「人の名前がなかなか覚えられない」「勉強した内容を翌日には忘れてしまう」「仕事で聞いた情報をすぐに思い出せない」——こうした記憶に関する悩みは、年齢や職業を問わず多くの人が経験するものです。記憶力は生まれつきの能力だけで決まるわけではありません。情報の覚え方、思い出し方、復習する間隔、睡眠や運動などの生活習慣によって、学習の効率や記憶の定着を改善できることが認知心理学や脳科学の研究から明らかになっています。
2026年10月29日には、検索練習・分散学習・交互学習の効果を小中高校の実際の授業環境で検証したメタ分析も公開されました。この記事では、認知心理学の研究、厚生労働省の健康指針、医学研究をもとに、記憶の仕組みから具体的なトレーニング、短期記憶とワーキングメモリの鍛え方、睡眠・運動の活用法までを整理します。今日から始められる復習スケジュールも紹介します。
【基本を理解】記憶力を上げるには?脳の仕組みと海馬の働きを知る

効果的なトレーニングを始める前に理解しておきたいのが、人間の記憶がどのように作られるかという仕組みです。記憶力を高めるには、単に情報を頭に入れるだけではなく、情報を整理し、保存し、必要なときに取り出す一連の過程を意識する必要があります。
記憶は「記銘・保持・想起」の3段階で働く一般的に、記憶の働きは次の3つの過程に整理できます。
- 記銘(符号化):目や耳から入った情報に注意を向け、脳が処理できる形にする。
- 保持(貯蔵):学習した情報を一定期間保ち、必要に応じて整理・固定する。
- 想起(検索):保存された情報を必要な場面で思い出す。
例えば、英単語を覚える場合、単語と意味を確認するのが記銘、時間が経過しても覚えている状態が保持、日本語訳を見ずに英単語を答えることが想起です。
多くの人は最初の記銘に時間をかけます。しかし、情報を何度も読んだだけでは、必要なときに自力で取り出せるとは限りません。覚えたつもりでもテストになると思い出せないのは、この保持と想起の過程が十分に鍛えられていない可能性があります。
海馬は新しい記憶の形成と整理に関わる記憶を考えるうえで重要な脳の領域が海馬です。海馬は脳の側頭葉内側に位置し、新しい出来事や経験に関する記憶の形成、関連情報の結び付け、長期記憶への移行に関わっています。
学習した情報は、海馬を含む脳のネットワークで処理されます。その後、睡眠中などに神経活動の再活性化が起こり、情報が大脳皮質を含む広いネットワークに整理・定着していくと考えられています。
2026年に『Physiological Reviews』で掲載された睡眠と記憶形成に関する総説でも、睡眠中の海馬の活動やノンレム睡眠に伴う脳波の働きが、長期記憶の形成を支える仕組みとして詳しく整理されています。
つまり、勉強した内容を定着させるには、学習中の集中だけでなく、その後の脳の情報処理にも目を向ける必要があるのです。
短期記憶・長期記憶・ワーキングメモリの違い記憶には複数の種類があり、それぞれ役割が異なります。
- 短期記憶:電話番号などの情報を短い時間保持する働き。
- ワーキングメモリ:情報を一時的に保持しながら、計算や判断などの処理を行う働き。
- 長期記憶:知識や経験を比較的長い期間にわたって保持する仕組み。
ワーキングメモリは、会話の内容を覚えながら返答を考える、暗算をしながら途中の数字を保持するといった場面で使われます。単純に情報を保存する短期記憶とは異なり、情報を操作する機能も含まれます。
短期記憶を鍛えたい場合は、情報を意味のあるまとまりに分ける方法や、覚えた内容をすぐに再現する練習が役立ちます。一方、長期記憶を目指すなら、時間を空けて何度も想起が必要です。
【研究で検証】記憶力を上げる方法は?想起練習と分散学習が有力
記憶力を高める方法を選ぶ際、特に注目したいのが認知心理学における学習技法の研究です。学習時間を増やすことよりも、どのような方法で学習するかによって、記憶の定着に差が生じることが分かっています。
想起練習・検索練習は「思い出すこと」そのものを学習にする想起練習とは、一度学習した情報を、資料を見ずに自分の頭から取り出すトレーニングです。検索練習やテスト効果とも呼ばれます。
具体的には、次のような方法があります。
- 参考書や資料を読んで内容を理解する。
