本人の様子を心配する家族にとって、最も難しいのが日常的な接し方だ。
早く社会復帰してほしい、仕事を見つけてほしいという気持ちは自然なものだが、焦りから強い言葉をかけると、本人がさらに追い詰められる可能性がある。
厚生労働省が2025年1月に公表した「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~」では、本人の意思やペースを尊重し、信頼関係を築きながら支援することが重視されている。
避けたい声かけと望ましい声かけ| 避けたい言葉 | 望ましい声かけ |
|---|---|
| いつになったら働くの? | 今、何か困っていることはある? |
| いつまで家にいるつもり? | 無理に話さなくても大丈夫だよ |
| みんな頑張っているのに | これまで大変だったね |
| 甘えていないで外に出なさい | 外に出なくてもできることから考えよう |
| 親に迷惑をかけないで | 一緒に相談できる人を探してみない? |
大切なのは、本人の状態を否定せず、安心して会話できる関係を維持することだ。
家族が実践したい5つの対応1. 本人の話を最後まで聞く
すぐに解決策を提示するのではなく、まず本人の気持ちを受け止める。本人が話したくない場合は、無理に聞き出そうとしない。
2. 就職や外出を最初の目標にしない
生活リズムの改善、食事、短い会話など、小さな変化を大切にする。社会復帰だけを成功の基準にすると、本人にも家族にも大きな負担がかかる。
3. 家族だけで抱え込まない
本人が相談を拒否していても、家族が先にひきこもり地域支援センターへ相談することはできる。本人への直接的な働きかけを始める前に、家族自身が専門家から対応方法を学ぶことも有効だ。
4. 本人の安心できる環境を守る
本人の同意なく突然訪問したり、無理やり外出させたりすることは避けたい。厚生労働省のハンドブックでも、訪問支援では本人の拒否の有無を確認し、信頼関係を損なわない配慮が求められている。
5. 自殺を疑う発言を軽視しない
「消えてしまいたい」「生きていても意味がない」「もう疲れた」といった発言があれば、単なる愚痴として片付けない。
落ち着いて話を聞き、本人の安全を優先して専門機関につなぐことが大切だ。差し迫った危険がある場合は、相談予約を待たずに119番で救急対応を求める。
【2026年最新】引きこもり自殺を防ぐ支援制度と相談窓口

2026年現在、ひきこもり支援は就職支援だけでなく、本人の生活、家族関係、居場所づくり、精神保健、経済的な問題などを総合的に扱う方向に進んでいる。
ひきこもり地域支援センターとは?ひきこもり地域支援センターは、都道府県や指定都市などに設置されている専門相談窓口だ。
社会福祉士、精神保健福祉士、保健師、公認心理師などの専門資格を持つ支援コーディネーターが、本人や家族からの相談を受け付ける。
主な支援内容は次のとおり。
- 本人や家族からの相談受付
- 精神保健福祉センターや医療機関との連携
- 家族向けの相談や支援
- 居場所づくりや社会との接点の確保
- 地域の福祉・就労支援機関への紹介
本人が外出できない場合や、相談窓口に出向くことが難しい場合も、まず家族から相談して支援方法を検討できる。
2026年に押さえておきたい自治体支援の状況厚生労働省の公表資料によると、2025年度のひきこもり支援事業には、次のような実施状況がある。
| 支援制度 | 2025年度の実施状況 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 都道府県・指定都市の地域支援センター | 67自治体 | 専門的な相談支援 |
| 市町村の地域支援センター | 47自治体 | 身近な地域での相談 |
| ひきこもり支援ステーション事業 | 129自治体 | 相談・居場所・連携 |
| ひきこもりサポート事業 | 164自治体 | 地域の実情に応じた支援 |
特に注目したいのが、ひきこもり支援ステーション事業だ。
相談窓口を設置するだけでなく、本人が安心して過ごせる居場所づくりや、医療・福祉・地域団体とのネットワークづくりを一体的に進めている。
また、2025年7月1日には、厚生労働省のひきこもり支援ポータルサイト「ひきこもりVOICE STATION」がリニューアルされた。全国の相談窓口、イベント、当事者や家族の経験などを知るための情報拠点となっている。
生活困窮者自立支援制度も利用できる引きこもり状態が長期化し、収入や住居、家計に問題が生じている場合は、生活困窮者自立支援制度も選択肢になる。
この制度は、単に就職先を紹介するだけのものではない。
