最初に整理しておきたいのは、「よるドラ」と「夜ドラ」は同じ名称ではないという点です。
NHKの旧「よるドラ」は、2018年度に設置された週1回の連続ドラマ枠です。若い世代に向けた斬新な企画や、既存のテレビドラマでは扱いにくかった題材を積極的に取り上げてきました。
その後、NHKは2022年度の番組改編に合わせて放送形式を変更。2022年4月から、月曜~木曜の毎晩15分間放送する「夜ドラ」へと移行しました。
したがって、2026年現在の状況は次のように整理できます。
- 旧よるドラ:2022年3月21日に終了。
- 新しい夜ドラ:2022年4月に放送開始。
- 2026年:NHK総合の夜ドラ枠は継続中。
旧枠がなくなったからといって、NHKの夜の連続ドラマそのものがなくなったわけではありません。名称と編成を変更しながら、若い世代にも届くドラマを制作するという方向性は引き継がれています。
2022年3月21日の最終回については、NHKの制作に携わったプロデューサー3人がリアルサウンドのインタビューで振り返っています。旧枠の最終作品が『恋せぬふたり』だったことも、当時の番組改編を象徴する出来事でした。
【歴代作品一覧】2018年から2022年までの代表作を年代別に紹介

よるドラの特徴は、作品ごとにジャンルやテーマが大きく異なることです。
ゾンビを題材にしたブラックコメディから、BL文化と性的マイノリティーをめぐる青春ドラマ、地下アイドルを応援するファン心理を描く作品まで、一般的な連続ドラマの枠に収まりにくい企画が並びました。
2018年から2022年までの主な連続ドラマ作品を年代別に整理すると、次のとおりです。
※2018年の『植物男子ベランダー』は、NHK BSプレミアムで過去に放送された作品を再放送したものです。2019年から新しい企画・キャストを起用した作品群が本格化しました。また、上表は旧よるドラ枠の主な連続ドラマ作品をまとめたもので、再放送や単発番組は含めていません。
この作品群の特徴について、2022年3月のリアルサウンドの取材では、NHKの尾崎裕和、上田明子、高橋優香子の各プロデューサーが制作の経緯を語っています。若手の企画者が自分の関心を出発点にして作品を提案する仕組みが、独自性のあるドラマを生み出していました。
特に注目したい代表作4選1. 『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』
2019年1月に放送された作品で、主演は石橋菜津美です。
地方都市にゾンビのような存在が現れ、アラサー女性たちの日常が大きく変化していくというストーリー。単なるホラーではなく、人間関係や社会への不満、生き方への疑問をブラックユーモアで描いています。
プロデューサーの尾崎裕和は、ゾンビという寓話的な題材を通じて社会的なテーマを描こうとした制作背景を明かしています。よるドラの実験精神を象徴する初期の作品です。
2. 『腐女子、うっかりゲイに告る。』
2019年4月放送。金子大地と藤野涼子が出演した青春ドラマです。
BL作品を好む女子高校生と、ゲイであることを抱えながら生活する男子高校生の関係を軸に、恋愛、性的指向、周囲の偏見、自分らしく生きることを描きました。
原作は浅原ナオトの小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』です。作品名からBL作品だと思われることもありますが、物語の中心にあるのは、同性を好きになる男子高校生の葛藤と、他者を理解しようとする人間関係です。
放送当時、尾崎プロデューサーは、作品に込められた切実なテーマに視聴者から反応があったと振り返っています。
3. 『だから私は推しました』
2019年7月放送。桜井ユキ主演、森下佳子脚本の作品です。
主人公の女性が地下アイドルと出会い、応援することを通じて自分自身の人生を見つめ直していきます。
この作品の興味深い点は、アイドルを描くだけではなく、応援する側の孤独や承認欲求、誰かを支えることで得られる居場所まで物語に取り込んでいることです。
制作陣は劇中アイドルの独自SNSアカウントも展開し、ドラマの世界とインターネット上の反応を結び付けました。視聴者が作品の外側でも物語を楽しめる仕掛けが印象的でした。
4. 『いいね!光源氏くん』
2020年4月にスタートした作品で、千葉雄大が光源氏、伊藤沙莉が現代の会社員・沙織を演じました。
平安時代の貴族である光源氏が現代に現れ、現代社会の生活や文化に触れていくという設定が人気を集めました。古典文学をモチーフにしながら、現代的な恋愛コメディーとして楽しめる点が魅力です。
2021年には続編『いいね!光源氏くん し〜ずん2』も制作され、シリーズとしての人気を確立しました。
【放送時間の変遷】土曜23時30分から月曜22時45分へ
よるドラを調べる際に混乱しやすいのが、放送時間の変更です。
2018年の開始当初は土曜深夜の30分枠でした。その後、2021年4月に月曜夜へ移動しています。さらに2022年4月には、後継の夜ドラとして月曜から木曜までの15分枠に変更されました。
