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馬の汗はなぜ白く泡立つ?ラセリンの正体と発汗量、人間との違い・熱中症対策を徹底解説

高峰 弦 高峰 弦 • 更新: • 公開: • 読了約 25 分
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運動後の馬の首や胸、後ろ脚の付け根などに、白い泡のような汗が付いているのを見たことはないでしょうか。馬は人間と同じように汗をかく動物ですが、その量や成分、体温を下げる仕組みには大きな違いがあります。特に興味深いのが、汗に含まれる「ラセリン(Latherin)」という特殊なタンパク質です。この成分が馬の汗を泡立たせるとともに、厚い被毛の表面まで水分を広げ、効率よく熱を逃がす働きをしています。

馬は激しい運動や高温多湿の環境で、1時間に数リットルから数十リットルもの汗を失うことがあります。その汗には水分だけでなく、ナトリウムや塩化物、カリウムなどの電解質も含まれています。汗を大量にかくことは自然な体温調節の反応ですが、過剰な水分・塩分の損失は脱水症状や熱中症につながる危険もあります。2026年2月更新のMerck Veterinary Manualなどの獣医学資料をもとに、馬の汗の正体から発汗量、人間との違い、運動後のケアまで詳しく解説します。

【体温調節の秘密】馬はなぜ大量に汗をかく?汗腺の仕組みを解説

馬の汗

馬が大量に汗をかく最大の理由は、運動によって生じた体内の熱を効率よく外へ逃がすためです。馬は走るための筋肉が発達しており、ギャロップや競走などの激しい運動では、筋肉の活動によって大量の熱が発生します。

体温が上がりすぎると、筋肉や神経の働きに悪影響が及び、運動能力だけでなく生命にも関わります。そのため、馬の身体には大量の汗を分泌し、蒸発によって熱を奪う仕組みが備わっています。

馬の汗腺はアポクリン汗腺が中心

馬の汗腺は、主にアポクリン汗腺と呼ばれるタイプです。被毛のある部分を中心に皮膚の広い範囲に分布し、毛包付近に汗を分泌します。

汗腺は血液から水分や電解質などを取り込み、運動や体温上昇に応じて汗を分泌します。運動時の発汗には、神経・ホルモン系の反応が関係しており、馬では汗腺に存在するβ2アドレナリン受容体などが重要な役割を果たします。

つまり、馬の発汗は単純に気温が高いときだけに起こる現象ではありません。運動による筋肉の熱産生、外気温、湿度、個体の体調や暑熱順化の状態などが組み合わさって発汗量が変化します。

汗が蒸発すると体温が下がる

馬の体温調節で重要なのが、汗の蒸発による気化熱です。皮膚や被毛に広がった水分が蒸発するとき、周囲から熱エネルギーを奪います。その結果、身体の表面から熱が放出され、体温の上昇が抑えられます。

フロリダ大学獣医学部の大型動物病院が2025年9月に公開した無汗症に関する解説では、馬の体熱の約65〜70%が汗の蒸発によって失われると説明されています。これは、発汗が馬の体温調節にとってどれほど重要かを示す数字です。

ただし、汗をかけば必ず十分に冷却できるわけではありません。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、皮膚や被毛が濡れていても体内に熱が残る場合があります。

特に日本の夏のように高温多湿の環境では、汗が大量に出ていることだけで安心するのは危険です。発汗の状態と同時に、呼吸数や心拍数、体温、運動後の回復状況を観察する必要があります。

【白い泡の正体】馬の汗が泡立つ理由はラセリンにあった

馬の汗について多くの人が疑問に感じるのが、なぜ白い泡が発生するのかという点です。人間の汗は基本的に透明で水のような見た目ですが、馬の場合は首や胸、腹部、後ろ脚の付け根などに白い泡が現れることがあります。

