座間市殺人事件は、2017年に神奈川県座間市のアパートで発覚した、男女9人が犠牲となった連続殺人事件です。「座間9人殺害事件」「座間市アパート9人殺害事件」とも呼ばれ、SNSで自殺願望などを発信していた若者に接触し、自宅に誘い込んで殺害するという手口が社会に大きな衝撃を与えました。
事件の犯人は白石隆浩です。被害者は当時15歳から26歳までの女性8人と男性1人。2020年12月に東京地裁立川支部で死刑判決が言い渡され、2021年1月に死刑が確定しました。その後、2025年6月27日に法務省が死刑執行を発表しています。
【事件の全体像】座間市殺人事件とは?男女9人が犠牲になった衝撃の事件

座間市殺人事件は、2017年10月30日から31日にかけて、神奈川県座間市のアパートから複数の遺体が発見されたことで明らかになりました。
警視庁が捜査を進めた結果、室内から確認された遺体は9人分。住人だった白石隆浩が関与した事件として捜査され、その後、9人全員に対する殺人などの罪で起訴されました。
事件の特徴は、被害者と加害者がSNSを通じて接触していた点です。白石はTwitter(現X)で自殺願望を示す投稿などをしていた人々に近づき、相手の悩みに理解を示すようなやり取りを重ねていました。
被害者の多くは10代から20代の若者でした。白石は相手の孤独感や精神的な苦しさにつけ込み、自宅アパートに誘い出して犯行に及んでいました。
被害者は女性8人・男性1人、当時15歳から26歳被害者は、女性8人と男性1人の合計9人です。年齢は当時15歳から26歳で、女子高校生も含まれていました。
全員が白石の住むアパートで殺害され、金品を奪われたほか、遺体は損壊・遺棄されました。女性に対する強制性交等の犯罪も認定されています。
被害者の年齢や性別だけを見ると、それぞれ異なる生活を送っていた若者たちです。しかし、SNS上で悩みや自殺願望を発信していたことなどが、犯人との接点になりました。
被害者の氏名や個人情報を必要以上に拡散することは、遺族のプライバシーや尊厳を傷つける可能性があります。事件を理解するうえでは、被害者の人数や年齢だけでなく、孤立した人が犯罪に狙われたという背景を捉えることが大切です。
【事件の経緯】2017年の犯行から発覚までを時系列で整理
座間市殺人事件の犯行期間は、2017年8月から10月までの約2か月間です。短期間に9人もの命が奪われたことに加え、事件発覚のきっかけが行方不明者の捜索だったことも、この事件の重大な特徴です。
警視庁の捜査では、東京都八王子市に住む当時23歳の女性の行方が分からなくなったことが、事件解明につながりました。女性はSNSで自殺に関する相手を探すような投稿をしており、白石との接点が捜査の過程で浮上しました。
その後、座間市のアパートが捜索され、9人分の遺体が発見されました。白石は逮捕後、約2か月間に9人を殺害したことを認め、捜査は事件全体の解明へと進みました。
事件の重要な出来事と関係者のつながり| 時期 | 人物・関係機関 | 出来事・関係性 |
|---|---|---|
| 2017年8月〜10月 | 白石隆浩・被害者9人 | SNSを通じて接触した男女9人が約2か月間にわたり殺害される。 |
| 2017年10月30〜31日 | 警視庁・行方不明の23歳女性 | 行方不明者の捜索をきっかけに座間市のアパートから9人分の遺体が発見される。 |
| 2017年12月19日 | 政府・関係閣僚会議 | 事件を受けてSNS上の有害情報対策や若者への相談支援などの再発防止策を決定。 |
| 2020年12月15日 | 東京地裁立川支部 | 裁判員裁判で白石に死刑判決。被害者全員について殺害の承諾を否定。 |
| 2021年1月5日 | 白石隆浩・東京地裁立川支部 | 本人が弁護人の控訴を取り下げ、死刑判決が確定。 |
| 2025年6月27日 | 法務省 | 白石隆浩の死刑執行を発表。 |
この時系列から分かるのは、事件が単なる一時的な衝動による犯罪ではなく、約2か月にわたって繰り返された連続殺人だったという点です。
また、事件発覚の端緒となったのは、SNS上の投稿そのものではなく、行方不明者を探す捜査でした。オンライン上の接触が現実の犯罪につながる危険性を、社会に強く認識させる出来事となりました。
【参考:共同通信の事件解説、TBS NEWS DIGの事件検証】
【SNSと犯行動機】白石隆浩はなぜ9人を殺害したのか
座間市殺人事件の犯行動機について、法務省は2025年6月27日の法務大臣臨時記者会見で、白石が性的欲求や金銭的欲求を満たす目的で犯行に及んだと説明しています。
事件の背景を理解するうえで重要なのは、白石がSNSを利用して、精神的に追い詰められた人々との接点を作っていたことです。
Twitter(現X)で自殺願望を示す人々に接触白石は、Twitter(現X)で自殺願望や孤独感を示す投稿をしていた人々にメッセージを送り、相手の悩みに寄り添うような態度を見せていました。
