夜間熱中症は、日中の屋外だけでなく、夜の室内や寝ている間にも発症する健康上の重大なリスクです。日が沈んで気温が下がっても、建物の屋根や壁に蓄積した熱によって寝室の温度が高いまま保たれることがあります。加えて、就寝中は汗をかいても水分補給ができないため、気づかないうちに脱水が進む可能性があります。
2026年10月28日に消防庁が公表した最新の確定統計によると、2026年5月から9月までの熱中症による救急搬送者数は全国で77,638人でした。このうち高齢者が59.7%を占め、発生場所では住居が39.6%と最多です。こうした数字からも、家庭内での熱中症対策が欠かせないことが分かります。頭痛やめまいなどの初期症状、寝室の温度・湿度管理、エアコンの適切な使い方、就寝前の水分補給まで、2026年の公的情報をもとに解説します。
【2026年最新】夜間熱中症とは?夜の室内でも発症する原因と実態

夜間熱中症とは、夜間や就寝中に高温多湿な環境の影響を受け、体温調節機能がうまく働かなくなることで起こる熱中症を指す一般的な呼び方です。
熱中症は、直射日光を浴びているときだけに起こるものではありません。厚生労働省も、室内で安静にしている場合でも発症することがあると注意喚起しています。
2026年の救急搬送データが示す住宅内の危険性消防庁が2026年10月28日に公表した「令和8年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、全国の搬送者数は77,638人でした。
これは2008年の調査開始以降、5番目に多い数字です。
2025年の100,510人と比較すると減少していますが、依然として大勢の人が熱中症で救急搬送されています。
特に注目したいのが、発生場所と年齢の内訳です。
- 高齢者(65歳以上):46,345人、59.7%
- 成人:24,509人、31.6%
- 住居での発生:30,718人、39.6%
- 道路での発生:16,080人、20.7%
住居が発生場所の最多となっている点は見逃せません。
ただし、この統計は発生時刻を夜間に限定したものではありません。住居での発生割合39.6%が、そのまま夜間熱中症の割合を示すわけではない点には注意が必要です。
それでも、熱中症対策を屋外だけに限定できないことは明らかです。
夜間に熱中症が発生する3つの主な原因1. 建物に蓄積された熱が夜になっても残る
日中、強い日差しを受けた屋根や外壁は熱を蓄えます。日没後もその熱が室内に伝わるため、外の気温が下がっているのに寝室が暑い状態になることがあります。
特に最上階の部屋、日当たりのよい部屋、風通しの悪い住宅では注意が必要です。
2. 高温多湿によって汗が蒸発しにくくなる
人間は汗が蒸発するときの気化熱によって体温を下げています。
しかし、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体内の熱を十分に逃がせません。
そのため、気温だけでなく湿度や空気の流れも夜間熱中症のリスクを左右します。
3. 就寝中の発汗によって脱水が進む
睡眠中も人間は汗をかきます。
起きているときと違って、喉の渇きを感じてもすぐに水分を補給できないため、体内の水分が不足する可能性があります。
日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」でも、夜間の室温上昇と就寝中の水分喪失について注意を呼びかけています。
【見逃さないで】夜間熱中症の初期症状と危険なサイン
夜間熱中症の怖さは、本人が症状に気づきにくいことです。
睡眠中は体調の変化を自覚しにくく、目が覚めたときには頭痛や強い倦怠感が現れている場合もあります。
夜間熱中症の初期症状チェック代表的な症状は次のとおりです。
- めまい、立ちくらみ
- 頭痛
- 大量の発汗
- 手足のしびれ
- 筋肉のけいれん、こむら返り
- 吐き気、気分の悪さ
- 強い倦怠感、脱力感
- 集中力や判断力の低下
厚生労働省や日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2024でも、これらの症状が重症度を判断する重要な手掛かりとして示されています。
特に、頭痛や吐き気、強いだるさ、判断力の低下は、単なる寝不足や疲労として片付けないことが大切です。
