今回の報告書の正式名称は、「世界ガールズ・レポート2026(State of the World's Girls 2026)」です。英語版のタイトルは「Change Her Forecast」。気候危機が女の子の性と生殖に関する健康と権利、教育、安全、将来の選択肢に及ぼす影響を扱っています。
発表したのは、国際NGOのです。同団体は、子どもの権利とジェンダー平等を推進し、世界各地で教育、子どもの保護、女の子のエンパワーメントなどに取り組んでいます。
2026年10月6日に報告書を発表したのは、10月11日の国際ガールズ・デーに合わせたものです。世界ガールズ・レポートは、国際ガールズ・デーに合わせて毎年発行される調査シリーズで、年ごとに女の子が直面する社会問題を取り上げています。
2026年版のテーマは「女の子の未来予報を変えよう」2026年版が焦点を当てたのは、気候変動とジェンダー平等の関係です。
気候災害が発生すると、住宅や道路、学校、医療施設などのインフラが損傷します。しかし、その影響は物理的な被害だけではありません。
家庭の収入が減少すれば、子どもの教育費を確保できなくなることがあります。避難生活が長引けば、衛生用品や避妊手段、妊産婦向けの医療サービスを利用することも難しくなります。
加えて、避難所や仮設住宅での安全確保が不十分な場合、性暴力や搾取にさらされる危険も高まります。
報告書が伝えているのは、こうした複数の問題が独立して発生するのではなく、互いに影響しながら女の子の人生の選択肢を狭めていくという現実です。
【調査結果を解説】世界52カ国・5,000人のデータが示す現実

今回の世界ガールズ・レポート2026の特徴は、長期的な統計分析と、実際に気候災害を経験した女の子たちへの聞き取りを組み合わせた点にあります。
単に気候変動への不安を尋ねるアンケートではありません。気候災害と教育、保健サービス、児童婚、性暴力、望まない妊娠の関係を複数の方法で調べています。
3種類の調査から構成される報告書調査の構成は次のとおりです。
調査対象となった5カ国は以下のとおりです。
- バングラデシュ: 洪水や水害などによる生活基盤への影響。
- ケニア: 干ばつによる家計や進学機会への影響。
- ペルー: エルニーニョに伴う洪水や交通・医療アクセスへの影響。
- セネガル: 気候災害と地域の生活環境、安全に関する課題。
- ジンバブエ: 干ばつや経済的不安定と性と生殖に関する健康への影響。
この5カ国で15~24歳の女の子や若い女性5,000人を対象にアンケートを実施し、さらに139人から対面で話を聞いています。
30年以上のデータ分析が持つ意味英語版の調査概要では、52カ国の低・中所得国を対象に、約30年間の人口保健調査(DHS)と気候災害のデータを組み合わせています。
ここで重要なのは、短期間の災害記録だけでは把握しにくい問題を分析していることです。
例えば、洪水は発生直後から道路や学校、医療施設に被害を与えます。一方、干ばつは数カ月から数年にわたり農業や家畜、家計に影響し、家庭の経済状況を徐々に悪化させます。
後者は大規模な災害として報道されにくい場合がありますが、家族の生活が長期的に不安定になることで、女の子の進学や結婚にまで影響が及びます。
災害が発生した瞬間だけでなく、その後の生活再建まで視野に入れていることが、今回の分析の要点です。
【衝撃の調査データ】児童婚・性暴力・望まない妊娠の実態
世界ガールズ・レポート2026で特に注目されるのが、気候災害後の女の子の健康と安全に関する数値です。
以下は、5カ国のアンケート結果として報告された主な数字です。
約90%
気候災害が家庭の生活、健康、安定に深刻な負担を与えていると回答。
76%
地域の女の子や若い女性が、少なくとも1種類の性と生殖に関する保健サービスへのアクセスに苦労していると回答。
84%
干ばつの影響を受けた回答者では、地域の保健サービスへのアクセス困難がさらに高い割合に。
36%
気候災害後、地域で18歳未満の女の子の結婚が増えたと回答。
33%
地域で望まない妊娠が増えたと回答。
28%
女性や女の子へのジェンダーに基づく暴力が増えたと回答。
出典:Plan International「State of the World's Girls 2026」エグゼクティブサマリー。地域での増加を認識した回答と、本人が経験した割合は区別している。 1. 気候災害と児童婚の原因・背景
児童婚は、単に結婚年齢に関する慣習だけで説明できる問題ではありません。
報告書が指摘する大きな要因は、家庭の経済的な困窮です。
干ばつが続くと、農作物の収穫量が減り、家畜を失い、家族の収入が減少します。生活を維持することさえ難しくなると、女の子の教育費を支払えなくなったり、早期結婚を経済的な選択肢として考えたりする家庭が生まれます。
とりわけ問題なのは、こうした経済的な圧力が長期間続くことです。