その際に利用されたのが、相手と一緒に死ぬことをほのめかす言葉です。実際には、白石自身が相手を殺害する意図を隠して接近していました。
やり取りはSNSだけで完結せず、LINEやカカオトークなどの通信手段にも移行していました。メッセージの交換を重ねることで相手との心理的な距離を縮め、最終的に自宅へ誘い込んでいたのです。
ここで見落としてはいけないのは、自殺願望を投稿したことと、他人に殺害されることを承諾したことは全く異なるという点です。精神的に苦しい人の発信を利用し、信頼を得たうえで犯罪に結びつけたことが、この事件の悪質性を際立たせています。
犯行動機は金銭的欲求から性的欲求へ白石の犯行動機については、裁判で明らかになった事実に加え、2025年7月にTBS NEWS DIGが掲載した記者の面会取材も参考になります。
同報道によると、白石は事件前、女性から金銭を得ることで生活しようと考えていたと説明していました。最初の被害者から金銭を借りてアパートで生活を始めたものの、金銭を返すことへの不安などから殺害に至ったという経緯を、自身の言葉で語っています。
加えて、犯行を繰り返すうちに、当初の金銭獲得という目的だけでなく、性的欲求を満たすことも動機になっていったと説明していました。
ただし、これは白石本人が取材に対して語った犯行動機の説明です。個人的な事情や生活上の不満が、9人の命を奪った犯罪を正当化する理由にはなりません。
法務省の2025年の発表でも、金銭的・性的欲求を満たすという身勝手な理由で9人が殺害された事件として説明されています。
【参考:法務省・2025年6月27日臨時記者会見、TBS NEWS DIG・2025年7月27日】
【裁判の争点】殺害承諾の有無と東京地裁立川支部の死刑判決
座間市殺人事件の裁判で特に注目されたのが、被害者が白石による殺害を承諾していたかどうかという問題です。
事件の被害者はSNSで自殺願望を示していたとされます。そのため、弁護側は、被害者が自ら死ぬことを望み、白石に殺害を依頼したとして、承諾殺人罪が成立すると主張しました。
一方、検察側は、被害者が殺害を承諾していた事実はなく、白石は金銭的・性的欲求を満たすために一方的に殺害したとして、死刑を求刑しました。
被害者の自殺願望と殺害への同意は別問題この裁判の核心は、SNSで「死にたい」と発信していたことを、他人による殺害への同意と解釈できるかという点でした。
弁護側は、被害者と白石の事前のメッセージのやり取りなどを根拠として、承諾殺人の成立を主張しました。
しかし、検察側は、被害者が自殺願望を持っていたとしても、白石に殺害されることまで承諾していたわけではないと反論しました。実際に、裁判では一部の被害者がメッセージ上で生きる意思を示していたことなども取り上げられました。
さらに異例だったのは、白石本人が起訴内容を認めていた一方で、弁護側が承諾殺人を主張していたことです。本人の主張と弁護人の法的な主張に食い違いが生じていました。
東京地裁立川支部は、2020年12月15日の判決で、被害者9人全員について殺害されることを承諾していなかったと判断しました。
2020年12月15日、死刑判決が言い渡される東京地裁立川支部の裁判員裁判は、検察側の求刑どおり白石に死刑を言い渡しました。
判決では、被害者が自殺願望を持っていたことと、被告人による殺害を承諾していたことは同じではないという点が重要な判断材料となりました。
9人もの命が奪われた結果の重大性に加え、犯行の経緯や動機、計画性なども含めて判断されたものです。
この事件が司法上残した重要な教訓は、本人が精神的に追い詰められていたという事情を、他人による生命侵害への同意として簡単に扱うことはできないという点です。
【参考:テレビ朝日・2025年6月27日報道、弁護士ドットコム掲載の裁判解説】
【死刑確定から執行まで】2021年の確定と2025年6月27日の死刑執行
白石隆浩は2020年12月15日に死刑判決を受けました。その後、弁護人が控訴しましたが、白石本人が控訴を取り下げたことで、2021年1月5日に死刑が確定しました。
最高裁判所での審理を経て確定したのではなく、本人による控訴取り下げによって一審判決が確定した点も、この事件の司法経過における特徴です。
2025年6月27日、法務省が死刑執行を発表2025年6月27日、法務省は白石隆浩の死刑を執行したと発表しました。
法務大臣の臨時記者会見では、約2か月間に9人を殺害し、所持金を奪うなどしたうえ、遺体を損壊・遺棄した事件として概要が説明されました。
法務省は、9人の若い命が奪われた重大性と、遺族が受けた深い苦痛についても言及しています。また、裁判で十分な審理を経て死刑判決が確定していたことを踏まえ、慎重に検討したうえで執行を命令したと説明しました。
この執行は、2022年7月以来となる死刑執行でもありました。