その大きな理由は、馬の汗に含まれる特殊なタンパク質「ラセリン」です。

ラセリンとは?汗を被毛に広げる特殊なタンパク質

ラセリン(Latherin)は、馬の汗や唾液に含まれるタンパク質です。2009年に科学誌PLOS ONEで発表された研究「Latherin: A Surfactant Protein of Horse Sweat and Saliva」では、このタンパク質が水の表面張力を低下させる性質を持つことが示されました。

一般的に、馬の被毛には皮脂などが存在し、水分が均一に広がりにくいという特徴があります。厚い被毛は外部からの刺激や環境変化を防ぐ一方で、汗による熱の放出には不利に働くことがあります。

そこで役立つのがラセリンです。界面活性作用によって水の表面張力を下げ、汗が毛の表面まで広がりやすくなるように助けます。被毛の広い範囲に汗を行き渡らせることで、蒸発による冷却を効率化しているのです。

なお、ラセリンは一般的な糖タンパク質とは異なり、研究で確認されたものは糖鎖を持たないタンパク質です。洗剤のように働く性質を持っていますが、人工的な洗浄成分ではなく、馬自身が作り出す生体由来の物質です。

白い泡はどうしてできる?

ラセリンには水を広げるだけでなく、泡立ちに関係する性質もあります。汗が被毛に広がり、運動中の身体の動きや皮膚・毛同士の摩擦によって空気が混ざると、細かな泡が形成されます。

泡の内部には多数の小さな気泡が含まれています。光が気泡の境界でさまざまな方向に散乱するため、全体として白く見えるのです。

特に泡が目立ちやすいのは、次のような場所です。

  • 首や胸:運動中に皮膚や被毛が動き、摩擦が生じやすい部分。
  • 後ろ脚の付け根:脚の運動によって皮膚同士が接触しやすい部分。
  • 鞍の周辺:鞍や馬具と被毛が接触する部分。
  • 腹部:運動時の身体の動きによって被毛が擦れやすい部分。

泡が出ているからといって、必ずしも異常があるわけではありません。むしろ、馬特有の発汗機能が働いている際に見られる自然な現象です。

白い泡が多ければ健康というわけではない

ここで注意したいのが、白い泡の量と健康状態を直接結び付けないことです。泡の出方は、運動の強度、発汗量、被毛の状態、摩擦の程度などによって変わります。

泡が少ないからといって異常とは限りませんし、泡が多いからといって十分に体温が下がっているとも限りません。高温多湿の環境では、汗が蒸発せずに残り、身体に熱が蓄積している可能性もあります。

泡の見た目だけではなく、馬の呼吸や体温、動き、表情などを総合的に確認することが大切です。

【数値で比較】馬の発汗量の目安と汗の成分・電解質損失

馬の汗は見た目だけでなく、量にも大きな特徴があります。激しい運動を行う馬は、体重に対して非常に多くの汗を分泌します。

2026年2月に更新されたMerck Veterinary Manualの「Nutritional Requirements of Horses and Other Equids」では、馬の運動強度別の推定発汗量が紹介されています。

馬の発汗量は体重100kg当たり1時間でどのくらい?

同資料に示された発汗量の目安は、体重100kg当たり1時間で以下のとおりです。

運動強度 発汗量の目安 体重500kgの馬に換算
軽い運動 0.5〜1L 2.5〜5L/時間
中程度の運動 1〜2L 5〜10L/時間
激しい運動 2〜5L 10〜25L/時間
非常に激しい運動 5L超 25L超/時間

これは運動強度別の推定値を体重500kgに換算した参考値です。実際の発汗量は、運動時間、気温、湿度、トレーニング状態、個体差などによって変化します。

例えば、体重500kgの馬が中程度の運動を1時間行った場合、推定される発汗量は5〜10Lです。激しい運動では10〜25Lに達する可能性もあります。

ただし、これらの数値をすべての馬に当てはまる固定的な基準として扱うことはできません。競技内容や気候条件によって幅が大きくなるため、実際の管理では馬ごとの運動前後の体重や飲水量、回復状態なども参考にします。

