競輪選手といえば、ひときわ目を引く太く発達した太ももが特徴です。一般の自転車愛好家とは明らかに異なる脚の筋肉を持つ選手も多く、「なぜあそこまで太くなるのか」「太ももは何cmあるのか」「筋肉のどの部分が強いのか」と疑問に感じる人もいるでしょう。
その理由は、競輪特有の瞬発力を必要とする競技性にあります。ペダルを強く踏み込む大腿四頭筋だけでなく、股関節を動かすハムストリングや臀筋なども連動し、短時間で大きな力を生み出せる身体へと発達していくのです。2026年現在、日本競輪選手養成所でも科学的トレーニングや走行データの分析が取り入れられています。
【理由を解説】競輪選手の太ももが太いのはなぜ?発達する3つの仕組み

競輪選手の太ももが発達している最大の理由は、ペダルを通じて自転車を加速させるために、下半身へ大きな筋力とパワーが求められるからです。
競輪は単に一定の速度で走り続ける競技ではありません。選手同士の位置取りや駆け引きがあり、勝負どころでは一気に加速する必要があります。最後の直線でトップスピードを引き出すには、短時間で大きな力を発揮できる脚力が欠かせません。
1. ペダルを強く踏み込む動作を繰り返す自転車のペダリングでは、股関節や膝関節を動かしながらペダルに力を伝えます。特に踏み込み局面では、膝を伸ばす大腿四頭筋と股関節を伸ばす臀筋などが大きな役割を果たします。
競輪選手は、レースや練習でこうした動作を何度も繰り返します。高い負荷を伴う運動を継続することで、筋肉には適応が起こり、筋線維の肥大などを通じて筋肉量が増えていきます。
2. 瞬発力を生み出す筋肉が発達する競輪では、スタートからの加速や勝負どころでのスプリントなど、瞬間的に大きな出力を出す能力が大切です。
こうした動作には、速い速度で大きな力を発揮する速筋線維も関係します。速筋線維は高強度の運動に適応しやすく、筋力トレーニングやスプリント練習によって筋肉の発達に寄与します。
ただし、競輪選手の筋肉がすべて速筋というわけではありません。レース展開を支える持久力も必要であり、瞬発力と持続的な運動能力の両方を備えることが大切です。
3. トレーニングと身体の適応が積み重なる太ももの発達は、短期間の筋トレだけで生まれるものではありません。日々の走行練習、筋力トレーニング、食事、休養を組み合わせた身体づくりの結果です。
早稲田大学などの研究者が参加した2016年の研究では、経験豊富な大学自転車競技選手と運動習慣のない男性を比較し、複数の大腿筋や大腰筋などに筋肉量の違いが認められました。また、競技トレーニングを6か月継続した選手の一部の筋肉でも、有意な筋肥大が確認されています。
この研究は競輪選手だけを対象としたものではありませんが、自転車競技の継続的なトレーニングが、筋肉の部位ごとに異なる発達をもたらすことを示す研究結果です。
【筋肉の特徴】競輪選手の大腿四頭筋とハムストリングはどう働く?