2026年現在、事件はどのような状況なのか2026年11月現在、白石隆浩への死刑はすでに執行されています。2021年の死刑確定後、約4年5か月を経て刑が執行されたことになります。
したがって、白石本人については、死刑執行を待つ段階ではありません。
一方、事件が社会に残した問題は解決したわけではありません。SNSを利用した犯罪への対策、孤立した若者への支援、被害者遺族への長期的なケアなど、事件後も取り組むべき課題が残っています。
死刑執行によって刑罰は実行されましたが、亡くなった9人が戻ることはありません。事件を振り返る際には、刑の執行だけでなく、被害者と遺族が受けた被害の大きさにも目を向ける必要があります。
【参考:法務省・2025年6月27日臨時記者会見、テレビ朝日報道】
【再発防止策】座間市事件後、SNSと若者の相談体制はどう変わったのか
座間市殺人事件を受け、政府は2017年11月に「座間市における事件の再発防止に関する関係閣僚会議」を開催しました。同年12月19日には、関係省庁が連携して取り組む再発防止策を取りまとめています。
対策は大きく分けて、SNS上の自殺誘引情報への対応、若者の心のケア、インターネット上の有害環境からの保護という3つの方向で進められました。
重要なのは自殺願望の投稿を一律に削除しないこと政府の再発防止策で特に重要なのは、他人を自殺に誘い込む情報と、助けを求める自殺願望の投稿を区別していることです。
自殺を勧誘・誘引する情報については、SNS事業者による削除や利用規約の適切な運用を強化する一方、「死にたい」「消えたい」といった投稿は、本人が発している危険のサインとして捉える必要があると整理されました。
こうした投稿を一律に削除してしまうと、苦しんでいる本人が相談先につながる機会を失う可能性があります。そのため、適切な相談窓口を案内し、必要に応じて支援を受けられる仕組みを整える方向が示されました。
この考え方は、SNSの安全対策を単なる投稿監視や削除だけで終わらせないという点で重要です。
【参考:厚生労働省「座間市における事件の再発防止策について」】
2025年公表のSNS相談実績から見る支援の広がり厚生労働省が公表した令和6年度(2024年4月〜2025年3月)のSNS相談事業の実施結果では、5団体による相談の延べ件数は337,338件でした。前年度と比べて122.5%に増えています。
相談件数の年齢構成では、19歳以下が44.9%、20歳代が22.6%を占めています。性別では女性が74.5%でした。
この数字は、若者がSNSを通じて悩みを相談する仕組みが一定の規模で利用されていることを示しています。ただし、延べ件数であり、相談した実人数を表すものではありません。また、相談件数の増加だけで自殺予防や犯罪防止の効果を直接証明できるわけでもありません。
【参考:厚生労働省「令和6年4月〜令和7年3月分SNS相談事業の実施結果」】
2025年度のガイドライン改訂で重視された支援の継続性厚生労働省は2025年度、SNS相談事業のガイドラインを改訂しました。2018年度に作成されたガイドラインから7年が経過し、SNS環境や若者を取り巻く状況、相談現場で蓄積された知見を反映したものです。
改訂版では、相談に応じるだけでなく、必要な社会資源につなぐ支援や、相談後のフォロー、緊急時の対応、自治体と相談団体の連携などが重視されています。
この方向性は、座間市事件の再発防止を考えるうえでも重要です。ネット上で悩みを発信した人が相談窓口にたどり着いたとしても、そこで支援が途切れてしまえば、孤立の解消にはつながりません。
オンラインで相談を受け、必要に応じて福祉、医療、学校、地域の支援機関へつなぐ仕組みを継続的に整えることが求められています。
【参考:厚生労働省「令和7年度改訂版SNS相談事業ガイドライン」】
座間市事件の再発防止に向けて残されている課題制度が整備されても、SNS上の危険な接触を完全に防げるわけではありません。今後も特に重要となるのは、次の3点です。
- 有害情報の早期発見:自殺を誘引する投稿や、精神的に追い詰められた人を標的にする不審な接触を適切に把握すること。
- 相談窓口へのアクセス改善:電話が苦手な人や、身近な人に悩みを打ち明けられない人でも利用しやすいSNS相談を維持すること。
- 相談後の継続支援:相談を受けて終わりにせず、必要に応じて専門機関や地域の支援につなぐこと。
加えて、SNS事業者、行政、学校、家庭、民間支援団体がそれぞれの役割を果たし、情報共有と連携を進める必要があります。
座間市事件の教訓は、SNSそのものを危険視して一律に規制することではありません。助けを求める人の発信を守りながら、その弱みにつけ込む犯罪を防ぐという、両立の難しい課題に向き合うことです。
【座間市殺人事件】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:座間市殺人事件の被害者は何人ですか?
