「住みます芸人」とは、吉本興業が2011年にスタートさせた地域活性化プロジェクト「あなたの街に住みますプロジェクト」に参加し、全国各地に生活拠点を置いて活動する芸人のことだ。テレビや劇場への出演だけでなく、自治体のイベント、観光PR、特産品の商品開発、地域課題の解決など、活動内容は幅広い。芸人と地域住民が日常的に接点を持ち、笑いを通じて地域の魅力を発信する点が特徴となっている。
2026年11月現在も、吉本興業は47都道府県に芸人とエリア担当社員が拠点を置くプロジェクトを展開している。大阪市24区住みます芸人や、BSよしもとの地域密着型番組、自治体と連携した新しい取り組みなど、その活動形態も変化してきた。初代メンバーから現在の担当芸人、選考の仕組み、地域おこし協力隊との違いまで、公式発表や自治体の活動記録をもとに実態を整理する。
【住みます芸人とは?】吉本興業が2011年に始めた地域活性化プロジェクトの全貌

住みます芸人の原点は、吉本興業が2011年に始めた「あなたの街に住みますプロジェクト」だ。
2011年4月27日、吉本興業はプロジェクトの発表会見を開催。47都道府県にエリア担当社員を配置するとともに、各地域に芸人が移住し、地域に密着した活動を行う構想を公表した。
背景には、東京や大阪など大都市圏に芸能活動の機会が集中する状況と、地方における若者の雇用や地域活性化の課題があった。
当時の吉本興業ホールディングス会長・大﨑洋氏へのインタビューを掲載したリクルートワークス研究所の2022年の記事によると、所属芸人から地域を盛り上げたい人材を募ったところ、約500組が集まり、オーディションによって47組が選抜された。
加えて、芸人とともに活動するエリア担当社員についても約5,000人の応募があり、47人が採用されたという。
つまり、芸人だけを地方に送り込む仕組みではない。地域での活動を調整する社員と芸人が組み、現地の自治体や企業、住民との関係を築く二人三脚の事業としてスタートしたのである。
47都道府県に拠点を置く仕組み吉本興業の公式事業案内では、住みます芸人について、芸人と社員が47都道府県に住んで活動する地域創生事業と説明している。
基本的な関係は次のとおりだ。
- 吉本興業:プロジェクト全体の企画、芸人のマネジメント、自治体や企業との連携。
- 住みます芸人:地域に暮らしながらイベント、情報発信、商品開発などを担当。
- エリア担当社員:地域の行政、企業、団体などとの調整や事業化を支援。
- 自治体・地域企業:地域課題やPRの目的を共有し、具体的な活動を共同で進める。
- 地域住民:イベントへの参加、企画への協力、商品開発などを通じてプロジェクトに関わる。
重要なのは、47都道府県に芸人を配置すること自体が最終目的ではない点だ。芸人が地域の中に入ることで、それまで外部に伝わりにくかった地元の魅力や課題を発見し、吉本興業の発信力を活用して広く届けることが事業の狙いとなっている。
大阪市24区住みます芸人との違い47都道府県を対象とする全国プロジェクトとは別に、大阪市では市内24区を対象にした「大阪市24区住みますプロジェクト」も展開されている。
大阪市は2017年11月22日、吉本興業株式会社と市民サービスの向上および地域活性化を目的とする包括連携協定を締結した。この協定に基づき、各区に担当芸人を配置し、区役所や地域活動協議会などと連携して地域の行事やイベントに参加する仕組みがつくられた。
全国版が都道府県単位の地域創生を目指すのに対し、大阪市24区版は、より生活圏に近い区単位で地域住民と接点を持つ取り組みといえる。
【仕事内容を解説】住みます芸人は地域で何をしている?