- 本を閉じ、覚えた内容を紙に書き出す。
- 自分で質問を作り、答えを口頭で説明する。
- 答え合わせをして、間違えた部分を確認する。
- 時間を空けて、もう一度資料を見ずに思い出す。
重要なのは、正解を確認する前に自分で思い出そうとすることです。答えをすぐに見てしまうと、記憶から情報を取り出す練習が不足します。
2013年に心理学者のJohn Dunlosky氏らが発表した学習技法の包括的レビューでは、練習テストと分散学習が、幅広い学習条件で有用性の高い方法として評価されました。反対に、単純な読み返しやマーカーによる線引きは、それだけでは安定した学習効果を得にくいと指摘されています。
2026年10月29日公開の『Educational Psychology Review』のメタ分析も、この考え方を実際の学校教育の環境で検証しています。2006~2024年に発表された53研究、計7,303人のデータを分析し、検索練習、分散学習、交互学習の効果を確認しました。
同研究で報告された平均効果量は、検索練習がg=0.37、分散学習がg=0.20、交互学習がg=0.40です。これらは成績の上昇率を百分率で表した数字ではなく、研究間で効果を比較するための標準化された指標です。また、学習内容やテスト形式、フィードバックの有無などによって効果が変わることも示されています。
分散学習・間隔反復で復習を一度に集中させない分散学習とは、同じ学習時間を一度に使い切るのではなく、複数の日に分けて学習する方法です。間隔反復は、復習するタイミングを調整しながら記憶を呼び起こす方法を指します。
例えば、英単語を100個覚える場合、1日で何度も繰り返すよりも、初日に学び、翌日、数日後、1週間後と復習を分ける方法が有効です。
一度覚えた情報を少し忘れかけたタイミングで思い出そうとすると、単に読み直す場合とは異なる学習機会が生まれます。ただし、復習の間隔が長すぎてまったく思い出せない場合は、ヒントを確認してから再挑戦することが大切です。
効果的な暗記方法を比較代表的な暗記方法の特徴を比較すると、次のようになります。
| 学習方法 | 具体的な取り組み | 期待できる効果・注意点 |
|---|---|---|
| 想起練習 | 資料を閉じて内容を答える | 記憶から情報を取り出す力を鍛える。特に知識の保持に有用。 |
| 分散学習 | 翌日や数日後に復習する | 長期的な記憶の維持に役立つ。復習間隔の調整が必要。 |
| 再読・反復読み | 同じ文章やノートを読み直す | 内容の理解や確認には使えるが、再読だけでは記憶の定着を過信しやすい。 |
| 精緻化・関連付け | 既知の知識と結び付けて説明する | 情報の意味や背景を理解しやすくなる。 |
| 語呂合わせ・イメージ法 | 数字や単語を映像や言葉に変換する | 順序や固有名詞など、特定の情報の暗記に便利。 |
| 交互学習 | 異なる種類の問題を交互に解く | 問題の違いを見分け、適切な解法を選ぶ練習になる。 |
この比較から分かるのは、すべての学習方法が同じ目的に向いているわけではないということです。用語や数字を覚えるなら語呂合わせ、知識を長く保持したいなら想起練習と分散学習、複雑な概念を理解したいなら関連付けや自己説明が適しています。
特におすすめなのは、最初に理解し、その後は自分で思い出し、間隔を空けて再確認する組み合わせです。読み返しを完全にやめる必要はありませんが、読み返しだけで勉強を終わらせないことがポイントです。
【今日から実践】短期記憶とワーキングメモリを鍛えるトレーニング
記憶力を高めたい人にとって、短期記憶やワーキングメモリのトレーニングも関心の高いテーマです。ただし、脳の記憶容量そのものを無制限に増やせるわけではありません。実生活で情報を扱いやすくするための工夫と、特定の記憶課題を練習する方法を区別して取り組みましょう。
短期記憶を鍛える5つの方法1. チャンク化する
チャンク化とは、複数の情報を意味のあるまとまりに分ける方法です。例えば、数字を一桁ずつ覚えるのではなく、意味のある数字のグループに分けることで、情報を整理しやすくなります。
2. 覚えた内容をすぐに再現する