競輪選手の太ももを理解するには、前側と後ろ側の筋肉の違いを知る必要があります。見た目のボリュームだけでなく、それぞれの筋肉がペダリングのどの動作を担当するのかが重要です。
大腿四頭筋:太ももの前側にある主要な筋肉大腿四頭筋は、太ももの前側に位置する大きな筋肉群です。大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋の4つで構成されています。
主な働きは膝関節を伸ばすことです。自転車ではペダルを踏み込む局面で大きな役割を担い、力強い推進力を生み出します。
特に外側広筋や内側広筋などの広筋群は、膝を伸ばす動作に関係しています。競輪選手の太ももが前側に大きく盛り上がって見えるのは、こうした筋肉の発達が関係しています。
ハムストリング:太ももの後ろ側を支える筋肉ハムストリングは、太ももの後面にある筋肉群です。大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋から構成され、膝を曲げる動作と股関節を伸ばす動作に関係します。
自転車競技では、ハムストリングが大腿四頭筋と協調して働きます。ペダリング中の脚の動きを調整し、関節の安定性や力の伝達にも関与します。
前側の筋肉だけを大きくすればよいわけではありません。後面の筋肉も含めたバランスが、効率的なペダリングや身体のコントロールを支えます。
臀筋や内転筋も見逃せない競輪選手の身体づくりでは、太ももだけでなく臀筋や内転筋も重要です。
大臀筋は股関節を伸ばす主要な筋肉で、ペダルを強く踏み込む動作を支えます。内転筋群は太ももの内側にあり、股関節の動きや脚の安定性に関係しています。
また、ふくらはぎの腓腹筋やヒラメ筋も足関節の動きに関わります。競輪選手の脚力は、太ももだけで完結するものではありません。
【ペダリングの仕組み】筋肉ごとの役割と瞬発力の関係を比較
競輪選手の脚力を理解するうえで重要なのが、ペダルを回す動作と筋肉の活動タイミングです。
ペダリングは円運動ですが、1回転の間ずっと同じ強さでペダルを踏んでいるわけではありません。クランクの角度によって力を伝えやすい局面があり、筋肉もタイミングを変えながら働きます。
筋肉とペダリングの関係一覧| 筋肉・部位 | 主な働き | ペダリングでの役割 | 競技上の特徴 |
|---|---|---|---|
| 大腿四頭筋 | 膝を伸ばす | 踏み込み局面で大きな力を生み出す | ペダルへの出力に関係 |
| ハムストリング | 膝を曲げる・股関節を伸ばす | 脚の動きと力の伝達を調整する | ペダリングの協調性を支える |
| 大臀筋 | 股関節を伸ばす | 股関節から大きな力を発揮する | 加速時の出力に関係 |
| 内転筋群 | 股関節を内側に動かす | 脚の位置や股関節の安定に関係 | 下半身の動作を支える |
| 腓腹筋・ヒラメ筋 | 足関節を伸ばす | 足首を通じてペダルへの力を伝える | 下肢全体の連動に関係 |
2016年にEuropean Journal of Applied Physiologyに掲載された研究では、経験豊富な自転車競技者9人を対象に、筋肉内筋電図を用いて8つの太ももの筋肉の活動が調べられました。
その結果、外側広筋や内側広筋などの広筋群は、ペダル回転の最初の4分の1にあたる局面で高い活動を示しました。一方、ハムストリングの活動ピークは次の局面に見られました。
この結果からも、太ももの前後の筋肉が同時に一律の働きをするのではなく、ペダルの位置に応じて活動を調整していることが分かります。
筋肉量と最高出力には関係がある2024年7月に発表されたスプリント自転車競技のシステマティックレビューでは、筋肉の形態や構造と競技能力の関係が分析されました。
対象となった研究は10件で、大腿四頭筋の筋肉量と最大パワー出力との間には強い関連が報告されています。研究では、筋肉量による最大パワーの変動説明率を示す決定係数がR²=0.65〜0.82とされました。
ただし、これは筋肉量だけで競技成績が決まるという意味ではありません。筋肉の構造、神経系の働き、ペダリング技術、体格など複数の要素が関係しています。
【太もものサイズ】競輪選手は何cm?一般人との違いと個人差
競輪選手の太ももを調べるとき、多くの人が気になるのが周囲径です。実際、選手の太ももは一般的な体格の人と比べて、筋肉の発達が目立つケースがあります。
ただし、2026年現在、現役の日本人競輪選手全体について、統一された計測方法で算出した太ももの平均周囲径が公式統計として広く公開されているわけではありません。
