第70回の応募資格で最も重要なのは、応募する作品が「自作未発表の小説」であることです。単に新しく書いた作品であればよいわけではなく、過去の公開歴や他の文学賞への応募歴も審査対象になります。
応募できる作品と対象外になる作品講談社の公式募集要項では、次の作品を応募対象外としています。
- 同人雑誌などで発表済みの作品
- 他の新人賞に応募した作品
- インターネット上で公開した作品
- 自作未発表の条件を満たさない作品
応募できるのは1人1篇です。複数の小説を同時に提出することはできません。
また、応募資格に関して見落としやすいのが年齢条件です。公式要項では未成年者の応募も可能とされています。ただし、保護者の同意が必要です。
つまり、若い書き手であることを理由に応募を諦める必要はありません。年齢よりも、作品が応募規定を満たしているかどうかが重要です。
原稿枚数は400字詰め70~250枚第70回の規定は、400字詰め原稿用紙換算で70枚以上250枚以内です。
| 項目 | 応募規定 |
|---|---|
| 最低枚数 | 70枚 |
| 最高枚数 | 250枚 |
| 換算基準 | 400字詰め原稿用紙 |
| 応募可能作品数 | 1人1篇 |
| 作品の条件 | 自作未発表の小説 |
注意したいのは、70~250枚という数字が、Wordで作成したファイルの実際のページ数を指すわけではないことです。
応募原稿はA4判、縦書き、1行40字×36行の形式に整えます。そのうえで400字詰め原稿用紙換算の枚数を明記します。
枚数の計算を間違えると、作品の内容以前に応募規定を満たさなくなる可能性があります。完成原稿の文字数と換算枚数を提出前に照合することが大切です。
【応募方法を比較】WEB応募と郵送応募の違い・必要書類

第70回ではWEBと郵送の2種類の応募方法が用意されました。
ただし、提出期限は同じではありません。WEBは10月15日、郵送は10月31日と、約半月の差があります。
WEB応募の手順WEB応募では、講談社の公式募集ページから専用投稿フォームに進み、必要事項を入力して原稿ファイルをアップロードします。
対応するファイル形式は以下の3種類です。
- Word(.doc)
- Word(.docx)
- Word(.docm)
PDF形式での提出は公式募集要項に記載された対応形式ではありません。
また、WEB応募の締切は2026年10月15日24時まででした。
郵送応募の手順郵送の場合は、完成原稿と表紙を準備し、指定された宛先に送付します。
郵送先
〒112-8001
東京都文京区音羽2-12-21
講談社 群像編集部 新人文学賞係
郵送締切:2026年10月31日(当日消印有効)
郵送では、表紙と原稿をしっかり綴じたうえで、同じ表紙をもう1枚、綴じずに添付する必要があります。
表紙は合計2枚です。
表紙に記載する情報WEB・郵送のどちらでも、1ページ目を表紙として、次の情報を記載します。
1. 作品名
2. 400字詰め原稿用紙換算枚数
3. 本名
4. 筆名
5. ふりがな
6. 生年月日
7. 住所
8. 電話番号
9. メールアドレス
10. 職業
11. 略歴(出身地・筆歴など)
原稿本文はA4判の縦書きで、1行40字×36行に設定し、各ページ右下に通し番号を入れます。
特に、郵送では表紙の添付忘れ、WEBではファイル形式の間違いに注意が必要です。
【締切・賞金・選考委員】第70回の重要情報を一覧表で整理
第70回の募集要項で確認しておきたい情報をまとめました。
出典は講談社『群像』公式サイトの第70回募集要項です。
賞金50万円は受賞者1人につき50万円なのか?賞金については、少し注意が必要です。
公式募集要項では、当選作50万円、優秀作25万円と定められています。ただし、受賞作が複数ある場合は、該当する受賞者の人数で賞金を配分する仕組みです。
また、賞金には本誌掲載の原稿料が含まれます。
したがって、当選作に選ばれれば必ず1人50万円を受け取れる、という理解は正確ではありません。複数受賞の場合の配分まで把握しておく必要があります。
2027年の発表日はいつ?第70回の選考スケジュールは次のとおりです。
- 2027年5月号:予選通過作品を発表予定
- 2027年6月号:選考結果と受賞作を掲載予定
2026年11月2日時点では応募受付が終了しており、今後は予選通過作品の発表が最初の注目ポイントになります。
なお、公式発表が示しているのは掲載号であり、具体的な発売日と掲載日は別途確認が必要です。
【生成AI使用規定】ChatGPTや文章生成AIを使った小説は応募できる?
