男女共通デザインだった。
- 2020年にグリーンを基調とするデザインへ全面刷新。
- 矢絣文様と「Y」を組み合わせた独自のデザインを採用。
- 植物由来PET素材や高輝度反射材によって環境性能と安全性を向上。
クロネコヤマトの制服は、時代ごとの企業イメージを表すと同時に、現場で働く人々を支える実用的な装備でもあります。
今後の新たな制服刷新においても、伝統的なブランドイメージを守りながら、働きやすさや環境性能をどう進化させるのかが注目されます。