馬の汗に含まれる成分とは?水分だけではない

馬の汗は大部分が水分ですが、それ以外にも体内の機能を維持するために欠かせない成分が含まれています。

  • 水分:汗の蒸発によって体温を下げる中心的な成分。
  • ナトリウム:体液の浸透圧や神経伝達、筋肉の働きに関係する。
  • 塩化物:体液のバランスや酸塩基平衡を保つために必要。
  • カリウム:筋肉の収縮や神経の働きに関係する。
  • タンパク質:ラセリンなど、被毛への水分の広がりに関係する成分が含まれる。
  • その他の成分:カルシウムや尿素なども含まれる。

特に重要なのが、ナトリウム、塩化物、カリウムの3種類の電解質です。これらは筋肉の正常な収縮や神経の伝達、体液の調整に欠かせません。

馬の汗は人間より塩分濃度が高い?

馬の汗は、人間の汗と比較して電解質濃度が高いことが特徴です。獣医学の研究では、馬の汗は血漿とほぼ等張からやや高張の性質を持つと報告されています。

Merck Veterinary Manualに掲載された推定値では、汗1L当たりの電解質損失は次のようになっています。

  • ナトリウム:約3.1g
  • 塩化物:約5.3g
  • カリウム:約1.6g
  • カルシウム:約0.12g

例えば、汗を10L失った場合、単純計算ではナトリウム約31g、塩化物約53g、カリウム約16gに相当する量が失われます。実際の濃度は発汗速度や運動条件によって変動しますが、汗による電解質損失が非常に大きいことが分かります。

同資料では、激しい運動を1〜2時間行うだけで、汗による塩化ナトリウムの損失が30gを超える場合があると説明されています。

このため、長時間の運動や競技に参加する馬では、水分補給だけでなく、電解質の補給も重要な管理項目になります。ただし、必要な補給量は飼料や運動量、発汗量によって異なるため、一律に大量の塩分を与えることは避けるべきです。

【人間との違い】馬の汗はなぜ特別?発汗の仕組みを比較

馬も人間も汗を蒸発させて体温を下げる動物ですが、汗腺の種類や汗の成分、冷却方法には違いがあります。

最も大きな違いは、馬が厚い被毛を持ちながら効率的に汗を蒸発させるため、ラセリンという特殊なタンパク質を利用していることです。

馬と人間の汗の違い

体温調節に使われる主な汗腺は、馬ではアポクリン汗腺、人間ではエクリン汗腺です。人間にもアポクリン汗腺は存在しますが、主な体温調節を担うのはエクリン汗腺です。

また、汗の電解質濃度にも違いがあります。人間の汗は一般に血漿より低張ですが、馬の汗は等張からやや高張とされ、運動時には塩化ナトリウムの損失が大きくなります。

それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。

  • 汗腺:馬はアポクリン汗腺、人間は体温調節にエクリン汗腺を主に利用する。
  • 汗の成分:馬の汗にはラセリンなどのタンパク質が含まれる。
  • 塩分濃度:馬の汗は人間の汗より電解質濃度が高い傾向がある。
  • 被毛との関係:馬はラセリンによって汗を被毛に広げ、蒸発を促進する。
  • 水分・塩分管理:馬は運動中の大量発汗によって、水分と電解質の両方を大きく失うことがある。

このように、馬の汗は単なる水分の排出ではありません。厚い被毛という身体的特徴と、激しい運動に対応するために発達した独自の体温調節システムの一部なのです。

【見逃してはいけない異常】馬の無汗症・脱水症状・熱中症のサイン

馬が汗をかくことは健康な体温調節の一部ですが、汗の状態が普段と違う場合には注意が必要です。特に警戒したいのが、汗が出なくなる無汗症、発汗による脱水、そして熱中症です。

馬の無汗症とは?汗をかかないことが危険な理由

馬の無汗症は、英語でAnhidrosisと呼ばれる状態で、体温が上昇しても適切に汗を分泌できなくなるものです。完全に汗が出ない場合だけでなく、身体の一部だけ汗が出にくくなる不完全なケースもあります。