一般成人の太ももの太さと比較する比較の参考になるのが、産業技術総合研究所の「AIST人体寸法データベース1991-92」です。
この調査では、18〜29歳の青年層について、男性217人、女性204人を対象に人体寸法を計測しています。大腿囲の平均値は、男性が約52.9cm、女性が約52.8cmでした。
ただし、この数値は1991〜1992年の計測結果です。また、太ももの付け根を測る大腿付根囲や、殿溝の高さで測る大腿囲とは異なる計測項目です。
競輪選手の周囲径と比較するときは、測定位置や姿勢、筋肉を力ませているかどうかなどをそろえる必要があります。異なる条件で測定した数字を単純に比較することはできません。
競技種目によっても太ももの発達は違う自転車競技の選手だからといって、全員が同じ体型になるわけではありません。
2022年にJournal of Sports Medicine and Physical Fitnessに掲載された研究では、世界トップレベルのトラック競技選手98人の身体的特徴が分析されました。
その研究では、男子スプリント選手は男子持久系選手と比較して、体重や筋肉量などが大きい傾向を示しました。つまり、同じ自転車競技でも、短時間で大きな力を発揮する種目と、長時間にわたって出力を維持する種目では、求められる身体的特徴が異なります。
太ももの太さに個人差が生まれる理由競輪選手の太もものサイズは、次のような要素によって変わります。
- 遺伝的な体格:骨格や筋肉の付き方には生まれつきの個人差がある。
- 競技歴:長期的なトレーニングによって筋肉の発達度合いが変わる。
- 競技スタイル:瞬発力を重視する選手と持久力を重視する選手では身体的特徴が異なる。
- 筋肉と体脂肪の割合:同じ周囲径でも筋肉量と脂肪量の構成は異なる。
- 身長や骨格:身体全体の大きさや脚の長さによって見た目や周囲径が変わる。
- トレーニング内容:筋力強化、走り込み、回復方法などによって発達する部位が異なる。
そのため、太ももが何cmあるかという数字だけで選手の能力を評価することはできません。
【身体づくりの実態】競輪選手の太もも筋トレとトレーニング方法
競輪選手の身体づくりは、単純に太ももを太くすることを目的とした筋トレではありません。競走で必要なパワー、持久力、走行技術、身体のコントロールを総合的に高める取り組みです。
日本競輪選手養成所では科学的トレーニングを導入日本競輪選手養成所の公式情報によると、養成所では約10か月の訓練を通じて、プロ選手に必要な知識と走行技術を学びます。
特徴的なのは、自転車トラック競技の日本代表が活用するトレーニング理論を取り入れていることです。データを解析できる訓練機材を導入し、候補生が自分のトレーニングを確認できる仕組みも整えています。
また、走行フォームを撮影・記録し、映像を確認しながら指導する体制もあります。筋肉を大きくするだけでなく、力を効率よく自転車へ伝える技術も重視されているのです。
養成所の訓練は段階的に進むKEIRIN.JPの競輪Q&Aでは、養成所の訓練について、前半はダッシュ力・持久力・スピードの強化を中心とし、後半は競走訓練を主体とする流れが紹介されています。
つまり、単純な筋力強化だけでなく、実際のレースで力を発揮するための技術を段階的に身につける構成です。
太ももを発達させる代表的なトレーニング自転車競技の身体づくりでは、目的に応じて次のようなトレーニングが活用されます。以下は一般的な競技トレーニングの例であり、すべての競輪選手が同じ内容や頻度で実施するわけではありません。
- スクワット:膝関節と股関節を使う下半身の筋力トレーニング。
- デッドリフト:股関節を伸ばす動作を中心に、臀筋やハムストリングなどを鍛える。
- 自転車での高強度走行:短時間の加速や高出力を発揮する能力を養う。
- 持久系の走行練習:レースを支える持続的な運動能力を高める。
- フォーム練習:身体の動きやペダルへの力の伝え方を改善する。
筋肉はトレーニングをしている時間だけで発達するわけではありません。運動で生じた身体への負荷に対して、適切な栄養と休養を取ることが必要です。
日本競輪選手養成所では、寮生活中の食事を管理栄養士が管理しています。訓練内容や食事時間に応じてカロリーと栄養価を考慮した食事を提供し、選手として必要な食事管理についても指導しています。
筋肉を増やすための栄養だけでなく、練習で消費したエネルギーの補給や疲労回復も身体づくりの一部です。
【誤解を検証】太ももが太ければ競輪選手として強いのか?