短い文章を読んだ後、画面や本を閉じて内容を説明します。最初は一文、次に三文、最後に要点をまとめるというように段階的に難しくすると取り組みやすくなります。
3. 音読と視覚情報を組み合わせる
文字を読むだけでなく、声に出して発音したり、図にしたりすると、異なる手掛かりを使って情報を整理できます。ただし、音読だけを繰り返すのではなく、最後に何も見ずに再現することが大切です。
4. 情報を分類する
買い物リストや仕事のタスクを、食品、日用品、仕事などのカテゴリーに分けます。情報の関連性を整理する習慣は、覚える際の負担を減らすのに役立ちます。
5. 数分後に思い出す
新しく知った人の名前や仕事の説明を、数分後にもう一度思い出します。直後だけでなく、少し時間が経ってから再現することで、記憶を確認できます。
ワーキングメモリを鍛える日常トレーニングワーキングメモリは、情報を一時的に保持しながら処理する能力です。日常生活では、次のような活動が練習になります。
- 簡単な暗算を頭の中で行う。
- 文章を読んだ後、内容を要約して説明する。
- 複数の作業手順を確認しながら順番に実行する。
- 聞いた指示を整理して、自分の言葉で言い直す。
- 外国語の短い文章を聞き、意味を理解して再現する。
ただし、特定の課題を繰り返すことで、その課題や類似した課題の成績が上がっても、知能や学業成績などが一律に向上するとは限りません。
2016年に『Perspectives on Psychological Science』で発表された87論文・145の実験比較を含むメタ分析では、ワーキングメモリ訓練による類似課題への改善は確認された一方、知能、読解力、算数能力などへの広範な転移については、信頼できる改善の証拠が得られませんでした。
したがって、ワーキングメモリのトレーニングは、日常で実際に使う能力と結び付けて行うことが現実的です。
長期記憶に定着させるための学習方法長期記憶を目指す場合は、覚えた内容を他人に説明する方法もおすすめです。
例えば、歴史の出来事を暗記するだけでなく、「なぜその出来事が起こったのか」「前後に何があったのか」「現在の社会とどう関係しているのか」を考えます。
このように情報同士の関係を理解すると、単独の知識として覚えるよりも、複数の手掛かりから思い出しやすくなります。
学習後には、ノートを見ずに要点を説明し、分からなかった部分だけを確認してください。理解、想起、修正を繰り返すことが、長期的な学習に適した方法です。
【生活習慣を改善】睡眠と記憶力の関係、有酸素運動と脳機能
記憶力を上げるために、勉強方法と同じくらい見直したいのが生活習慣です。睡眠不足や運動不足が続くと、集中力や情報処理に影響する可能性があります。学習効率を高めるには、脳が働きやすい生活環境を整えることも欠かせません。
睡眠中に記憶が整理・定着する睡眠と記憶には密接な関係があります。睡眠中の脳は活動を停止しているわけではなく、起きている間に学習した情報の再活性化や整理に関わっています。
2026年に『Physiological Reviews』に掲載された総説では、ノンレム睡眠中の脳波活動や海馬の記憶再活性化が、長期記憶の形成を支える重要な仕組みとして説明されています。レム睡眠も含め、異なる睡眠段階が記憶処理に関わると考えられています。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人について個人差を踏まえながら、6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することを推奨しています。成人の適正な睡眠時間はおおむね6~8時間とされますが、必要な時間には個人差があります。
同ガイドでは、良質な睡眠が集中力や学習効率の向上につながり、学習した内容を定着させる役割も果たすと説明されています。
記憶力を意識した睡眠習慣として、次のことを実践してみましょう。
- 毎日できるだけ一定の時間に寝起きする。
- 寝る直前まで勉強や仕事を続けず、落ち着く時間を作る。
- 就寝前のスマートフォンの長時間利用を控える。
- 寝室の明るさ、温度、音などを調整する。
- 眠気が強い場合は、勉強時間より睡眠時間を優先する。