洪水のような急激な災害は緊急支援の対象になりやすい一方、ゆっくり進む干ばつは危機として認識されにくく、家族が困窮していく過程が見過ごされることがあります。
調査では、地域で18歳未満の結婚が増えたと回答した人は36%に達しました。また、本人が18歳未満で結婚した経験についても約1割が報告しています。
重要なのは、児童婚を気候変動だけの問題として捉えないことです。
貧困、教育格差、女性の経済的自立の難しさ、伝統的な性別役割など、もともと存在する社会構造が、気候災害によってさらに深刻化するという関係があります。
2. 気候危機と性暴力・性的搾取の実態災害時には、通常の生活を支える社会的な仕組みが機能しなくなる場合があります。
避難所ではプライバシーや照明が不足し、女性や女の子が安心して過ごせる空間を確保できないことがあります。
また、家庭の収入が失われ、支援ネットワークが弱まると、食料や生活必需品を得るために性的な行為を強いられる性的搾取のリスクも高まります。
プラン・インターナショナルの報告では、こうした状況に加え、混雑した避難所や暗い環境で嫌がらせや性暴力の危険にさらされた経験も紹介されています。
特に見落とされやすいのは、災害時の性暴力が避難所だけで発生する問題ではないことです。
家計の崩壊、家族や地域の保護機能の低下、学校や相談窓口の閉鎖などが重なることで、被害を防ぐ仕組みそのものが弱くなります。
調査では、気候災害後に女性や女の子への暴力が増えたと認識した回答者は28%でした。
3. 望まない妊娠と女性の権利今回の報告書で特に重視されているのが、性と生殖に関する健康と権利(SRHR)です。
これは、妊娠や出産について本人が十分な情報を得て、自分の意思で選択できる権利を含みます。
気候災害によって医療施設が損傷したり、交通が遮断されたりすると、避妊サービスや性に関する相談、妊産婦ケアなどを利用しにくくなります。
加えて、避難生活では生理用品や清潔な水を確保することさえ困難になる場合があります。
報告書では、次のような結果が示されています。
- 11%が、気候関連の出来事の後に望まない妊娠を個人的に経験したと回答。
- 33%が、地域で望まない妊娠が増加したと回答。
- 49%が、気候災害後に妊娠中の健康問題や出産時の合併症が増えたと地域で認識。
- 68%が、性と生殖に関する保健サービスへのアクセスに自分自身が苦労したと回答。
これらの数字は、望まない妊娠を本人の知識や自己管理だけの問題として扱うことが適切ではないと示しています。
避妊方法を知っていても、必要なサービスが利用できなければ選択肢は限られます。医療機関が閉鎖され、相談できる人もいない状況では、本人の意思を尊重した健康管理が難しくなります。
つまり、望まない妊娠を防ぐには、情報提供だけでなく、避妊手段や医療、相談支援を災害時にも途切れさせない仕組みが必要です。
【教育機会が未来を左右する】気候変動と女の子の学び・保健サービス
今回の調査で、すべての問題をつなぐ重要な要素として浮かび上がったのが教育です。
学校は、単に知識を身につける場所ではありません。
女の子にとって学校は、性と健康に関する正しい情報を得たり、将来の進学や就職について考えたり、家庭外の大人や支援者とつながったりする場所でもあります。
そのため、災害による休校や退学は、学習の遅れだけでは済まない影響を生みます。
学校に通えなくなると何が起きるのか気候災害によって学校が損壊したり、通学路が遮断されたりすると、教育を受ける機会が失われます。
家計が悪化した家庭では、女の子が家事や家族の世話を担うようになり、学校に戻れなくなることもあります。
こうした状況が続けば、次のような問題が連鎖します。
1. 気候災害によって学校や交通インフラが使えなくなる。
2. 家庭の収入が減少し、教育費の負担が難しくなる。
3. 女の子が家事やケアの役割を担い、通学を中断する。
4. 性教育や健康情報、相談支援に接する機会が減少する。
5. 児童婚、性的搾取、望まない妊娠などのリスクが高まる。
報告書の分析では、学校教育が中断された女の子は、18歳未満で結婚する、または望まない妊娠を経験するリスクが約2倍とされています。
これは、教育が児童婚や暴力を防ぐうえで重要な保護要因になっていることを示しています。
保健サービスを途切れさせないことも重要教育と同様に、医療や保健サービスの継続も欠かせません。
報告書が対象としたサービスには、次のようなものがあります。
- 生理用品や月経に関する衛生支援
- 避妊方法に関する情報提供とサービス
- 妊娠中や出産時の医療
- 性と生殖に関する健康教育
- 性暴力を受けた人への保護・相談サービス
- 心理的なカウンセリング
災害対策では、食料や水、住居の確保が優先されがちです。しかし、女の子の健康や安全を守るには、こうした保健サービスも緊急支援の一部として組み込む必要があります。