A1:被害者は合計9人です。内訳は女性8人、男性1人で、事件当時の年齢は15歳から26歳でした。
Q2:座間市殺人事件の犯人は誰ですか?
A2:白石隆浩です。神奈川県座間市の自宅アパートで、SNSを通じて接触した男女9人を殺害したなどとして起訴され、死刑判決を受けました。
Q3:白石隆浩の犯行動機は何だったのですか?
A3:法務省は、性的欲求と金銭的欲求を満たすための犯行だったと説明しています。本人の取材での説明でも、当初の金銭目的から性的欲求へと動機が変化した経緯が語られています。
Q4:裁判では何が争点になったのですか?
A4:最大の争点は、被害者が殺害を承諾していたかどうかです。弁護側は承諾殺人を主張しましたが、東京地裁立川支部は被害者9人全員について殺害への承諾を否定しました。
Q5:白石隆浩の死刑はいつ確定しましたか?
A5:2021年1月5日です。2020年12月の死刑判決後、弁護人が控訴しましたが、白石本人が控訴を取り下げたことで確定しました。
Q6:白石隆浩の死刑は執行されましたか?
A6:はい。2025年6月27日に法務省が死刑執行を発表しました。2026年現在、死刑はすでに執行されています。
Q7:座間市事件後、SNSの自殺相談体制は変わりましたか?
A7:変化しています。政府は2017年12月に再発防止策を決定し、SNS上の自殺誘引情報への対策と、悩みを発信する若者への相談支援を進めました。厚生労働省もSNS相談事業や相談ガイドラインの整備・改訂を行っています。
座間市殺人事件は、2017年にSNSで接触した男女9人が犠牲となった重大な連続殺人事件です。白石隆浩は、孤独や自殺願望を抱えていた人々に近づき、信頼を装って自宅に誘い込んでいました。
裁判では、被害者が殺害を承諾していたかどうかが大きな争点となりましたが、東京地裁立川支部は全員について承諾を否定し、2020年12月15日に死刑を言い渡しました。その後、2021年1月5日に死刑が確定し、2025年6月27日に執行されています。
しかし、この事件を死刑判決と執行だけで振り返るのでは十分ではありません。社会が考えるべきなのは、なぜ精神的に追い詰められた若者が犯罪者に接触され、被害を防ぐことができなかったのかという問題です。
特に重要なのは、SNSで助けを求める発信を危険なものとして排除するのではなく、本人を適切な相談や支援につなげることです。投稿の削除、危険な接触の監視、相談窓口の充実、専門機関との連携は、それぞれが機能して初めて再発防止につながります。
2025年度のSNS相談ガイドライン改訂や、相談事業の実績は支援体制の進展を示しています。一方、相談件数だけでは支援の質や犯罪防止の効果を測ることはできません。相談後の継続的な支援と、孤立を防ぐ地域社会の仕組みづくりが欠かせません。
座間市殺人事件が残した最大の教訓は、助けを求める人の弱さを犯罪に利用させない社会をつくることです。9人の犠牲を過去の事件として終わらせず、SNS時代の安全対策と若者の孤立防止に生かしていくことが、今後も問われています。