食品ロスは、単に食べ物を捨てる問題ではない。食品の生産、加工、輸送、保管、販売には、原材料費、エネルギー、人件費、水資源などが投入されている。食べられる状態の食品を廃棄すれば、それまでに使われた資源や費用も無駄になる。
2026年6月30日に消費者庁が公表した2024年度の推計では、食品ロスによる経済損失は3.8兆円、温室効果ガス排出量は978万トン(CO2換算)に達した。
経済損失は国民1人当たり年間3万1,097円2024年度の経済損失を国民1人当たりに換算すると、年間3万1,097円となる。食品ロス量の37kgと合わせて考えると、食べられる食品を捨てることが、家計や企業活動に無視できない負担を生んでいることが分かる。
2023年度の推計では経済損失は4.0兆円、1人当たり年間3万1,814円だった。2024年度は3.8兆円となり、推計上は減少している。ただし、この金額は食品ロスの削減による経済的な利益が、そのまま全額家計に還元されるという意味ではない。事業部門と家庭部門を合算した社会全体の損失額である。
温室効果ガス排出量は978万トン食品ロスは気候変動にも関係している。食品を生産するには、農地、水、肥料、燃料、電力などが必要になる。加えて、加工・冷蔵・輸送・販売・廃棄の各段階でもエネルギーが消費される。
2024年度の食品ロスによる温室効果ガス排出量は978万トン(CO2換算)。国民1人当たりでは年間79kgに相当する。2023年度の1,050万トン、1人当たり84kgと比べても減少している。
2024年度の食品ロスによる社会的損失3.8兆円

経済損失の合計
1人当たり31,097円/年978万t
温室効果ガス排出量
1人当たり79kg-CO2/年
出典:消費者庁「2024年度食品ロスによる経済損失及び温室効果ガス排出量の推計結果」。1人当たりの数値は2024年10月1日時点の人口に基づく。
ここで見落としてはならないのが、食品ロスの削減は廃棄物処理の問題だけではないという点だ。まだ食べられる食品を必要な人に届けることができれば、食料資源の有効活用と経済的な無駄の抑制を同時に進められる。
【2030年度の削減目標】家庭系50%減、事業系60%減の達成状況
日本政府は食品ロス削減に向けて、2000年度を基準とした2030年度の削減目標を設定している。注目すべきは、家庭系と事業系で目標の削減率が異なることだ。
2025年3月25日に閣議決定された「第2次食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」では、家庭系食品ロスは2000年度比50%削減、事業系食品ロスは60%削減と定められた。
家庭系食品ロスの目標は216万トン家庭系食品ロスは2000年度の433万トンを基準とし、2030年度までに216万トンへ減らすことが目標となっている。
2024年度の実績は224万トン。2000年度と比べて約48%減少しているが、目標までは約8万トンの削減が必要だ。
家庭系は前年度から9万トン減少しており、削減の方向性は良好だ。ただし、現在のペースを維持できるか、さらに改善できるかが焦点となる。
事業系食品ロスの目標は219万トン事業系食品ロスは2000年度に547万トン発生していた。従来は2030年度までに50%減らす目標だったが、2022年度の推計で目標を8年前倒しで達成した。
そのため、政府は2025年3月の基本方針見直しに伴い、事業系の削減目標を50%から60%へ引き上げた。新しい目標は219万トンである。
2024年度の実績は237万トン。2000年度比では約57%減少しているものの、新目標までは18万トンの削減が必要となる。前年度から6万トン増加した点も踏まえると、今後の対策には課題が残る。
2030年度までに必要な削減量
目標達成までの残りの削減量
家庭系あと8万トン
224万トン → 216万トン
事業系あと18万トン
237万トン → 219万トン
2024年度実績と2030年度目標の差。進捗率ではなく、目標値に対する現在の数量を視覚化したもの。
家庭系は削減が進んでいる一方、事業系は新しい目標に対する改善が必要だ。今後は消費者への啓発だけでなく、製造・流通・小売・外食の各段階で、廃棄そのものを生み出さない仕組みを構築することが求められる。
【法律と削減対策】食品ロス削減推進法・食品リサイクル法の役割
日本の食品ロス削減政策は、主に食品ロス削減推進法と食品リサイクル法という2つの法律によって支えられている。どちらも食品の無駄を減らすことに関係するが、目的と役割には違いがある。
食品ロス削減推進法とは?正式名称は「食品ロスの削減の推進に関する法律」。2019年5月31日に公布され、同年10月1日に施行された。
この法律は、国や地方公共団体、食品関連事業者、消費者など、それぞれの責務や役割を明確にし、社会全体で食品ロス削減を進めることを目的としている。
主な取組は次のとおりだ。
- 食品ロス問題に関する教育・啓発活動
- 消費者による買い過ぎや食べ残しの防止
- 食品関連事業者の削減活動への支援
- フードバンクや食品寄附の促進
- 地方公共団体による食品ロス削減推進計画の策定