1.地域のお祭りやイベントへの出演最も分かりやすい仕事が、地域イベントへの参加だ。
吉本興業の仕事依頼案内では、地域のお祭りやイベントの司会、抽選会のサポート、ブース紹介などが具体的な業務として紹介されている。
芸人ならではのトークや盛り上げる技術を使い、地域住民が集まる場を活性化させる。自治体の記念行事、商店街のイベント、スポーツ大会、盆踊りなど、出演機会は多様だ。
2.観光PRと地域の情報発信地域の魅力を外部に伝えることも重要な仕事である。
例えば、観光名所を訪問して動画を制作したり、地元の飲食店や特産品を紹介したり、自治体の観光キャンペーンに参加したりする。
住みます芸人は、単に観光情報を読み上げるだけではない。実際に地域で暮らすことで、住民が日常的に利用する場所や、地元の人しか知らない魅力を発信できる。
また、防犯活動や交通安全啓発など、行政情報を分かりやすく届ける役割も担う。
3.特産品や新商品の開発地域活性化の中でも、事業としての広がりが大きいのが特産品の開発だ。
BSよしもとが紹介する住みます芸人の活動には、地元食材を使った新商品の開発や、伝統的な食文化の復活などがある。
代表的な事例には、次のようなものがある。
- 静岡県のさこリッチによる「ぬまづうどん」。
- 京都府の木下弱による京丹波町の伝統食復活プロジェクト。
- 佐賀県のメタルラックによる県産食材の商品開発。
- 宮崎県のチキンナンゴーによる日南かつおのPR。
- 長崎県の長崎亭キヨちゃんぽんによるかんぼこの開発。
芸人の知名度や発信力を商品開発に組み合わせることで、地元の生産者だけでは届きにくかった消費者層への認知拡大を目指している。
4.空き家活用や農業などの地域課題解決活動はエンターテインメントの枠にとどまらない。
BSよしもとの公式番組紹介では、耕作放棄地を活用した農業への挑戦や、空き家をDIYで改修して住民が集まる場所にするプロジェクトなどが紹介されている。
例えば、兵庫県の女と男・市川は、市川町の空き家を活用したコミュニティづくりに取り組んでいる。岐阜県の森貴史は、古本屋を通じた地域コミュニティの創造事業を紹介されている。
ここでは芸人の役割が変わる。舞台で笑いを提供するだけでなく、住民との会話から地域の困りごとを拾い、地元企業や自治体と協力して解決策を考える存在になる。
5.地域企業や自治体との共同事業吉本興業の事業案内には、スポーツ大会や農業体験へのゲスト参加、婚活イベントの参加者サポート、1日店長、観光ガイドなども掲載されている。
こうした仕事は、芸人の出演料だけで完結するものではない。イベントの運営支援や地域企業との連携など、芸能活動を起点とした複数の仕事が生まれる。
地域の人々と継続的に関係を築けることが、一般的な単発イベント出演との大きな違いだ。
【住みます芸人一覧・都道府県別】全国47地域と代表的な活動事例
全国の対象地域一覧吉本興業の公式地域情報サイト「よしもと住みます芸人47web」では、全国の活動地域を7つのエリアに分けて紹介している。
47都道府県の対象地域は以下のとおりだ。
北海道・東北エリア(7道県)
- 北海道
- 青森県
- 岩手県
- 宮城県
- 秋田県
- 山形県
- 福島県
関東エリア(10都県)
- 茨城県
- 栃木県
- 群馬県
- 埼玉県
- 千葉県
- 東京都
- 神奈川県
- 山梨県
- 長野県
- 新潟県
中部エリア(7県)
- 富山県
- 石川県
- 福井県
- 岐阜県
- 静岡県
- 愛知県
- 三重県
近畿エリア(6府県)
- 滋賀県
- 京都府
- 大阪府
- 兵庫県
- 奈良県
- 和歌山県
中国エリア(5県)
- 鳥取県
- 島根県
- 岡山県
- 広島県
- 山口県
四国エリア(4県)
- 徳島県
- 香川県
- 愛媛県
- 高知県
九州・沖縄エリア(8県)
- 福岡県
- 佐賀県
- 長崎県
- 熊本県
- 大分県
- 宮崎県
- 鹿児島県
- 沖縄県
なお、47都道府県という地域ネットワークと、各地域の担当芸人の名前は別々に考える必要がある。芸人のコンビ結成、解散、活動拠点の変更、世代交代などによって担当者は変わるため、2011年の初代メンバーを2026年の現役メンバーとして扱うことはできない。
地域別の芸人と活動内容の関係BSよしもとの住みます芸人紹介ページには、全国各地の活動事例が掲載されている。以下は同ページで紹介されている地域と芸人、事業の対応関係だ。掲載された活動事例と2026年の最新担当者名は区別して確認したい。
