衆議院と参議院の両方が首相を指名するにもかかわらず、最終的に意見が一致しなかった場合、衆議院の議決が優先されることがあります。
これが「衆議院の優越」です。
ただし、衆議院が常に参議院より強い権限を持っているという意味ではありません。首相指名については、日本国憲法第67条第2項に具体的な条件が定められています。
両院協議会は何をする機関?例えば、衆議院が候補者Aを、参議院が候補者Bを首相に指名したとします。
この場合、両院の意見を調整するために両院協議会が開かれます。
両院協議会は、衆議院と参議院から選ばれた協議委員が集まり、異なる議決を調整するための機関です。
話し合いによって意見が一致すれば、調整された内容に従って手続きが進みます。しかし、協議しても意見が一致しない場合には、憲法の規定によって衆議院の議決が国会の議決となります。
衆議院の優越が認められる2つの条件首相指名について、衆議院の議決が優先されるのは次のケースです。
1. 衆議院と参議院で異なる人物を指名し、両院協議会を開いても意見が一致しない場合。
2. 衆議院が首相指名を議決した後、国会休会中の期間を除いて10日以内に参議院が指名の議決をしない場合。
つまり、参議院が異なる候補者を支持しても、一定の条件を満たせば衆議院の指名が国会の最終的な意思になります。
この仕組みは、衆議院の任期が最長4年で、解散もあることから、より直近の民意を反映しやすいという考え方と関係しています。
一方、参議院は任期6年で、3年ごとに半数が改選されるため、政治情勢の変化を比較的長い視点で審議する役割があります。
両院の性格が異なるからこそ、意見が対立した場合の調整方法が憲法に設けられているのです。
2026年は衆議院の優越が使われたのか?ここは誤解されやすいポイントです。
2026年2月18日は、衆議院では高市氏が1回目で指名され、参議院では決選投票によって高市氏が指名されました。
つまり、最終的に両院が同じ人物を指名しています。
そのため、今回の首相指名では、両院協議会による調整も、衆議院の優越による最終決定も必要ありませんでした。
参議院で決選投票が行われたことと、衆議院の優越が適用されたことは別問題です。 この違いを理解すると、首相指名選挙のニュースが格段に読みやすくなります。
【内閣総辞職から組閣まで】首相指名選挙後に何が起きる?

国会で首相が指名されても、その瞬間に新しい内閣がすべての手続きを終えるわけではありません。
内閣総辞職、首相の任命、国務大臣の選考、認証式、初閣議という流れがあります。
なぜ2026年2月18日に第1次高市内閣は総辞職したのか今回の総辞職の根拠となったのは、日本国憲法第70条です。
同条では、内閣総理大臣が欠けた場合、または衆議院議員総選挙後に初めて国会が召集された場合、内閣は総辞職しなければならないと規定しています。
2026年2月18日、第221回国会の特別会が召集されました。
これに伴い、第1次高市内閣は同日午前の臨時閣議で総辞職を決定しました。
内閣官房長官の午前の記者会見でも、今回の総辞職は憲法第70条に基づくものだと説明されています。
ここで注意したいのは、総辞職が必ずしも首相の交代を意味するわけではないことです。
総選挙後の国会で、同じ人物が再び首相に指名されることもあります。2026年の高市氏がまさにそのケースでした。
また、憲法第71条によって、総辞職した内閣は新しい首相が任命されるまで引き続き職務を行います。政治的な空白によって行政が停止しないようにするためです。
天皇による任命と国務大臣の認証国会による指名の後は、憲法第6条に基づき、天皇が国会の指名に基づいて内閣総理大臣を任命します。
このとき行われるのが親任式です。
一方、国務大臣については憲法第68条に基づいて内閣総理大臣が任命します。国務大臣の過半数は国会議員の中から選ばれなければなりません。
その後、宮中で国務大臣の認証式が行われます。
2026年2月18日の第2次高市内閣発足では、次の手順が進められました。
1. 第1次高市内閣が総辞職。
2. 衆議院・参議院で首相指名選挙を実施。
3. 高市早苗氏が第105代内閣総理大臣に指名。
4. 天皇による内閣総理大臣の親任式。
5. 国務大臣の認証式。
6. 第2次高市内閣が発足。
7. 首相官邸で記者会見と初閣議を実施。
首相官邸の公式発表によると、木原稔内閣官房長官が閣僚名簿を発表し、宮中での親任式と認証式を経て第2次高市内閣が発足しました。
このときは閣僚全員が再任され、初閣議では内閣総理大臣談話や基本方針などが決定されました。
【議院内閣制と直接選挙の違い】国民が首相を選べない理由
首相指名選挙について、よくある疑問が「なぜ国民が首相に直接投票できないのか」という点です。
その答えは、日本が議院内閣制を採用していることにあります。
日本の議院内閣制とは?議院内閣制とは、内閣が国会の信任を基礎として成立し、国会に対して政治的な責任を負う制度です。
日本国憲法第66条第3項では、内閣が行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負うと定めています。
日本では、国民が国会議員を選挙で選び、その国会議員が首相を指名します。
政党の議席数や連立関係が首相指名の結果に大きく影響するのは、この制度によるものです。
直接選挙を採用する大統領制との違い大統領制では、国民が大統領を直接選ぶ方式や、選挙人を通じて選ぶ方式などがあります。
日本の議院内閣制とは、権力の選び方や行政の責任の所在が異なります。