馬は汗の蒸発によって体熱の大部分を逃がすため、発汗機能が低下すると体内に熱が蓄積しやすくなります。

フロリダ大学獣医学部の2025年9月の解説では、無汗症の馬には運動後の呼吸数増加や体温上昇、運動耐性の低下、食欲減退などが見られるとされています。慢性化した場合には、皮膚の乾燥や被毛の状態の悪化が起きることもあります。

無汗症は暑熱環境で問題になりやすいものの、暑い地域で飼育されている馬だけに発生するわけではありません。遺伝的な要因や環境、個体の体質などが関係すると考えられています。

なお、無汗症に対して確立された治療法は限られており、同大学の解説では、涼しい環境への移動や日陰、送風、散水などによる熱管理が基本とされています。疑わしい症状があれば、獣医師による診察と評価が必要です。

馬の脱水症状を見分けるポイント

大量の汗をかくと、水分と電解質が体外に失われます。補給が十分でなければ脱水状態になり、血液循環や筋肉の働きにも影響が出る可能性があります。

馬の脱水を疑う主なサインは次のとおりです。

  • 歯茎や口の中が乾燥している。
  • 皮膚を軽くつまんで離しても、元の状態に戻るまで時間がかかる。
  • 普段より元気がなく、動きたがらない。
  • 食欲や飲水量が低下している。
  • 尿量が減少している。
  • 呼吸や心拍が速く、運動後の回復が遅い。

皮膚をつまんで戻り方を見る方法は、一般的に皮膚テントテストと呼ばれます。ただし、年齢や皮膚の状態などによって結果が変わるため、この検査だけで脱水を確定することはできません。

馬の熱中症で注意すべき危険サイン

熱中症や熱ストレスが進むと、単なる疲労とは異なる症状が現れます。特に、運動を中止した後も呼吸が落ち着かない場合は注意が必要です。

ミネソタ大学エクステンションの馬の暑熱管理資料では、熱ストレスの兆候として、直腸温の上昇、心拍数や呼吸数の増加、大量発汗、疲労、脱水などを挙げています。

具体的な警戒の目安は次のとおりです。

  • 直腸温が39.4℃を超える:熱ストレスが疑われる状態。運動を中止して冷却と状態確認が必要。
  • 心拍数が毎分60回を超える:高い心拍数が持続する場合は要注意。
  • 呼吸数が毎分40回を超える:特に休息後も呼吸が速い場合は警戒する。
  • 運動終了から20分たっても呼吸や心拍が十分に回復しない:熱の放散が追い付いていない可能性がある。
  • ふらつきや筋力低下、意識状態の変化:重度の熱障害を疑う危険な兆候。

直腸温が約41.1℃を超える状態は、熱中症の重大な危険サインです。体温だけで重症度を判断することはできませんが、ふらつきや運動失調、虚脱などを伴う場合は緊急事態です。

こうした症状がある場合は、直ちに運動を中止し、日陰や風通しのよい場所へ移動させ、獣医師に連絡してください。熱中症は進行すると多臓器に影響し、命を落とす可能性もあります。

【運動後の正しいケア】馬の汗を洗い流す方法と水分・電解質の補給

運動後の馬のケアでは、汗を洗い流すだけでなく、体温の回復、水分補給、電解質の管理を組み合わせることが重要です。

1. 運動後は馬の体温と呼吸を確認する

まず運動を終了し、馬を安全で風通しのよい場所へ移動させます。呼吸の速さや心拍数、体表の熱さ、発汗の程度を確認しましょう。

軽い運動後であれば、呼吸が徐々に落ち着き、体温が正常な状態に戻っていくかを観察します。激しい運動や暑い環境での作業後は、通常より慎重に状態を確認する必要があります。