徹夜して暗記時間を増やす方法は、翌日の集中力や記憶の働きを損なう可能性があります。試験前であっても、睡眠を削り続けることは効率的な学習とはいえません。
有酸素運動は海馬や記憶機能にも関係するウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、全身の健康だけでなく、脳機能との関連でも研究されています。
代表的な研究として、2011年に『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』に発表されたErickson氏らのランダム化比較試験があります。
この研究では、120人の高齢者を対象に有酸素運動の影響を検証しました。その結果、運動を行ったグループでは前部海馬の体積が約2%増加し、空間記憶の改善も確認されました。
ただし、これは高齢者を対象とした特定の研究であり、誰でも同じ割合で海馬が大きくなるという意味ではありません。研究結果を一般の人にそのまま当てはめることはできませんが、身体活動と脳の健康を考えるうえで重要な知見です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対し、歩行または同等以上の身体活動を1日60分以上、約8,000歩以上行うことを目安として示しています。また、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うことも推奨しています。
いきなり長時間の運動を始める必要はありません。まずは通勤時に一駅分歩く、昼休みに10分歩く、エレベーターの代わりに階段を使うといった小さな習慣から始められます。
集中力を高める生活習慣も整える記憶力を高めるには、そもそも情報に注意を向けられる状態を作ることが大切です。集中できない状態では、情報を十分に処理できず、記憶の形成にも影響します。
日常生活では、次のような工夫が役立ちます。
- 作業環境を整理する:机の上から不要な物を減らし、学習に集中しやすくする。
- 通知を切る:スマートフォンの通知やSNSを確認する回数を減らす。
- 学習時間を区切る:25~30分程度を目安に集中し、短い休憩を挟む。
- 食事を整える:極端な食事制限を避け、栄養バランスを意識する。
- 水分を取る:脱水による体調不良や集中力の低下を避ける。
集中時間の長さに絶対的な正解はありません。自分が集中を維持できる時間を把握し、無理なく継続できる学習サイクルを作ることが大切です。
【原因と限界を検証】記憶力が低下する理由と脳トレの本当の効果
記憶力が落ちたと感じたとき、すぐに年齢のせいだと考える必要はありません。記憶力の低下には、生活習慣、心理状態、健康状態など複数の要因が関係します。
記憶力が低下する主な原因代表的な要因は次のとおりです。
- 睡眠不足:記憶の形成や集中力に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 慢性的なストレス:不安や緊張が続くと、注意を向けたり情報を整理したりすることが難しくなる。
- 加齢:新しい情報を覚える速度や、記憶を取り出す速度が変化する場合がある。
- 運動不足:身体活動の不足は全身の健康や脳の健康に影響する。
- 栄養不足:ビタミンB12などの不足や食生活の乱れが関係することがある。
- 薬の副作用:一部の薬剤は記憶や認知機能に影響する。
- 精神的な不調:うつ病や不安障害などが記憶の問題につながる場合がある。
米国国立老化研究所(NIA)は、記憶の問題を引き起こす要因として、睡眠障害、うつ病、不安、薬の副作用、甲状腺や腎臓などの病気、ビタミンB12不足などを挙げています。
つまり、記憶力の低下は必ずしも脳の老化だけが原因ではありません。背景にある問題を改善することで、記憶の状態が改善する場合もあります。
加齢による物忘れと注意が必要な記憶障害の違い年齢を重ねると、以前より新しい情報を覚えるのに時間がかかったり、人の名前を思い出すまでに時間がかかったりすることがあります。こうした変化の一部は正常な加齢に伴うものです。
一方、記憶の問題が日常生活に大きな支障を与えている場合や、以前できていたことが急に難しくなった場合には注意が必要です。
