「フクとマリモ」と検索すると、フクロウと猫の仲良しコンビ、そして富士五湖に生息する珍しい藻類「フジマリモ」という、名前の似た2つの情報が見つかります。実は、この2つはまったく別の存在です。フクとマリモは大阪のカフェで話題になったフクロウと子猫のコンビであり、フジマリモは1956年に山中湖で発見された貴重な淡水藻類です。
一方、フジマリモにも興味深い歴史があります。山梨県の天然記念物指定、野生個体の激減、2021年に明らかになったタテヤママリモとの関係、さらに2024年度の最新生息調査では、群落の大幅な衰退も報告されています。2026年時点の情報をもとに、それぞれの正体と関係、発見から現在までの経緯を整理します。
【正体】フクとマリモは何者?話題になったフクロウと子猫のコンビ

「フクとマリモ」の正体は、大阪市北区中崎町にあったカフェ「HUKULOU COFFEE」で暮らしていたフクロウと猫です。
2匹は2015年にSNSを通じて注目され、異なる動物同士が仲良く過ごす姿が国内外で話題になりました。
フクの正体はコキンメフクロウフクは、HUKULOU COFFEEの看板フクロウとして知られていたコキンメフクロウです。
店舗の運営者が公開している公式サイトでも「フク社長」と紹介されています。
小柄な体と特徴的な丸い目が印象的で、猫のマリモと一緒に過ごす姿が人気を集めました。
マリモの正体は子猫一方のマリモは、2015年6月下旬にHUKULOU COFFEEにやってきた子猫です。
フクとの初対面から仲良くなり、じゃれ合ったり、寄り添ったりする姿が撮影されました。
特に、2匹がキスをしているように見える写真はSNSで注目され、国内外のメディアにも取り上げられました。
写真集『フクとマリモ』も発売
写真集『フクとマリモ』
- 著者:五十嵐健太
- 監修:HUKULOU COFFEE 永原律子
- 発売日:2015年9月26日
- 出版社:KADOKAWA
- ISBN:9784048947398
- ページ数:72ページ
写真集には、フクとマリモの愛らしい姿だけでなく、出会いの経緯を紹介するダイアリーコラムも収録されています。
出版社のKADOKAWA公式商品情報でも、2匹は種を超えた友情を育むコンビとして紹介されています。
【関係】フクとマリモは恋人?親子?現在の様子も調査
フクとマリモの関係について気になるのが、2匹がどのような関係だったのかという点です。
結論からいえば、2匹は血縁関係のある親子や兄弟ではなく、同じカフェで暮らしていたフクロウと猫です。
種類の違う動物が仲良くなった理由フクとマリモが注目された最大の理由は、通常は同じ種類ではない動物同士が親密に接しているように見えることでした。
写真集や店舗側の紹介では、2匹がじゃれ合う姿や、寄り添って過ごす様子が取り上げられています。
ただし、写真に写った行動だけで、動物が人間と同じ意味で友情や愛情を理解していたと断定することはできません。
それでも、異なる種類の動物が同じ生活空間で過ごし、互いに接していた姿には、多くの人が魅力を感じました。
2026年現在、フクとマリモはどうしている?気になる現在の状況については、HUKULOU COFFEEの運営者が公開している公式サイトに情報があります。
同サイトでは、2023年のゴールデンウイークから予定していた再開が、動物の世話を担当するスタッフの大けがによって延期されたと説明されています。
加えて、フクとマリモについては、現在も元気である旨が掲載されています。
一方、猫カフェと喫茶の営業は休業中と案内されています。つまり、2匹の近況と店舗の営業状況は分けて考える必要があります。
【混同注意】フクとマリモと富士五湖のフジマリモは関係がある?