【日本の女の子にも関係する?】国内2,070人調査で見えた課題
世界ガールズ・レポート2026は、主に5カ国の女の子や若い女性を対象とした国際調査ですが、気候変動とジェンダーの問題は日本にも関係しています。
プラン・インターナショナルは2026年1月7日、日本国内の若者を対象とした別の調査レポートも公開しました。
こちらは「気候危機が変える『学び』と『未来』~女の子と若者の声から見える日本社会のいま」という報告書です。
2025年8月に全国の15~39歳の男女2,070人を対象にオンライン調査を実施しています。世界ガールズ・レポートの5,000人調査とは別の調査です。
日本国内の調査で明らかになった主な数字| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 気候変動を実感する若者 | 81.0% |
| 15~19歳女性で気候変動を実感 | 85.5% |
| 災害時に精神的な不安・ストレスを感じた | 58.6% |
| 避難所でプライバシーに不安を感じた女性 | 47.5% |
| 同じく男性 | 23.4% |
| 災害時に家事・ケア負担が増えた女性 | 39.2% |
| 同じく男性 | 17.8% |
| 気候変動に関わる仕事に関心がある女性 | 42.6% |
| 同じく男性 | 33.8% |
特に注目したいのは、避難所でのプライバシーに関する男女差です。
女性は47.5%、男性は23.4%で、女性の割合が男性の約2倍でした。
また、災害時に家事やケアの負担が増えたと回答した割合も、女性39.2%に対して男性17.8%となっています。
この数字から見えてくるのは、災害そのものの被害だけでなく、避難生活を支える役割や安全確保の負担にもジェンダー差が生じているということです。
加えて、15~19歳で避難経験のある女性の64.7%が、学業への影響を回答しています。男性も61.8%と高く、災害による教育中断が若い世代全体の問題であることも分かります。
日本では将来への不安と社会参加の両面が見えている国内調査では、若い女性が気候変動を強く実感している一方で、気候変動に関わる仕事への関心も示されています。
女性の関心は42.6%で、男性の33.8%を上回りました。
この結果は、女の子や若い女性を単に災害から守る対象として扱うだけでは不十分であることを示しています。
防災計画、気候政策、環境分野の仕事などに若い世代が参加できる環境を整えることも、ジェンダー平等を進めるうえで欠かせません。
世界の調査と日本の調査を合わせて見ると、災害による生活への影響と、意思決定に参加する機会の不足という共通課題が浮かび上がります。
【報告書が求める解決策】気候変動とジェンダー平等を両立させるには
世界ガールズ・レポート2026は、問題の指摘だけで終わっていません。
プラン・インターナショナルは、女の子の教育、健康、安全、経済的な安定を守るために、政府や支援機関、地域社会が取り組むべき課題を提示しています。
1. 災害時でも学校教育を継続する最も重要な提言の一つが、気候災害の前後を通じて女の子が学び続けられる環境を確保することです。
学校が閉鎖された場合でも、代替の学習環境を提供し、通学を再開できるように支援する必要があります。
教育が継続すれば、性と健康に関する知識や権利について学ぶ機会も維持できます。
2. 避妊・生理用品・妊産婦ケアを緊急支援に組み込む食料や水、住居だけでなく、女性や女の子の健康に必要な物資と医療サービスも緊急支援の段階から確保することが大切です。
特に、避妊手段、生理用品、妊産婦ケア、性暴力被害者への支援は、災害発生後に後回しにしてよいものではありません。
3. 児童婚の背景にある経済的な問題を解決する児童婚を防ぐには、法律や啓発活動だけでは十分ではありません。
家庭の収入が失われ、女の子の進学や生活が犠牲になる状況を改善する必要があります。
食料支援、生計支援、農業や地域インフラの復旧など、家族の経済的な安定につながる対策が重要です。
4. 最も取り残されやすい女の子を優先する少数民族や先住民の女の子、障害のある女の子、避難や移住を経験した女の子、遠隔地で暮らす女の子は、支援サービスにアクセスしにくい場合があります。
今回の報告書でも、マイノリティの女の子は、保健サービスへのアクセス困難が約2倍、望まない妊娠の報告が約3倍、若年結婚への圧力が2倍以上になりやすいと示されています。
一律の支援ではなく、個々の状況に応じた対策が大切です。
5. 女の子自身を気候政策の意思決定に参加させるもう一つの重要な提言は、女の子や若い女性が政策決定に参加できる仕組みを整えることです。
災害時に何が必要なのか、避難所のどこに危険があるのか、どの保健サービスが不足しているのかを最もよく知っているのは、実際にその状況を経験した人たちです。