- 自立相談支援事業: 本人の状況に合わせた支援計画の作成
- 住居確保給付金: 一定の要件を満たす人への家賃相当額の支給
- 就労準備支援事業: すぐに一般就労することが難しい人への段階的支援
- 家計改善支援事業: 家計の整理や生活再建に向けた相談
- 就労訓練事業: 個人の状況に応じた柔軟な働き方の支援
働くことに不安がある人でも、生活全般の困りごとから相談を始められる。
制度の利用条件や実施内容は自治体によって異なるため、地域の自立相談支援機関で確認したい。
自殺予防の相談窓口一覧本人が自分から相談できない場合は、家族や友人が相談する方法もある。
特に、電話が苦手な人にはSNSやチャット相談も選択肢になる。
#いのちSOS0120-061-338
自殺対策支援センターライフリンク
「死にたい」「消えたい」といった気持ちを専門の相談員に話せる窓口。状況に応じた支援も一緒に考える。
よりそいホットライン0120-279-338
一般社団法人社会的包摂サポートセンター
生活の悩みや人間関係、心の問題など幅広い相談に対応。外国語による相談も選択できる。
こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556
厚生労働省が案内する公的相談窓口
電話をかけた地域の都道府県・政令指定都市の公的な相談機関につながる。受付時間は地域によって異なり、通話料がかかる。
あなたのいばしょ
年齢や性別を問わず利用できるチャット相談。電話で話すことが難しい人にも利用しやすい窓口。
出典:厚生労働省「電話相談」「SNS相談」。受付状況や対応時間は変更される場合がある。
IP電話から利用できない番号もあるため、利用条件を事前に確認したい。
本人が今すぐ自分を傷つけるおそれがある、具体的な危険が迫っている、安否が確認できず生命の危険が疑われる場合は、相談窓口の通常受付を待たず、日本国内では119番(救急)または必要に応じて110番に連絡する。
【引きこもり自殺に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:引きこもりの人は自殺リスクが高いのでしょうか?
引きこもり状態だけで自殺リスクを判断することはできない。ただし、うつ病などの精神的不調、孤独感、親子関係の不和、経済的不安などが重なる場合は注意が必要だ。本人の言動や心身の変化を丁寧に確認することが大切になる。
Q2:2025年の自殺者数のうち、引きこもりの人は何人ですか?
2025年の全国自殺者数は1万9,188人だが、その全体について引きこもり状態の人だけを切り出した人数は、同白書の公表値からは確認できない。別の公的分析では、2022~2024年の15~29歳の若年自殺者について、ひきこもりに該当する無職者区分の詳細が公表されている。
Q3:引きこもりの本人が相談を拒否した場合、家族だけでも相談できますか?
相談できる。ひきこもり地域支援センターでは家族からの相談も受け付けている。本人を無理に連れて行く必要はなく、まず家族が専門家に接し方や支援方法を相談することから始められる。
Q4:引きこもりの人に精神疾患があるとは限らないのでしょうか?
そのとおりだ。引きこもりの背景は多様で、病気や障害がある人もいれば、人間関係や社会環境による生きづらさを抱えている人もいる。状態を一律に病気と判断せず、必要に応じて医療・福祉の専門家に相談することが大切だ。
2026年の「令和8年版自殺対策白書」が示した2025年の自殺者数は1万9,188人。統計開始以来初めて2万人を下回った一方、若年層を中心に引き続き深刻な課題が残っている。
引きこもりと自殺の関連については、若年自殺者の詳細分析から、うつ病やその他の精神疾患、親子関係の不和、孤独感、就職失敗などの要素が確認できる。これらは単独で作用するとは限らず、複数の問題が重なり合うことがある。
【プロの結論】
引きこもり支援で最も大切なのは、本人を早く社会復帰させることだけを目標にしないことだ。
本人が安心して暮らせる環境を整え、信頼できる人とのつながりを少しずつ取り戻し、必要なときに専門家の支援を受けられる状態をつくることが、自殺予防にもつながる。
家族だけで問題を解決しようとする必要はない。本人が相談を拒んでいても、家族から支援機関に相談することはできる。精神的な不調が疑われる場合には、医療機関や精神保健福祉センターとの連携も検討したい。
引きこもりは、本人の人生が終わったことを意味しない。就労や外出だけを回復の基準にせず、安心できる居場所と本人の意思を尊重する支援を広げることが、孤立を防ぐための現実的な一歩となる。