この変更は、単なる放送時間の微調整ではありません。1週間に1度、30分の物語をまとめて見る形式から、平日の夜に毎日15分ずつ物語を追いかける形式へと、視聴習慣そのものを変える改編でした。
特に2021年4月の移動は、旧よるドラの作品を理解するうえで重要な転換点です。『きれいのくに』から月曜22時45分の放送となり、『いいね!光源氏くん し〜ずん2』や『古見さんは、コミュ症です。』なども新しい時間帯で放送されました。
【終了理由を検証】なぜNHKはよるドラを夜ドラに改編したのか
「よるドラは人気がなかったから終了したのでは?」という疑問を持つ人もいます。しかし、制作関係者の証言から見えてくるのは、視聴率低迷による単純な打ち切りというより、NHK全体の番組編成を見直す動きの中で実施されたリニューアルだったということです。
改編の議論は2021年から始まっていた2022年3月21日に公開されたリアルサウンドのインタビューで、尾崎裕和プロデューサーは、改編について2021年から局内で議論されていたと説明しています。
その背景には、編成を変えることで幅広い視聴者に番組を届け、新しいNHKらしさを認知してもらいたいという考えがありました。
つまり、旧枠の制作方針を全面否定して終了したわけではなく、これまでとは違う視聴者にも作品を届けるため、枠の仕組みを変更したという理解が適切です。
15分の帯ドラマにした3つの狙い後継の夜ドラには、主に次のような狙いがありました。
1. 若い世代に接触する機会を増やす
テレビだけでなく、配信サービスでもドラマを見る人が増える中、短い時間で気軽に楽しめる作品を提供することが狙いでした。
2. 毎日の視聴習慣をつくる
週1回の放送ではなく、月曜から木曜まで続けて放送することで、次の日も見たくなる習慣を生み出すことが期待されました。朝ドラのような帯編成を夜にも取り入れた形です。
3. 短い時間でも物語を楽しめるようにする
1話15分という構成なら、まとまった時間を確保しにくい視聴者でも作品に触れやすくなります。翌日の放送を楽しみにできる連続性も特徴です。
2022年2月9日のNHK放送総局長会見で発表された新年度編成では、夜ドラ第1作として青春ミステリー『卒業タイムリミット』が発表されました。放送開始日は同年4月4日です。
よるドラと夜ドラの違いを比較両者はNHKの夜の連続ドラマという点ではつながっていますが、厳密には別の編成です。「よるドラ」という旧名称が現在もそのまま使われているわけではありません。
【人気作品と評判】視聴者に支持されたのはどのドラマ?
よるドラの人気を振り返る際に参考になるのが、ITmediaの「ねとらぼリサーチ」が2021年7月に実施したアンケートです。
調査期間は2021年7月17日から23日まで。質問は「あなたが好きなNHKのよるドラはどれ?」で、有効投票数は3295票でした。
上位3作品は次のとおりです。
この結果で注目したいのは、ジャンルの異なる作品が上位に入っていることです。
1位の『ここは今から倫理です。』は、社会的な問題や人間の生き方を正面から描く学園ドラマ。2位の『いいね!光源氏くん』は、古典文学を現代的なコメディーに置き換えた作品です。そして3位の『腐女子、うっかりゲイに告る。』は、性的指向や他者との関係性を扱った青春ドラマでした。
この3作品に共通するのは、ありふれた恋愛や家族の物語だけではなく、見る人が自分の価値観を考えるきっかけを持てることです。
なお、このランキングは特定期間に実施されたインターネット上の投票結果であり、NHKの視聴率ランキングではありません。作品の人気を考える参考資料として見るのが適切です。
『ここは今から倫理です。』が1位になった理由『ここは今から倫理です。』は、雨瀬シオリの漫画を原作とするドラマです。山田裕貴が倫理教師の高柳を演じました。
高柳は、いじめや自傷行為、人間関係などの問題を抱える高校生たちに、倫理や哲学の考え方を投げかけます。
特徴的なのは、教師が生徒に簡単な正解を与えるのではなく、本人が自分で考えるための問いを投げかける点です。
学校生活を舞台にしながら、人間の尊厳や他者との距離感、自分自身の生き方を扱う内容は、若い視聴者だけでなく幅広い世代にも考える材料を与えました。
2021年の投票で1位になったことは、よるドラが単なる深夜の娯楽枠ではなく、視聴者の価値観に踏み込む作品を生み出していたことを示す一例です。
【2026年最新情報】NHK夜ドラは現在も放送中!最新作品は『青の花 器の森』
2026年11月3日現在、NHKの夜ドラ枠では『青の花 器の森』が放送されています。
同作は小玉ユキの漫画を原作とした作品で、2026年10月26日にNHK総合で放送開始。毎週月曜から木曜の22時45分~23時に放送される全32回、8週間のシリーズです。
主演は松井玲奈と一ノ瀬颯。長崎県波佐見町を舞台に、焼き物づくりに携わる職人たちの仕事や人間関係、恋愛を描きます。
主人公の馬場青子は、地元の窯元で絵付け職人として働く女性。そこへフィンランドで活動していた陶芸家の真鍋龍生がやってきます。ものづくりへの考え方が異なる2人が、器と向き合いながら関係を深めていく物語です。