| 地域 | 芸人名 | 主な活動・プロジェクト |
|---|---|---|
| 静岡県 | さこリッチ | ぬまづうどん |
| 京都府 | 木下弱 | 京丹波町の伝統食復活 |
| 和歌山県 | わんだーらんど | 地域PRプロジェクト |
| 兵庫県 | 女と男・市川 | 市川町の空き家活用 |
| 岐阜県 | 森貴史 | 古本屋を通じた地域コミュニティづくり |
| 岡山県 | 江西あきよし | 渋川マリン水族館の再生事業 |
| 島根県 | 奥村隼也 | 町の宝プロジェクト |
| 佐賀県 | メタルラック | 県産食材の商品開発 |
| 宮崎県 | チキンナンゴー | 日南かつおPR |
| 長崎県 | 長崎亭キヨちゃんぽん | かんぼこ開発 |
| 茨城県 | オスペンギン | 地域の魅力発信 |
| 群馬県 | チョッキGT5000 | 利根沼田の座敷箒など伝統工芸の発信 |
| 千葉県 | もぐもぐピーナッツ | 横芝光町との連携事業 |
| 北海道 | オジョー | 子育てサロン |
| 岩手県 | アンダーエイジ | 南部杜氏と地元の日本酒のPR |
| 宮城県 | けせんぬまペイ! | よしもと気仙沼プロジェクト |
この表から分かるのは、住みます芸人の活動が地域ごとに異なることだ。農業、伝統食、観光、商店街、福祉、商品開発など、担当する芸人の得意分野と地域のニーズによって仕事内容が変わる。
全国の現行担当者を調べる場合は、47webの都道府県別プロフィールを基準にし、自治体の就任発表や最新の活動レポートを併せて確認するのが確実だ。
【歴代メンバーと選考方法】初代から現在までどう変わった?
初代住みます芸人はどのように選ばれたのか2011年の初回募集では、吉本興業に所属する芸人の中から地域活性化への意欲を持つ人材を募り、約500組の応募を集めた。
その後、オーディションによって47組を選抜。各都道府県に1組ずつ配置する形でプロジェクトがスタートした。
当初の選考では、芸能界での知名度だけでなく、地域に住んで活動する意欲や、地元との関係を築けるかという点が事業の趣旨と結びついていた。
住みます芸人に必要な能力住みます芸人の仕事は、テレビ出演や漫才だけではない。地域住民や自治体担当者と継続的に関わるため、複数の能力が求められる。
- コミュニケーション能力:住民や行政担当者と信頼関係を構築する力。
- 発信力:地域の魅力を動画、SNS、イベントなどで伝える力。
- 企画力:地域の課題をイベントや商品開発につなげる力。
- 継続力:一度きりの出演ではなく、地域に根差して活動する姿勢。
- 柔軟性:芸人としての活動と地域の実務を両立する力。
こうした特徴から、住みます芸人は芸能人であると同時に、地域プロジェクトの実践者という側面を持つ。
歴代メンバーの交代と活動の広がり住みます芸人は、初代の47組が永久に担当する制度ではない。地域ごとに後任が就任したり、複数組が関わったりするケースもある。
吉本興業の過去の発表を振り返ると、世代交代の具体例が確認できる。
- 2011年:47組の初代住みます芸人を発表し、プロジェクトが始動。
- 2013年:首都圏で新しい担当者を発表。埼玉県では天狗が3代目、東京都では笑福亭笑助が3代目、神奈川県では松下笑一が2代目に就任した。
- 2018年:京都府の3代目住みます芸人としてモンブランが就任。初代はタナからイケダ、次いで月亭太遊が担当していた。
このように、住みます芸人は固定された全国一律のメンバー構成ではなく、地域の事情に合わせて担当が変わる仕組みだ。
現在の募集・選考方法は初回と同じなのかここは誤解しやすい部分である。
初回の約500組から47組を選んだオーディションは、2011年の立ち上げ時の選考実績だ。2026年現在、全国47都道府県の担当芸人を同じ条件で一斉募集する公開オーディションが常時実施されているわけではない。
その後の活動では、地域別の担当交代や新規就任が吉本興業や自治体から発表されている。大阪市の24区プロジェクトでも、区ごとに新しい芸人の就任が告知されている。
そのため、住みます芸人を目指す場合は、吉本興業への所属や募集情報、各地域の就任発表を確認する必要がある。地域おこし協力隊のように、全国共通の自治体公募制度として応募できるものではない。
【2026年最新情報】住みます芸人の現在と注目の活動事例