例えば、同じ質問を何度も繰り返す、慣れた道で迷う、金銭管理や日常的な手続きが難しくなるなどの変化が続く場合は、医療機関に相談することが大切です。急激な混乱や記憶の異常が現れた場合も、速やかに医療機関で評価を受けてください。
脳トレアプリやゲームだけで記憶力は上がるのか数字の並べ替え、パズル、計算ゲーム、記憶ゲームなどの脳トレは、特定の認知課題を練習する手段として活用できます。
ただし、脳トレを続ければ記憶力や知能が全般的に向上するという主張には慎重になる必要があります。
2016年のワーキングメモリ訓練に関するメタ分析では、訓練した課題や類似した課題への改善は認められましたが、知能、読解力、計算力など離れた能力への広範な効果については、明確な裏付けがありませんでした。
脳トレを選ぶ場合は、次の基準を参考にしてください。
- 自分が実際に改善したい記憶課題と関係しているか。
- 成績や正答率など、改善を客観的に確認できるか。
- 過度な料金や長時間の利用を必要としないか。
- 睡眠や運動などの基本習慣を犠牲にしていないか。
- 知能が劇的に向上するなど、過剰な効果を宣伝していないか。
特におすすめなのは、脳トレを目的そのものにするのではなく、語学学習、資格試験、読書、仕事の知識整理など、実生活で使う能力の練習に組み込む方法です。
【継続できる実践法】復習の最適なタイミングと7日間の学習スケジュール
記憶力を高める方法を理解しても、毎日の生活に取り入れられなければ長続きしません。重要なのは、最初から長時間の学習を計画するのではなく、短い時間でも想起と復習を繰り返せる仕組みを作ることです。
復習の最適なタイミングは内容と目標によって変わる復習の間隔に、すべての人や学習内容に当てはまる絶対的な正解はありません。短期間で覚える必要がある情報と、数か月後や数年後まで保持したい情報では、適切な復習計画が異なります。
そこで、最初の実践として使いやすいのが、次のスケジュールです。
- 学習当日:勉強を終えた後、資料を閉じて要点を思い出す。
- 翌日:前日に覚えた内容を何も見ずに確認する。
- 3日後:間違えた部分を中心に再テストする。
- 7日後:全体の内容をもう一度思い出す。
- 14日後:忘れている部分を確認し、必要な箇所を復習する。
- 30日後:長期的に保持できているか確認する。
これは実践しやすい初期設定であり、研究で確定した万人共通の最適スケジュールではありません。正解できるようになった内容は次の復習までの間隔を延ばし、間違えた内容は短い間隔で再確認するなど、理解度に合わせて調整しましょう。
記憶力を高める1日のモデルプラン忙しい社会人や学生でも実践できるよう、学習と生活習慣を組み合わせた例を紹介します。
- 朝:前日に覚えた内容を5分間、資料を見ずに思い出す。
- 午前・昼:新しい情報を20~30分程度集中して学ぶ。
- 昼休み:10分程度歩いて身体を動かす。
- 夕方:学習内容をノートにまとめず、まず自分の言葉で説明する。
- 夜:間違えた部分だけを確認し、翌日の復習内容を決める。
- 就寝前:必要な睡眠時間を確保できるよう、学習を切り上げる。
このプランはあくまで一例です。重要なのは、朝に思い出し、日中に新しい情報を学び、夜に不足部分を確認するという学習の流れを作ることです。
三日坊主にならないための継続のコツ記憶力を高めるトレーニングは、短期間で劇的な変化を期待するより、毎日少しずつ続ける方が現実的です。
継続するためには、次の3つを意識しましょう。
1. 最初は5分から始める
最初から1時間の学習を目指すと、忙しい日には実行できなくなることがあります。まずは5分間、前日の内容を思い出すだけでも構いません。
2. 覚えた量より思い出せた量を記録する
学習時間だけでなく、正しく答えられた問題数や、説明できた内容を記録すると、成長を確認しやすくなります。
3. できなかった日を引きずらない
復習できない日があっても、次の日から再開すれば問題ありません。完璧なスケジュールを守ることより、長期的に学習を継続できる環境を整えることが大切です。
【記憶力上げる方法】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:記憶力を上げるには、まず何から始めればいいですか?