2026年11月3日には第6話が放送予定となっており、旧よるドラではなく、2022年に始まった夜ドラの最新シリーズとして位置付けられます。
2026年の夜ドラを理解するポイント2026年のNHK夜ドラは、旧よるドラの終了によって途切れた枠ではありません。2022年の改編以降、15分の帯ドラマというスタイルを維持しながら、作品のラインアップを更新しています。
『青の花 器の森』のように、漫画原作の恋愛作品を扱うこともあれば、社会的な問題や日常の人間関係を中心にした作品もあります。
そのため、昔の『腐女子、うっかりゲイに告る。』や『だから私は推しました』を探している人は、作品名で調べる必要があります。一方、現在のNHKの夜ドラを見たい人は、番組表で「夜ドラ」と検索すると最新シリーズを確認できます。
【プロの結論】よるドラが残したものは、NHKドラマの企画力と表現の幅
よるドラを単なる終了した番組枠として捉えると、その存在意義を見落としてしまいます。
この枠が特徴的だったのは、若いディレクターやプロデューサーが、自分自身の関心を出発点にして企画を立ち上げられたことです。
リアルサウンドのインタビューでは、制作陣が企画を出し合い、互いに意見を交わして作品を磨く「よるドラ・ミーティング」の存在も紹介されています。既存のジャンルに当てはめにくい題材でも、企画として育てていく環境がありました。
尾崎裕和プロデューサーは、30分×8話という枠の大きさが、特定のテーマに集中した作品を作りやすかったと説明しています。
この制作環境から生まれたのが、ゾンビを使った社会風刺、性的マイノリティーを扱う青春劇、地下アイドルを応援する人々の心理、倫理と哲学をテーマにした学園ドラマなどです。
いずれも、題材だけを見れば地上波の一般的なドラマ枠では企画の方向性を定めにくい作品です。しかし、よるドラはそうしたテーマを30分×8話という比較的コンパクトな形式に収め、独自の魅力を持つ作品として届けました。
一方、後継の夜ドラは、15分×週4回という視聴習慣を重視した構成です。短時間で楽しめることや、毎日の放送で物語を追えることが強みになっています。
したがって、旧よるドラと夜ドラを比較するときは、どちらが優れているかという単純な評価よりも、作品を届けるための設計が変わった点に注目するべきです。
よるドラ作品はどんな人におすすめ?- 独創的なドラマが好きな人:『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』や『きれいのくに』がおすすめ。
- 社会問題や人間関係を考えたい人:『腐女子、うっかりゲイに告る。』『ここは今から倫理です。』がおすすめ。
- 気軽に笑える恋愛コメディーが好きな人:『いいね!光源氏くん』がおすすめ。
- 推し活やファン心理に興味がある人:『だから私は推しました』がおすすめ。
- 15分程度の短いドラマを毎日楽しみたい人:旧よるドラではなく、現在の夜ドラをチェックするのがおすすめ。
反対に、30分程度のまとまったエピソードを週1回楽しみたい人や、旧よるドラ独特の実験的な企画を探している人は、現在の夜ドラだけでは同じ視聴体験を得られない場合があります。旧作品を個別に探すことが、満足度の高い楽しみ方です。
【よるドラのよくある質問(FAQ)】
Q1:NHKのよるドラはいつ終了しましたか?
A1:2022年3月21日です。岸井ゆきのと高橋一生が主演した『恋せぬふたり』の最終回が、旧よるドラ枠の最後の放送となりました。
Q2:よるドラと夜ドラは何が違いますか?
A2:よるドラは2018年に始まった週1回・30分のドラマ枠です。夜ドラは2022年4月に始まった後継の枠で、月曜~木曜の22時45分から15分間放送する形式です。
Q3:よるドラは2026年も放送されていますか?
A3:旧名称の「よるドラ」は終了していますが、後継の「夜ドラ」は2026年も継続しています。2026年11月3日時点では『青の花 器の森』がNHK総合で放送されています。
Q4:よるドラの最終作品は何ですか?
A4:『恋せぬふたり』です。2022年1月10日から3月21日まで放送され、岸井ゆきのと高橋一生が主演しました。脚本を担当した吉田恵里香は、第40回向田邦子賞を受賞しています。
NHKのよるドラは、2018年4月にスタートし、2022年3月21日の『恋せぬふたり』を最後に約4年間の歴史に幕を下ろしました。
『腐女子、うっかりゲイに告る。』『だから私は推しました』『いいね!光源氏くん』『ここは今から倫理です。』など、ジャンルにとらわれない作品を生み出し、NHKのドラマ制作に新しい可能性を示した枠でした。
終了の背景にあったのは、単純な人気低迷というより、若年層へのアプローチや視聴習慣の変化を踏まえた番組編成の見直しです。2022年4月からは、15分×週4回の「夜ドラ」へと形を変えました。
2026年現在も夜ドラは続いており、『青の花 器の森』など新しい作品が放送されています。
つまり、正確な答えは「よるドラという旧枠は終了したが、NHKの夜ドラマ枠は現在も続いている」ということです。過去の名作を探すなら「よるドラ」、現在放送中の作品を探すなら「夜ドラ」と区別して検索すると、目的の番組を見つけやすくなります。