| 比較項目 | 日本の議院内閣制 | 大統領制の代表例 |
|---|---|---|
| 行政府のトップ | 内閣総理大臣 | 大統領 |
| 選出の仕組み | 国会議員による指名 | 国民の投票など |
| 行政府の基盤 | 国会の信任 | 大統領の選挙上の正統性 |
| 議会との関係 | 内閣は国会に連帯して責任を負う | 原則として行政と議会が別個の権限を持つ |
| 任期 | 国会の状況や内閣総辞職などに左右される | 制度上の任期が定められる |
ただし、アメリカのような大統領制の国でも、選挙制度は国によって異なります。すべての大統領が同じ方法で選ばれるわけではありません。
国民の一票は首相指名にどう影響する?国民が首相候補に直接投票できなくても、国政に対する意思表示ができないわけではありません。
衆議院議員総選挙や参議院議員通常選挙を通じて、国会の構成を変えることができます。
例えば、衆議院選挙で与党が大きく議席を伸ばせば、与党が支持する首相候補が指名される可能性も高くなります。
2026年2月18日の高市氏の記者会見でも、衆議院選挙で得た議席を政権運営の基盤として受け止める姿勢が示されました。
つまり、国民が選ぶのは首相本人ではなく、首相を選ぶ国会議員です。
そのため、首相指名選挙を理解するには、候補者の知名度だけでなく、各政党の議席数や連立関係にも注目する必要があります。
歴代内閣総理大臣一覧|第100代から第105代まで首相官邸の歴代内閣の公式記録では、2026年の高市早苗氏は第105代として掲載されています。
直近の歴代首相を整理すると、次のとおりです。
| 代数 | 内閣総理大臣 | 在職期間 |
|---|---|---|
| 第100代 | 岸田文雄 | 2021年10月4日~11月10日 |
| 第101代 | 岸田文雄 | 2021年11月10日~2024年10月1日 |
| 第102代 | 石破茂 | 2024年10月1日~11月11日 |
| 第103代 | 石破茂 | 2024年11月11日~2025年10月21日 |
| 第104代 | 高市早苗 | 2025年10月21日~2026年2月18日 |
| 第105代 | 高市早苗 | 2026年2月18日~ |
ここで注目したいのは、同じ高市早苗氏が第104代と第105代の両方に記録されている点です。
これは別人が首相になったという意味ではありません。第1次高市内閣と第2次高市内閣の間で、国会による新たな首相指名が行われたためです。
首相の代数は、人物の人数ではなく、歴代の首相就任の順番を示しています。
歴代の全首相と各内閣の閣僚名簿については、首相官邸の「歴代内閣」の公式記録で確認できます。
【内閣総理大臣指名選挙】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年2月18日の首相指名選挙で高市早苗氏は何票を獲得しましたか?
A1:衆議院では1回目の投票で354票を獲得しました。参議院では1回目が123票で過半数に1票届かず、決選投票で125票を獲得して指名されました。
Q2:首相指名選挙は国民も投票できますか?
A2:国民が首相候補に直接投票することはできません。投票するのは衆議院議員と参議院議員です。国民は国政選挙を通じて国会議員を選び、その議員が首相を指名します。
Q3:決選投票でも過半数を取らなければ首相になれないのですか?
A3:決選投票では、最初の投票で上位2人となった候補者のうち、多数の票を得た人物が指名されます。2026年の参議院では高市氏125票、小川氏65票で高市氏が選ばれました。
Q4:参議院が反対しても衆議院だけで首相を決められますか?
A4:一定の条件下では可能です。両院協議会でも意見が一致しない場合や、衆議院の指名議決後10日以内(国会休会中を除く)に参議院が指名を議決しない場合、衆議院の議決が国会の議決となります。
Q5:首相指名選挙の後、すぐに新しい内閣が発足しますか?
A5:国会の指名後、天皇による首相の親任式、国務大臣の任命と認証式などを経て内閣が発足します。2026年2月18日には、これらの手続きを経て第2次高市内閣が成立しました。
2026年2月18日の内閣総理大臣指名選挙では、高市早苗氏が衆議院で354票、参議院の決選投票で125票を獲得し、第105代内閣総理大臣に指名されました。
今回の選挙から理解しておきたい要点は、次の5つです。
- 首相は国民の直接投票ではなく、国会議員の投票で指名される。
- 日本国憲法第67条が首相指名の根拠となる。
- 1回目の投票で過半数に届かなければ、上位2人による決選投票が行われる。
- 衆議院の優越は、両院の議決が異なる場合など、憲法が定める条件下で適用される。
- 首相指名後には、天皇による任命や国務大臣の認証などを経て新内閣が発足する。
【プロの結論】
首相指名選挙を理解するうえで、最も大切なのは「誰が勝ったか」だけでなく、「どの議院で、何回目の投票によって、どのような根拠で指名されたか」を確認することです。
特に、決選投票と衆議院の優越を混同しないことが重要です。前者は各議院の内部で候補者を決める手続きであり、後者は衆参両院の議決が異なった場合の調整ルールです。
また、首相の交代や再任は、国会の議席構成、政党間の協力関係、総選挙の結果と密接につながっています。
次に首相指名選挙が行われる際は、候補者の得票数だけでなく、衆参両院の議席構成や連立政権の動向にも注目してください。国会の動きを追うことが、日本の政治と政権運営を正しく理解するための第一歩になります。