第70回で特に注目したいのが、生成AIに関する規定です。
小説執筆にAIを利用する人が増えるなか、文学賞の応募要項でも著作権と創作の主体性が重要な論点になっています。
講談社の公式募集要項では、生成AIについて次のような条件が設けられています。
著作権侵害(例えば、第三者の著作物をコピー、改変するような利用)に該当する生成AIの使用を禁じます。
加えて、最終候補作品については、AIを使用したかどうか、使用した場合にはどのような方法だったかを改めて確認するとしています。
生成AIの使用は全面禁止なのか?ここは誤解しやすいポイントです。
公式規定が明示しているのは、著作権侵害に該当する生成AIの使用禁止です。生成AIのあらゆる利用を一律に禁止するとまでは記載されていません。
一方で、AIによる文章生成や推敲、構成補助、誤字脱字の確認などについて、個別の利用方法ごとの許容範囲が網羅的に示されているわけでもありません。
したがって、次のように整理できます。
| AI利用に関する論点 | 公式要項から読み取れること |
|---|---|
| 第三者の著作物をコピーする利用 | 著作権侵害に該当する使用は禁止 |
| 第三者の著作物を改変する利用 | 著作権侵害に該当する使用は禁止 |
| AIによる本文生成 | 一律の可否は明記されていない |
| AIによる誤字脱字確認 | 個別の許容条件は明記されていない |
| 最終候補者のAI使用確認 | 使用の有無と使用方法を確認 |
1.他人の小説や文章をAIに読み込ませて模倣しない
第三者の著作物をコピーしたり、改変したりする使い方は、公式要項で禁止対象として示されています。
2.作品の創作過程を記録しておく
執筆履歴や原稿のバージョンを保存しておくと、最終候補に残った場合に、創作過程を説明しやすくなります。
3.AI使用について事実と異なる説明をしない
最終候補作品にはAI使用の有無と方法について確認が入ります。使用した場合には、実際の利用方法を正確に説明できるようにしておくことが大切です。
生成AIを使うこと自体と、著作権を侵害する使い方をすることは同じではありません。ただし、明示されていない利用方法まで自由に認められていると解釈するのも適切ではありません。
【第69回の受賞作】永田修矢『骨と鎖』・冬島いのり『夏蚕の翅』と応募総数2237篇
第70回を理解するうえで参考になるのが、直近の第69回群像新人文学賞です。
講談社は2026年5月7日、第69回の受賞作2作品を発表しました。
応募総数は2237篇。そのなかから、永田修矢さんの「骨と鎖」と冬島いのりさんの「夏蚕の翅」が当選作に選ばれました。
永田修矢「骨と鎖」永田修矢(ながた・しゅうや)
2003年、静岡県静岡市生まれ。
「骨と鎖」は、親友と呼ばれる少年たちの関係を軸に、友情の内側に潜む暴力や支配を描いた作品です。
講談社の作品紹介では、ある冬の出来事をきっかけに、2人の日常が静かに歪み始める物語として紹介されています。
単純な友情物語ではなく、人間関係のなかに潜む力関係や欲望を描き出した点が作品の特徴です。
冬島いのり「夏蚕の翅」冬島いのり(ふゆしま・いのり)
2005年、北海道札幌市生まれ。函館市在住。
「夏蚕の翅(なつごのはね)」は、北海道南西部の小さな町を背景に、信仰や迫害、依存といった問題を描いた作品です。
講談社の紹介では、母親がいなくなった後の兄妹の関係や、互いを傷つけながら生活する2人の姿が描かれています。
閉塞感のある生活環境と、そこから変化していく人間関係が作品の重要な要素です。
第69回の賞金と選考委員にも注目第69回は2作品が当選作となり、永田修矢さん、冬島いのりさんにそれぞれ25万円が贈呈されました。
これは第70回の賞金規定を理解する際にも参考になる事例です。複数の当選作が選ばれた場合、賞金が受賞者数に応じて配分される仕組みが実際に確認できます。
また、第69回と第70回では選考委員の顔ぶれが異なります。
| 項目 | 第69回 | 第70回 |
|---|---|---|
| 朝吹真理子 | 参加 | 参加 |
| 井戸川射子 | 不参加 | 参加 |
| 江南亜美子 | 不参加 | 参加 |
| 奥泉光 | 不参加 | 参加 |
| 藤野可織 | 参加 | 参加 |
| 島田雅彦 | 参加 | 不参加 |
| 古川日出男 | 参加 | 不参加 |
| 町田康 | 参加 | 不参加 |
第69回の選考委員は朝吹真理子、島田雅彦、藤野可織、古川日出男、町田康の5氏でした。第70回では井戸川射子、江南亜美子、奥泉光が加わる新しい選考体制になっています。
受賞作は2026年8月27日に単行本化第69回の受賞2作品は、2026年8月27日に講談社から単行本として同時発売されました。
- 永田修矢『骨と鎖』
- 冬島いのり『夏蚕の翅』
文学賞での受賞が雑誌掲載だけで終わらず、単行本として読者に届けられたことも重要です。
群像新人文学賞は、新しい書き手を見いだすだけでなく、その作品を出版という形で世に送り出す役割も担っています。
【選考委員5人の視点】第70回で注目したい小説の可能性
第70回の選考委員は、朝吹真理子、井戸川射子、江南亜美子、奥泉光、藤野可織の5氏です。
それぞれ異なる創作・批評の立場を持つ人物が選考に参加することは、応募者にとっても大きな意味があります。