その声を防災計画や気候変動対策に反映させることが、実効性のある政策につながります。
気候変動への対策を進める際、女の子を単なる支援の受け手としてではなく、未来をつくる主体として位置づけることが、報告書の大きなメッセージです。
【プロの結論】数字だけでは見えない3つの重要な視点今回の調査を読み解くうえで、特に押さえておきたい要点は3つあります。
第一に、気候変動は既存の格差を拡大させるということ。
同じ洪水や干ばつを経験しても、家庭の経済力、居住地域、教育環境、医療サービスの利用可能性によって、その後の人生への影響は異なります。
第二に、教育と保健サービスは災害対応の中心に置く必要があるということ。
学校を再開するだけでなく、性と健康に関する情報や相談支援まで継続させることが、児童婚、性暴力、望まない妊娠などのリスクを減らすことにつながります。
第三に、女の子の声を政策に反映させること。
支援を提供する側だけで決めた対策では、現場で本当に必要なものを見落とす可能性があります。本人たちが意思決定に参加できる環境こそ、長期的な解決につながります。
なお、調査結果の読み方にも注意が必要です。52カ国の長期データ分析、5カ国のアンケート、139人の聞き取りは、それぞれ異なる方法で実施されています。地域で増加したと回答した割合と、本人が経験した割合も同じ意味ではありません。また、気候災害と児童婚・暴力・妊娠の関連が示されたことは、個々の事例の原因を気候変動だけに帰せることを意味しません。
この区別を踏まえて読むことで、報告書の数字をより正確に理解できます。
【ガールズレポート2026】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ガールズレポート2026の正式名称は何ですか?
A1:正式名称は「世界ガールズ・レポート2026」です。英語版は「State of the World's Girls 2026」で、「Change Her Forecast」というタイトルが付けられています。プラン・インターナショナルが2026年10月6日に発表しました。
Q2:世界ガールズ・レポート2026の調査対象国はどこですか?
A2:バングラデシュ、ケニア、ペルー、セネガル、ジンバブエの5カ国です。15~24歳の女の子や若い女性5,000人へのアンケートと139人への聞き取りを実施しています。別途、52カ国の約30年間の気候・保健データも分析しています。
Q3:気候変動によって児童婚や望まない妊娠が増えるのはなぜですか?
A3:洪水や干ばつによって家庭の収入が減り、学校や医療機関へのアクセスが難しくなるためです。教育の中断や経済的困窮、避妊サービスの利用困難などが重なることで、児童婚や望まない妊娠のリスクが高まります。
Q4:日本の女の子にも関係する調査ですか?
A4:はい。プラン・インターナショナルは日本でも15~39歳の男女2,070人を対象に別の調査を実施しています。避難所のプライバシー、教育への影響、家事やケアの負担など、国内にも気候変動とジェンダーの問題が存在することが示されています。
Q5:国際ガールズ・デーはいつですか?
A5:毎年10月11日です。2011年12月19日に国連総会が決議66/170によって制定し、2012年から実施されています。女の子の権利や直面する課題、エンパワーメントへの理解を広めることを目的としています。
2026年の世界ガールズ・レポートは、気候危機が女の子の人生に及ぼす影響を、教育、健康、安全、経済という複数の側面から明らかにしました。
約50カ国、30年以上の気候・保健データに加え、バングラデシュ、ケニア、ペルー、セネガル、ジンバブエの5カ国で実施された5,000人調査と139人への聞き取りは、災害の影響が自然環境だけにとどまらないことを示しています。
特に重要なのは、次の4点です。
- 気候災害による教育機会の喪失を防ぐこと。
- 性暴力や性的搾取から女の子を守ること。
- 避妊、妊産婦ケア、生理用品などの保健サービスを維持すること。
- 女の子自身が気候政策や防災の意思決定に参加できるようにすること。
気候変動は、すべての人に同じ影響を与えるわけではありません。もともと教育や医療、経済的な支援を受けにくい立場にある女の子ほど、災害によって選択肢を失いやすいという現実があります。
だからこそ、気候変動対策とジェンダー平等を別々の政策として考えるのではなく、一体的に進める必要があります。
「女の子の未来予報を変えよう」という2026年のメッセージは、女の子たちの未来を災害や社会的不平等に左右されるものにせず、自分自身で選び取れるものにするという呼びかけです。
10月11日の国際ガールズ・デーをきっかけに、この報告書が示す課題を知り、気候政策や教育、防災のあり方を考えることが、より公平な未来への第一歩になります。