薩摩硫黄島は、今回初めて噴火した火山ではない。気象庁の有史以降の火山活動記録を見ると、過去にも水蒸気噴火やマグマ噴火、断続的な噴煙活動が確認されている。
とりわけ注目されるのが、1934~1935年の海底噴火と、2019年以降に繰り返されている硫黄岳火口の活動だ。
1934~1935年には昭和硫黄島が誕生薩摩硫黄島の火山史で重要な転換点となったのが、1934年から1935年にかけての噴火である。
1934年9月6日から地震が群発し、9月20日には島の東方約2kmの海底で噴火が発生した。
その後、海底から溶岩が流出し、同年12月には新島が形成された。この島が現在の昭和硫黄島である。
気象庁の記録によると、この噴火のマグマ噴出量は0.276DRE立方km、火山爆発指数(VEI)は4とされている。
現在の硫黄岳火口で起きている小規模な噴火と、当時の大規模な海底マグマ噴火は、規模も発生場所も異なる現象だ。過去の大規模噴火を、そのまま今回の噴火の予測に当てはめることはできない。
2019年以降は噴火と火映が繰り返される近年の主な活動を整理すると、次のようになる。
- 2019年11月2日: 硫黄岳火口で噴火。噴煙は火口縁上1,000mをわずかに超える高さまで上昇した。
- 2020年4月29日: 噴火が発生し、噴煙は火口縁上1,000mまで上昇。同年10月6日にも噴火を観測。
- 2021~2023年: 噴火は観測されなかったものの、噴煙活動や夜間の火映が確認された。
- 2024年9月1日・3日: 硫黄岳火口で2回の噴火。噴煙は最高で火口縁上1,000mまで上昇した。
- 2025年12月29日: 噴火が発生。噴煙はおおむね火口縁上200mまで上昇した。
- 2026年5月17日: 噴火が発生。噴煙は火口縁上400mまで上昇した。
- 2026年10月28日: 13時07分と14時15分に2回の噴火。最高900mの噴煙を観測した。
この経緯から見えてくるのは、噴火が確認されない時期にも、火映や噴煙などの火山活動が続いてきたという特徴だ。
特に2024年から2026年にかけては、年をまたいで噴火が記録されている。今回の10月28日の噴火は、単発の突発的な出来事としてだけでなく、こうした長期的な活動の延長線上で捉える必要がある。
【今後の噴火リスクと防災対策】島民・観光客が確認すべきこと

気になるのは、今後さらに噴火する可能性があるのかという点だ。
気象庁は、10月30日の解説情報で、噴火後の活動について次のような評価を示している。
- 火山性地震は少ない状態。
- 火山性微動は観測されていない。
- 夜間の火映が観測されている。
- 時折、噴煙が高く上がる。
- 長期的には熱活動と噴煙活動が高まった状態が続いている。
これらを総合すると、直近の噴火が停止したことと、火山活動全体が落ち着いたことは同じではない。
今後注目したい4つの観測ポイント1. 火山性地震の増加
地震回数が増加するかどうかは、地下の火山活動を把握するための重要な観測項目となる。特に、普段の状態と比べて変化が続くかが注目される。
2. 火山性微動の発生
継続時間や振幅に変化が現れる場合、火山内部の状態を判断する材料になる。気象庁は微動だけでなく、ほかの観測データと合わせて評価する。
3. 噴煙の高さと火映現象
噴煙が急に高くなる場合や、夜間の火映が続く場合は、熱活動や噴煙活動の変化に注意が必要だ。
4. 火山ガスの放出状況
薩摩硫黄島では、火山ガスにも注意が呼びかけられている。火山ガスは目に見えない場合もあり、噴煙が目立たないからといって安全とは限らない。
火山灰が降った場合の対応火山灰は大きな噴石とは異なり、風によって広い範囲に運ばれることがある。
島内や周辺地域で降灰が確認された場合には、次の点を意識したい。
- 不要不急の屋外活動を控える。
- 窓や扉を閉め、室内への火山灰の侵入を減らす。
- 屋外ではマスクや眼を保護するものを使用する。
- 車両を運転する場合は視界や路面状況に注意する。
- 火山ガスの危険がある場所には近づかない。