講談社の公式募集ページに掲載された各委員のメッセージからは、作品に対する姿勢や期待が読み取れます。
朝吹真理子:書き手の孤独から生まれる最初の作品朝吹真理子は、小説を書くことの孤独や、最初の作品を送り出すことについて言及しています。
応募者にとって、自分の作品を誰かに読んでもらうことは大きな挑戦です。完成した作品を手元から離し、最初の読者に託すという文学賞の原点を感じさせるメッセージです。
井戸川射子:簡単に答えが出ない小説への期待井戸川射子は、人間や時間、複数の要素が絡み合う小説について語っています。
物語を単純な善悪や正解に収束させるのではなく、複雑な関係性そのものを描く作品への期待がうかがえます。
江南亜美子:流行よりも固有の創作衝動江南亜美子は、流行や市場から離れていても、書き手自身の固有の衝動によって生まれた作品を読みたいという姿勢を示しています。
これは応募者にとって重要な視点です。
売れ筋のテーマや、現在の文学市場で評価されそうな題材を追いかけるだけでは、作品独自の魅力が弱くなる可能性があります。
奥泉光:読者を夢中にさせる小説奥泉光は、自分自身が夢中になって読んでしまうような小説を書くことを期待しています。
物語の仕掛けや文章表現だけでなく、読者を作品世界に引き込む力も大切な要素として考えられます。
藤野可織:新しい言葉と新しい名前藤野可織は、小説を書くことを、まだ名前のついていないものに名前をつける行為として捉えています。
既存の表現をなぞるのではなく、書き手独自の言葉によって世界を捉え直す姿勢が印象的です。
【プロの結論】受賞を目指すなら、流行より作品固有の必然性を磨く5人のメッセージを総合すると、特定のジャンルや流行に合わせることよりも、書き手自身にしか生み出せない作品を追求する姿勢が重要だと考えられます。
ただし、これらは選考委員の公開メッセージから読み取れる創作上の期待であり、公式に公表された採点基準ではありません。
実際に応募を目指すなら、次の点を確認したいところです。
- 70~250枚の範囲で、物語を最後まで成立させられるか
- 他の作品にはない視点や語り口があるか
- 登場人物の行動や心理に説得力があるか
- 作品のテーマが表面的な説明に終わっていないか
- 読み終えた後に、読者のなかに何かを残せるか
逆に、すでにネットや同人誌で公開した作品をそのまま応募したい人、70枚未満の短い作品しか用意できない人、他の新人賞に同一作品を応募している人には、第70回の規定は適合しません。
応募資格を満たすことと、文学作品として評価されることは別の問題です。この2つを分けて考えることが、文学賞への挑戦では欠かせません。
【群像新人賞に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:群像新人賞は未経験者や学生でも応募できますか?
A1:応募可能です。第70回の公式募集要項では未成年者の応募も認められており、保護者の同意が必要とされています。応募作品は自作未発表の小説で、400字詰め原稿用紙換算70~250枚以内であることが条件です。
Q2:群像新人賞の第70回はいつ締め切りでしたか?
A2:WEB応募は2026年10月15日24時まで、郵送応募は2026年10月31日当日消印有効でした。2026年11月2日現在、どちらも受付を終了しています。
Q3:ChatGPTなどの生成AIを使った小説は応募できますか?
A3:公式要項では、著作権侵害に該当する生成AIの使用を禁止しています。すべてのAI利用を一律に禁止するという記載ではありませんが、個々の利用方法の許容範囲も網羅的には示されていません。最終候補作品についてはAI使用の有無と使用方法が確認されます。
Q4:第70回の賞金はいくらですか?
A4:当選作50万円、優秀作25万円です。本誌掲載の原稿料を含み、受賞作が複数の場合は受賞者数に応じて配分されます。
Q5:第70回の受賞結果はいつ発表されますか?
A5:予選通過作品は2027年5月号、最終的な選考結果と受賞作は2027年6月号に掲載予定です。
第70回群像新人文学賞は、未発表小説を対象に、400字詰め原稿用紙換算70~250枚という規定で募集されました。
WEB応募は2026年10月15日、郵送応募は10月31日に締め切られ、現在は選考結果を待つ段階です。
賞金は当選作50万円、優秀作25万円。選考委員には朝吹真理子、井戸川射子、江南亜美子、奥泉光、藤野可織の5氏が名を連ねています。
また、第69回では応募総数2237篇のなかから、永田修矢「骨と鎖」と冬島いのり「夏蚕の翅」の2作品が当選作に選ばれました。若い書き手による新しい作品が文学賞を通じて世に出たことは、第70回の動向を考えるうえでも見逃せません。
今後は2027年5月号の予選通過作品、そして6月号の最終結果が注目されます。
群像新人文学賞の魅力は、単に賞金を獲得することだけではありません。自分にしか書けない小説を文芸誌の選考に託し、新しい読者と出会う機会を得られることにあります。次回以降の応募を考えている人にとっても、第70回の応募規定と選考委員のメッセージは、創作と応募準備を見直すための重要な手がかりになるはずです。
主な情報源:講談社『群像』第70回群像新人文学賞公式募集要項、講談社による第69回受賞発表(2026年5月7日)、第69回受賞作単行本発売発表(2026年8月27日)。