また、毎年10月は食品ロス削減月間、10月30日は食品ロス削減の日とされている。消費者庁を中心に、食品を無駄にしない生活習慣の普及が進められている。
食品リサイクル法とは?食品リサイクル法は、食品関連事業者から発生する食品廃棄物などについて、発生抑制と再生利用を促進するための法律だ。
食品ロス削減推進法が国民運動としての削減を幅広く進めるのに対し、食品リサイクル法は食品産業における廃棄物の発生抑制や再生利用の仕組みに重点を置いている。
具体的には、食品廃棄物の発生抑制、飼料・肥料などへの再生利用、事業者による定期報告などが関係する。農林水産省は食品関連事業者に対し、廃棄物の発生量を把握し、削減に取り組むよう促している。
2025年以降の政策で注目される取り組み2025年3月25日に閣議決定された第2次基本方針では、食品ロス削減目標の見直しに加え、食品寄附や関係事業者間の連携を含む対策が重視された。
2026年には、環境省が外食時の食べ残しを持ち帰る「mottECO(モッテコ)」の導入支援を進めている。食べ残しをそのまま廃棄するのではなく、衛生面に配慮したうえで持ち帰る選択肢を広げる取り組みだ。
また、食品メーカーや流通事業者に対しては、納品期限の緩和、賞味期限の延長、未利用食品の寄附促進などが推進されている。消費者庁、農林水産省、環境省がそれぞれの所管分野から連携する体制が整えられている。
【実践できる削減方法】家庭・企業が取り組むべき対策
食品ロス削減を進めるには、発生した食品をリサイクルするだけでなく、最初から廃棄を発生させないことが基本となる。家庭と企業では実行できる対策が違うため、それぞれの立場に合わせた改善が必要だ。
家庭でできる食品ロス削減5つの方法
買い物前に冷蔵庫の在庫を確認する
同じ食材を重複して購入することを防ぎ、使い忘れによる直接廃棄を減らせる。
必要な量だけ購入する
家族の人数や食事の予定に合わせて購入量を調整する。まとめ買いが必ずしも節約になるとは限らない。
食品の保存方法を見直す
冷蔵・冷凍保存を適切に使い分け、傷みやすい食品から優先して使う。
食材を使い切る献立を考える
余った野菜や肉を別の料理に活用し、食材の使い残しを減らす。
食べ切れる量を調理・注文する
料理を作り過ぎず、外食でも自分が食べられる量を注文する。
食品ロス削減で特に大切なのが、賞味期限と消費期限の違いを理解することだ。
賞味期限は、定められた保存方法で保管した場合に、おいしく食べられる期限を示す。一方、消費期限は、安全に食べられる期限を示すもので、傷みやすい食品などに表示される。
賞味期限を過ぎた食品が直ちに食べられなくなるわけではない。ただし、いずれの期限も未開封で表示された保存方法を守った場合を前提としている。開封後や保存状態が適切でない場合は、期限にかかわらず安全性を慎重に判断する必要がある。
期限表示の意味を正しく理解することは、まだ食べられる食品を不要に捨てないための基本となる。
企業が取り組むべき食品ロス削減策企業では、需要予測の精度向上や生産計画の見直しが重要だ。販売量を適切に予測できれば、過剰生産や売れ残りを抑えられる。
農林水産省が推進する代表的な対策には、次のようなものがある。
- 納品期限の緩和: いわゆる3分の1ルールなどの商慣習を見直し、納品期限切れによる返品や廃棄を減らす。
- 賞味期限の延長: 製造技術や包装技術を改善し、食品の品質を保てる期間を延ばす。
- 年月表示への変更: 日単位ではなく年月単位の表示を活用し、流通・在庫管理を効率化する。
- 食品寄附の促進: 販売が難しくなった未利用食品を、品質・安全性を確認したうえで必要とする人や団体に届ける。
- 製造工程の改善: 仕込み量や生産量を適正化し、規格外品や製造ミスによる廃棄を減らす。
- 外食時の食べ切り推進: 適量注文やmottECOなどを通じ、飲食店の食べ残しを減らす。
特に食品製造業は2024年度に110万トンと事業系で最大の発生源となっている。食品メーカーが生産計画を改善することは、国内全体の食品ロス削減に大きく寄与する可能性がある。
【プロの結論】食品ロス削減は「捨てる前」から始める食品ロス削減の成果を評価するとき、単純に廃棄物の再利用量だけを見るのは十分ではない。最も効果的なのは、食べられる食品が廃棄物になる前に、その発生自体を防ぐことだ。
例えば、家庭なら購入量と消費量を合わせる。食品メーカーなら生産量と需要予測を一致させる。小売業なら納品期限や在庫管理を見直す。外食産業なら適量提供と食べ残し対策を進める。それぞれの段階で発生源を減らすことが、持続的な改善につながる。
また、消費者だけに責任を求める考え方にも限界がある。食品の規格、納品期限、販売方法などは企業間の取引慣行と密接に関係している。消費者の意識改革と同時に、企業が廃棄を生み出しにくい仕組みを整えることが欠かせない。
2024年度の461万トンという数字は、これまでの削減努力の成果を示す一方、家庭系と事業系で異なる課題が残っていることも明らかにしている。
【食品ロス量日本】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本の食品ロス量は2024年度に何万トンですか?