- 自治体から避難や立ち入りに関する指示が出た場合は従う。
火口周辺にいる場合は、降灰対策よりも先に危険区域から離れることが優先される。立ち入り規制区域へ近づかないことが基本だ。
三島村の防災情報と気象庁の発表をどう確認する?情報収集では、気象庁と三島村の役割を分けて考えると分かりやすい。
| 情報の発信元 | 確認できる主な内容 |
|---|---|
| 気象庁 | 噴火警報、警戒レベル、噴煙、地震、火山性微動 |
| 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台 | 薩摩硫黄島の火山活動解説情報 |
| 三島村 | 地域の防災情報、現地の規制や住民への案内 |
| 三島村役場硫黄島出張所 | 島内の状況に関する情報提供 |
今回の降灰についても、三島村役場硫黄島出張所の情報が気象庁の解説に反映されている。
気象庁の観測データだけでなく、島内の実際の状況を把握するうえで、自治体からの情報も欠かせない。
なお、気象庁の10月30日発表では、次回の定期的な火山の状況に関する解説情報は11月6日(金)16時頃の予定とされた。火山活動に変化があれば、予定を待たずに情報が発表される。
【薩摩硫黄島噴火に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:薩摩硫黄島は2026年11月3日現在も噴火していますか?
A1:気象庁の10月30日16時発表の解説情報では、10月28日の2回の噴火以降、新たな噴火は観測されていない。ただし、噴火警戒レベル2は継続しており、今後の噴火の可能性にも注意が必要だ。
Q2:2026年10月28日の噴煙は何メートルまで上がりましたか?
A2:最高で火口縁上900mまで上昇した。13時07分の噴火では900m、14時15分の噴火では300mが記録されている。
Q3:噴火警戒レベル2なら島全体が危険なのですか?
A3:島全域への避難を意味するものではない。現在は硫黄岳火口中心からおおむね0.5kmの範囲で大きな噴石への警戒が必要とされている。ただし、風下側への降灰や小さな噴石、火山ガスにも注意が必要だ。
Q4:薩摩硫黄島では過去にも大きな噴火がありましたか?
A4:ある。1934~1935年には東方沖の海底噴火によって昭和硫黄島が形成された。15~16世紀にも硫黄岳で火砕流を伴うマグマ噴火が記録されている。
Q5:今後の火山活動はどこで確認できますか?
A5:気象庁の薩摩硫黄島の火山活動情報、火山観測データ、火山の状況に関する解説情報を確認できる。現地の規制や防災対応については三島村の公式防災情報も併せて確認したい。
2026年11月3日時点の薩摩硫黄島は、10月28日に硫黄岳火口で2回の噴火が発生した後、新たな噴火は観測されていない状態にある。
今回の主な要点は次のとおりだ。
- 10月28日13時07分と14時15分に2回の噴火が発生。
- 噴煙の最高高度は火口縁上900m。
- 2回の噴火で大きな噴石は観測されていない。
- 島内の集落では少量の降灰を確認。
- 火山性地震は少なく、火山性微動は観測されていない。
- 夜間の火映や噴煙活動など、長期的な熱活動の高まりは継続。
- 噴火警戒レベル2と火口中心からおおむね0.5kmの警戒が継続。
今回の事例で特に重要なのは、噴火が止まったことと、火山活動が収束したことを混同しないことだ。
火山活動は、噴煙の高さや噴火回数だけで判断できるものではない。地震、微動、火映、火山ガス、地殻変動など、複数の観測結果を総合的に見る必要がある。
島民にとっては日常生活と防災の両立、観光客にとっては現地の立ち入り規制や交通情報の確認が重要になる。
今後は11月6日に予定されている気象庁の解説情報に加え、活動に変化があった際の臨時発表にも注目したい。薩摩硫黄島の状況を判断する際には、過去の噴火映像やSNS上の断片的な情報だけでなく、気象庁と三島村が公表する最新の情報を基準にすることが大切だ。