原作:『コールミー・バイ・ノーネーム』
星海社FICTIONS/2019年刊行
イラスト:くわばらたもつ
ISBN:978-4-06-517200-1
全240ページ
ドラマの原作は、斜線堂有紀が執筆した同名小説です。2019年9月17日に講談社から発売され、星海社FICTIONSのレーベルで刊行されました。
出版社の紹介では、本作は斜線堂有紀が手掛けた百合長篇第一作とされています。
物語の基本設定はドラマと共通しています。
- 世次愛が古橋琴葉と出会う。
- 琴葉は自分が改名前に持っていた本当の名前を隠している。
- 本名を当てられるまで恋人でいるという賭けが始まる。
- 琴葉の名前に秘められた過去が、2人の関係を揺るがす。
恋愛小説としての甘さだけでなく、名前に結びついた過去や、他者との関係性に潜む歪みを描いている点が原作の特徴です。
2019年の小説を2025年の社会状況に合わせて脚本化今回の実写化で興味深いのが、原作とドラマの間にある約6年間の時間差です。
脚本を担当した松ケ迫美貴は、スターダストプロモーションのインタビューで、2019年の原作を2025年に映像化するにあたり、原作で扱われる重要な法律が改正されていたことや、性的マイノリティに対する社会の認識が変化していたことを説明しています。
そのため、脚本では時代に合わせた調整を意識したとのことです。
加えて、原作者の斜線堂有紀にも事前に変更点を伝え、理解を得たうえで改変を行ったと明かしています。
これは実写化を考えるうえで要点です。
原作のテーマをそのまま再現するだけでは、映像化する時代の社会状況と食い違う場合があります。特に、性的マイノリティや家族関係、個人の権利に関わる題材では、社会の変化を踏まえた表現が大切です。
本作は原作の中心にある「名前」と「自己認識」というテーマを引き継ぎながら、2025年の視聴者に届く物語として再構成された作品です。
監督・枝優花が作り上げた映像表現監督を務めたのは、映画『少女邂逅』などで知られる枝優花です。本作では全話の演出を担当しています。
枝監督はMBSの公式コメントで、原作に出会った際、自分自身が周囲の期待に応えようとするうちに、自分が何者なのか分からなくなっていた経験と重なるものを感じたと説明しています。
また、他人から認識され、求められ、愛されることと、自分自身を見つけることの関係についても言及しています。
この制作背景を踏まえると、枝監督が本作で描こうとしたのは、単純な恋人同士の幸福ではありません。
誰かに理解されたいという願いと、他人の期待に合わせることで自分を見失う危うさ。その両方を抱えた人物が、他者との関係を通じて自分自身を見つけていく過程です。
原作ファンにとっても、文字で表現されていた感情や余白が、俳優の表情、沈黙、映像の色彩によってどう変化するかは見どころになります。
【全8話・最終回ネタバレ】愛と琴葉が選んだ結末とは?

MBS公式サイトでは、各話に「証明」という言葉を使ったタイトルが付けられています。
全8話を通じて、愛と琴葉の関係が変化すると同時に、琴葉の本名に関する謎が少しずつ明らかになっていきます。
全8話のストーリー展開第1話「恋人の証明」
愛はゴミ捨て場で琴葉と出会います。翌日、大学で琴葉が村田とキスしているところを目撃。琴葉の奔放な行動を止めようとした愛に、琴葉は恋人になることと名前当てゲームを提案します。
第2話「対の証明」
本名を当てるまで恋人でいるというルールがスタート。愛は琴葉について調べながら、恋人としての付き合い方を2人で決めていきます。愛自身の過去も少しずつ見えてきます。
第3話「深海の証明」
愛は琴葉を初めてのデートに誘います。水族館で過ごす時間を通じて、琴葉の過去や、愛が琴葉を助けようとした理由が明らかになっていきます。
第4話「善意の証明」
愛は琴葉の本名を探るため、村田から話を聞きます。一方で、琴葉に対する恋心が強くなり、本名を当てることが2人の関係を終わらせるという矛盾に苦しみ始めます。
第5話「好きの証明」
愛は琴葉への気持ちを自覚します。束や早苗にも交際を打ち明けますが、それが新たな波乱につながります。幸せな時間が続く一方、2人の関係には変化が訪れます。
第6話「呪いの証明」
琴葉の前に橋立天が現れ、謝罪を求めます。琴葉は激しく反応し、愛も彼女を支えようとします。琴葉が抱えてきた過去の核心に迫る重要な回です。
なお、MBSは第6話について、フラッシュバックにつながる可能性やショックを受ける可能性のあるシーンが含まれると注意を掲載しています。
第7話「彼女の証明」
琴葉が愛の前から姿を消します。落ち込む愛は束の言葉をきっかけに、もう一度琴葉の真実を追い始めます。村田から琴葉が他人と一夜を過ごしていた理由を聞き、本名の謎に近づいていきます。
第8話「愛の証明」
琴葉の本当の名前と、その名前に隠されていた真実が明らかになります。名前当てゲームが終わったことで、琴葉は約束どおり友人に戻ろうとし、愛から距離を取ります。
しかし、愛と過ごした日々を振り返る琴葉の気持ちにも変化が生まれます。早苗と村田の言葉を受け、2人はそれぞれの未来と向き合うことになります。
最終回で重要なのは、本名が判明した後の選択本作の最終回は、単純に謎解きの答えを提示して終わる構成ではありません。
名前当てゲームの終了は、2人にとって恋人関係を続ける理由が失われることを意味します。
しかし、ここで問われるのは、約束を守ることだけが正しいのかという問題です。
琴葉は自分の過去を愛に知られたことで、再び傷つけてしまうのではないかと恐れます。愛もまた、琴葉の過去を知ったうえで、彼女とどう向き合うかを選ばなければなりません。