A1:農林水産省と環境省の推計によると、2024年度の日本の食品ロス量は461万トンです。前年度の464万トンから3万トン減少しました。
Q2:家庭系食品ロスと事業系食品ロスはそれぞれ何万トンですか?
A2:家庭系食品ロスは224万トン、事業系食品ロスは237万トンです。家庭系は前年度から9万トン減少し、事業系は6万トン増加しました。
Q3:日本人1人当たりの食品ロス量は年間何kgですか?
A3:年間約37kgです。1日当たりでは約102gに相当し、おにぎり1個程度の食品が毎日捨てられている計算になります。
Q4:食品ロスが最も多い業種はどこですか?
A4:2024年度の事業系食品ロスでは食品製造業が最も多く、110万トンです。次いで外食産業70万トン、食品小売業48万トン、食品卸売業9万トンとなっています。
Q5:食品ロスの主な発生原因は何ですか?
A5:家庭では食べ残し、直接廃棄、過剰除去が主な原因です。事業者では製造工程のロス、規格外品、返品、売れ残り、飲食店の食べ残しなどが挙げられます。
Q6:日本の食品ロス削減目標は2030年度までに何%ですか?
A6:家庭系は2000年度比50%削減、事業系は60%削減です。目標量は家庭系216万トン、事業系219万トンです。事業系は従来の50%削減目標を早期に達成したため、60%削減へ引き上げられました。
Q7:食品ロスによる経済損失と温室効果ガス排出量はどれくらいですか?
A7:2024年度の推計では、経済損失が3.8兆円、温室効果ガス排出量が978万トン(CO2換算)です。国民1人当たりでは、年間31,097円の経済損失と79kgのCO2排出量に相当します。
Q8:食品ロス削減のために家庭で最初にできることは何ですか?
A8:買い物前に冷蔵庫や食品庫の在庫を確認し、必要な分だけ購入することです。食材の使い忘れや買い過ぎを防ぎ、直接廃棄の削減につながります。
2026年6月30日に公表された最新の2024年度推計によると、日本の食品ロス量は461万トンだった。前年度から3万トン減少したものの、内訳では家庭系が224万トン、事業系が237万トンとなり、事業系食品ロスの増加が新たな課題として浮かび上がった。
日本全体では2000年度の980万トンから約53%の削減を実現している。しかし、2030年度の目標である家庭系216万トン、事業系219万トンには、まだ到達していない。
経済損失3.8兆円、温室効果ガス排出量978万トンという数字からも、食品ロスは家計、企業経営、環境政策にまたがる問題だと分かる。
今後の削減を左右するのは、家庭での買い過ぎや食べ残しを防ぐ取り組みだけではない。食品製造業の生産管理、流通の納品期限、スーパーの販売方法、外食産業の適量提供など、食品が消費者に届くまでの仕組みを変えることが重要になる。
食品ロス削減を評価する際は、総量だけでなく、家庭系と事業系の内訳、業種別の変化、2030年度目標までの距離を合わせて確認したい。日本が次の削減段階へ進めるかどうかは、消費者と企業がそれぞれの役割を果たし、食品を捨てない仕組みを社会全体で定着させられるかにかかっている。
2024年度の461万トンは、削減の成果であると同時に、2030年度へ向けた新たな課題を示す数字でもある。