2026年の園子温監督を語るうえで、大きな動きとなっているのが新作映画『超塑性変形』の公開発表だ。
2021年公開の『エッシャー通りの赤いポスト』以来、監督作としては約5年ぶりの新作となる。2022年には別の監督作品への脚本参加もあったが、長編映画の監督としては久々の復帰となる。
『超塑性変形』の公開日は2026年12月5日
作品名:超塑性変形
公開日:2026年12月5日(土)
監督・原作・脚本・音楽:園子温
上映館:シネマノヴェチェント(横浜市)
2026年9月28日夜、公式サイトと公式SNSが公開され、翌29日には日刊スポーツなどが新作情報を報じた。
作品の大きな特徴は、園監督自身が原作、脚本、音楽も担当している点だ。公式サイトでは、本人が次のようなコメントを発表している。
「この作品は、つまり私自身、私の身体であり、私の生きた証であります。自叙伝のようなものであります。」
このコメントからは、自身の考え方や感情を作品に強く反映させた映画であることがうかがえる。
『超塑性変形』のキャスト・スタッフ公式サイトに掲載されている主な出演者は以下の通り。
- 吉野みよし(主演)
- 牛抱せん夏
- いしだ壱成
- 神楽坂恵
- OGRE
- 石井幹人
- 横山莉華
- 灘美衣奈
- 白鷺りの
- 深崎ゆづき
- 関口まなと
- 松本博之
- 乃木涼介
- 嶋大輔
- 大島さと子
- 伊吹吾郎
園監督の妻として知られる神楽坂恵も出演者に名を連ねている。
スタッフでは、撮影監督をIvan Kovac、編集を伊藤潤一、整音・サウンドデザインを浦本和宏が担当。美術・VFXには吉村和晃が参加している。
全国公開なのか?上映館情報にも注意2026年11月3日時点で、公式サイトの上映情報に掲載されているのは、横浜市のシネマノヴェチェントだ。12月5日から公開と案内されている。
そのため、全国の映画館で一斉公開される大規模なロードショーと同じものとして考えるのは早い。上映館や追加上映の発表は、公式サイトの最新情報を確認したい。
また、公式サイトでは予告編やキャスト、スタッフ情報が公開されている一方、詳しいストーリー紹介は限られている。タイトルの意味だけから物語の内容を推測するより、公開された映像や正式な作品紹介を見て判断するのがよい。
2026年の園子温は映画監督として再始動するのか今回の新作は、単に久しぶりの映画というだけではない。2022年以降、園監督をめぐる報道や訴訟が続き、映画制作から距離を置いていた時期を経て発表された監督作だからだ。
2025年5月の記者会見では、園監督自身が映画制作への復帰を望んでいると説明していた。今回の『超塑性変形』は、その後に具体化した監督作として位置づけられる。
ただし、一本の新作が発表されたことと、以前のように継続的な映画制作体制が戻ったことは別の話だ。今後の活動は、作品の公開状況や次回作の発表を通じて見極める必要がある。
【報道から現在まで】園子温の性加害報道と裁判のその後

園子温監督をめぐっては、2022年4月に女性週刊誌が複数の女優との性的トラブルに関する疑惑を報道した。
その後、園監督側による出版社への提訴、俳優・松崎悠希氏との名誉毀損訴訟、刑事告訴など複数の法的手続きに発展している。
2026年現在の状況を理解するには、それぞれの裁判を分けて整理する必要がある。
2022年:性加害疑惑の報道と園監督の謝罪2022年4月、週刊女性と週刊女性PRIMEが、園監督が自身の監督作品への出演をめぐり、女優に性的な関係を求めたとする疑惑を報じた。
これを受けて園監督は、事務所の公式サイトに直筆のメッセージを掲載。映画監督としての自覚のなさや、周囲への配慮のなさを自覚しているとして謝罪した。
一方で、報道内容には事実と異なる点が多いと主張し、法的措置を取る意向も示した。
2023〜2024年:週刊女性側との訴訟が和解園監督は2022年5月、週刊女性の発行元である主婦と生活社などを相手取り、損害賠償や謝罪広告、インターネット記事の削除を求めて提訴した。
その後、2023年12月27日に裁判上の和解が成立。出版社側が対象となったインターネット記事2本の全文削除を受け入れた。
2024年2月には園監督自身も公式サイトで和解成立を報告している。
ここで注意したいのは、出版社との和解は、裁判所が報道内容の真偽を全面的に判断した判決とは異なるということだ。記事削除という和解内容だけをもって、報道された疑惑のすべてが虚偽だった、あるいはすべてが事実だったと解釈することはできない。
2025年:松崎悠希氏との名誉毀損訴訟で東京地裁が判決もう一つの重要な裁判が、俳優の松崎悠希氏との名誉毀損訴訟だ。
松崎氏は2022年3月、X(旧Twitter)で、園監督のワークショップに参加した知人が身体を要求されたという趣旨の投稿を行った。これに対し、園監督は投稿によって名誉を傷つけられたとして、損害賠償などを求めて提訴した。
2025年5月16日、東京地裁は松崎氏の投稿について一部の名誉毀損を認め、投稿の削除と22万円の支払いを命じた。園監督側が求めていた損害賠償額は1100万円だった。
ただし、この判決で注目されたのは、松崎氏側の一部の投稿について名誉毀損が認められた一方、判決理由には園監督の行為に関する重要な事実認定が記されていた点だ。