2. 水で身体を冷やし、汗を洗い流す

身体が熱を持っている場合は、冷たい水を全身にかけて冷却します。首、背中、胸、腹部、脚など、広い範囲に水をかけることがポイントです。

ペンシルベニア州立大学エクステンションの暑熱管理資料では、運動後に過熱した馬に対して、冷たい水を全身に5〜15分程度継続してかける方法が紹介されています。

この際、冷却の途中で水を何度も拭き取ったり、スクレーパーで必ず取り除いたりする必要はありません。継続して水をかけることで、身体から熱を奪う効果が期待できます。

氷水でなければ冷却できないというわけではありません。通常の水道水でも冷却に役立ちます。重度の熱中症が疑われる場合は、獣医師の指示のもとで迅速な冷却を続けてください。

3. 水分補給を制限しない

大量に汗をかいた馬には、失われた水分を補うことが欠かせません。新鮮で清潔な飲み水をいつでも飲めるようにし、運動中や運動後にも適切に水を提供します。

Merck Veterinary Manualによると、体重500kgの成馬は、安静に近い条件でも飼料の内容などに応じて1日21〜29L程度の水を飲むことがあります。暑い環境で1時間運動した場合には、汗や蒸発による損失を補うために72Lを超える飲水が必要になるケースも示されています。

これは高温環境での大きな損失を想定した参考値であり、すべての馬に一律で72Lを与えるという意味ではありません。飲水量は体重、運動量、飼料、気温、発汗量などに応じて管理します。

4. 電解質は馬専用の製品を適切に使う

長時間の運動や大量発汗があった場合には、ナトリウムや塩化物、カリウムなどの補給も検討します。特に競走馬や耐久競技に参加する馬では、汗による電解質損失が大きくなるため、日常の飼料内容と運動量を踏まえた管理が必要です。

ただし、電解質を多く与えればよいわけではありません。過剰な補給はミネラルバランスを崩す可能性があります。濃縮した電解質ペーストを脱水状態の馬に無理に与えることにも注意が必要です。

電解質を飲み水に混ぜる場合は、味を嫌って飲水量が減る馬もいるため、普通の水も別に用意します。補給量や製品の選択は、獣医師や馬の栄養管理に詳しい専門家に相談することが望ましい方法です。

5. 体温が落ち着いてから乾燥と皮膚の状態を確認する

冷却や洗浄の後は、被毛の状態を確認し、馬が冷えすぎないように管理します。特に気温が低い環境では、濡れたまま長時間放置しないよう注意が必要です。

首や胸、鞍の下、脚の付け根などは汗や汚れが残りやすい場所です。皮膚に赤みや擦れ、傷がないかを確認し、必要に応じて適切に乾かしてブラッシングします。

まだ身体が熱い状態で厚い馬着やブランケットを着せると、熱がこもる可能性があります。体温が落ち着いてから、気温や馬の状態に合わせて保温を判断してください。

運動後のケアで大切なのは、汗をきれいにすることだけではありません。発汗によって失われた水分と電解質を補い、馬自身が無理なく体温を下げられる環境を整えることです。

【プロの結論】馬の汗から分かる健康状態と正しい管理の考え方

馬の汗は、身体が運動で発生した熱を外へ逃がすために発達させた重要な生理機能です。大量の汗、白い泡、ラセリン、電解質の損失は、それぞれ独立した現象ではなく、馬が効率よく運動を続けるための仕組みとしてつながっています。

今回の科学的な知見から、特に押さえておきたいのは次の3点です。

  • 白い泡は馬特有の発汗機能の一部:ラセリンが被毛への水分の広がりを助け、摩擦などによって泡が生じる。
  • 汗は水分だけでなく電解質も失わせる:大量発汗が続くと、脱水や筋肉の機能低下につながる可能性がある。
  • 汗が出ていれば安全とは限らない:高温多湿では蒸発が妨げられ、発汗していても体温が上昇することがある。

馬の汗を観察するときに重要なのは、単純に泡の量や汗の多さを評価しないことです。運動の強度や環境に見合った発汗があるか、休息後に呼吸が落ち着くか、水分を十分に摂取できているか、体温が正常に戻っているかを総合的に確認します。