2026年も大阪市24区プロジェクトが継続2026年の活動を具体的に確認できる事例が、大阪市24区住みますプロジェクトだ。
大阪市の公式発表では、2026年1月15日付で西成区住みます芸人の紹介ページが更新されている。西成区では、ガオ~ちゃんが「しげみうどん」とコンビを結成し、「らいおんうどん」として活動している。
らいおんうどんは、2022年12月1日に西成区住みます芸人に就任した。ガオ~ちゃんとしげみうどんの2人が地域の行事やイベントを盛り上げ、YouTubeチャンネル「らいおんうどんガオ~ちゃんの西成ちゃんねる」でも情報を発信している。
また、ガオ~ちゃんは西成区のオリジナルソング「ええ街、西成」の作詞・作曲を担当。地域の魅力を音楽という形で伝える活動も行っている。
西成区の公式紹介によると、しげみうどんは粉からのうどん手打ちや早打ちを特技としている。コンビ名にもなっている「うどん」という個性を地域PRに生かしている点が特徴だ。
2026年4月には住吉区で2代目が就任2026年4月1日には、大阪市住吉区の2代目住みます芸人として「大正サウナ」が就任した。
住吉区が4月6日に公開した公式発表によると、メンバーは、てつはると國島チャカフィロの2人。区の包括連携協定に基づく地域活性化の取り組みとして活動を開始した。
2026年には、地域行事への参加に加えて、住民向けの情報発信にも関わっている。
住吉区の活動記録には、次のような事例が掲載されている。
- 2026年4月9日:住吉区地域活動協議会会長会への参加。
- 2026年5月15日:山之内交通安全大会への参加。
- 2026年5月20日:オンデマンドバスの紹介動画撮影。
- 2026年5月21日:住吉連合老人会総会への参加。
- 2026年7月4日:山之内カレーまつりへの参加。
- 2026年7月14日:オンデマンドバスサポートデスクへの参加。
これらの活動は、芸人が地域イベントに出演するだけでなく、交通や高齢者支援など、住民の日常生活に近い行政施策にも接点を持っていることを示している。
大阪市24区では各区に担当芸人を配置大阪市24区のプロジェクトでは、区ごとに担当芸人が配置され、地域イベントや行政との共同事業に参加している。
2026年の公式サイトで確認できる担当例には、次のような芸人がいる。
- 西成区:らいおんうどん
- 住吉区:大正サウナ
- 淀川区:はぜるな
- 中央区:大乱ポゥ!ボマッシュブラ坊主!
- 東淀川区:福人
- 住之江区:セカンドブラウン
- 浪速区:チャイルドプリンス
- 阿倍野区:ビコーン!
担当者は世代交代によって変更されることがある。例えば、淀川区では2026年4月1日から、東京進出に伴い担当を離れた「はるかぜとともに」に代わり、「はぜるな」が新しい住みます芸人に就任した。
このような交代情報は、全国版の芸人一覧だけでは把握しにくい。自治体の公式ページや大阪市24区住みますプロジェクトの活動レポートを確認することが、現在の担当者を知るうえで重要になる。
BSよしもとの「チーキーズ a GoGo」と2026年の放送体制住みます芸人の全国的な知名度を高めてきたメディアの一つが、BSよしもとだ。
代表的な番組が「チーキーズ a GoGo!」である。全国各地の住みます芸人が地域のニュース、観光スポット、グルメ、イベントなどを紹介し、地域情報を全国に届ける役割を担ってきた。
番組内の企画「住みます!やります!頑張ります!」では、観光PRや特産品開発、まちづくりなど、芸人が地域課題の解決に取り組む様子が紹介されている。
ただし、2026年の放送状況を確認する際には注意が必要だ。2026年11月現在のBSよしもとの公式番組案内では、地域情報を発信する平日午後の生放送番組として「発信Live ジモトノチカラ!」が掲載されている。
同番組は月曜日から木曜日までの午後1時から4時まで放送され、47都道府県の住みます芸人が地域のおすすめスポット、グルメ、イベントなどをレポートする構成だ。自治体関係者がスタジオに出演し、地域のお祭りや旬の特産品をPRするコーナーも用意されている。
つまり、「チーキーズ a GoGo!」は住みます芸人の活動を広めてきた重要な番組だが、2026年の現行番組表では「発信Live ジモトノチカラ!」などが地域情報発信の役割を担っている。過去の番組ページと現在の放送枠を混同しないことが大切だ。
【評判と地域への影響】住みます芸人は地方創生にどこまで貢献している?