J-CASTニュースの判決報道によると、東京地裁は、園監督が複数の女性に性的行為を要求する文面のメッセージを送ったことや、性的関係を持った女性を自身の映画に出演させていたことについて、判決理由中で真実と認められる旨を記述した。
つまり、園監督側の名誉毀損請求が一部認められたことと、判決理由中の性的行為に関する事実認定は、同時に存在する。片方だけを取り上げて裁判全体の結果を説明するのは正確ではない。
2025年5月27日:園監督が外国特派員協会で会見判決後、園監督は日本外国特派員協会で記者会見を開いた。
会見では、自身の潔白が証明されたとの認識を示し、判決理由に記された性的行為に関する部分については不名誉だとして、控訴する方針を明らかにした。
判決理由中の認定を「後書き、感想みたいなところ」と説明した発言も報じられ、議論を呼んだ。
2025年12月〜2026年2月:刑事告訴は不起訴、民事訴訟は控訴取り下げ2026年に入ってからも、裁判をめぐる重要な動きがあった。
最初に、園監督が松崎氏を侮辱容疑で刑事告訴していた件について、松崎氏は2026年2月17日のXへの投稿で、東京地検から不起訴処分の連絡を受けたと報告した。報道では、処分の日付は2025年12月9日とされている。
加えて、松崎氏は2026年3月2日、園監督が2月28日に民事訴訟の控訴を取り下げたとの連絡を裁判所から受けたと公表した。これにより、2025年5月の東京地裁判決が確定したと説明している。
2026年11月時点で押さえておきたい法的なポイントこの一連の経緯は、次のように整理できる。
- 出版社との訴訟:2023年12月に和解。対象記事の削除が受け入れられた。
- 松崎氏との民事訴訟:東京地裁が一部名誉毀損を認め、22万円の支払いと投稿削除を命令。2026年2月の控訴取り下げにより一審判決が確定したと松崎氏が公表。
- 松崎氏への刑事告訴:松崎氏が不起訴処分を受けたと公表。
特に重要なのは、松崎氏との裁判が刑事裁判ではなく、名誉毀損をめぐる民事訴訟だった点だ。園監督が性加害について刑事事件で有罪判決を受けたという意味ではない。
一方で、民事判決の理由に性的行為に関する具体的な事実認定が記され、その判決が控訴取り下げによって確定したという経緯も軽視できない。
2026年の新作公開をめぐっては、監督の芸術的な評価と、映画制作現場における権力関係や人権問題を別々に考えるだけでなく、両者をどう受け止めるかが問われている。
【園子温映画に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:園子温映画で最初に観るべきおすすめ作品は?
A1:初めてなら『ヒミズ』がおすすめ。129分と比較的観やすく、人物描写や社会への視線など、園子温映画の特徴を理解しやすい。監督の代表作を一本で味わいたいなら『愛のむきだし』も有力だ。
Q2:園子温の最高傑作・代表作は何?
A2:代表作として特に知名度が高いのは『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』。国際映画祭での受賞歴、作品の独創性、国内外での認知度を考えると、この3作品は外せない。
Q3:園子温の映画はなぜ過激だといわれる?
A3:暴力、性、死、宗教、家族の崩壊など、一般的な商業映画では扱いにくい題材を正面から描くため。特に『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『アンチポルノ』では刺激の強い描写が登場する。作品によって表現の方向性は異なる。
Q4:園子温の最新作『超塑性変形』はいつ公開?
A4:2026年12月5日(土)公開予定。公式サイトでは横浜市のシネマノヴェチェントが上映館として案内されている。監督・原作・脚本・音楽を園子温が担当する。
Q5:園子温の性加害報道をめぐる裁判はどうなった?
A5:週刊女性の発行元との訴訟は2023年12月に和解し、対象記事が削除された。松崎悠希氏との民事訴訟は2025年5月に東京地裁判決が出され、2026年2月28日の控訴取り下げによって一審判決が確定したと松崎氏が公表している。また、松崎氏への刑事告訴は不起訴処分になったと報告されている。
園子温映画の魅力は、単に過激な映像や衝撃的なストーリーにあるわけではない。純愛、家族、社会問題、暴力、欲望など、人間の矛盾を多面的に描き、観客に強い印象を残すところにある。
作品選びに迷ったら、まずは『ヒミズ』か『愛のむきだし』から始めたい。人間ドラマを重視するなら『ヒミズ』、園子温の独創性を存分に味わいたいなら『愛のむきだし』が適している。刺激の強い作品を求めるなら『冷たい熱帯魚』、娯楽性を楽しむなら『地獄でなぜ悪い』もおすすめだ。
2026年12月5日には、新作『超塑性変形』が公開予定となっている。5年ぶりの監督作が、これまでの園子温作品とどのようにつながり、どのような新しい表現を見せるのかは注目点だ。
同時に、過去の作品が獲得した芸術的評価と、監督をめぐる性加害報道・裁判の経緯は、混同せずに考える必要がある。映画の価値を評価することと、制作現場における人権や権力の問題を検証することは、両立できる。
園子温という映画監督を理解するには、作品の強烈さだけを見るのでは不十分だ。初期の自主映画から国際映画祭で評価された代表作、社会派作品、そして2026年の新作までをたどることで、その表現の変化と映画界に残した功績、現在も続く議論の両方が見えてくる。