症状の進行と重症度の目安熱中症の症状は、一般的に次のような段階で整理できます。
軽症(Ⅰ度)
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、こむら返りなどが現れます。
意識ははっきりしていることが多く、早い段階で涼しい場所に移動し、体を冷やして水分・電解質を補給することが必要です。
中等症(Ⅱ度)
頭痛、吐き気、嘔吐、強い倦怠感、虚脱感などが現れます。
集中力や判断力が低下する場合もあり、医療機関での診察が必要です。
重症(Ⅲ度・最重症)
意識障害、けいれん、高体温、手足の運動障害などが現れます。
生命に関わる状態であり、迅速な救急対応が必要です。
夜間熱中症の見分け方で注意したいポイント夜間に次のような状態が見られた場合は、熱中症を疑う必要があります。
- 暑い夜に目が覚め、強い頭痛や吐き気がある
- 寝汗が異常に多く、体がだるい
- 足がつる、手足がしびれる
- 起床後にふらつきや立ちくらみがある
- 受け答えがおかしい、普段と様子が違う
ただし、症状だけで熱中症と確定することはできません。感染症など別の病気でも似た症状が現れます。
重要なのは、暑い環境にいたという状況と体調の変化を合わせて判断することです。
呼びかけへの反応がおかしい、意識がない、けいれんしている、自力で水分を飲めない場合は、直ちに119番へ通報してください。
意識がはっきりしない人に無理やり水を飲ませてはいけません。
【今夜から実践】寝室の温度・湿度管理とエアコンの正しい使い方
夜間熱中症を防ぐうえで、最も優先したいのが寝室の環境改善です。
環境省も、熱中症は屋外だけでなく室内でも発生するとして、夜間や就寝中もエアコンを適切に使用するよう呼びかけています。
寝室の温度は28℃以下を目安に管理する室温管理では、エアコンの設定温度と実際の室温を混同しないことが重要です。
政府広報オンラインなどの熱中症対策情報では、室温28℃以下を目安とした調整が紹介されています。
ただし、28℃は全員に適用できる絶対的な安全基準ではありません。湿度、体調、年齢、寝具、住宅の構造によって快適に過ごせる温度は異なります。
温湿度計を寝室に置き、実際に寝る場所の温度と湿度を確認してください。
湿度についても、60%前後を一つの管理目安として、蒸し暑さが続く場合は除湿機能などを活用するとよいでしょう。
エアコンはつけっぱなしで就寝してもよい?結論からいえば、熱帯夜にはエアコンを一晩中使用することが有効な予防策です。
「寝るときだけ冷房を使い、数時間後に切る」という方法では、停止後に室温が上昇し、睡眠中に再び暑さにさらされる可能性があります。
日本気象協会の「熱中症ゼロへ」では、就寝前に寝室を冷やし、睡眠中も冷房機器を使用する方法を紹介しています。
実践したい要点は次のとおりです。
- 寝室に入る前から冷房を稼働させる
- 暑い夜はタイマーで早く停止させず、必要に応じて一晩中運転する
- 風が体に直接当たらないようにする
- 扇風機やサーキュレーターで空気を循環させる
- 冷えすぎる場合は設定温度や風量を調整する
電気代や冷えすぎが気になる場合でも、暑さを我慢することは避けてください。
夜間熱中症の予防対策を比較| 対策・関連要素 | 具体的な方法 | 期待できる効果・注意点 |
|---|---|---|
| 寝室の温度 | 温湿度計で実際の室温を確認する | 室温28℃以下を目安に調整 |
| 湿度管理 | エアコンの除湿機能などを活用 | 汗の蒸発を妨げる高湿度を避ける |
| エアコン | 必要に応じて夜間も連続運転 | 就寝中の室温上昇を抑える |
| 就寝前の水分補給 | コップ1杯程度の水を飲む | 睡眠中の水分不足に備える |
| 起床後の水分補給 | 起きたら水分を補う | 睡眠中に失われた水分を補給 |
| 高齢者の見守り | 就寝前と起床後に体調を確認 | 本人が気づきにくい異変を早期発見 |
| 暑さ指数(WBGT) | 環境省の情報を確認する | 地域の暑熱リスクを把握する |
寝る前の水分補給も重要な対策です。
暑い時期は、就寝前にコップ1杯程度の水を飲む習慣を取り入れましょう。起床後も水分補給を行うことが大切です。
また、枕元に飲み物を置いておけば、夜中に喉の渇きを感じたときにも対応できます。
大量に飲めばよいというわけではありません。特に心臓や腎臓の病気などで水分摂取量を制限されている人は、主治医の指示を優先してください。