ここで、もう一つの重要な疑問を整理します。
「フクとマリモ」と「フジマリモ」は、名前にマリモという共通語が入っていますが、両者に直接的な関係はありません。
フクとマリモ
- フク:コキンメフクロウ
- マリモ:猫
- 大阪のHUKULOU COFFEEで話題になった存在
フジマリモ(富士毬藻)
- 富士五湖に生育するマリモ類の地域名
- 1956年に山中湖で発見
- 山梨県指定天然記念物
フクとマリモは動物の名前であり、フジマリモは水中で生育する藻類です。
この違いを理解しておくと、検索結果に表示される写真集や動物関連の情報と、山中湖の自然環境・生物学に関する情報を混同せずに済みます。
なお、フジマリモという名称には、分類学上の変遷があります。かつて独立した変種として記載されたものの、その後のDNA解析によって、阿寒湖のマリモと同じ種に属することが明らかになってきました。
この分類上の変化が、フジマリモを理解するうえで要点です。
【発見から現在まで】フジマリモの歴史と重要な出来事を時系列で整理
フジマリモの歴史は、1956年の山中湖での発見から始まります。
当時、マリモといえば北海道の阿寒湖というイメージが強く、富士山のふもとに位置する山中湖で発見されたことは、植物分布学上も注目される出来事でした。
山中湖村教育委員会と国立科学博物館の調査報告書、山梨県の文化財データベースなどを整理すると、次のようになります。
フジマリモ発見から2026年までの年表フジマリモの発見には、地域の学校教育が関係しています。
山中湖村の杉浦忠睦氏は、阿寒湖のマリモに関する報道をきっかけに、山中湖の環境とマリモの生育可能性に注目しました。
そして、児童や漁師に協力を求めて調査を進めた結果、1956年4月に小学校6年生の坂本晋吾さんが丸い緑色の藻を発見しました。
山中湖村の詳細な調査報告書によれば、4月16日に発見の知らせがあり、翌17日に約50個を採集しています。
一方、山中湖村役場の指定文化財紹介ページでは4月18日を発見日として記録しています。資料によって日付の記載には違いがありますが、1956年4月の発見という歴史的事実は共通しています。
その後、東京大学の本田正次教授らによる鑑定を経て、1957年には長崎大学の岡田喜一教授が新変種として記載しました。
1958年に山梨県の天然記念物に指定発見から2年後の1958年6月19日、山中湖のフジマリモとその生息地が山梨県の天然記念物に指定されました。
その後、河口湖と西湖でも発見され、1993年11月29日に3湖を対象として改めて指定されています。
指定名称は「フジマリモ及び生息地」です。
ここで注意したいのは、天然記念物の指定対象が富士五湖すべてではないことです。精進湖と本栖湖の生育確認は、後年の学術調査によるものです。
【生息地】フジマリモは富士五湖のどこにいる?5つの湖を比較
フジマリモは、山中湖だけでなく富士五湖の複数の湖で確認されています。
ただし、湖によって確認された時期や調査方法が異なります。
山中湖:最初の発見地山中湖は1956年にフジマリモが発見された場所です。
発見当初は湖岸付近に多く生育し、台風などの際には球状の個体が湖岸に打ち上げられることもあったと記録されています。
現在は生育量が減少し、特に保全が必要な場所となっています。
河口湖:1971年に発見河口湖では山中湖に続いてフジマリモが確認されました。
山梨県の文化財データベースは1971年の発見を記録しています。
また、1979年には大量に打ち上げられた記録があり、その後の調査で生育範囲や生育量の減少が報告されています。
西湖:1993年に発見西湖では1993年にフジマリモの生育が確認されました。
山中湖や河口湖とともに県天然記念物の指定対象に加えられています。
精進湖:2012年に確認2015年に発表された学術論文では、2012年6月に精進湖の水深2~5mでマリモ属に似た糸状緑藻が発見されました。
顕微鏡観察とDNA配列の分析などから、フジマリモと同定されています。
本栖湖:2013年に確認本栖湖では2013年11月、水深17~22mでフジマリモと同定される藻類が確認されました。
こちらも精進湖と同様に、潜水調査と顕微鏡観察などによる学術的な確認です。
この2湖の発見によって、富士五湖全体におけるマリモ類の分布を考えるうえで重要な知見が得られました。
【激減の現状】フジマリモは絶滅した?2024年度調査で判明した深刻な状況
フジマリモについて、現在もっとも懸念されているのが山中湖における野生群落の衰退です。
かつて湖岸で普通に見られた球状のマリモは、湖の環境変化などによって大幅に減少しました。
しかし、2024年度の調査では、野生個体が完全に消失したわけではないことも確認されています。
2024年度の潜水調査で何が分かった?国立科学博物館と山中湖村教育委員会が共同で実施した2024年度の調査は、3回目となる山中湖の潜水調査です。
調査は2024年11月13日と14日に実施されました。