地域にとってのメリット住みます芸人が地域にもたらすメリットは、大きく分けて3つある。
第一に、地域の認知度を高められること。
自治体が公式に発信する観光情報だけでは、地域外の人々に届きにくいことがある。芸人が動画やイベント、テレビ番組などを通じて紹介することで、普段は注目されにくい観光地や食文化を知ってもらう機会が生まれる。
第二に、地域住民同士の交流を促進できること。
お祭りやイベントに芸人が参加すると、普段は接点の少ない住民同士が集まるきっかけになる。高齢者向けの行事や子ども向けの企画など、幅広い年代に接点をつくれる点も特徴だ。
第三に、地域資源を事業化する可能性があること。
特産品の商品開発や観光ガイド、空き家の活用など、地域の魅力を継続的な事業に結びつけることができれば、イベント出演だけでは得られない長期的な効果が期待できる。
吉本興業が公表した過去の活動実績プロジェクトの規模を示す参考資料として、リクルートワークス研究所が2022年に掲載した大﨑洋氏へのインタビューがある。
同インタビューでは、吉本興業側の説明として、2021年12月時点で次の実績が紹介されていた。
- 住みます芸人らが立ち上げた地域活性化事業:約800件
- 観光大使などの地域の大使への就任:313件
- 出演するテレビのレギュラー番組数:238本
これは2021年12月時点の吉本興業側の説明に基づく数字であり、2026年現在の累計実績ではない。しかし、プロジェクトがイベント出演だけでなく、事業開発やメディア出演へ広がってきたことを示す資料ではある。
大学研究から見た住みます芸人の可能性住みます芸人の活動は、学術研究の対象にもなっている。
2022年3月に地域活性学会の学術誌「地域活性研究」に掲載された中村寛樹氏の論文「地域を盛り上げる芸人たちの社会起業家としての潜在性」では、吉本興業の住みます芸人プロジェクトと、地域課題の解決を目指すソーシャルビジネスの取り組みが分析された。
研究では、プロジェクト関係者や住みます芸人へのアンケート調査、インタビュー調査を通じて、芸人が地域課題を発見し、解決に向けて事業化を進める過程が考察されている。
注目すべきなのは、芸人を単なる広告塔としてではなく、地域の中から課題を見つけ、住民や企業と一緒に解決策を考える存在として捉えている点だ。
デメリットや課題もある一方で、住みます芸人の活動には課題もある。
最初に、芸人の知名度や発信力だけでは、地域の経済問題や人口減少を解決できない。観光客が増えることと、地域住民の所得が継続的に向上することは別の問題だ。
また、担当芸人の交代によって、自治体や住民との関係が一から構築し直しになる可能性もある。芸人個人の人気に依存しすぎると、担当者が変わったときに事業が継続しにくくなる。
加えて、イベントへの出演回数やSNSの再生数だけでは、地域にどれほどの経済的・社会的効果があったのかを判断しにくい。
活動を評価する際には、イベント参加者数、観光客の増加、特産品の売上、地域企業との継続的な取引、住民の参加状況など、複数の指標を確認する必要がある。
地域おこし協力隊とは何が違う?住みます芸人と混同されやすい制度に、総務省が推進する「地域おこし協力隊」がある。
両者は地域に移住し、地域活性化に関わる点では共通しているが、制度の成り立ちや雇用・委嘱の仕組みは異なる。
地域おこし協力隊は、地方公共団体が委嘱する公的な制度である。都市部から条件不利地域などに生活拠点を移し、地域協力活動を行いながら、その地域への定住・定着を目指す。活動期間は原則として概ね1年以上3年以下とされる。
一方、住みます芸人は吉本興業が展開する民間の地域創生プロジェクトだ。自治体との包括連携協定や個別事業を通じて活動することはあるが、地域おこし協力隊員と同じ身分や制度上の位置づけではない。
両者の違いを整理すると、次のようになる。
- 実施主体:住みます芸人は吉本興業、地域おこし協力隊は地方公共団体。
- 主な役割:住みます芸人は芸能・情報発信・地域事業、協力隊は地域協力活動全般。
- 選考:住みます芸人は吉本興業側の人材選考や地域別の就任、協力隊は自治体の募集・選考・委嘱。
- 活動期間:住みます芸人は地域や担当者によって異なり、全国共通の任期制度ではない。協力隊は概ね1年以上3年以下。
- 財政的な仕組み:協力隊には国の特別交付税措置がある。住みます芸人は吉本興業の事業や自治体・企業との個別契約などによって活動する。
したがって、住みます芸人を地域おこし協力隊の芸能人版と考えるのは正確ではない。両者は地域に関わる人材という共通点を持ちながら、異なる仕組みで活動している。
【プロの結論】住みます芸人の価値は地域に残る仕組みで決まる住みます芸人の本質は、芸人が地方に移住することそのものではない。地域に暮らすことで住民との距離を縮め、地域の課題を発見し、外部に伝え、必要に応じて事業化することにある。
そのため、活動の価値を見極めるなら、テレビ出演数やイベント回数だけで判断すべきではない。
特産品が継続的に販売されているか、地域企業との取引が続いているか、住民が自発的に参加する仕組みができているか、担当芸人が交代しても事業が残るか。こうした視点が重要になる。
地域側にとっても、芸人を呼ぶだけで地域活性化が実現するわけではない。行政、地元企業、住民が目的を共有し、芸人の発信力を実際の地域課題解決につなげられるかどうかが成否を左右する。
【よくある質問】住みます芸人に関するFAQ
Q1:住みます芸人とは何ですか?