大量の汗をかいた場合には水分だけでなく塩分も失われます。ただし、塩分や経口補水液を必要以上に摂取することも避ける必要があります。
【高齢者は特に注意】夜間熱中症のリスクと家族ができる見守り
夜間熱中症で特に注意したいのが高齢者です。
2026年の消防庁統計では、熱中症による救急搬送者の59.7%を65歳以上の高齢者が占めました。
高齢者のリスクは、単に体力が低下しているという理由だけではありません。
高齢者が夜間熱中症になりやすい理由暑さを感じにくくなる
加齢に伴い、暑さを感じる感覚機能が低下する場合があります。
本人が暑いと感じていなくても、寝室の温度が高くなっていることがあります。
喉の渇きを自覚しにくい
水分不足に気づきにくく、飲み物を取る回数が減ってしまうことがあります。
夜間のトイレを気にして水分を控える
夜中にトイレへ行くことを避けるため、就寝前の水分補給を控えてしまうケースにも注意が必要です。
体温調節機能が低下する
汗をかく機能や体内の熱を逃がす機能が低下すると、暑い環境に長時間いることで体に熱がこもりやすくなります。
家族が実践したい夜間の見守り方法一人暮らしの高齢者や、日中は元気でも夜間の体調変化に気づきにくい人には、周囲の見守りが重要です。
具体的には、次のような対策が考えられます。
- 寝室に温湿度計を設置する
- エアコンを適切に使用できているか確認する
- 就寝前に水分を取ったか声をかける
- 起床後に頭痛や倦怠感がないか確認する
- 寝汗や食欲、普段と異なる行動に注意する
- 必要に応じて家族や介護者が連絡・訪問する
特に、本人がエアコンを嫌がる場合には、風が直接当たらないようにする、おやすみモードを活用するなど、無理なく使える環境を整えることが大切です。
なお、利尿薬などの薬を服用している場合も、自己判断で服薬を中止せず、暑い時期の水分管理について医師や薬剤師に相談してください。
【2026年最新情報】暑さ指数WBGTと熱中症警戒アラートの活用方法
夜間熱中症を予防するには、気温だけでなく、暑さ指数(WBGT)も確認したいところです。
環境省の「熱中症予防情報サイト」では、暑さ指数や熱中症警戒アラートなどの情報が提供されています。
暑さ指数(WBGT)とは?WBGTは、気温だけでは把握できない暑さの危険性を評価するための指標です。
気温、湿度、日射・輻射熱、風の影響を考慮して算出されます。
環境省が示す算出式は次のとおりです。
WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
湿度が高い環境では、汗が蒸発しにくくなるため、気温が同じでも体への負担が大きくなる可能性があります。
ただし、屋外や地域のWBGTがそのまま自宅の寝室の暑さを示すわけではありません。
特に夜間は、建物の蓄熱や住宅の構造によって室温が異なります。WBGTは地域の危険度を知るための情報として活用し、寝室では温湿度計による実測を優先しましょう。
熱中症警戒アラートと特別警戒アラートの違い2026年度の環境省の運用では、通常の熱中症警戒情報と熱中症特別警戒情報が設けられています。
熱中症警戒アラート
対象となる予報区内のいずれかの情報提供地点で、翌日または当日の最高WBGTが33以上になると予測された場合に発表されます。
熱中症特別警戒アラート
原則として、都道府県内の情報提供地点すべてで翌日の最高WBGTが35以上になると予測された場合などに発表されます。
こちらは、通常の警戒アラートよりもさらに重大な健康被害が予測される状況を対象としています。
2026年4月時点では、全国841地点でWBGT情報が提供されていました。
2026年度の運用期間にも注意2026年度の環境省による暑さ指数・熱中症警戒アラート等の情報提供期間は、4月22日から10月21日まででした。
2026年11月2日現在、今年度の通常の情報提供運用は終了しています。次年度の情報提供は2027年4月下旬に開始予定です。
過去の暑さ指数データや啓発資料については、引き続き閲覧できます。
なお、熱中症警戒アラートは日最高WBGTの予測に基づく情報であり、夜間の安全を保証するものではありません。アラートが発表されていない日でも、寝室が暑ければ夜間熱中症のリスクはあります。
【よくある質問】夜間熱中症に関するFAQ
Q1:夜間熱中症は寝ている間にも発症しますか?