その結果、次のような状況が報告されています。
- 採集物はマリモ類など合計42サンプル。
- 23サンプルを国立科学博物館の標本として収蔵。
- 17サンプルについて遺伝子解析を実施。
- 石の表面に付着したマリモは、前回より糸状体が短い傾向。
- 球状化した個体も小型化し、生育量が減少。
- 群落面積は前回調査の半分以下になっている可能性が高い。
- 一部の調査地点ではマリモが確認できなかった。
特に重要なのは、単に見つかる数が減っただけではなく、群落そのものの規模も小さくなっている可能性が示された点です。
激減の原因は水質悪化だけではないフジマリモの衰退について、過去には観光開発や湖底環境の悪化などが問題として指摘されていました。
ところが、2024年度の調査報告書では、現在の状況を水質悪化だけで説明することは難しいとされています。
注目されているのが水温の上昇です。
山中湖周辺の環境変化
夏期の湖水温・過去50年間約4℃上昇
2024年度調査報告書による分析
2023年8月の湖畔表層水温26℃超
夏季の気温・過去45年間約3.5℃上昇
出典:山中湖フジマリモ生息調査(令和6年度実施)報告書
調査報告書では、水温上昇がマリモに直接影響するだけでなく、シアノバクテリアなどの競合生物を増やし、生育環境を悪化させている可能性を指摘しています。
また、冬季の結氷の減少や湖底への湧水供給の減少も、考えられる要因として挙げられています。
一方、透明度や化学的酸素要求量(COD)には長期的な明確な悪化傾向が認められず、水質だけが衰退の原因だとは断定できません。
つまり、現在のフジマリモの問題は、湖の水温、競合する藻類、冬季の環境、湧水などが複合的に関係している可能性があるのです。
2026年現在の保全活動と課題野生個体の減少を受け、山中湖村と国立科学博物館は、湖の外でマリモ類を維持する域外保全にも取り組んできました。
しかし、2024年度調査報告書では、長年栽培されてきた亀田マリモについても、管理体制上の問題が指摘されています。
具体的には、山中湖交流プラザ「きらら」で栽培されていた個体の多くが、組織改編などの影響で失われてしまったこと、さらに2026年には別のマリモが一部混入していたことが確認されています。
今後は、異なる種類のマリモが混ざらないように管理しながら、安定的に増殖できる体制を整える必要があります。
報告書では、次回の潜水調査を2029年度に実施することが妥当と提言しています。
【見分け方】フジマリモと阿寒湖のマリモ、タテヤママリモは何が違う?
フジマリモを調べる際に、最も混乱しやすいのが阿寒湖のマリモとタテヤママリモとの関係です。
かつては見た目を中心に分類されていたため、異なる種類が同じマリモとして扱われることもありました。
現在はDNA解析によって、分類の見直しが進んでいます。
1. フジマリモと阿寒湖のマリモ一般に知られている阿寒湖のマリモと、山中湖の野生マリモは、同じ生物種に属します。
1957年にはフジマリモが別の変種として記載されましたが、その後の遺伝子解析によって、従来の分類を再検討する必要が生じました。
2024年度の山中湖調査でも、野生のマリモの遺伝子は、北海道に分布するマリモの系統に含まれることが確認されています。
したがって、フジマリモを阿寒湖のマリモとは完全に別の生物種と考えるのは正確ではありません。
2. タテヤママリモは別属の生物タテヤママリモは、阿寒湖タイプのマリモとは異なる分類群です。
学名は Aegagropilopsis moravica とされています。
国立科学博物館の調査では、山中湖から採集され、亀田良成氏によって長期間栽培されていた株が、DNA解析によってタテヤママリモと一致することが判明しました。
この結果は、山中湖に少なくとも2種類のマリモ類が存在していた可能性を示す重要な発見です。
また、富山大学などの研究者による2025年の査読付き論文でも、タテヤママリモとAegagropilopsis moravicaの形態的・遺伝的な関係が検討されています。ただし、分類学上のさらなる検討が必要とされています。
3. 2021年に明らかになった重要な違い2021年3月に公開された山中湖村教育委員会・国立科学博物館の調査報告書では、山中湖のマリモ類について重要な結果がまとめられました。
それまで東京の民家で長期間育てられていた株は、山中湖由来であることが採集記録などから確認されていました。
しかし、DNA解析を行うと、その株は阿寒湖タイプのマリモではなく、タテヤママリモと遺伝的に一致していたのです。
一方、山中湖で実際に採集された野生のマリモは阿寒湖タイプでした。
この違いによって、従来ひとまとめにされていたフジマリモの中に、異なる種類のマリモ類が含まれていたことが分かりました。
4. 見た目だけで種類を判別できる?ここは注意が必要です。
国立科学博物館によると、マリモとタテヤママリモは、顕微鏡で観察しても明確な違いを判断しにくい場合があります。