A1:最初におすすめしたいのは、想起練習です。教科書やノートを読んだ後に閉じ、内容を自分の言葉で説明してみましょう。答え合わせをして間違えた部分を確認し、翌日にも同じ内容を思い出すと、学習の定着を図りやすくなります。
Q2:短期記憶を鍛えるにはどんなトレーニングが効果的ですか?
A2:数字や単語を意味のあるグループに分けるチャンク化、短い文章を読んで再現する練習、覚えた内容を数分後に思い出す方法などがあります。単純に記憶容量を増やそうとするより、情報を整理して扱う技術を身につけることが実践的です。
Q3:記憶力を高めるためには何時間寝ればいいですか?
A3:厚生労働省の睡眠ガイドでは、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することが推奨されています。適正な睡眠時間には個人差があるため、日中の眠気や睡眠後の休養感も参考にしてください。
Q4:記憶力を上げるために運動は必要ですか?
A4:有酸素運動は身体の健康だけでなく、脳の健康や記憶機能との関連も研究されています。ウォーキングや軽いジョギングなど、無理なく続けられる活動から始めましょう。運動が記憶力を必ず改善するという保証はありませんが、健康的な生活習慣の一部として取り入れる価値があります。
Q5:記憶力を上げるには暗記と復習のどちらが重要ですか?
A5:両方が必要ですが、覚えた内容を自力で思い出す練習と、時間を空けて復習する方法が特に有力です。最初に内容を理解したうえで、想起練習と分散学習を組み合わせることをおすすめします。
Q6:脳トレアプリを毎日使えば記憶力は改善しますか?
A6:練習した課題や似た課題の成績が改善する可能性はあります。ただし、脳トレによって知能や日常生活のあらゆる能力が向上するとは限りません。実際の仕事や勉強に関連する課題を選び、学習成果を確認しながら活用することが大切です。
記憶力を高めるために必要なのは、特別な才能や高価な脳トレ教材だけではありません。認知心理学の研究が支持する想起練習と分散学習を中心に、睡眠、運動、集中できる環境を整えることが基本です。
特に意識したいのは、次の5つです。
- 学習した内容を資料なしで思い出す。
- 復習を翌日、数日後、1週間後と分散させる。
- 覚えた情報を自分の言葉で説明し、関連付ける。
- 睡眠時間を確保し、記憶の定着を支える。
- ウォーキングなどの身体活動を日常生活に取り入れる。
2026年10月に公開された学校教育のメタ分析でも、検索練習や分散学習の有用性が実際の授業環境で検証されています。一方で、その効果は学習内容や復習の方法によって変わるため、全員に同じ学習法が最適というわけではありません。
【プロの結論】記憶力を上げるための最も実践的な考え方は、「何度読んだか」ではなく「何も見ずに何度思い出せたか」を基準に学習を組み立てることです。そこに適切な復習間隔と睡眠、運動を組み合わせれば、無理に勉強時間を増やさなくても学習の質を改善する余地があります。
まずは今日覚えたことを、寝る前に5分だけ何も見ずに思い出してみてください。翌日にも同じ内容を確認する。その小さな積み重ねこそが、長く使える記憶を育てる第一歩です。
主な研究・公的資料: 認知心理学の学習技法レビュー、2026年10月29日公開のメタ分析、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」、PNAS掲載の運動と海馬に関する研究、米国国立老化研究所の記憶に関する資料。