特に、暑い環境で運動しているのに汗がほとんど出ない馬や、運動後も激しい呼吸が続く馬は、無汗症や熱障害の可能性があります。普段との違いを早期に把握し、必要な場合には速やかに獣医師へ相談することが大切です。

【馬の汗】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:馬の汗が白く泡立つのは病気だからですか?
A1:通常、白い泡はラセリンというタンパク質の界面活性作用と、運動中の摩擦などによって生じる自然な現象です。泡があるだけで病気とは判断できません。ただし、皮膚の炎症や傷、異常な体温上昇、呼吸の乱れなどがある場合は獣医師に相談してください。

Q2:馬は1時間に何リットルの汗をかきますか?
A2:Merck Veterinary Manualの推定では、体重100kg当たり1時間に軽い運動で0.5〜1L、中程度で1〜2L、激しい運動で2〜5L、非常に激しい運動では5Lを超えることがあります。体重500kgの馬なら、中程度の運動で5〜10Lが参考値です。気温や湿度、運動時間によって変わります。

Q3:馬が汗をかかない場合はどうすればよいですか?
A3:暑い環境や運動中にもかかわらず汗が出ず、呼吸が速い、体温が高い、疲れやすいといった症状があれば、無汗症や熱障害が疑われます。運動を中止して涼しい場所へ移動させ、身体を冷やしながら獣医師に連絡してください。無理に運動を続けることは危険です。

Q4:馬の汗には塩分がどのくらい含まれていますか?
A4:Merck Veterinary Manualの推定値では、汗1L当たりナトリウム約3.1g、塩化物約5.3g、カリウム約1.6gが失われます。発汗速度や運動条件によって変動しますが、馬は大量の汗とともに多くの電解質を失うため、長時間の運動では補給管理が重要です。

Q5:運動後の馬にはすぐ水を飲ませてもよいですか?
A5:基本的には新鮮で清潔な水を飲める状態にしておくことが大切です。暑い馬だからといって飲水を不必要に制限するべきではありません。大量発汗後は水分だけでなく電解質の損失にも注意し、馬の状態に合わせて適切に管理してください。

馬の汗が大量に出るのは、筋肉の運動によって発生した熱を効率よく逃がすためです。白く泡立つ理由には、汗に含まれるラセリンという特殊なタンパク質が関係しています。この成分が水の表面張力を下げ、厚い被毛に汗を広げることで、蒸発による冷却を助けています。

一方、馬の汗にはナトリウムや塩化物、カリウムなどの電解質も多く含まれています。激しい運動では大量の水分と塩分を失うため、適切な飲水と電解質管理が欠かせません。

馬の汗を健康状態の判断に役立てるには、次の基準を意識が必要です。

  • 通常の発汗と泡:運動強度に見合った汗や白い泡が見られ、休息後に呼吸や体温が落ち着いていくか。
  • 水分・電解質の管理:十分な飲水環境があり、運動量に応じた栄養・ミネラル補給ができているか。
  • 異常の早期発見:汗が出ない、呼吸が落ち着かない、体温が高い、ふらつくといった症状がないか。

馬の白い泡は、単なる珍しい見た目ではありません。その背景には、ラセリンというタンパク質と、激しい運動に適応した体温調節の仕組みがあります。汗の量だけに注目するのではなく、その成分や蒸発の状態、運動後の回復まで観察することが、馬の健康と安全を守るための基本です。

主な科学的根拠・参考資料

- Merck Veterinary Manual「Nutritional Requirements of Horses and Other Equids」(2026年2月更新)
- PLOS ONE「Latherin: A Surfactant Protein of Horse Sweat and Saliva」(2009年)
- University of Florida College of Veterinary Medicine「Anhidrosis: Help – My Horse Doesn’t Sweat!」(2025年9月)
- University of Minnesota Extension「Caring for Horses in Hot Weather」
- Pennsylvania State University Extension「Managing Horses in Hot Temperatures」

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コンテンツディレクター 高峰 弦
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