タテヤママリモは比較的柔らかく、形がやや不規則という特徴がありますが、見た目だけで確実に分類できるわけではありません。
正確な判別には、形態観察に加えて遺伝子解析が必要です。
5. 旧学名と現在の分類上の注意点1957年にフジマリモが記載された際の学名は、次のとおりです。
フジマリモの歴史的な学名
Aegagropila sauteri var. yamanakaensis
現在のマリモの学名
Aegagropila brownii
Guiry & Frödén(2023)による学名の再検討を反映した国立科学博物館の2024年度報告書での扱い。
2024年度報告書では、「フジマリモ」は独立した生物学的分類群ではなく、山中湖のマリモとタテヤママリモを含めた地域名として整理されています。
このため、古い資料に記載された学名と現在の分類を、そのまま同一視しないことが大切です。
【プロの結論】フクとマリモを調べる際に知っておきたい3つのポイント
今回の情報を整理すると、検索キーワードには大きく3つの異なるテーマが含まれています。
第一に、フクとマリモは動物のコンビです。
大阪のHUKULOU COFFEEで話題になったフクロウと子猫であり、2015年の写真集によって広く知られるようになりました。
第二に、フジマリモは富士五湖の自然史に関わる貴重な藻類です。
1956年の発見、1958年の天然記念物指定、1993年の指定対象拡大という歴史を持ちます。
第三に、フジマリモの分類は2021年以降も見直されています。
特に、長期栽培された株がタテヤママリモと判明したことは、地域のマリモ類を一括りにできないことを示す重要な研究成果です。
また、2024年度の調査で野生群落の衰退が明らかになったことから、今後は生息地の保護と域外保全の両方が必要になります。
読者が情報を判断するときには、次の基準を意識すると混乱を防げます。
- 動物の写真や写真集を探しているなら、HUKULOU COFFEEのフクとマリモ。
- 富士五湖の自然や天然記念物を調べたいなら、フジマリモ。
- 生物学的な違いを知りたいなら、阿寒湖タイプのマリモとタテヤママリモの分類を確認する。
- 現在の生息状況を知りたいなら、国立科学博物館と山中湖村教育委員会の調査報告書を優先する。
【フクとマリモ・フジマリモ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:フクとマリモの正体は何ですか?
A1:大阪のHUKULOU COFFEEで話題になったコキンメフクロウのフクと子猫のマリモです。2015年にSNSで人気となり、同年9月にはKADOKAWAから写真集が発売されました。
Q2:フクとマリモと富士五湖のフジマリモには関係がありますか?
A2:直接的な関係はありません。フクとマリモはフクロウと猫の名前で、フジマリモは富士五湖に生育するマリモ類の地域名です。名前が似ているだけです。
Q3:フジマリモは現在も山中湖に生息していますか?
A3:はい。2024年度の潜水調査では、山中湖の湖底に野生のマリモが確認されています。ただし、群落面積は前回調査の半分以下になった可能性が高く、厳しい状況が続いています。
Q4:フジマリモは阿寒湖のマリモとは別の種類ですか?
A4:山中湖の野生個体については、阿寒湖タイプのマリモと同じ生物種に属するとされています。一方、長期栽培されていた亀田マリモは、タテヤママリモと判明しています。
Q5:フジマリモが発見されたのは何年ですか?
A5:1956年です。山中湖村の小学生による発見がきっかけとなり、1957年に新変種として記載され、1958年6月19日に山梨県の天然記念物に指定されました。
Q6:フジマリモは富士五湖すべてで確認されていますか?
A6:学術論文では、山中湖、河口湖、西湖に加えて、精進湖と本栖湖でも生育が確認されています。ただし、山梨県の天然記念物の指定対象は山中湖・河口湖・西湖の3湖です。
「フクとマリモ」という名前の背景には、2つの異なる物語があります。
一つは、フクロウのフクと子猫のマリモが育んだ、種を超えた交流の物語です。2015年に写真集が発売され、現在もHUKULOU COFFEEの公式サイトで2匹の元気な様子が紹介されています。
もう一つは、1956年に山中湖で発見されたフジマリモの物語です。天然記念物に指定された後、野生群落は大幅に減少しましたが、研究者による調査と保全活動が続いています。
特に重要なのは、2021年に判明したタテヤママリモとの違いと、2024年度調査で示された野生群落の衰退です。
2026年現在、フジマリモの保全は単に希少な藻類を守るだけでなく、湖の水温や生態系の変化、地域の自然環境を次世代に引き継ぐ取り組みでもあります。
名前の似ている2つの存在を正しく区別したうえで、それぞれの歴史や現在の状況を知ることが、検索した疑問を解消する第一歩になります。