はい。就寝中も発症する可能性があります。日中に蓄積された建物の熱や高湿度、睡眠中の発汗による水分不足などが原因になります。夜間も適切に冷房を使用し、室温を管理してください。
Q2:夜間熱中症の初期症状には何がありますか?
めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、大量の発汗、筋肉のけいれん、倦怠感などがあります。症状が進むと判断力の低下や意識障害が起こる場合もあります。
Q3:エアコンは一晩中つけっぱなしでも大丈夫ですか?
はい。熱帯夜など寝室の温度が高い場合は、夜間もエアコンを適切に使用することが推奨されています。冷えすぎないように温度や風向きを調整し、必要に応じて連続運転してください。
Q4:寝る前に水分補給をする必要はありますか?
あります。就寝前にコップ1杯程度の水を飲み、起床後にも水分を補給する習慣がおすすめです。ただし、医師から水分制限を指示されている人は、その指示に従ってください。
Q5:高齢者はなぜ夜間熱中症になりやすいのですか?
暑さや喉の渇きを感じる機能、体温調節機能が低下する場合があるためです。また、夜間のトイレを気にして水分補給を控えることもリスクにつながります。温湿度計やエアコンを活用し、家族や介護者が見守ることが大切です。
Q6:夜間熱中症が疑われたら、どうすればよいですか?
意識がはっきりしている場合は、涼しい場所に移動し、衣服をゆるめて首や脇の下、足の付け根などを冷やします。自力で飲める場合は水分・塩分を補給してください。意識障害やけいれん、自力で水分を飲めない状態では、直ちに119番へ通報してください。
夜間熱中症は、日中の屋外活動とは関係なく、夜の室内や睡眠中にも発症する可能性があります。
2026年の消防庁の確定統計でも、熱中症による救急搬送者の59.7%が高齢者であり、発生場所では住居が39.6%を占めました。
特に重要なのは、暑さを感じてから対策するのではなく、就寝前から寝室の環境を整えることです。
今夜から取り入れたい対策は次の4つです。
1. 温度・湿度を確認する: 温湿度計を使い、寝室の実際の環境を把握する。
2. エアコンを適切に使用する: 熱帯夜は就寝中も冷房を活用し、室温上昇を防ぐ。
3. 水分補給を習慣化する: 就寝前と起床後に水分を補給する。
4. 家族の体調を見守る: 特に高齢者は、本人の暑さの感覚だけに頼らず、室温と体調を確認する。
また、頭痛やめまい、吐き気、異常な倦怠感などが現れた場合には、単なる寝不足と決めつけず、熱中症の可能性も考えてください。
夜間熱中症の予防で大切なのは、我慢しないこと、早めに気づくこと、そして睡眠中も涼しい環境を維持することです。エアコンと水分補給を適切に組み合わせ、安心して眠れる寝室を整えましょう。