MBSの最終回紹介では、琴葉と愛が選ぶ未来を結末の焦点として示しています。
つまり、最後に重要なのは「愛が琴葉の本名を当てられたか」だけではなく、真実を知った2人が、その後の関係を自分たちの意思で選べるかどうかです。
名前当てというゲームを入り口にして、最終的には相手の過去を知ったうえで愛することの意味を描いています。
【主題歌・Blu-ray BOX】2026年に作品を楽しむ方法
オープニングは水槽、エンディングはyonige本作の音楽も、ドラマの世界観を支える重要な要素です。
オープニング主題歌
「スードニム」
作品の繊細さと複雑な恋愛感情を彩る楽曲
エンディング主題歌
「Without you」
物語の余韻を残すエンディング楽曲
オープニングを担当した水槽は、2人の複雑でありながらまっすぐな関係を音楽に込めたとコメントしています。
エンディングのyonigeは、牛丸ありさとごっきんによる2人組のガールズロックバンドです。恋愛における痛みや感情の揺れを描く本作と、バンドの持つ音楽性にも親和性があります。
Blu-ray BOXは2025年7月2日に発売済み16,500円
税込・発売時の価格
発売日:2025年7月2日
発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング
品番:BIXJ-0445
MBSが2025年2月27日に発表したBlu-ray BOXの収録内容は、次のとおりです。
- 本編全8話
- 中国語(繁体字)字幕
- 現場密着メイキング
- 第1話のビジュアルコメンタリー(工藤美桜・尾碕真花)
- 完成披露試写イベント映像
- アウタースリーブケース
- オフショットを収録したカラーブックレット
本編を見返すだけでなく、撮影現場の様子や主演2人のコメンタリーを楽しめる仕様です。特にメイキングやオフショットは、作品の映像表現や出演者の役作りに関心がある人にとって魅力的な特典です。
2026年現在は発売から1年以上が経過しています。新品・中古の在庫状況や販売価格は店舗によって異なるため、購入を考えている場合は品番BIXJ-0445を基準に探すと確認しやすくなります。
2026年に初めて見るなら、どんな人におすすめ?本作は、次のような視聴者に特におすすめです。
- 恋愛だけでなくミステリー要素も楽しみたい人
- 女性同士の恋愛を丁寧に描いたGLドラマを探している人
- 斜線堂有紀の原作小説を読んで映像化作品と比較したい人
- 工藤美桜と尾碕真花の演技をじっくり見たい人
- 全8話で完結する、比較的コンパクトなドラマを探している人
一方、明るく軽快な恋愛コメディを期待している人や、家庭内の傷、トラウマ、心理的に重いテーマが苦手な人は注意が必要です。
本作は美しい映像と切ない恋愛描写の裏側に、登場人物が抱えている深刻な問題を描いています。特に第6話には公式の注意喚起もあります。
恋愛の甘さだけではなく、登場人物が抱える痛みまで受け止められるか。 それが本作を楽しめるかどうかの判断基準になります。
【よくある質問】コールミー・バイ・ノーネームに関するFAQ
Q1:コールミー・バイ・ノーネームは全何話ですか?
A1:全8話です。2025年1月9日に放送が始まり、2月27日に最終回を迎えました。1話約30分の構成です。
Q2:工藤美桜と尾碕真花は誰の役を演じていますか?
A2:工藤美桜は世次愛役、尾碕真花は古橋琴葉役です。2人は本作でダブル主演を務め、ともにドラマ初主演となりました。
Q3:コールミー・バイ・ノーネームの原作小説はありますか?
A3:あります。斜線堂有紀による同名小説で、2019年9月に星海社FICTIONSから刊行されました。イラストはくわばらたもつが担当しています。
Q4:最終回はハッピーエンドですか?
A4:最終回では琴葉の本名と過去が明らかになり、愛と琴葉が関係のあり方を選び直す展開になります。単純な恋愛成就だけではなく、過去と向き合い、自分たちの未来を選ぶことに重点を置いた結末です。
Q5:Blu-ray BOXは発売されていますか?
A5:発売されています。2025年7月2日に16,500円(税込)で発売されました。本編全8話に加えて、メイキング、ビジュアルコメンタリー、完成披露試写イベント映像などを収録しています。
Q6:2026年現在、どこで視聴できますか?
A6:MBSの番組情報ページにはFOD、Hulu、U-NEXTが配信サービスとして掲載されています。2026年8月時点の配信情報でも見放題対象として紹介されていますが、最新の配信状況は各サービスで確認してください。
『コールミー・バイ・ノーネーム』は、工藤美桜と尾碕真花のダブル主演で描かれた、恋愛とミステリーが融合したガールズラブドラマです。
2019年に刊行された斜線堂有紀の原作小説を、枝優花監督と脚本家・松ケ迫美貴が2025年の映像作品として再構成。全8話を通じて、世次愛と古橋琴葉の関係、そして琴葉が隠してきた本当の名前と過去を描きました。
2026年11月現在、作品はすでに完結しており、配信サービスやBlu-ray BOXを通じて楽しめます。
この作品の本質は、好きな相手の秘密を知ることだけではありません。相手の過去を知り、傷つきやすさも含めて理解したとき、それでも一緒にいたいと思えるのかという問いにあります。
「名前を当てたら恋人ではなくなる」という逆説的な設定だからこそ、最後まで目が離せない物語になっています。
原作小説を先に読んでドラマとの違いを楽しむのもよし、ドラマを先に見てから小説で人物の心理を掘り下げるのもよし。GL作品や心理描写の深いミステリーが好きな人には、2026年になっても振り返る価値のある一作です。