競輪選手の太ももを見ると、筋肉が大きい選手ほど強いのではないかと考えがちです。しかし、太ももの太さと競技能力は必ずしも比例しません。
筋肉量と競技能力は同じではない筋肉量は大きな力を生み出すための重要な要素ですが、実際の競走では、その力をどれだけ効率よく発揮できるかが問われます。
例えば、筋肉量が多くても、ペダリングの技術が未熟であれば十分な出力を得られない場合があります。また、筋肉を増やすことで体重も増加すれば、競技の条件によっては不利になる可能性もあります。
2024年のスプリント自転車競技に関するシステマティックレビューでも、筋肉量と最大パワーの関連が示される一方、筋肉の構造や品質など複数の要素が関係することが指摘されています。
競輪は脚力だけで勝負する競技ではない競輪では、脚力に加えて位置取りや仕掛けるタイミング、他選手との駆け引きなども勝敗を左右します。
KEIRIN.JPの競輪ガイドでも、選手には下半身だけでなく、ハンドルを引き寄せるための上半身の力も必要だと説明されています。
強い選手は脚の筋肉だけに頼るのではなく、上半身と下半身を連動させながら自転車を操ります。
太ももの太さを見るときの判断基準競輪選手の太ももを比較する場合は、単純な周囲径だけではなく、次のような視点を持つことが大切です。
- 筋肉の発達が前側だけでなく後ろ側にも見られるか。
- 脚の筋肉と臀筋がバランスよく発達しているか。
- 実際のペダリングで力強い加速ができているか。
- 筋肉量だけでなく、体重や競技スタイルとのバランスが取れているか。
- レースでの出力や走行技術が安定しているか。
一般の人が競輪選手の身体づくりを参考にする場合も、太もものサイズだけを目標にするのではなく、自分の体力や運動経験に合ったトレーニングを選ぶことが重要です。高負荷の筋トレを始める場合は、正しいフォームを身につけ、無理のない負荷から段階的に取り組みましょう。
【競輪選手の太もも】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:競輪選手の太ももは平均何cmですか?
A1:現役の日本人競輪選手全体を対象とした、統一条件による公式平均値は広く公開されていません。一般成人の参考値として、産業技術総合研究所の1991〜92年調査では、18〜29歳の男性が約52.9cm、女性が約52.8cmでした。ただし、競輪選手との直接比較には同じ測定条件が必要です。
Q2:競輪選手の太ももで最も重要な筋肉は何ですか?
A2:代表的なのは太もも前側の大腿四頭筋です。ペダルを踏み込む際に膝を伸ばす働きを担います。一方、後ろ側のハムストリングや大臀筋もペダリングの力の伝達や股関節の動きに関係するため、複数の筋肉が協調して働くことが重要です。
Q3:競輪選手のような太ももを作るには何をすればよいですか?
A3:スクワットなどの下半身の筋力トレーニングに加え、自転車での走行練習や適切な栄養、休養を組み合わせることが基本です。ただし、競輪選手と一般の人ではトレーニング環境や運動量が異なるため、いきなりプロ選手と同じ負荷をかけるのは避けましょう。
競輪選手の太ももが太く発達しているのは、ペダリングによって大きな力を生み出すためのトレーニングを長期間積み重ねているからです。
特に大腿四頭筋は踏み込み時の出力を担い、ハムストリングや臀筋は脚の動きと力の伝達を支えます。これらの筋肉が協調して働くことで、競輪に必要な瞬発力と加速力が生まれます。
また、太もものサイズには競技歴、体格、筋肉の構造、トレーニング内容などによる個人差があります。周囲径が大きいほど強いという単純な関係ではなく、筋肉の質や身体全体のバランス、走行技術も重要です。
2026年現在、日本競輪選手養成所では科学的トレーニングや映像によるフォーム分析、栄養管理などを組み合わせた育成が行われています。
競輪を観戦するときは、選手の太ももの大きさだけでなく、踏み込みの力強さや加速時の脚の動きにも注目してみてください。鍛え上げられた太ももには、競技に必要な筋力と技術、そして長年の身体づくりが凝縮されています。
主な参考資料・研究
- 日本競輪選手養成所「養成所での学び」
- KEIRIN.JP「競輪選手とは」「競輪Q&A」
- 産業技術総合研究所「AIST人体寸法データベース1991-92」
- Ema et al.(2016)Unique muscularity in cyclists' thigh and trunk: A cross-sectional and longitudinal study
- da Silva et al.(2016)Quadriceps and hamstring muscle activity during cycling as measured with intramuscular electromyography
- Muros et al.(2022)Anthropometric differences between world-class professional track cyclists based on specialty
- (2024年)Interplay of Muscle Architecture, Morphology, and Quality in Influencing Human Sprint Cycling Performance: A Systematic Review