A1:吉本興業が2011年に始めた「あなたの街に住みますプロジェクト」に参加し、地域に生活拠点を置いて活動する芸人です。イベント出演、観光PR、商品開発、地域課題の解決などを担当します。
Q2:住みます芸人は47都道府県すべてにいるのですか?
A2:吉本興業は芸人とエリア担当社員が47都道府県に拠点を置くプロジェクトとして案内しています。ただし、担当芸人の名前やコンビ構成は交代するため、最新の担当者は47webや各自治体の公式発表で確認する必要があります。
Q3:住みます芸人になるにはどうすればいいですか?
A3:2011年の初回選考では、吉本興業所属芸人約500組の応募からオーディションで47組が選抜されました。現在は初回と同じ全国一斉選考が常時行われているわけではありません。吉本興業の募集・所属情報や地域別の就任発表を確認する必要があります。
Q4:住みます芸人の仕事内容は何ですか?
A4:地域イベントの司会や出演、観光地・特産品のPR、商品開発、農業体験、空き家活用、地域コミュニティづくり、防犯・交通安全の啓発などです。担当する地域や芸人の得意分野によって内容は異なります。
Q5:住みます芸人と地域おこし協力隊は同じですか?
A5:同じではありません。住みます芸人は吉本興業が運営する民間の地域活性化プロジェクトです。地域おこし協力隊は自治体が委嘱する総務省の制度で、活動期間や財政支援などの仕組みも異なります。
Q6:2026年現在も住みます芸人は活動していますか?
A6:活動しています。大阪市24区では、らいおんうどんや大正サウナなどが地域活動に参加しています。また、BSよしもとの「発信Live ジモトノチカラ!」でも、47都道府県の住みます芸人が地域情報を発信しています。
Q7:大阪市24区住みます芸人の西成区担当は誰ですか?
A7:2026年11月現在、大阪市の公式紹介ページで確認できる西成区住みます芸人は「らいおんうどん」です。ガオ~ちゃんとしげみうどんの2人組で、2022年12月1日に就任しました。地域イベントへの出演やYouTubeでの情報発信などを行っています。
住みます芸人は、2011年に吉本興業が始めた「あなたの街に住みますプロジェクト」から生まれた地域活性化の取り組みだ。
47都道府県に芸人とエリア担当社員が拠点を置き、自治体、地域企業、住民と連携しながら、イベント出演、観光PR、特産品開発、地域課題の解決などを進めてきた。
2026年には大阪市24区で担当芸人の交代や新規就任が確認され、住吉区の大正サウナや西成区のらいおんうどんなど、地域に密着した活動が続いている。BSよしもとでも「発信Live ジモトノチカラ!」を通じて、住みます芸人による全国各地の情報発信が行われている。
一方、担当者の交代や事業の継続性、地域経済への具体的な効果など、検証すべき課題も残る。芸人の知名度だけでなく、地域にどのような成果が残ったのかを確認することが、プロジェクトを正しく評価するポイントになる。
住みます芸人の活動は、芸能人が地域に移り住むという話にとどまらない。笑いを入口に人と人をつなぎ、地域の魅力を掘り起こし、新しい事業や交流を生み出す取り組みとして、今後もその活動の広がりが注目される。
主な事実確認資料: 吉本興業公式発表・事業案内、リクルートワークス研究所、BSよしもと公式番組情報、大阪市および各区の2026年活動記録、地域活性学会掲載論文。